11月28日 CO州:単一保険制度を検討 
Source :Swing state Colorado mulls universal health care proposal (AP)
CO州が単一保険制度("ColoradoCare")を検討している、との報道である。

こうした動きは、3つの点で驚きをもって注視されている。
  1. VT州が単一保険制度創設を断念したばかりである(「Topics2014年12月20日 VT州:単一保険制度創設を断念」参照)。

  2. CO州は単一保険制度を運営しているカナダと境を接しておらず、必ずしも単一保険制度に馴染みがある訳ではない。

  3. CO州は政治的にはswing stateとして認知されており、政治的に安定している訳ではない。実際、現在の州知事は民主党、州議会は下院が民主党多数、上院が共和党多数、となっており、しかも両議会とも拮抗している。
支持団体(ColoradoCareYES)は、2016年の州民投票にかけることを目指している。しかし、早くも懸念が表面化してきており、その一つが、医者が減少し始めているということである。退職しても構わないと考えていた医者は早々に引退し、他州に移転していく者も出てきているそうだ。

今後も紆余曲折があるものと考えられる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CO州

11月27日 転職より昇進 
Source :The Grass Is Not Greener: When Staying Put in a Job Pays Off (Knowledge@Wharton)
上記sourceのタイトルは、
  1. 転職により一時的な収入はアップするかもしれない。

  2. しかし、長期的に見て、内部昇進を繰り返していった方が収入は高く、責任も重くなる。

  3. 内部昇進は梯子を上がっていくことになるが、転職は同じレベルに平行移動するだけである。

  4. 幹部、上司は人のなりと仕事ぶりを見て、昇進機会を提供する。転職先ではそれを判断するのが遅れることになる。

  5. 企業側からしても、内部昇進で人材を確保した方が総コストは抑制できる(「Topics2015年9月16日 内部登用が望ましい?」参照)。
じゃあ、何でアメリカ人は転職、転職と言うのだろうか。単純に我慢強くない国民性、ということなのだろうか。

※ 参考テーマ「労働市場」、「人事政策/労働法制

11月26日 医療保険の重要性 
Source :Views on the Value of Voluntary Workplace Benefits (EBRI)
就職するかどうかを決める際、企業が独自に提供するベネフィットが重要と考えている人の割合は、77%に達する。
ベネフィットのうち、医療保険プランが最も重視されている。加えて、年金プランのウェイトが低下傾向にあり、代わって有給休暇制度に対する関心が高まっている。
当websiteにおいて企業の年金プランに関するコメントが減ってきているのも当然ですね。

※ 参考テーマ「ベネフィット

11月25日 労働省:州立退職貯蓄プラン支援策 
Source :State retirement initiatives get guidance from US Labor Department (DOL)
11月16日、DOL(労働省)は、州立退職貯蓄プランを促進するための支援策を提案した。7月のObama大統領指示に応えたものである(「Topics2015年7月17日 州立退職貯蓄プランを連邦政府が支援」参照)。主な柱は次の通り。
  1. 規則案

    • 制度設計から資金運用まで、州法・州政府が責任を持つ。

    • 従業員の参加はあくまで任意であり、自動加入制度を導入するにしても、非加入の選択権を賦与する。

    • 事業主の責任は、天引き及び送金、記録までであり、それ以外には負わない。事業主拠出は行わない。

  2. ERISA解釈の明確化

    • 州法により定めた州立退職貯蓄プラン制度は、ERISAの優先適用とはならない。
しかしながら、そもそも州立退職貯蓄プランに対する懸念は根深い(Bloomberg, ICI)。 さて、これで各州における制度設計が進むのかどうか(Pension Right Center)。

※ 参考テーマ「地方政府年金」、「DB/DCプラン」、「企業年金関連法制

11月24日 CMS:アクセス制限に規制案 
Source :CMS may impose minimum provider-network standards for ACA plans (Modern Healthcare)
Exchangeプランでアクセス制限が強まる中、11月20日、CMS2017年プランについてアクセス制限を規制する提案を行った。

その他を含めて主な提案は次の通り。
  1. 現在、地域の主要医療機関の30%はネットワークに含めるようにとの規制があるが、これをさらに強化して、アクセス時間や距離などを参考に数値基準を設けることを検討する(「Topics2014年7月25日 ネットワーク規制強化」参照)。連邦政府は、基準のプラットフォームをいくつか提案するが、州政府が採用しない場合には、連邦政府が適用を行う。

  2. 一定の条件の下(例えば、ネットワーク内の医療機関でネットワーク外の専門医が診療した場合など)、契約外診療の自己負担を保険プラン自己負担額に含め、上限額の対象とする。

  3. 比較可能性を高めるため、プラン階層(bronze〜platinum)毎に、標準化を進める。例えば、免責額を統一する。

  4. 2017年1月1日より、施行が遅れていたSHOPの全面運用を開始する(「Topics2014年10月29日 SHOP:5州で先行受付」参照)。
1.は、州政府の権限に踏み込む可能性が高く、州政府から強い反発が予想される。

2.は、まさに先に紹介した、想定外の医療費負担に対応する措置である。ただし、こうすることで、自己負担上限を超える場合が多発することが予想される。そうなると、結局は保険料を引き上げなくてはならなくなる。おそらく、3.も同様の影響をもたらすだろう。

何やら、対処療法的な措置を増やしていくことで、結局は保険料を抑え込めなくなるような気がする。

加えて、規制が多くなることを嫌って、Exchangeから退出する保険会社も出てくるかもしれない。医療保険最大手であるUnitedHealth Groupは、11月19日、 ことを公表した(Press Release)。
"UnitedHealthcare has pulled back on its marketing efforts for individual exchange products in 2016. The Company is evaluating the viability of the insurance exchange product segment and will determine during the first half of 2016 to what extent it can continue to serve the public exchange markets in 2017."
角を矯めて牛を殺す、ということにならなければよいが。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

11月21日 アクセス制限を強化 
Source :2016 Brings Big Decline in Out-of-Network Coverage Among Affordable Care Act Health Plans (Healthpocket)
2015年に実施された"Consumer Reports"によると、想定外の医療費負担が増えているという。 ちなみに、「契約外」診療費は、通常のMedicare診療報酬の3倍以上と言われている。

なお、ネットワーク外でも、
  1. 救急診療
  2. 事前に保険プランから承認を得ている
場合には、契約外診療費を適用されることはない。

保険プランが契約するネットワーク内の医療機関でも、ネットワーク外の麻酔士や専門医が治療にあたれば、「契約外」の診療費とそれに基づく自己負担が求められることになる。こうしたケースが想定外の医療費追加負担となっている。

さらに、上記sourceによれば、2016年の保険プランネットワークはさらに厳格に適用される予定である。

連邦立Exchangeで提供されている保険プランのうち、『ネットワーク外の診療には契約外の診療費を適用する』としているプランの割合は、2015年の47.42%から、2016年は58.93%と大幅に増える。また、州別に見ると、5つの州ではほぼすべてのプランが『ネットワーク外の診療には契約外診療費を適用する』こととしている。

想定外の医療費負担が増えるという側面もあるが、一方で、保険プラン側が加入者の医療機関へのアクセスをより厳しくしようとしている側面がより重要だろう。医療費を抑制し、保険料、免責額を抑制していくためには、アクセス制限の強化は不可欠である。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般