1月9日 CA州退職貯蓄プランの法的安定性
Source :California's New Retirement Program Gets Under Way (SHRM)
CA州退職貯蓄プラン(CalSavers)は今年7月に本格稼働する(「Topics2018年11月6日 CalSavers始動へ」参照)。ところが、昨年5月に、CalSaversがERISA適用外になっていることは問題だとする訴訟(連邦地方裁)を起こされている。

訴訟の主な論点は次の通り。
  1. ERISAは、民間企業従業員を保護するために設けられた連邦レベルの統一基準であり、民間従業員のための州立退職プランを認めているものではない。

  2. CalSaversの下では、企業は自動的にERISAプランの管理者になるべきであり、管理責任、法的責任を負うものである。
2015年11月、時のオバマ政権は、州立退職貯蓄プランはERISA優先適用にはならないとの解釈を示し、同プランの普及を促した(「Topics2015年11月25日 労働省:州立退職貯蓄プラン支援策」参照)。ところが、政権交代後、トランプ大統領はこの解釈を無効とする決議を行っている。

ERISA優先適用となるためには、「従業員の加入が完全に自由意思によるもの」でなければならないそうだ。まさに鍵はここにあるのだが、判断は解釈によるとしか言えないというのが専門家の意見だ。司法判断でどのような結論だ出されるのか。それによってはこのプランの法的安定性が揺らぐことになりかねない。

※ 参考テーマ「地方政府年金

1月8日 処方薬高騰の要因
Source :Prescription Drug Costs Driven By Manufacturer Price Hikes, Not Innovation (NPR)
上記sourceは、処方薬価格高騰の要因は価格戦略であり、研究開発費ではない、とする調査結果を紹介している。ポイントは次の通り。
  1. 2008年から2016年にかけて、経口薬ブランド品価格は、毎年9%以上上昇している。経口薬ジェネリック価格は年4%の上昇である。

  2. また、注入薬ブランド品価格は毎年15%以上上昇している。注入薬ジェネリック価格は年7%の上昇である。

  3. 製薬大企業の研究開発費が支出総額に占める割合は約17%に過ぎない。

  4. 一旦、特許を取ってしまえば、その後の研究開発費はそれほど大きくかかる訳ではなく、毎年の大幅価格上昇を説明する要因にはならない。
明らかに製薬企業の価格戦略によって処方薬が高騰していることになる。さらに、この製薬企業の価格戦略は、保険会社にとってもメリットが大きいとされている。価格が高くなればなるほど、リベート額も高まると考えられるからだ(「Topics2018年3月14日 リベート還元策」参照)。

こうした調査結果を踏まえて、処方薬価格抑制策に関する議論が注目を集めることになる。トランプ政権は形の上では抑制策を検討しているものの、その本気度には疑問符が付く(「Topics2018年5月19日 処方薬価格抑制策を提案」参照)。連邦下院、州議会等での抑制策議論が活発になっていくだろう(「Topics2018年6月8日 州の薬価抑制策」参照)。

※ 参考テーマ「医薬品

1月7日 HealthCare加入者減少
Source :Healthcare.gov enrollment down from 2018 as exchanges fail to attract new customers (Modern Healthcare)
1月3日、CMSが2019年のHelathCare.gov加入者数を公表した。これは、HealthCare.govを利用している39州のみの数字で、その他の州も含めたExchange全体の加入者数は、3月に公表される予定だ。

2019年の加入者数は840万人で、2018年の870万人よりも約3.8%減少した。840万人のうち、630万人が2018年からの継続加入者で、残り210万人弱が新規加入者となった。この新規加入者が2018年よりも15.8%少なく、加入者数の減少の要因となっている。

2019年は、個人ペナルティ課税がゼロになったり(「Topics2017年12月21日 ペナルティ課税ゼロ」参照)、AHPsや短期保険プランの規制緩和(「Topics2018年6月20日 AHPs規制緩和」「Topics2018年3月13日 短期保険プランの拡充」参照)が行われたため、Exchange加入者は大幅に減少するとの見立てがあったが、一方で、失業率が低下した、保険者数が増えた(「Topics2018年11月15日 Exchange保険者数」参照)、保険料が低下した(「Topics2018年10月12日 2019年Exchangeの姿」参照)などのプラス要因もあったため、大幅減少にはならなかった。

なお、州別に見てVA州の加入者数が18%減と最も大きな減少幅となった。これは、2019年1月からMedicaid拡充が実施されたためで、拡充策の対象者は40万人にも及んでいる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/その他州」、「無保険者対策/州レベル全般

1月6日 ME州:Medicaid拡充へ
Source :New Maine governor orders Medicaid expansion (Modern Healthcare)
1月3日、新たに就任したMaine州知事(D)が、Medicaidを拡充するよう、州知事命令に署名した。ME州は、2017年の州民投票(「Topics2018年11月13日 ME州:州民投票でMedicaid拡充」参照)、2018年の州最高裁判決(「Topics2018年8月24日 ME州最高裁:Medicaid拡充を指令」参照)を経て、前知事(R)が漸くMedicaid拡充策をCMSに提出したところである(「Topics2018年9月6日 ME州:Medicaid拡充策提出」参照)。

ME州議会は、上下両院とも民主党が安定的多数を占めているため、速やかに予算措置が講じられるとみられ、拡充は2020年から施行ということになる見込みだ。ただし、CMSの承認が前提となる。

一方、昨年末、Medicaidの就労義務規定が認められ、従来のMedicaid加入者に適用されることとなった(「Topics2018年12月27日 ME州・MI州就労義務規定認可」参照)。新知事は、拡充策の就労義務規定を適用するかどうか、さらには一旦は認められた従来の加入者への適用自体もどうするか、依然として思案中とのことである。

なお、上記sourceでは、ME州がMedicaid拡充州の33番目になるだろうと記しているが、Center on Budget and Policy Prioritiesの資料によれば、既にVA州が33番目の州として拡充を施行している。

Center on Budget and Policy Priorities
※ 参考テーマ「無保険者対策/ME州」、「無保険者対策/州レベル全般

1月5日 最低賃金格差拡大
Source :Many States and Cities Raise Their Minimum Wage in 2019 (SHRM)
今年に入って、19の州が最低賃金を引き上げた。
Alaska, Arizona, Arkansas, California, Colorado, Delaware, Florida, Maine, Massachusetts, Minnesota, Missouri, Montana, New Jersey, New York, Ohio, Rhode Island, South Dakota, Vermont, Washington
さらに、今年7月にはOregon, Washington, D.C.が引き上げる予定だ。また、Michigan州では、2019年の最低賃金を20¢引き上げる法案を可決し、4月には施行される見込みだ。

まさに最低賃金引き上げラッシュとなっている一方で、Georgia, Wyomingでは$5.15/hと連邦レベル($7.25/h)をも下回っている州があり、その格差は広がる一方である(州別最低賃金)。

なお、参考までだが、CA州Emeryvilleでは、大企業には$15.60/hを適用しており、物価スライドにより7月1日にはさらに引き上げる見込みだ。

州レベルでも自治体レベルでも、最低賃金の格差が広がっている。

※ 参考テーマ「最低賃金