Source : | Judge blocks $54 billion Anthem-Cigna health insurance merger (Washington Post) |
2月8日、連邦地方裁判所(D.C.)は、AnthemとCignaの経営統合を認めないとの判決を下した。先月には、AetnaとHumanaの経営統合についても同様の判決が下されている。保険大手5社が3社に統合されれば、市場の競争度は低下し、選択肢が狭まる、保険料上昇などが起きるという判断である。
今のところ、前政権のもとで司法省が起こした訴訟は勝利が続いている。全米病院協会も賛同のステートメントを公表している。
しかし、今後、保険3社がどう出るかについては報じられていない。コメントも発出されていない。
今後の動きについて、2つだけ指摘しておく。
- このまま統合が認められない、または認められないだろうとの見通しのもとに3社が司法で争うことを止めてしまった場合、Aetna、Humana両社は全米のExchangeからの撤退速度を高めるのではないかと思う(「Topics2016年8月19日 Aetnaも大幅撤退」参照)。そうなれば、まさにExchangeでの競争度は低下し、選択肢の減少、保険料の上昇が見込まれる。どちらに転んでも難しい局面なのである。
- 2月8日、トランプ新政権のJeff Sessions司法長官が連邦議会上院で承認された。かなり保守色の強い政治家で知られており、司法省の訴訟そのものの取り下げを指示する可能性がある。そうなれば、5社が3社に統合される可能性は充分出てくる。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | Vermont Leads States in LGBT Identification (Gallup) |
上記sourceは、電話での聴き取り調査により、LGBTと自認する人の割合を州別に出している。 右図を見てわかる通り、西海岸、東海岸の州でその割合が高く、南東部、南西部、西中部で低くなっている。
全国的には、2012年の3.5%から2016年には4.1%に高まっているが、増加率にはばらつきが見られる。上記sourceでは、そのばらつきの要因として、の3点を挙げている。
- 社会の受容度
- Millenialsの増加
- 移動性
Millenialsの中にはLGBTを自認する割合が高くなっており、彼らが受容度の高い社会を求めて移動するために、州毎にばらつきが出てくるという訳だ。もしもこういう傾向が続けば、アメリカ社会を二分する要素がまた一つ増えることになる。
※ 参考テーマ「LGBT」、「人口/結婚/家庭/生活」
Source : | Affordable Care Act Sign-Ups Dip Amid Uncertainty and Trump Attacks (New York Times) |
2017年のExchange加入申込期間が終わった。連邦立のExchangeのみの集計だが、合計で920万人、昨年の同時期の963万人よりも4%強減少した。Obama政権末期の1月14日時点では、昨年同時期よりも僅かに上回っていたそうだ。
一方、州立Exchangeを運営しているCA州では、新規の加入者数は42.5万人から41.2万人へと3%程度減少したものの、2017年の加入者数全体では150万人に達し、昨年の130万人を上回る見込みである(SF Gate)。
トランプ政権に移行して、PPACAの廃止、もしくは変更の方針が明確に打ち出され、様子見に変えた加入者もいたのだろう。保険会社ばかりでなく、個人の方も制度変更の行方を見極めてから態度を決めようとしているとしたら、長期間をかけて見直しを行なっていれば、保険プラン加入者は徐々に減少していくことになる。
共和党の制度変更議論は時間との勝負になっている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/CA州」
Source : | Exchange Stabilization Bills Represent New GOP Approach To ACA (Health Affairs) |
連邦議会共和党は、予算決議に沿ってPPACAを廃止するにあたって、部分的な制度改正を順次提案していくこととしたようだ。この方針にそって、1月27日、連邦議会共和党は4つの法案を提出した。最後の4番目の法案は、具体的な制度設計というよりも、政治的なメッセージである。『PPACAの廃止』と聞いて、まず不安になるのが既往症を持つ国民であることは間違いない。そこには安心材料を提供しようということだろう。
- 特別加入期間の新規加入については、HHSが加入資格の有無を精査することを条件とする(「Topics2016年7月7日 若者の加入が進まない訳」参照)。
- 高齢者と若者の保険料比率の上限を、現行の3:1から5:1、または州政府が決定した比率に引き上げる。
- 保険料支払い猶予期間を、現行の90日間から州政府が決定した期間、または30日間に短縮する(「Topics2016年10月18日 保険料支払猶予期間」参照)。
- 既往症を持つ者に対する保険加入拒否を禁止する条項は継続する。
作業の初期段階であることを考慮したとしても、『PPACAの廃止』というよりも『保険会社の不満を解消する規制緩和』と呼んだ方がぴったりするような内容である。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン」
Source : | Cleveland Iron Workers vote to approve pension cuts (Pension Rights Center) |
Iron Workers Local 17 Pension Fund (Cleveland)の給付削減案が、加入者投票により承認された(「Topics2017年1月9日 複数事業主プラン給付削減第1号か」参照)。想定された通り、加入者の半分以上にのぼる1,938人が投票しなかった。今回の削減案では、加入者の4/5はほとんど影響を受けないため、加入者全体の関心が低いと見られていた。その結果、投票結果は、2 vs 1 の大差で承認された。
給付削減は2月1日から発効となった。
2014年12月に複数事業主プラン給付削減法が成立して、適用第1号が出たことになる。上記sourceによれば、4つのプランが適用申請中であり、70プラン近くが適用申請条件を満たすほど財政状況が悪化しているそうだ。
※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「PBGC/Chapter 11」
Source : | What obesity costs your business: The importance of healthy incentives (Assurance) |
以前にもアメリカ社会の肥満事情を紹介したことがある(「Topics2012年10月10日 肥満人口上昇」参照)。上記sourceが伝える肥満事情は、5年前よりも悪化しているかもしれない。なお、上記sourceでは、BMI30以上を肥満と定義している。これでは、企業側も従業員の健康、特に肥満の解消、防止に力を入れざるを得ない。
- 成人の1/3以上が肥満と考えられる。
- 肥満に伴う医療費は、年間医療費全体の20%近くを占める。
- 肥満の人の医療費は普通の人のそれよりも42%高い。
- 肥満の従業員の事故率は、普通の人のそれよりも25%高い。
- 肥満の従業員の医療費請求回数は倍にのぼる。
- 肥満の従業員の医療費は7倍にのぼる。
- 肥満の従業員の欠勤は10倍にのぼる。
※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」
Source : | New NLRB Acting Chairman May Tilt Board Pro-Business (SHRM) |
1月23日、National Labor Relations Board (NLRB)の委員長代行が指名された。NLRBはメンバーの指名、承認ができず、一度存続の危機を迎えたが、政治決着により正常化された。その時点でのメンバー構成は次の通りである(「Topics2013年8月3日 新生NLRB」参照)。【2013年7月30日】ところが、現時点でのメンバー構成は次のようになっている。フルメンバーは5人のはずなのに、委員は3人しかいないのである。
役 職 氏 名 政 党 指名者 任 期 上院承認 Chairman Mark Gaston Pearce D President Obama @2010.4.7〜2013.8.27
A2013.8.28〜2018.8.27A PN266-113 Member Philip Andrew Miscimarra R President Obama 2013.8.28〜2017.12.16 PN265-113 Member Kent Yoshiho Hirozawa D President Obama 2013.8.28〜2016.8.27 PN679-113 Member Harry I. Johnson III R President Obama 2013.8.28〜2015.8.27 PN264-113 Member Nancy Jean Schiffer D President Obama 2013.8.28〜2014.12.16 PN680-113 事務局長 Lafe Solomon - President Obama 2011.1.27〜 × 【2017年2月3日】Obama政権で委員長を務めたPearce氏が委員に降格し、それまで委員であったMiscimarra氏が委員長代行に昇格したということだ。今後、委員長の指名、上院の承認というプロセスが想定されるが、Miscimarra氏は委員となることも想定される。
役 職 氏 名 政 党 指名者 任 期 Acting Chairman Philip Andrew Miscimarra R President Obama 2013.8.28〜2017.12.16 Member Mark Gaston Pearce D President Obama A2013.8.28〜2018.8.27 Member Lauren McFerran D President Obama 2014.12.17〜2019.12.16 Member - Member - 事務局長 Richard F. Griffin, Jr. (D) President Obama 2013.11.4〜2017.11.3
空席2名に加え、Miscimarra氏、Griffin氏の任期が今年中に終わる。従って、今後のメンバー構成については、トランプ新政権は大きな自由度を確保していると言える。おそらく企業側に親和性の高い構成となるのだろう。
※ 参考テーマ「労働組合」
Source : | Republican senators say fixing individual market should be first step in ACA repeal (Modern Healthcare) |
予算決議に従って、連邦議会でPPACAの見直し作業が行なわれている(「Topics2017年1月15日(2) 予算決議案下院可決」参照)。上院のHELP委員会で、共和党議員達は、との考え方を示した。
- まずは個人市場の安定策が重要
- その後、Medicaid拡充策の見直しを行なう
今のような状況が続けば、予見可能性が低下し、保険会社が2018年のExchange参加を見合わせる可能性が高まると見られている。実際、トランプ大統領就任前から大手保険会社の撤退表明が相次いでおり、その上にトランプ政権、連邦議会共和党がPPACAの見直しを本格化しているのだから、ベンダーとしては当然だろう(「Topics2016年8月19日 Aetnaも大幅撤退」参照)。
ところで、以前、共和党内の意見対立の柱は、@保険料補助金とAMedicaid拡充策であることを紹介した(「Topics2017年1月27日 共和党内の対立」参照)。@保険料補助金は、Exchangeの仕組みの屋台骨であり、切っても切り離せない関係にある。
共和党議員が考える『個人市場の安定策』とは、について明確になっていない。特に巨額の支出を伴う保険料補助金の存続は、共和党内で意見の一致を見るのは難しいのではないか。
- 現行のExchange個人市場をイメージしているのか
- 保険料補助金の是非をどう考えているのか
具体策の検討に入ることによって、いよいよ共和党の制度設計能力が問われることになる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
共和党にとって最大の選挙成果を獲得する時がやってきた(「Topics2016年11月10日 連邦最高裁人事」参照)。1月31日、トランプ新大統領は、空席となっていた連邦最高裁判事の候補として、Neil Gorsuch判事を指名した。同氏は、現在まで第10控訴裁判所の判事である。1967年8月29日生まれの49歳で、もしも承認されれば最も若い連邦最高裁判事となる。それだけ長く共和党指名判事が継続できるということになる。
New York Timesこれまで控訴裁判所において、彼自身が同性婚、人工中絶に関する司法判断を下したことはないそうだが、思想信条的には亡くなったScalia判事よりも若干保守色が強いとされている。彼が承認されれば、共和党としてはScalia判事死亡前の状況を維持できることになる。
Name Born Appt. by First day John G. Roberts
(Chief Justice)January 27, 1955 George W. Bush September 29, 2005 (Antonin Scalia) March 11, 1936 Ronald Reagan September 26, 1986 Anthony Kennedy July 23, 1936 Ronald Reagan February 18, 1988 Clarence Thomas June 23, 1948 George H. W. Bush October 23, 1991 Ruth Bader Ginsburg March 15, 1933 Bill Clinton August 10, 1993 Stephen Breyer August 15, 1938 Bill Clinton August 3, 1994 Samuel Alito April 1, 1950 George W. Bush January 31, 2006 Sonia Sotomayor June 25, 1954 Barack Obama August 8, 2009 Elena Kagan April 28, 1960 Barack Obama August 7, 2010
さて、今後は連邦議会上院における承認が行なわれるかどうかに焦点が移ってくる。
Washington Post
Gorsuch判事が第10控訴裁判所の判事に任命された時は、口頭での投票で済んでいる。要するに問題が提起されなかったということだ。ところが、今回は最高裁判事であり、民主党の対応も異なってくるようだ。そうした状況に対応して、トランプ大統領と上院共和党幹部は、単純多数決で承認決済をできないかと便法を模索しているらしい。これもまた民主党の怒りを買う所だろう。
- そもそも上院民主党は、Obama大統領が指名したMerrick Garland判事の承認について当時の共和党が寝てしまったことに対して、未だに怒っている(「Topics2016年3月17日 最高裁判事指名」参照)。
- 民主党も賛成できる判事を指名してもらいたいと予め要請したにも拘わらず、保守色の強い判事を指名してきたトランプ大統領に怒っている。
果たして共和党は選挙の最大の成果を取り込むことができるだろうか。
※ 参考テーマ「司 法」