Source : | Republicans divided over whether millions of Americans should lose government-subsidized health coverage (LA Times) |
新会期を迎え、連邦議会共和党は、PPACAの廃止・転換に向けてスタートダッシュを試みている(「Topics2017年1月15日(2) 予算決議案下院可決」参照)。しかし、その共和党の中でも対立の構図が生まれている。
対立の争点になっているのは、の2点である。いずれも無保険者を保険プランに加入させる大きなインセンティブになっている。それはそのまま巨額の財源を要しているという意味にもなる。
- 保険料補助金(tax credit)
- Medicaid拡充策
対立しているのは、主に次のような分類となる。PPACAの廃止・転換の具体策を検討するに従って、この対立構図はより鮮明になっていくものと思われる。
- 小さな政府派(連邦政府の支出を縮減することを優先する)⇒トランプ新大統領、Price HHS長官候補、保守派
- 低所得層の保険加入優先派(無保険者増加に対する政治的反発を懸念) ⇒ 州知事、上院
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | UC President Janet Napolitano reiterates vow to protect immigrant students (Los Angeles Times) |
1月25日、国境警備並びに移民法執行強化のための大統領令(Executive Order)が発出された。ここには、メキシコ国境に直ちに壁(physical wall)を建設する、不法入国者収容施設を整備する、移民法違反入国者を実質的に拘束する、などが明記されている。
今回の大統領令では、Obama大統領令(DACA:Deferred Action for Childhood Arrivals)に関する具体的な言及はない。しかし、上述のように、移民法の厳格な執行が求められている。
こうしたトランプ新政権の動きに対して、University of California(UC)の学長が『UCのDACA対象学生を守る』と抵抗する構えを明らかにしたのである。その学長とは、DACA発出時のHomeland Security SecretaryだったNapolitano氏である。
心情的には理解できるものの、政府が法律に基づいて執行しようとすることを大学が阻止するというのは、具体的にどういうことなのか。対象学生を学内にかくまって篭城させようというのだろうか。どっちもどっちという感触は否めない。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | Presidential Memorandum Regarding the Hiring Freeze (The White House) |
トランプ新大統領は、1月23日、今度は"Presidential Memorandum"という形式で、連邦公務員の採用凍結を指示した。ポイントは次の通り。軍部や安全保障、治安など適用外としているが、具体的に制服組に限られるのか、背広組みまで含まれるのかは不明だそうだ。
- 2017年1月22日時点で空席となっているポジションに採用することはしない。また、新たな役職を創設することはしない。
- 上院で承認する連邦政府機関の長、軍部、安全保障や治安に関わるポジションについては適用しない。
- OPMには適用例外措置を設ける権限を与える。
- 本件発行から90日以内に、OMBは長期にわたる連邦政府職員の削減案を作成、提出しなければならない。
- OMBプラン開始とともに、本指令は失効する。
連邦政府職員として優先的に採用される権利を持つ退役軍人や連邦政府職員で構成する労組などが反対の声を上げている(Washington Post)。
小さな政府を目指すという公約を実現しようとしているのだが、トランプ新政権がどの政策にどれだけ重点を置くのかということが明確にならなければ、OMBは職員削減案をまとめることができない。具体的な作業は、これから行なわれるだろう両院議会演説や予算教書で方向性が示されてからにならざるを得ないだろう。
まだまだ新大統領のパフォーマンス政治が続いている。
※ 参考テーマ「労働市場」、「政治/外交」
Source : | Interstate Insurance Sales: Wishful thinking, Or A Viable Policy Option? (Health Affairs) |
PPACAの見直し作業が本格化している。その中で、共和党が示した代替案に、保険の州際販売が盛り込まれている(「Topics2017年1月7日 共和党医療保険改革法案」参照)。州際保険販売は現在法律上認められており、実際に州政府がその気にさえなれば環境は整えられる。実際、整えてはみたものの現実には州際販売が行なわれていないという現実がある(「Topics2012年5月4日 MSPの姿とは」、「Topics2012年11月5日 州際保険購入法の効果」、「Topics2013年7月14日 MSP:当面の課題」参照)。
法制上は可能なのに州際販売が進まない理由としては、などが挙げられている。
- 連邦政府、州政府の当局者に受けがよくない
- 保険会社の関心が低い
- 消費者側にも強い要望がない
- 販売可能となるための規制が厳しすぎる
- 主に大企業が採用している"self-insured"は州の規制を受けないため、既に州際となっている
さらに、上記sourceでは、現実の制度に落とし込めない、または回避できない課題が存在すると説明している。こうした課題をクリアできるような州際販売の仕組みが、アメリカの連邦制度の中で構築できるのだろうか。
- 際限のない安売り競争
給付内容に関する規制をはずすなどして保険料が安い保険プランが州際で販売可能になったとすると、それを求めて健康な人がその保険プランを購入する。その結果、保険プランを購入した人が居住する州では、保険加入者の健康度が低下し、保険料を高くせざるを得なくなる。これを回避するため、州同士で保険料の引き下げ競争が行われる。一方、深刻な病歴のある州民は、高い保険料のプランしか加入できなくなってしまう。
- 監督責任は誰が取るのか
保険プランを州際購入した加入者や診療に問題が発生した場合、当該保険プランに対する監督責任は、州際購入した加入者が居住する州の保険長官が持つのか、それともその保険プランを販売した保険会社が所在する州の保険長官が持つのか。
- 診療機関ネットワーク
保険給付を行なうためには、加入者が居住する地域の診療機関、医師と契約を結ぶ必要がある。州の外の保険会社が州内の診療機関とネットワークを結ぶには時間がかかる。しかも、州外の保険プランの保険料が安いからといって、診療報酬まで下げて契約してくれる診療機関はまずない。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Trump signs executive order that could effectively gut Affordable Care Act’s individual mandate (Washington Post) |
1月20日、トランプ氏が大統領に就任した(White House)。その当日、PPACAに関する規制を見直すよう、大統領令(Executive Order)が発出された。
具体的な見直し対象には言及されていない。PPACA関連のすべての関係者に影響する規制を全ての政府機関が見直すように指示している。すべての関係者とは、国民、保険会社、医療機関、医師、製薬会社、州政府その他である。
上記sourceでは、具体的な見直し対象として俎上に上げられるのは、などではないかとの見通しを示している。
- PPACA関連税制
- 個人加入義務とペナルティ
- 保険給付提供を義務付ける診療項目
今後の具体論を見るしかないのだが、ここでちょっと心配なことがある。報道されている大統領令(Executive Order)がホワイトハウスのwebに掲載されていないのである(Executive Order)。こんなことは今までなかったと思う。
⇒ 日本時間で1/24朝に、当該大統領令が掲載されていることを確認した。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」