9月20日 Medicaid資格確認暫定総括
Source :An Examination of Medicaid Renewal Outcomes and Enrollment Changes at the End of the Unwinding (KFF)
Medicaidの資格確認作業は、9月12日時点で、残り13%となった。作業が残っていると思われる州は、NC州、SC州、AK州、HI州、NY州の5州である。

"Medicaid Enrollment and Unwinding Tracker" by KFF
ほぼ9割の作業が終えた時点で、全体の作業結果について、KFFが分析調査を公表した("An Examination of Medicaid Renewal Outcomes and Enrollment Changes at the End of the Unwinding")。ポイントは次の通り。
  1. 今回の資格確認作業により、Medicaid加入が取り消された割合は、約31%(2,500万人相当)。
  2. Medicaid加入者は、パンデミック直前の2020年2月は7,700万人、加入者数ピーク時の2023年4月は9,400万人、2024年5月時点で8,100万人となった。5月時点では、パンデミック直前よりも加入者数は増えている。その要因としては、①パンデミックに伴い加入意欲が高まった、②州政府の加入勧誘が功を奏した、③制度的に加入要件緩和が進んだ州があった、などが挙げられている。
  3. 州別にみて、パンデミック以前よりも加入者数が減っているのは、3州(CO、MT、AR)だけである(「Topics2024年9月15日 AR州知事:産後ケアMedicaid拡充策は不要」参照)。
  4. これを、資格確認作業開始以降に絞ってみてみると、その期間に加入者が増えたのは、2州(NC、OR)だけである
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般

9月19日 FRB 1/2ppt引き下げ
Source :The Federal Reserve starts cutting interest rates in a big moment for the economy (NPR)
9月18日、FRBは政策金利を0.5%ポイント引き下げることを決定した。基準金利は4.75~5.00%となる。反対は一人だけで、それも引き下げ幅を0.25%ポイントとすべきとの主張だったようだ(Statement)。

The New York Times
このところの労働市場、物価動向からみて、妥当な判断だろう(「Topics2024年9月7日 雇用指標は緩やかに改善」「Topics2024年9月12日(1) インフレ鎮静化」参照)。関心は今後の引き下げペースに移っている。

委員の予想中位数(Economic Projections)では、2024年中に4.4%、2025年末にはさらに1%ポイント下げて3.4%となっている。6月の予想値に較べて大きく下方修正されている(「Topics2024年6月13日(2) 政策金利据え置き7回目」参照)。

また、失業率の予想中位数は2024年4.4%、2025年4.4%と横ばいになっているが、予想幅を見ると大きく異なっている。悲観論に傾いている委員がいるようだ。
※ 参考テーマ「労働市場

9月18日 Amazon週5日出勤を要請
Source :Amazon employees ordered to report to work 5 days a week to ‘strengthen culture’ (MYNORTHWEST NEWS)
9月16日、Amazon社CEOは従業員向けに『2025年1月2日から週5日出勤に復帰するよう』メッセージを発信した。理由は、企業文化を強化するため、とのことである。

週5日出勤への復帰は、今年に入って大企業で続いているが、大規模テック企業としては先頭を切ることになる(「Topics2024年6月11日(2) Walmartは出社勤務へ」参照)。同社は、2023年3月から週4日出勤を要請し、当時、従業員から強い反発を受けた(「Topics2023年2月20日 Disney週4日出勤要請」参照)。今回はさらに強い反発が予想されている。

一方、本社のあるSeatle商業街区(Downtown Seattle Association)は、歓迎している。人の流れが確実に戻ってくるので、商業街区が活性化することが見通せるからである。

ここで、事実確認をしておく。まず、在宅出勤率は27.9%(2024年8月)と、大きく低下しているわけではない(「Topics2024年6月11日(2) Walmartは出社出勤へ」参照)。

The Working From Home Research Project
次に、大都市の出勤率を見ると、年々着実に上昇してきている(「Topics2023年2月20日 Disney週4日出勤要請」参照)。ただし、西海岸では今一つという感じであり、上述のDowntown Seattle Associationが喜んでいるのも頷ける。

KASTLE
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「Flexible Work

9月15日 AR州知事:産後ケアMedicaid拡充策は不要
Source :Arkansas’ gov says Medicaid extension for new moms isn’t needed. Advisers disagree (NPR)
低所得層の産後ケアを支援するため、Medicaid拡充策("postpartum Medicaid")が用意されている。連邦法では、産後60日間の保険加入を求めているが、各州には1年間まで延長する選択肢が与えられている。既に46州が選択肢を施行しており、8月1日時点で、2州(Idaho州、Iowa州)が1年間への延長を検討中、1州(Wisconsin州)が90日間への延長を検討中である。

Medicaid Postpartum Coverage Extension Tracker by KFF
そして、全く行動を取っていないのが、Arkansas州(AR)である。AR州では、Medicaid財源を用いて産後6週間の保険加入支援プログラム(ARHOME)を施行しているものの、手続きが複雑なために、加入手続きを諦めてしまうケースが多いそうだ。

そうした制度の結果、AR州の出産に伴う女性の死亡率が、全米で最高のグループに入っている。妊娠、出産時の女性の無保険者割合が、AK州では20~29%に達している。

こうした状況を改善するための政策を検討するため、州知事令により州政府内に委員会が設置されているが、AR州知事は「不要だ。拡充策にはノーだ」と明言している。委員会の最終報告書は9月中に公表される予定である。

※ 参考テーマ「無保険者対策/その他州」、「無保険者対策/州レベル全般

9月14日 Disney:大学教育支援減額
Source :Disney to limit college tuition benefit, cut master’s degree programs (HR Dive)
Disney社は、Disney Aspireというプログラムを通じて、従業員に大学教育を提供している。HPを見てもわかる通り、提携相手は"Guild Education"である。

その大学教育プログラムについて、Disney社は2024年11月27日までに次の通り変更すると公表した。
  1. 大学教育プログラムに対する企業支援額を年間$5,250とする。

  2. MA課程への進学を認めない。
いずれも支援規模の縮小である。1.については、IRSが認める所得控除額上限と同額であり、多くの企業が採用している数字だが、Disney社員にとっては減額となる。

労働市場が軟化しつつある中で、教育ベネフィットの見直しが始まったのかもしれない。

※ 参考テーマ「教 育

9月12日(1) インフレ鎮静化
Source :Inflation falls to its lowest level in more than 3 years. Here’s what that means (NPR)
9月11日、BLSは8月の消費者物価指数(CPI-U)を公表した(News Release)。前年同月比2.5%の上昇となり、6ヵ月連続の低下となった(「Topics2024年8月16日(1) インフレは鎮静化」参照)。2021年2月以来の水準である。コアの伸び率は3.2%で横ばい。
足許については前月比で0.2%で伸びは横ばいとなった。
このところのCPIの落ち着きには、食料品価格の安定が貢献している。8月も0.9%と伸び率は低下を続けている。
エネルギー価格も-0.4%と前年比でマイナスとなった。特にガソリンは-10.3%の大幅下落となった。
住居費は前年同月比5.2%増と、7月から小幅ながら高まった。
サービス業の価格上昇率は4.9%と横ばいで、住宅費同様、なかなか収まっていかない。
8月の実質時給は、前月比0.2%増、前年同月比で1.3%増となった(Real Earnings News Release)。
住居費、サービス価格の上昇は続いているものの、インフレの鎮静化は明確になってきた。

※ 参考テーマ「労働市場

9月12日(2) 2023年無保険者割合
Source :US Uninsured Rate Was Stable in 2023, Even as States’ Medicaid Purge Began (KFF)
9月10日、Census Bureauは、2023年の医療保険加入状況調査結果を公表した(Health Insurance Coverage in the United States: 2023)。2023年の無保険者割合は8.0%と、2022年から0.1%ポイント上昇した(「Topics2023年9月15日(2) 無保険者割合低下」参照)。
企業提供プランの加入者割合が低下した一方、公的保険(Medicare、Medicaid)の加入者割合が上昇した。

また、低所得層(FPL400%以下)で無保険者割合が上昇していることが窺える。
ただし、この調査は2024年初めに実施されたものであり、Medicaid資格確認作業の影響が完全に反映されているわけではない(「Topics2024年8月1日(1) Medicaid資格確認続く」参照)。上記sourceによれば、 とのことである。ちなみに、8月23日時点での資格確認作業の進捗状況は次の通り。

"Medicaid Enrollment and Unwinding Tracker" by KFF
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

9月11日 2025年ACA企業ペナルティ
Sources : The ACA Affordability Determination in 2025 (Newfront) 2025 affordability percentage for employer health coverage increases? (Mercer)
2025年のACA企業ペナルティが公表された「Topics2023年9月1日(1) 2024年ACA企業ペナルティ(2)」参照)。
 A penaltyB penalty
概 要 従業員50人以上の企業で保険プランを提供していない場合、フルタイム従業員がExchangeで保険料補助金を受け取ると、その人数分のペナルティ(ただし最初の30人分は免除)が課される。 保険プランを提供していても、従業員の保険料負担が所得の一定割合以上になっている場合または企業が保険プラン費用の60%未満しか負担していない場合、Exchangeで保険料補助金を受け取ったフルタイム従業員の人数分のペナルティが課される。
2014年(初年)フルタイム従業員一人当たり$2,000/Y所得の9.50%以上
フルタイム従業員一人当たり$3,000/Y
2021年フルタイム従業員一人当たり$2,700/Y所得の9.83%以上
フルタイム従業員一人当たり$4,060/Y
2022年フルタイム従業員一人当たり$2,750/Y所得の9.61%以上
フルタイム従業員一人当たり$4,120/Y
2023年フルタイム従業員一人当たり$2,880/Y所得の9.12%以上
フルタイム従業員一人当たり$4,320/Y
2024年フルタイム従業員一人当たり$2,970/Y所得の8.39%以上
フルタイム従業員一人当たり$4,460/Y
2025年フルタイム従業員一人当たり$2,900/Y所得の9.02%以上
フルタイム従業員一人当たり$4,350/Y
上表のB penaltyの「所得の一定割合」については、"affordability threshold"と呼ばれ、毎年変動する。これは、保険料の伸びと所得の伸びを比較考量して決定するためである。
B penaltyが大きく上昇したと紹介されているが、何のことはない、2023年並みに戻っただけのことである。また、過去の数値を並べてみても、特段高い水準になったわけでもない。
2015 Percentage: 9.56%
2016 Percentage: 9.66%
2017 Percentage: 9.69%
2018 Percentage: 9.56%
2019 Percentage: 9.86%
2020 Percentage: 9.78%
2021 Percentage: 9.83%
2022 Percentage: 9.61%
2023 Percentage: 9.12%
2024 Percentage: 8.39%
2025 Percentage: 9.02%
ただ、医療インフレにより、2025年の保険料が大きく上昇しそうであり、その影響は少なからずあるのだろう(「Topics2024年8月16日(3) 企業保険プランも急騰」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン