4月24日(1) 残業代対象新規制施行へ
Source :DOL will raise overtime salary threshold to $44K in July, $59K next year (HR Dive)
4月23日、労働省(DOL)は、新たな残業代対象所得上限額を公表した(News Release)(「Topics2024年4月12日(2) 残業代対象見直し案最終段階」参照)。

新ルールのポイントは次の3点(「Topics2023年8月31日 残業代対象見直し案公表」参照)。
  1. 残業代対象者の給与所得上限を、現在の$35,568/Yから$58,656/Yに、2段階で引き上げる。
    2004年~ オバマ大統領提案
    (2015年6月)
    DOLルール
    (2016年5月)
    新DOLルール提案
    (2018年3月)
    現 行
    (2020年1月1日施行)
    2023年8月30日DOL提案 2024年7月1日~ 2025年1月1日~
    残業代対象者の給与所得上限額 $23,660 $50,400 $47,476 $35,308 $35,568 $55,068
    (全米フルタイマー所得の35パーセンタイル)
    $43,888 $58,656
    (全米フルタイマー所得の35パーセンタイル)
    新規対象者(増加分) - 約500万人 約420万人 約100万人強 約130万人強 約360万人 約100万人 約300万人
  2. 高額報酬者(Highly Compensated Employees, HCE)の定義を、現行の$107,432/Yから、
    • 2024年7月1日~:$132,964/Y
    • 2025年1月1日~:$151,164/Y(85パーセンタイル)
    に引き上げる。

  3. 残業代対象者の給与所得上限額、高額報酬者の所得下限額とも、3年ごとに自動的に見直す。その際、前者は35パーセンタイル、後者は85パーセンタイルに固定する。ただし、自動見直しについては技術的な検討を進める。
これには早速、共和党連邦議会議員から反発が出ており、この労働省新規制を差し止める法案を提出する準備をしている。また、司法への訴えも行なわれるだろう。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

4月24日(2) FTC:競業転職禁止規定廃止を決定
Source :U.S. bans noncompete agreements for nearly all jobs (NPR)
4月23日、Federal Trade Commission(FTC)は、競業他社への転職を禁じる雇用契約を禁じる規則案を承認した(Press Release)。投票内容は、党派別の3対2であった(FTC Commissionors)。Federal Registerに登録されてから120日後に施行となる。

ただし、年収$151,164以上の経営幹部に関して既に結んでいる競業他社転職禁止条項については、存続を認めることとした(「Topics2023年1月9日 競業他社転職禁止の廃止案」参照)。

これで、NLRBルールとの平仄があったことになる(「Topics2023年6月7日 NLRB:転職禁止はNLRA違反」参照)。

この件については、当初から全米商工会議所(USCC)が猛烈に反対しており、今回の決定に対しても「FTCの越権行為である」として訴訟を起こすと宣言した(USCC Statement)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

4月23日 学生ローン返済支援給付策
Source :Student Loans and Educational Benefits (Varnum LLP)
学生ローン債務の返済が再開され、企業のベネフィット提供として返済支援策が注目されている(「Topics2023年12月17日 学生ローン返済支援策」参照)。上記sourceは、企業ベネフィットとして新しい方策、有効な方策を紹介している。
  1. 401(k)プランで、ローン返済額に対して企業がマッチング拠出する(「Topics2023年5月8日(3) 学生ローン返済支援拠出」参照)。

  2. 年額$5,250までは、所得税非課税で、企業から従業員に支援給付できる。

  3. 管理職、高給従業員への支援策として、非課税とはならないが、多額の返済支援金を給付する。離職した場合には、返済を要求できる場合もある。

  4. 学生ローン返済に限らず、授業料等の教育費を支援する。非課税枠は、2.と同様、年額$5,250(「Topics2024年3月1日 Walmart教育支援強化策」参照)。
※ 参考テーマ「教 育

4月22日 TN州VW工場で労組結成
Source :Volkswagen workers vote yes to unionizing, igniting UAW's push to organize the South (NPR)
Tennessee州(TN)にあるVolkswagen社(VW)Chattanooga工場で労組結成の可否を問う従業員投票が行なわれ、72.7%の賛成票を得た。同工場では、2014年、2019年に同様の試みがあったが、いずれも反対多数で成立しなかった。これで同社工場従業員は、UAWに加入することになる。

VW社は、選挙期間中は中立を保ち、結果が出た後も、選挙に参加したことに対する謝意を表明するのみであった。

一方、苛立ちを露にしているのが、TN州を含む南部の州知事達である。選挙中の4月16日、南部6州の州知事が集まり、UAWによる労組結成に反対する共同声明を発表した。これら6州は、いずれも"Right to Work"を採用している(「Topics2024年2月16日(1) MI州Right-to-Work失効」参照)。

UAWは、余勢をかって、南部における自動車工場での労組結成を進めようとしている。次の労組結成投票は、Alabama州にあるMercedes-Benz社Tuscaloosa工場(対象従業員約5,200人)で、5月13日に始まる。

※ 参考テーマ「労働組合