12月31日 センサス公表遅れ確実
Source :Census To Miss Year-End Deadline For Delivering Numbers For House Seats (NPR)
センサス結果発表が、年内との法規定を守れないことが明らかになった。現在、内部目標を1月9日に置いて作業しているそうだ。その後、最終結果公表に向けた作業が行われるとのこと。1月9日までに内部精査が終わらなければ、新大統領就任日である1月20日前に公表することは難しいと言われている(「Topics2020年11月28日 D.C.地裁がセンサス大統領令を守る」参照)。

ここまで来ると、新大統領のもとで公表された方が、混乱は少なくて済むのではないだろうか。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交

12月29日 現金給付$2,000法案
Source :House Endorses Trump-Backed $2,000 Payments Amid Feud Within GOP (NPR)
12月28日、連邦議会下院は、コロナ追加対策に含まれている所得$75,000以下の個人(大人、子供とも)への現金給付を、$600から$2,000に引き上げる法案を可決(ROLL CALL 252)した(「Topics2020年12月22日 9,000億ドル追加対策(COVID-19)」参照)。

トランプ大統領が署名を渋っていた理由の一つが、現金給付の額が小さいことで、彼自身が「$2,000ドルにしろ」と主張していたのだ。これを下院民主党が支持した形になる。もちろん、バイデン次期大統領もこれを支持している。

この法案審議により、苦境に立たされたのが共和党議員だ。賛成すれば、民主党、バイデンと同じ大きな政府を支持したことになり、法案の折衝を行なっていた上院共和党、財務省に楯突くことになる。一方、反対すれば、トランプ大統領のご機嫌を損ねるかもしれない。実際、投票結果を見てみると、下院共和党は何時になく大きく賛否が割れた。また、棄権はすべて共和党議員だ。
  民主党共和党独立系合計
賛成23144275
反対21302134
棄権2121
上院では共和党が多数を握っており、法案折衝も行なってきたことから、審議が進むことはないとみられている。

ただし、バイデン次期大統領が大統領就任後、再びこの法案が動き出す可能性がある。先に述べたように、バイデン次期大統領は$2,000への引き上げを支持している。また、下院は民主党が多数を握ることになる。

2020 ELECTION (NPR)
よって、俄然、上院での議席数が重要となり、来年1月5日のGA州での再選挙が注目される。

2020 ELECTION (NPR)
もう一つ、今回の投票に注目すべき点がある。今回の下院での投票は、代理投票(proxy voting)が認められた。COVID-19対策で、議場にいなくても代理投票という形で意思表示ができる。下院では、5月から認めるとの議決を行なった。ただし、可決には3分の2以上の賛成が必要とされている。

ちょっと計算をしてみると、
  1. 全議席数(定員435)の2/3=290

  2. 全在籍議員数(現在430)の2/3=287

  3. 全投票数(今回は409)の2/3=273
ということで、今回の投票結果で可決ということは、「全投票数」の2/3以上、ということになる。

(12月31日 追記)

12月30日、上院院内総務McConnell氏が、「現金給付$2,000法案は現実性がまったくない」と切り捨て、賛否を問う投票すら行わないとの意向を示した(CNN)。これで、今期連邦議会での法案成立はなくなった。McConnell院内総務としては、下院共和党のような分裂状況を回避したかったということだろう。

※ 参考テーマ「政治・外交」、「大統領選(2020年)

12月27日 田舎の大学進学率
Source :In Rural America, Fears About The Future Abound As Fewer Students Go To College (NPR)
郊外、田舎の地域に住む若者の大学進学率が低下しているそうだ。ちょっと古い資料だが、2016年の大学進学率は、全米で63.1%ある。ところが、これを州別に見ると、圧倒的な格差がついている。

National Center For Higher Education Management Systems (NCHEMS)
50%に達しない州が4つもある。

上記sourceは、そこまではいかないものの、下から数えて11番目のMaine州(56.6%)の高校の話である。
  1. 高校の名前は、Bucksport High School

  2. Bucksport(ME)は、人口4,939人。ちなみに、人口密度は1平方マイル(36.9km2)あたり95.5人(1km2あたりに直すと2.6人)。18歳未満の子供のいる世帯は656。

  3. 同高校の生徒の37%は、低所得層でランチ代補助を受けることができる。

  4. 今年、大学進学アドバイザーである教師のもとに、相談に来る学生はまったくいない。

  5. そもそも大学進学に要する費用が高すぎるうえに、COVID-19拡大で家計の所得が低下し、学習プロセスも停滞している。
こうした傾向がしばらく続くようなことになれば、アメリカ国内の教育格差はさらに広がることになる。

※ 参考テーマ「教 育

12月26日 ESGと経営者報酬
Source :4 in 5 companies planning to change ESG measures in executive pay plans over next 3 years (Willis Towers Watson)
グローバル企業では、ESGと企業経営者の報酬を連動させようとする動きが強まっている。上記sourceで紹介されている調査結果のポイントは次の通り。なお調査対象は、世界168社、雇用規模は220万人。
  1. 経営方針
    1. ESGへのコミットメントを開始した。⇒ 84%

    2. 具体的なESGの優先事項を決定した。⇒ 81%

    3. 全事業を通じてESG計画を組み込んでいる。⇒ 48%

    4. ESGは財政状況を左右する鍵になると考えている。⇒ 78%


  2. 経営者報酬
    1. 今後3年間で、経営者インセンティブ報酬計画にESGを利用することを検討している。⇒ 78%

    2. 今後3年間で、経営者の長期インセンティブ報酬計画にESGを利用することを検討している。⇒ 41%

    3. 経営者の年間インセンティブ報酬計画にESGを利用することを検討している。⇒ 37%

    4. ESGを利用する際の課題は、目標設定(52%)、成果の計測方法(48%)、成果の定義(47%)。


  3. 北米企業に限ってみると、
    1. Diversity & Inclusion(D&I)を推進するための方策を、少なくとも1つは導入した。⇒ 73%

    2. 賃金の公平性を分析した。⇒ 43%

    3. 社内のD&Iネットワークを構築または支援している。⇒ 46%

    4. 社内のD&Iネットワーク構築または支援を計画している。⇒ 32%
※ 参考テーマ「経営者報酬

12月25日 新規失業は依然高水準
Source :Weekly jobless claims rise less than expected, but hold above 800,000 (CNBC)
12月23日、労働省は新規失業保険申請数を公表した。今週は80.3万人と、前週から8.9万人の減少となった(「Topics2020年12月19日 新規失業は増加基調」参照)。水準としては依然として高い。40週間で累計7,222万人となった(新規失業保険申請件数data)。

雇用保険被保険者の中の失業者数は533.7万人と、17.0万人の減少となった。
また、COVID-19対策で導入された追加失業給付(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)の新規申請数は、
5/30: 79.9万人
6/ 6: 70.0万人
6/13: 77.4万人
6/20: 88.1万人
6/27: 99.7万人
7/ 4:104.6万人
7/11: 95.5万人
7/18: 96.0万人
7/25: 90.9万人
8/ 1: 65.6万人
8/ 8: 49.0万人
8/15: 52.5万人
8/22: 60.8万人
8/29: 75.1万人
9/ 5: 86.8万人
9/12: 67.5万人
9/19: 61.6万人
9/26: 50.8万人
10/3: 37.9万人
10/10:33.7万人
10/17:34.5万人
10/24:35.9万人
10/31:36.2万人
11/7: 29.6万人
11/14:32.0万人
11/21:31.9万人
11/28:28.8万人
12/5 :41.5万人
12/12:45.4万人
12/19:39.8万人
と、こちらも減少した。

一方、COVID-19感染状況を見ると、さすがに頭打ち感が出ている。

Johns Hopkins University Health
また、現時点で手が付けられない状況に陥っている州は、ほぼ全州という状況が続いている。

COVID Exit Strategy
※ 参考テーマ「労働市場

12月24日 Exchange加入者増加
Source :ACA enrollment rises as record number of consumers renew Obamacare plans (Modern Healthcare)
HelathCare.govを利用しているExchangeの2021年加入者数が、トランプ政権下で初めて増加し、820万人(速報値)となった。増加幅は6.6%(CMS)。また、Medicaid、CHIPsの加入者は、2月から8月までにそれぞれ580万人、3.3万人増加し、両プログラム合わせて8.3%の増加となった。

このように公的システムへの加入者が増えているのは、①COVID-19の影響で失業者が増えた、②Exchange市場に参加する保険者が増加した(「Topics2020年10月24日 2021年Exchangeの姿」参照)、といった理由が挙げられる。まさしく、PPACAのセーフティーネットとしての政策効果が明らかになった形だ。

ところで、久し振りにExchangeの形態を確認したところ、NJ、PA両州は2021年から州立Exchangeに移行することになっている(「Topics2019年6月5日 州のACA防衛策」参照、「Topics2015年6月17日 連邦最高裁判決への備え」参照)。これで、州立Exchangeは15州となった(KFF)。

State Health Insurance Marketplace Types, 2021(Kaiser Family Foundation)
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/NJ州」、「無保険者対策/PA州

12月23日 Amazon労組結成の行方
Source :Amazon Warehouse Workers In Alabama Plan Vote On 1st U.S. Union (NPR)
米国Amazonで初めて労働組合が結成されるかどうか。その審議が始まった。12月18日、NLRBは、Amazon、労働組合からの意見聴取を開始した。

これを皮切りに、今後、どのような手続きで労組結成の可否を問うのかが審議される。

労組結成の請願を提出したのは、Alabama州Bessemerにある倉庫の従業員。労組結成を支援しているのは、The Retail, Wholesale and Department Store Unionだ。言わばamazonの商売敵の労組である。

最初の審議は、投票権を持つ従業員の範囲確定だ。同倉庫では、季節労働者が多数働いている。

Amazonでは、2014年、Delaware州の倉庫でメンテナンス・修理担当者が労組結成(International Association of Machinists and Aerospace Workers)に動いたものの、最終的には反対多数で見送られた。

今後の動きが気になるところである。

※ 参考テーマ「労働組合

12月22日 9,000億ドル追加対策(COVID-19)
Source :Here Is What's In Congress' COVID-19 Relief Package (NPR)
12月21日、連邦議会両院は、9,000億ドルの追加対策(COVID-19)を可決した(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)。当websiteの関心事項のポイントは次の通り。
  1. 個人
    1. 家計への現金給付:所得$75,000以下の個人(大人、子供とも)に$600の小切手送付。$99,000まで漸減し、$99,000超は無支給。

    2. 失業保険給付の増額:来年3月半ばまで、最大$300/wを上乗せ。ギグワーカー/フリーランスへの給付も延長。

  2. 小規模企業

    総額$284BのPaycheck Protection Program Loansを提供。

  3. インターネットアクセス補助

    学生や失業者を支援するため、総額$7Bのインターネットアクセス補助金を支給する。

  4. 運輸業者に対する補助金(総額$45B)

  5. 大学・教育機関再開のための補助金(総額$82B)

  6. 高額医療費請求の透明化

    診療・施術が行なわれる3日前に、真の費用推計を患者に提示することを義務付ける。
(12月28日 追記)

12月27日、ようやくトランプ大統領が法案に署名した(Los Angeles Times)。当初、現金給付を$600なんてけち臭いことを言わないで$2,000にしろ、と発言して、連邦議会も混乱した。だからと言って、自分で議会工作することもなく、この日を迎えた。一体何なんだろう。

※ 参考テーマ「政治・外交」、「解雇事情/失業対策」、「医療保険プラン」、「教育

12月21日 最高裁:センサス大統領令を棚上げ
Source :With punt, Supreme Court largely ends Trump census plan to exclude immigrants lacking documentation (Los Angeles Times)
12月18日、連邦最高裁は、センサス大統領令に関する訴訟について「判断を下すのは時期尚早」との判決を下した(「Topics2020年10月18日 センサス大統領令:最高裁が判断へ」参照)。これにより、センサス結果をどうするかは、実質的にはバイデン政権に委ねられることとなった。

判決は6対3で、反対意見は、リベラル派3判事によるものだ。彼らは、センサス大統領令は明らかに違憲、との立場だ。一方、トランプ大統領に指名されて判事に就任したKavanaugh判事、Barrett判事は、ともに「移民資格の有無に拘わらず、憲法はアメリカに住むすべての人を数えるよう求めている」との意見だ。"Textualist"と評価されているBarrett判事の本領発揮というところだろう(「Topics2020年9月27日 Barrett判事を指名」参照)。賛成の6人の意見は、「Census Bureauが不法移民に関する正確なデータを収集できないとの前提で、何が問題になるかは不明だ」というもので、提訴したNY州などの主張がおかしいと言わんばかりだが、実質はバイデン政権に下駄を預けたことになる。しかも、この意見には賛成判事の署名がないそうだ。

ここでも、政治的・社会的混乱を回避するために、Roberts長官の『知恵』が働いたと想像できる(「Topics2020年11月12日 最高裁:PPACA審理開始」参照)。

Current Justices of the US Supreme Court (as of October 26, 2020)

Name Born Appt. by First day University
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005 Harvard
Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991 Yale
Stephen Breyer 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994 Harvard
Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006 Yale
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009 Yale
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010 Harvard
Neil McGill Gorsuch 01967-08-29 August 29, 1967 Donald Trump 02017-04-10 April 10, 2017 Harvard
Brett Kavanaugh 01965-02-12 February 12, 1965 Donald Trump October 6, 2018 Yale
Amy Coney Barrett 01972-01-28 January 28, 1972 Donald Trump 02020-10-26 October 26, 2020 Notre Dame Law School
※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「司 法」、「政治/外交