3月30日 E-Verify義務化の課題 
Sources : Most Employers Welcome Mandated E-Verify with Improvements (SHRM)
Mandatory E-Verify Likely, but There Are Bugs to Work Out (SHRM)
上記sourceは、企業におけるE-Verifyの利用状況ならびに課題を紹介している。
  1. E-Verifyの利用は、連邦政府、州政府で一部義務付けられている部分があり、現在利用している企業の6割はそうした義務付けに伴って利用している。
  2. 州政府レベルでは、全部で22州で何らかの利用義務付けが行なわれている(NCSL)。

    1. 一部の例外を除き、ほとんどの企業に利用を義務付けている:9州
    2. ほとんどの公的企業に利用を義務付けている:11州
    3. 公的部門と契約を交わしている企業に利用を義務付けている:2州
  3. E-Verify利用の義務化については、大半の企業が支持している。
  4. ただし、E-Verifyを利用している企業からは、いろいろ解決すべき課題があるとの意見がある。中でも紙ベースでの書類提出(Form I-9)との併用には不満が多い。
折りしもトランプ大統領は、先に公表した予算提案骨子(「Topics2017年3月21日 大統領予算提案骨子」参照)で、E-Verify利用義務化を進めるために$15M(Department of Homeland Security)を計上している。不法移民対策として、拡充すべき歳出と位置づけているのである。

企業の側でも支持が高いE-Verify利用義務化だが、解決すべき課題も多い。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者


Center on Budget and Policy Priorities
3月29日 Medicaid拡充の動き 
Source :New momentum for Medicaid expansion, as more Republicans conclude Obamacare won't get repealed (Washington Post)
連邦議会下院共和党がAHCAを断念したこと(「Topics2017年3月25日(2) AHCAを断念」参照)を受け、ライアン下院議長は「医療保険改革の動きを継続する」とする一方、次のように発言している。
"Obamacare will be the law of the land for the foreseeable future."
PPACAは当面継続されると保証したようなものである。

こうした政治情勢を感じ取って、これまでMedicaid拡充に慎重だった州政府(多くは共和党がコントロール)が拡充に向けて動き出している。上記sourceでそうした動きがあることを報じられた州は、 拡充していない19州のうち、8州が既に拡充の方向で動き出している。トランプ大統領はもうPPACAを変えられないと見切られたのだろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル

3月25日(1) CBO再推計 
Source :What CBO Says About the Updated AHCA (Committee for a Responsible Federal Budget)
AHCA修正案に基づき、CBOの再推計が公表された(「Topics2017年3月23日 AHCA修正案」参照)。23日に予定されていた下院本会議での採決が延期されたため、結果的に採決に間に合った形となった(「Topics2017年3月24日 AHCA採決延期」参照)。

最初の推計と比較したポイントは次の通り(「Topics2017年3月14日 待望のCBO推計」参照)。
  1. 2017-2026年の10年間で、連邦政府財政赤字の減少幅:$337B ⇒ $150B

  2. 無保険者数:変化なし
確かにこれでは保守強硬派は賛成できない。財政赤字の減少幅が大きく縮小するということは、小さな政府に向かわない、ということに他ならないからだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月25日(2) AHCAを断念 
Source :GOP health-care bill: House Republican leaders abruptly pull their rewrite of the nation’s health-care law (Washington Post)
3月24日、トランプ大統領とライアン下院議長は、AHCAを取り下げることを決定した。保守強硬派との溝は埋まらなかった。

これでAHCAは完全に取り下げられ、しばらく政策課題として取り扱わないことになる。トランプ大統領は、『PPACAはいずれ崩壊するので、民主党から改革したいと言ってくるだろう』と発言しているようだが、まずそんなことは起きまい。

トランプ政権と議会共和党は、インフラ投資、税制改革など他の政策課題にシフトしていくことになり、医療保険制度が大きな争点となるのはかなり先のことになる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月24日 AHCA採決延期 
Source :House leaders postpone vote on their health-care plan (Washington Post)
下院共和党幹部は、23日に予定されていたAHCAの下院本会議での採決を、24日以降に延期した。下院共和党議員の反対を抑え切れないと判断したからだ。

主な反対派の主張は次の通り。 トランプ大統領は、両方の議員と面会し、採決に賛成するよう協力を求めたが、不調に終わったようだ。"Tuesday Group"は50人ほどいるようだが、明確に反対を表明しているのは4名。一方の保守強硬派で反対を表明しているのが37名と、大量に存在する。彼らは、文字通り、Obamacareの全廃を主張して議席を獲得してきた議員である。

下院で可決するには保守強硬派との合意が不可欠となるが、彼らの主張を入れれば入れるほど、今度は上院共和党の賛成を得にくくなっていく。上記sourceによれば、現段階で既に10数名の共和党上院議員が懐疑的な見解を示しているという。

トランプ大統領が連邦議会議員を経験していないことが、こうした隘路を招いているのかもしれない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月23日 AHCA修正案 
Source :GOP leaders amend ACA repeal bill, mostly to the right (Modern Healthcare)
共和党下院法案("American Health Care Act", AHCA)の共和党修正案が固まったそうだ(「Topics2017年3月8日 共和党下院法案」参照)。下の赤字部分が修正案。
  1. 保険料補助金(tax credits)を廃止し、新たな保険料補助金を創設する。

    1. 30歳以下:$2,000/Y〜60歳以上:$4,000

    2. 全額受給可能所得上限額:個人$75,000/Y、夫婦$150,000/Y

    3. 上限額を$1,000超える毎に、補助金が$100ずつ減額される。

    ⇒負担が急増すると見られる50〜64歳の加入者負担を軽減するための保険料補助金について、最低$75Bの基金を創設する。制度設計は議会上院に委ねる。

  2. 個人の保険加入義務、フルタイマーに対する企業の医療保険プラン提供義務を廃止する。

  3. 無保険者に対するペナルティを廃止する。代わりに、保険プランに再加入する際、保険料を30%上乗せする。

  4. PPACAの規定通り、2019年まではMedicaid拡充に必要な財源を連邦政府が負担する。2020年以降、Medicaidを拡充した31州については、連邦政府負担を加入者数比例とする。また、拡充していない19州については、5年間にわたり$10Bを連邦政府が拠出し、州独自の低所得者層の医療対策に宛てる。

    • PPACAに基づく新たなMedicaid拡充を禁止する。連邦政府負担の増加も認めない。

    • Medicaid加入成人には、労働義務を求める。義務を課した州には管理費用の5%を追加拠出する。

    • 連邦政府包括負担の選択肢を各州政府に認める。

  5. 当初検討対象となっていた高額給付プランへの課税は行なわない。企業提供プラン保険料の所得控除制度を維持する。(「Topics2017年3月1日(1) 共和党下院案」参照)

  6. PPACAに当初から盛り込まれている"Cadillac Tax"の施行を2025年に延期する(現規定では2020年施行)。

    ⇒ 施行を2026年に延期する。

  7. 26歳までは親の保険プランに加入することを認める(PPACAの継続)。

  8. 既存症を持つ者に対する保険加入拒否を禁止する(PPACAの継続)。

  9. 生涯給付上限の設定を禁止する(PPACAの継続)。

他にもいくつか技術的な修正が盛り込まれているようだ。保守強硬派を懐柔するための施策、特にMedicaidについての修正がそれに該当するとの説明がなされている。

下院共和党は、3月23日にも本会議で採決したいと考えている。トランプ大統領からの催促もあって議決を急いでいるようだが、修正案に関するCBO推計は出てこないようだ。下院で早く採決してしまって、下駄を上院に預けようとしているように見える。

果たして上院共和党はどのような取り扱いをするのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月22日 移民政策とSF市皆保険制度 
Source :Could San Francisco’s universal health care model work for all of California? (Sacramento Bee)
San Francisco市(SF市)は、2008年から独自の医療保障制度(Healthy San Francisco)を運営している(「Topics2009年10月6日 SF市も成果」参照)。

その特徴は、企業に保険加入義務並びに拠出金を求めていること、財源は公的支出が中心であること、等々だが、今注目されているのは、加入者資格である。HPによれば、加入者資格は、 のみであり、アメリカ国民であるかどうかは問われない。つまり、不法移民者でも医療サービスを受領できるということである。

トランプ政権下で不法移民に対する処遇が厳しくなることが予想される中、不法移民でも医療サービスを受けられるというのは大きなメリットである。その反面、連邦政府が取り締まりを強化する方向性を明示している中、不法移民の人達が医療サービスの受領を回避しようとする動きも出ている。

しかし、プライマリーケア、予防診療により、全体の医療費を抑制することが重要なテーマである。あとは、SF市がどこまで財政負担に耐えられるかであろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/SF市」、「移民/外国人労働者

3月21日 大統領予算提案骨子 
Source :Trump federal budget 2018: Massive cuts to the arts, science and the poor (Washington Post)
3月16日、トランプ大統領は、2018年度予算提案骨子を公表した。右図を見れば、その意図するところは一目瞭然。とてもわかりやすいメッセージだ。

アメリカ第一主義が貫かれている。ただし、労働、厚生、教育といったところが削られていることに、アメリカ国民は納得するのだろうか。自立を促すという意味なのかもしれない。

※ 参考テーマ「一般教書演説