Source : | Debt of the Elderly and Near Elderly, 1992-2016 (EBRI) |
上記sourceは、FRB調査結果から高齢者世帯の負債の状況を推計したものである。文中でも述べているように、高齢者世帯の資産形成の状況については注目されているものの、勘定の反対側、負債の状況が分からなければ、高齢者世帯の退職後所得の過不足は語れない。
なお、ここで言う高齢者世帯とは、次のように定義している。
・近高齢者世帯:世帯の最年長者が55〜64歳
・高齢者世帯:世帯の最年長者が65歳以上
主なポイントは次の通り。こうしたアプローチは私にとっては新鮮であった。
- 高齢者全体でみて、負債を抱える世帯の割合は増え続けている。特に、2007年以降、75歳以上の世帯で負債を抱える割合が急速に高まっている。
- 高齢者全体の負債額は、2010年から2016年にかけて低下しているが、やはり75歳以上の負債額は上昇している。 さらに75歳以上のMedianを見ると大きく下がっている。このことから、この6年間に大きく負債額が増えた世帯が一部あったということがわかる。
- 返済額の所得に占める割合は、2010年から2016年にかけて概ね低下している。
- 負債の資産に対する割合も低下傾向にある。
- ただし、住宅ローンの残高は高水準となっている。
※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「人口/結婚/家庭/生活」
Source : | Uber Wants Labor Dept.'s Health Rule to Consider Gig Workers (Bloomberg) |
3月6日、AHP(Association Health Plans)制度設計に関するパブリックコメントが締め切られた(「Topics2018年1月10日 AHP制度設計案」参照)。上記sourceは、Uberが労働省(DOL)に対して制度要望を提出したと伝えている。
Uberを自分で利用したことはないが、アメリカ出張の際、乗せてもらったことはある。確かに便利なサービスだ。
Uberは、契約ドライバー達がAHPに加入できるように加入者の要件の明確化を求めるとともに、AHPの監督業務をUber自らができるようにしてもらいたいと要望している。労働省の制度提案では、従業員による理事会を設置してAHPを監督するよう求めることとなっているが、Uber契約ドライバー達ではそうした業務はできないため、Uber自ら買って出てもいいという訳だ。
兼業・副業を営む個人の保険加入資格というのは、従来の制度設計の中ではほとんど考慮されてきていない。新たな働き方、サービス提供の仕方に合わせて制度設計ができるかどうか、注目しておきたい。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | Oregon Wants Everyone to Start Saving (Bloomberg) |
OR州は、州立退職貯蓄プランを本格開始した。2015年に成立した州法に基づくもので、昨年7月1日にパイロットプラン始動、10月15日に全面施行となった(「Topics2015年6月13日(2) OR州下院:退職貯蓄プラン法案可決」参照)。
具体的には"OregonSaves"という名称で、主な制度の骨格は次の通り。こうした制度は、小規模企業、低所得層の従業員の退職後所得を確保するために、一定の需要はある。実際、上記sourceにある通り、低所得層で退職貯蓄プランを持っている家庭の割合は極端に小さい。
- 加入対象者は、企業提供退職貯蓄プランのない従業員。
- 今後2年間で、64,000企業、約60万人が加入対象となる。
- 貯蓄プランは、州立RothIRA。
- 加入対象者は、自動的に加入となるが、従業員は任意にいつでも脱退することができる。これまでの残留率は8割程度。
- 従業員の拠出率は、当初は給与の5%。その後、毎年1%ポイントずつ引き上げ、10%とする。ただし、従業員は任意で拠出額を変更できる(上限は$5,500/Y)。
- 投資の選択肢は次の3つ。
- MMF
- (退職時を目標とする)ターゲットインデックスファンド
- 成長インデックスファンド
最初の拠出額$1,000はMMFに回され、その後はターゲットファンドに回される。
- 退職前の引き出しにペナルティはない。
- 企業拠出はない。
ところが、州立退職貯蓄プランへの自動加入に対して、全米商工会議所が反対している。その理由は次の2点。プラン提供コストが低くなるので、自前のプランを止める動きは当然起きるだろう。それよりも、多くの従業員のファンドが集まることで制度が安定的に運営されることのメリットは大きい。
- 投資家保護が充分ではない。
- 既に自前のプランを提供していた小規模企業が止めてしまう。
OR州財務長官は、今後、制度の拡充を図りたいとしており、その第一歩として、今年中に自営業者も加入できるようにしたいと考えている。さらに、企業としては退職プランを提供していながら、その対象となっていない従業員も加入できるようにしたいとしている。さらに、貯蓄勘定の選択肢として、通常のIRAも来年には入れいたいと希望している。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | UnitedHealthcare Says It Will Pass On Rebates From Drug Companies to Consumers (New York Times) |
処方薬の高騰が言われて久しい。保険料の上昇も、処方薬の高騰が主因とされている(「Topics2017年9月28日 保険料上昇率高まる」参照)。こうした状況下では、製薬会社が批判の的になりがちなのだが、製薬業界は、リベートをため込んでいる保険会社と処方薬管理会社を非難している。昨年から、"Share the Savings"というキャンペーンを展開し、製薬会社から卸、保険会社に提供された割引額を保険加入者に還元しよう、と訴えている。
こうした見方は連邦政府からも支持されている。このため、大手保険会社であるUnitedHealthcareは、3月6日、製薬会社から受け取った割引額を保険加入者に還元すると発表した。処方薬によって、その割引額は区々だし、保険プランの使用によっても還元額は異なってくる。
実は、2013年から、大手企業が採用するタイプの"Sef-insured"型保険プランでは、処方薬購入に当たって得た割引額を加入者(=従業員)に還元できるようになっている(「Topics2010年1月21日(2) 2つの企業提供保険プラン」参照)。ところが、この制度を採用している企業は少なく、あまり普及していないという。理由は、簡単。従業員が割引を目当てに高い処方薬を購入しようとするのではないかと懸念しているからだ。
色々と損得勘定はあるのだろうが、やはり最終消費者である保険加入者に還元されるべきなのではないだろうか。高い処方薬と言っても、割引が行われるということは実質安くなっているのだから、その価値をやはり低下しているのだ。
薬価の割引は、取引の中で行われるために、透明性に欠ける。これはわが国でも同様だ。それをいいことに保険会社が高い保険料を維持するためにリベートをため込んでいるということであれば、保険会社は非難されても仕方ないだろう。
※ 参考テーマ「医薬品」、「医療保険プラン」
Source : | Trump Administration Seeks to Expand Short-Term Health Insurance (HR Daily Advisor) |
2月20日、関係3省は短期間保険プランの最大保険期間を3ヵ月未満から12ヵ月未満に伸ばすとの改正案を公表した。これは、昨年10月の大統領令に基づく提案である(「Topics2017年10月13日 オバマケア破壊大統領令」参照)。 短期間保険プランの利用者は、通常、失業者、一部の学生、医療機関ネットワークに不満がある者などが想定されている。一般的に短期プランの方が1ヵ月当たりの保険料は安いと言われているが、12ヵ月に近づけば近づくほど、そのメリットは小さくなっていく。
ちなみに、短期保険プランの拡充に伴う保険料上昇は僅かなものと見込まれている。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」