2月20日(1) 移民法改革法案提出
Source :Democrats Unveil Sweeping Immigration Bill (NPR)
2月18日、アメリカ連邦議会民主党は、移民法抜本改革法案を提出した。これは、バイデン大統領が就任初日から発し続けている移民政策見直し方針に対応したものである(「Topics2021年1月21日 バイデン Day 1st」「Topics2021年2月3日 移民政策の見直し方策」参照)。

大きな柱は次の通り。
  1. 1,100万人いると言われる不法入国者に、順次、市民権を与える。

  2. 中でも、DREAMersに対する市民権賦与を早める。

  3. "Diversity visa program"を拡大する。

  4. 移民法で用いられている"alien"を"noncitizen"に改める。

不法移民に市民権を賦与しようとの試みは、これまでブッシュ大統領、オバマ大統領が挑戦したが、いずれも失敗に終わった(「Topics2004年1月7日(2) 非合法入国者の地位確認」「Topics2009年4月16日 移民政策論議再燃」参照)。 なお、上記sourceによれば、本法案を成立させるためには、現行制度を前提にすれば連邦議会上院で60以上の賛成票が必要だそうだ。何らかの譲歩を示さなければ、共和党議員からの賛成は得られないだろう。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

2月20日(2) ICEが限定執行
Source :Biden Reins In ICE: New Guidelines Limit Who Immigration Agents Target for Arrest (NPR)
2月18日、Immigration and Customs Enforcement(ICE)は、不法移民に関する当面の執行方針を公表した(Press Release)。上記の移民法改革法案と対をなしている。

ポイントは次の通り。
  1. 現時点または最近、違法に越境しようとしている、または越境してきた外国人の取り締まりに注力する。

  2. 既に入国している不法移民の逮捕、拘束、国外退去については、国家安全保障や公共の安全を損なうような脅威がある場合に限る。

  3. 逮捕等を執行する際には、事前に上司の許可を得る。
トランプ政権で不法移民を一斉逮捕していたのとは、様変わりである(「Topics2019年11月18日 恐怖の日々」参照)。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

2月19日(1) 新規失業2週連続増
Source :Jobless claims show unexpected move higher (CNBC)
2月18日、労働省は新規失業保険申請数を公表した。今週は86.1万人、前週から1.3万人の増加となった(「Topics2021年2月13日 新規失業微減続く」参照)。先週の数値が上方修正となったため、2週連続の増加となっている。48週間で累計7,892万人となった(新規失業保険申請件数data)。なお、Illinois、California両州では、申請件数の急増が見られたとのことだ。

雇用保険被保険者の中の失業者数は449.4万人と、こちらは6.4万人の減少となった。
また、COVID-19対策で導入された追加失業給付(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)の新規申請数は51.6万人と、17.4万人の大幅増となった。

一方、COVID-19感染状況を見ると、波は確実に収まりつつある。

Johns Hopkins University Health
しかし、感染リスクレベルは悪化したまま推移している印象だ。

Brown School of Public Health
※ 参考テーマ「労働市場

2月19日(2) Walmartの賃上げ
Source :Walmart raising pay for 425,000 workers starting March 13 after strong holiday sales amid COVID-19 (USA TODAY)
Walmartは、その従業員42.5万人(店舗のデジタル部門、在庫管理部門)の給与を引き上げると発表した。同社の従業員は全米で150万人で、2015年以来、50%以上の賃上げを行なってきており、少なくとも平均賃金は$15.25/hに達するものとみられる。

同社は、同時に自動化、配送システムの改善に140億ドルを投資するとも発表した。また、配当も増額する。要するに、パンデミック拡大の中で小売りが順調に伸びており、儲かっているのである。

※ 参考テーマ「最低賃金

2月18日 マックの経験則
Source :What McDonald's Shows About The Minimum Wage (NPR)
最低賃金$15/hを求める運動は、2012年11月29日、マンハッタンのマクドナルド前でファストフード従業員が集会を開いたことから始まったそうだ。そのマックを実験場に擬して、最低賃金引き上げの効果を計測した調査結果が公表された。ポイントは次の通り。
  1. 調査対象は、全米のマック店舗約10,000店。

  2. 調査期間は、2016年~2020年。

  3. 最低賃金の引き上げと注文用タッチパネルの導入に関連性は見られない。

  4. 最低賃金を上回る時給を提供していた店舗のうち、多くの店舗が最低賃金引き上げ時にそれを上回る時給の提供を継続した。転職を防ぐことが目的と思われる。

  5. 最低賃金引き上げ時に、BigMacの価格を引き上げている。労働コストの上昇を価格に上乗せするという構図だ。

  6. この結果、最低賃金引上げの恩恵を被る労働者の実質賃金はそれほど上昇しないことが見込まれる。

  7. 肝心の最低賃金引き上げの雇用に対する影響は、見出すことができなかった。
いくらマックが全米に多数の店舗を展開しているとはいえ、地域地域で部分的に適用されてきただけで、全米に一斉に適用されたことはない。従って、これまでの経験則からは予測が難しい。当面は、CBOの予測を信じるしかないようだ(「Topics2021年2月11日 最賃引上げで140万雇用喪失」参照)。

※ 参考テーマ「最低賃金

2月17日 パンデミック下のミスマッチ
Source :Millions Are Out Of A Job. Yet Some Employers Wonder: Why Can't I Find Workers? (NPR)
新規失業が高止まりし、失業率もなかなか下がらない中で、求人(job openings)がなかなか埋まらないとの声が多いという。

まず、求人数の推移は下図の通り(BLSデータ)。
昨年12月が664万人で、昨年7月くらいから660万人前後で推移している。一昨年12月が655万人なので、パンデミック以前の水準に戻っていることになる。

専門家の解説によれば、求人が多い業種は、直接現場で働かざるを得ない職場、例えば建設、物流などであり、求職側はリモートで働ける職場を求めている。ここで大きなミスマッチが生じているとのことだ。

※ 参考テーマ「労働市場

2月16日 複数事業主プラン対処法案
Source :Competing Multiemployer Pension Reform Bills (COWDEN)
複数事業主プラン向け支払保証制度の破綻が迫っている(「Topics2020年9月16日 PBGC財政状況の変化」参照)。これに対処するために、2つの法案が提出されている。しかし、その対処方針は真逆だ。
  1. Emergency Pension Plan Relief Act of 2021 (EPPRA):民主党議員提出

    財政危機に陥っているプランの負債をPBGCに移転させ、連邦政府の債務とする。

  2. Chris Allen Multi employer Pension Recapitalizati on and Reform Act of 2020 (Allen Act):共和党議員提出

    事業主、労組などのPBGC保険料を引き上げるとともに、年金給付額を削減する。
EPPRAが国頼りを求めているのに対して、Allen Actは自助努力を求めている。驚くことに、なんとUS Chamberは、EPPRAを支持している(Press Release)。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

2月15日 Census ID失敗
Source :6-Month Delay In Census Redistricting Data Could Throw Elections Into Chaos (NPR)
2020年センサス結果の公表が大幅に遅れる見通しとなった(「Topics2020年1月6日(1) センサス結果公表は2月」参照)。
  1. 州別人口の公表:4/16~30 ⇒ 連邦議会下院議員(435)+大統領選挙人(538)の州別割り当て

  2. 各州内の地域別人口の公表:9/30 ⇒ 州内選挙区の線引き(redistricting)
これでは、2022年中間選挙に向けた活動が秋口まで始められない所も出てくる。混乱を招くことは間違いない。

今回のセンサス結果公表が大きく遅れているのは、やはりCOVID-19感染拡大が理由である。学生寮やグループ宿舎などの調査がうまくいっていなかったことに加え、"Census ID"が記入されていない回答が異常に多く、実態と上手く結びつけられていないことが挙げられている。

2020年センサスでは、初めてオンラインまたは電話で回答することができるようになった。紙での回答では調査員との接触が必然となり、感染拡大を防ぐ効果も期待されていた。しかも、事前に配布されたCensus IDを利用しなくても回答できることになっていたのだ。これが、今の結果発表の遅れを招いている。

まあ、最初の試行は失敗はつきもの、と割り切れるかどうか。下院議員達は気が気じゃないだろう。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交

2月14日(1) Work Spouse
Source :Workplace Romance Report: Cupid's Arrows Are Flying (SHRM)
COVID-19感染拡大で、社内恋愛が増えているそうだ。社内恋愛を経験または継続しているとの回答が、昨年の27%から今年は34%に上昇した。外出自粛や飲食店の閉鎖などで、職場が出会いの機会として相対的に浮上しているのだろう。COVID-19感染拡大期に社内恋愛を開始した、または感染拡大前から開始した社内恋愛が続いているとの回答が、25%を占めている。

この調査の中で、"work spouse"に関する項目がある。
  1. "Work spouse"が存在している、または存在していたとの回答が、23%。

  2. そのうち、45%が恋愛感情を抱いている。
Wikipediaで"work spouse"を調べてみると、次のように出てくる。
"Historically, "work spouse" is a phrase, mostly in American English, referring to a co-worker, usually of the opposite sex, with whom one shares a special relationship, having bonds similar to those of a marriage. Early references suggest that a work spouse may not just be a co-worker, but can also be someone in a similar field who the individual works closely with from a partnering company.

A work spouse has been defined as “a special, platonic friendship with a work colleague characterized by a close emotional bond, high levels of disclosure and support, and mutual trust, honesty, loyalty, and respect”."
1年前の記事だが、在宅勤務、外出自粛の中で、イリノイ州の男女のうち38%が、実際のパートナーよりも"work spouse"がいないことを寂しいと感じていた(CHICAGO TRIBUNE)。しかも、この調査は、州ごとに調査結果を公表していた。

これは、感染拡大期が始まったばかりの調査のため、"work spouse"の存在を過大評価していたと思う。今同じ調査をすれば、もっと低水準になるのではないだろうか。"Work spouse"と実際のパートナーは、求める役割が異なるからだ。実際、上記調査結果から考えれば、恋愛感情を抱いている"work spouse"の存在は、10%程度にしかならない。

※ 参考テーマ「社内恋愛」、「人口/結婚/家庭/生活

2月14日(2) 共和党好感度高感度急降下
Source :GOP Image Slides Giving Democrats Strong Advantage (GALLUP)
GALLUPが1992年から行っている政党好感度(Party Favorable Rating)調査で、共和党の好感度が急降下した。実施時期は2021年1月21日~2月2日。以下、調査結果とその分析のポイント。
  1. 共和党の好感度は、昨年11月調査の43%から37%に低下した。1年前の2020年1月の51%から14%ポイントの急降下である。
  2. 共和党の好感度が低下した主な理由は、共和党支持者の間で好感度が大きく低下したことだ(12%ポイント低下)。
    Changes in Favorable Ratings of the Republican Party, by Party Identification
    November 2020 February 2021 Change
    % % Pct. Pts.
    U.S. adults 43 37 -6
    Republicans 90 78 -12
    Independents 33 32 -1
    Democrats 9 10 +1
    Gallup
  3. 一方の民主党の好感度は、45%から48%へと、わずか3%ポイントの上昇となった。

  4. 民主党の好感度が上がった要因は、中立派の中での好感度が41%から48%に上昇したことである。

  5. 結果、両党の間の差は11%と二桁に広がった。

  6. 今回の調査直前には、次のような事件が起きていた。
    • 1月1日:トランプ支持者による連邦議会への乱入
    • 1月20日:バイデン大統領就任
    • 1月26日:トランプ前大統領の弾劾裁判に関する連邦議会投票。ほとんどの共和党議員が反対票を投じた。

  7. 共和党の好感度が40%を割ることはよくある。2013年から2018年の平均好感度は39%しかない。また、これまで最も低い水準になったのは、2013年10月の28%(PPACAの財源を巡って連邦政府の一部が閉鎖)、1998年12月の31%(クリントン大統領の弾劾裁判)。(「Topics2013年9月14日 PPACA:深まる対立」参照)
  8. 民主党の好感度が二桁で共和党を上回るのは、最近10年間ではようやく2回目である。
  9. 中間選挙では、大統領与党が議席数を減らす傾向にある。その意味で、2022年の中間選挙で、共和党が連邦議会両院の多数を握る可能性がある。

  10. 当面は、トランプ前大統領の弾劾裁判の行方が注目されている。これまで、弾劾裁判を主導する政党の好感度が低下している。1998年のクリントン大統領の時には共和党、2020年のトランプ大統領(1回目)の時には民主党が、好感度を下げている。しかし、前2回と今回の違いは、トランプ大統領の有罪を望むアメリカ人の方が多いという点である。

  11. 共和党は岐路に立っている。現時点で、共和党支持者の60%がトランプのリーダーシップを求めているのに対して、38%は新しいリーダーを求めている。

  12. 共和党内部の分裂が続くようであれば、中間選挙予備選で対立が激化し、結局は本選で不利に働くことになる。
※ 参考テーマ「政治/外交

2月13日 新規失業微減続く
Source :Jobless claims worse than expected as pandemic-related filings surge (CNBC)
2月11日、労働省は新規失業保険申請数を公表した。今週は79.3万人、前週から1.9万人の減少となった(「Topics2021年2月5日 新規失業3週連続減」参照)。少しずつではあるが、4週連続の減少となっている。47週間で累計7,800万人となった(新規失業保険申請件数data)。

雇用保険被保険者の中の失業者数は454.5万人と、こちらも14.5万人の減少となった。
また、COVID-19対策で導入された追加失業給付(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)の新規申請数は33.5万人と、こちらも3.4万人の減となった。

一方、COVID-19感染状況を見ると、波は確実に収まりつつある。

Johns Hopkins University Health
しかし、感染リスクレベルは多少悪化している印象だ。

Brown School of Public Health
※ 参考テーマ「労働市場

2月12日(1) 給与公正法案提出
Source :Bill would ban reliance on salary history, mandate pay data reporting (HR Dive)
1月28日、連邦議会下院に、"Paycheck Fairness Act (H.R.7)"が提出された。

ポイントは次の通り。
  1. 新入社員の給与を決定する際、過去の給与歴を参照してはならない。

  2. 授業員100人以上の企業には、性別、人種別、出身国別の報酬情報をEEOCに提出することを義務付ける。

  3. 給与に関する差別防止策を強化する。

  4. 給与に関して昇給を要求した従業員に対する報復を厳禁する(NLRB関連)。
バイデン大統領は、この法案を可決するよう求めている(Statement)。ちなみに、このstatementは、Obama政権にとって記念すべき立法第1号であった"The Lilly Ledbetter Fair Pay Act"(S. 181)の12周年にあたって発表されたものである(「Topics2009年1月31日 Obama政権立法第1号」参照)。

また、共同提案者は224人で、うち2人は共和党議員だ(Representative Christopher H. SmithRepresentative Brian K. Fitzpatrick)。

州ベースでは、給与歴の調査を禁止しているところが17州となっている。(「Topics2019年12月22日 NJ州:給与歴調査禁止法施行」参照)

Salary History Bans by State @ AccuSource, Inc.
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

2月12日(2) EEOC/NLRB委員
Source :Bill would ban reliance on salary history, mandate pay data reporting (HR Dive)
労働関連の行政審判機構であるEEOCとNLRBのメンバー構成が変更になっているので、ここで確認しておく。 先ずはEEOC委員構成「Topics2020年9月29日 EEOC委員承認」参照)。
【2021年2月11日時点】
役 職氏 名政 党指名者任 期
Chair
2021.1.20~
Charlotte A. BurrowsDPresident Obama①2014.9.12~2019.7.1
②~2023.7.1
Vice Chair
2021.1.20~
Jocelyn SamuelsDPresident Trump2020.10.14~2021.7.1
MemberJanet DhillonRPresident Trump2019.5.15~2022.7.1
MemberKeith E. SonderlingRPresident Trump2020.9.22~2024.7.1
MemberAndrea R. LucasRPresident Trump2020.9.22~2025.7.1
General CounselSharon Fast GustafsonPresident Trump2019.8.1~2023.7
委員長、副委員長が今年1月20日から入れ替わっているだけで、メンバー自体に変更はない。依然として保守系が多数派となっている。

一方のNLRB委員構成「Topics2020年2月26日 NLRB:共同雇用者定義決定」参照)。
【2021年2月11日時点】
役 職氏 名政 党指名者任 期
Chairman
2021.1.20~
Lauren McFerranDPresident Obama①2014.12.17~2019.12.16
②2020.7.29~2024.12.16
MemberJohn RingRPresident Trump2018.4.16~2022.12.16
MemberMarvin E. KaplanRPresident Trump①2017.8.10~2020.8.27
②~2025.8.27
MemberWilliam J. EmanuelRPresident Trump2017.9.26~2021.8.27
Acting General CounselPeter Sung OhrDPresident Biden2021.1.25~2025.1.24(?)
こちらも、委員長が入れ替わっただけでメンバー構成は変更していない。一人空席もそのままだ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働組合

2月11日 最賃引上げで140万雇用喪失
Source :$15 Minimum Wage Would Reduce Poverty But Cost Jobs, CBO Says (NPR)
2月8日、連邦最低賃金引上げ法案(「Topics2021年1月28日 最低賃金引上げ法案2021」参照)に基づき、CBOが雇用への影響を推計し、公表した(CBO Report)。ポイントは次の通り。
  1. 連邦最低賃金引き上げにより、1,700万人の賃金が上昇する。

  2. 最低賃金をぎりぎり上回っている1,000万人の賃金も上昇する。

  3. 90万人が貧困状況から脱する。

  4. 140万人の雇用が失われる。
最後の140万人の雇用が失われるとの推計は、2019年7月の推計130万人を10万人上回っている(「Topics2021年1月28日 最低賃金引上げ法案2021」参照)。今回の推計では、$15/hへの引き上げスピードが速いことを反映しているものと思われる。

※ 参考テーマ「最低賃金