3月14日 待望のCBO推計 
Source :American Health Care Act (Congressional Budget Office)
待望されていたCBO推計がようやく公表された。ポイントは次の通り。
  1. 財政への影響

    1. 2017-2026年の10年間で、連邦政府財政赤字は$337B減少する。

    2. 歳出は約$1.2T減少する、主な項目は、Medicaid、保険料補助金への減少である。

    3. 歳入は約$0.9T減少する。医療機関や高額所得者への課税が撤廃されるためっである。

  2. 無保険者数

    1. 2018年には、一気に1,400万の無保険者が増える。見通しの最終年である2026年には、PPACAと比較して2,400万人もの無保険者が増え、全米で5,200万人の無保険者が存在することになる。
    2. 当初は、個人加入義務とペナルティが廃止されるため、自発的に保険不加入を選択する人が大量に出てくる。主に、若年層で健康な人達である。

    3. その後の無保険者増加の最大の要因は、Medicaidの縮小である。連邦政府負担の抑制を理由に、各州Medicaid拡充策の停止、不採択が予想される。
    4. 最終的に2026年の無保険者割合は19%となり、PPACA以前の水準を超えてしまうかもしれない(「Topics2016年9月19日 無保険者割合の低下継続」参照)。

  3. 個人保険市場

    1. 保険料補助金が形を変えるが、その影響はあまり大きくなく、個人保険市場の加入者は充分いるものと推計される。

    2. また、後述するように、保険料が低く抑えられることも大きい。

  4. 保険料への影響

    1. 2018-2019年、個人保険市場の個人保険料はPPACAよりも15〜20%上昇する見込みである。先述のように、個人加入義務とペナルティが廃止されるため、自発的に保険不加入を選択する人が大量に出てくるためである。

    2. 一方、2020年以降、州政府独自の無保険者対策、保険給付内容の規制緩和、ベビーブーマーの退出などにより、保険料は低下していき、2026年の個人保険市場の個人保険料はPPACAよりも10%程度低くなる見込みである。

    3. 若年者と高齢者の保険料比率上限を1:3から1:5に緩和することから、年齢により受ける影響は異なってくる。

ところで、このCBO推計に対して、共和党関係者は様々な反応を示している(Washington Post)。
  1. ホワイトハウス、HHS長官:ばかげている。間違っている。

  2. ライアン下院議長:絶賛する。目論見どおり、財政赤字は縮小する。

  3. 上院議員:法案の修正は不可避だ。無保険者数の改善が必要だ。トランプ大統領は全国民が保険加入できるようにすると約束したはずだ。
下院本会議で投票する最低条件は整った訳だが、これから共和党幹部たちはどうやって法案をマネージしていくのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月11日 逆風下の"American Health Care Act" 
Source :GOP health-care plan: Two House panels approve legislation as Trump tweets reassurance (Washington Post)
アメリカ医療法"American Health Care Act"(共和党下院法案)は、各方面から批判が強まっている。特に、保険業界、医療界から、Medicaid改革案に対する反対が強い(Washington Post)。

そうした逆風の中、トランプ大統領の支持を受けて、共和党は関連委員会での採決を強行し、可決した。下院共和党幹部は、今週末までには下院本会議で可決したいと考えているそうだ。

しかし、下院の強硬保守派共和党の反発は、トランプ大統領の説得にもかかわらず、収まっていない(「Topics2017年3月8日 共和党下院法案」参照)。

さらに、上院共和党幹部は、CBO推計がないままに審議されていることに強く懸念を示している。ライアン下院議長は自信を示しているそうだが、そう簡単ではあるまい。例え、今週末までに下院が採決しようとしても、可決されるかどうかは不透明な上、来週にはCBO推計が出てきて、予算決議の範囲に歳出が収まっていなかった場合には、さらに大きな懸念が示されることになろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル