10月20日 一つ屋根の下で 
Source :One Roof, Many Generations: Redefining The Single-Family Home (NPR)
アメリカで、新築の住居が広くなっているという。 その背景には、次のようなことがあると上記sourceは伝えている。
  1. 大量のベイビーブーマー達が引退し、適切な老後の住まいが必要となっている。

  2. 大学進学年齢になった子供たちが親元を離れられない。

  3. 失業した若者が実家に戻ってくる。
子供達の経済力が低下しており、3世代同居が必要となっているため、広い床面積が必要となっているのである。住宅建設会社も3世代向け住宅に力を入れており、ある建設会社のArizona州での販売件数のうち、25%は3世代向け住宅だったという。

大卒といえども雇用環境は厳しく、一人で独立して生活していくことが難しくなっている(「Topics2012年5月14日 大卒の厳しい雇用環境」参照)。上記sourceで紹介されている家族は『皆で一緒に暮らせることが幸せ』と述べている。それはそれでとてもよいことだと思うが、次世代の生活力が低下していることに目をつぶる訳にはいくまい。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

10月19日 雇用創出と州の役割 
Source :State corporate tax rates are all over the map (Washington Examiner)
最近のGallup調査によると、アメリカ人は、『経済を良くするには雇用の創出が鍵になる』と考えている。では、雇用の創出は、企業の役割なのか、連邦政府の役割なのか。少し問いの内容が異なるが、このGallup調査では、31%が企業の役割、22%が連邦政府の役割とみている。

そのほか、企業の役割と考えられている項目は、『製造業のアメリカ回帰』、『報酬引き上げ』などが並ぶ。一方、連邦政府の役割では、『連邦政府・議会の協調』、『財政健全化』などが並び、『報酬引き上げ』、『中小企業支援』などはほとんど期待されていない。

アメリカ国内で『雇用の創出』を考えた場合、おそらくアメリカ国民は、企業と並んで州政府の役割が大きいとみているのだと思う。それは、州知事が海外からの企業誘致に熱心であることからも窺われる(「Topics2011年11月27日 州知事は経済使節」参照)。

アメリカ国内での誘致合戦でも同様で、他州に本拠地を持つ企業を自州に誘致することを、英語では"poach"と呼んでいるそうだ。上記sourceによると、最近、テキサス州知事がテレビスポットを使ってメリーランド州の企業を誘致しようとしているとのことである。

その際、誘致の有力な決め手となるのが、実質税負担率である。連邦法人税率は35%だが、様々な州政府の税制優遇措置により、その効果は州毎に大きく異なる。

そうした実態を理解するために、この地図を利用すると、どのようなタイプの事業所がどこの州でどの位税を負担することになるのか、が確認できる(Analysis by the Tax Foundation and KPMG)。

こんなに幅が大きいと、本社の移転も真剣に考えざるを得ないだろうし、税務戦略も不可欠となるだろう。しかし、こうした複雑な税制は、間接コストの上昇を招くことになり、一国として考えた場合には、相当なロスも生じよう。

※ 参考テーマ「労働市場

10月18日 Open-Plan vs Cubicle 
Source :Why We Can't Get Anything Done in an Open-Plan Office (Businessweek)
アメリカのオフィスの模様が変わりつつあるそうだ。

少し前までは、Cubicleという形式の、半個室のような空間が確保された仕事場が当たり前だった。そう、映画"The Net"の中で、サンドラ・ブロックがターゲットに据えた女性のデスクがまるでどこにあるのかわからない、というあのシーンである。

ところが、最近はOpen planという、境界をあまり意識させない仕事場が主流になりつつあるという。要するに、我々日本の会社でお馴染みの平机が延々と並んでいるようなオフィスである。もっとも、レイアウトやデスクの形、色などは、ずいぶんと変化しているが。

上記sourceは、そうした流れを、「喧しくて生産性が落ちる。飛行機に搭乗するときに持ち込むヘッドフォンを職場に持って来なければならない」と嘆いているのである。実際、上記sourceで紹介している調査研究でも、音に伴う弊害が大きいと指摘するアメリカ人は多いそうである。

では、なぜOpen planが採用されるようになっているのか。最近の「実践ビジネス英語(NHKラジオ)」でも同様のテーマを扱っていたので紹介すると、次のような点が指摘されている。
  1. 業績をチームで評価するようになった。従って、職場内のコミュニケーションやチームワークアップを目的に、cubicleスタイルをやめる。

  2. ラップトップ型・モバイル型のPCを使用するため、固定した仕事場である必要がない。

  3. Cubicle型よりも安いコストで整備できる。
実は、3.のコスト要因はなかなか抗い難い。上記sourceの筆者も、こればかりは抗し難いと、諦めムードである。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

10月17日 パートタイマーシフトは小規模? 
Source :Health Reform Not Causing Significant Shift to Part-Time Work (Center on Budget and Policy Priorities)
上記sourceは、PPACAがパートタイマー雇用に与える影響について、次の2点を主張している。
  1. PPACAにより、企業は、週30時間以上勤務するフルタイマーに対し、医療保険プラン提供を義務付けられた。これにより、週30時間を割り込む勤務形態、パートタイマーが増加するのではないかとの懸念があったが、その増加は小規模にとどまっている。

    2010年3月にPPACAが成立して以降、雇用は540万人増加したが、その90%以上はフルタイマーである。

    不本意ながらフルタイマーを諦めてパートタイマーになっている被用者の割合は、2010年3月以降、低下傾向にある。

    2013年前半で週30時間以上の勤務についている被用者は80.7%で、前年同期の80.2%を上回っている。

    ミネアポリス連銀の調査では、パートタイマーの割合を増やした企業は4%しかなかった。

  2. 提供義務の対象を、週35時間から週40時間に引き上げた場合、週40時間未満の勤務形態にしようとする動きが顕著になる。そもそも、週30〜34時間勤務する被用者は8%たらずしかいない。一方、週40時間勤務する被用者は43%も存在する(右図参照)。もし、40時間を境目にすると、わずかな変更で提供義務を免れる部分が極めて大きくなる。

    一部の連邦議会共和党議員は、PPACAの規定を変更して提供義務を40時間以上にすることを提案しているが、そのもたらす影響は大きい(「Topics2013年7月11日(2) フルタイマー定義法案」参照)。
2.の方はそうかもしれないな、と思うが、1.は本当にそうだろうか。いろいろと根拠を示しているが、拠って立つBLS統計は、フルタイマーの定義を週35時間以上としている(「Topics2013年7月11日(2) フルタイマー定義法案」参照)。微妙なところで異なる定義を用いた統計数字を持ち出してきても、説得力は弱い。

本件では、影響がある、との分析も既に公表されている(「Topics2013年8月20日 29ersの増加」参照)。また、企業ペナルティも1年先延ばしになっている中で、まだまだ結論を出すのは早い(「Topics2013年7月3日 企業ペナルティ:一年先延ばし」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場」、「無保険者対策/連邦レベル

10月16日 SeaTac市:最低賃金大幅引上げ案 
Source :In Washington State, Home of Highest Minimum Wage, a City Aims Higher (New York Times)
11月5日、Washington州のCity of SeaTacは、市民投票を実施する。市の最低賃金を$15/hに引き上げる案(Proposition 1)について賛否を問うものである。

CA州が2016年1月から$10/hにすることを決めたものの、それが施行されるまでの間、WA州の最低賃金は$9.19/hと全米一高い(「Topics2013年9月15日 CA州:最低賃金引き上げへ」参照)。それなのに、さらに大幅に引き上げて、連邦政府規定の倍以上に持っていこうというのである。

もしも賛成多数となれば、影響を受ける被用者は約6,500人と言われている。同市内にはSea-Tac空港があり、空港関係者が大きく影響を受けるとみられている。

また、空港内のレストラン経営者も危機感を募らせており、引き上げ案が実現すると、空港利用者は皆外で食事を採るようになるだろうとみている。

※ 参考テーマ「最低賃金

10月15日 SJ市長:CA州法改正提案 
Source :San Jose mayor days from filing state pension measure (San Jose Mercury News)
San Jose市(CA州)の市長は、市職員の年金制度を改革しようと挑戦しているが、今度は、州全体で自治体が年金制度改革に取り組めるよう、新たな提案をする予定だ(「Topics2013年9月27日 San Jose市の挑戦」参照)。

柱は、『自治体職員の残存勤務期間に対応する年金額を縮小できる権限を自治体に付与する』というものである。これは、CA州が積み重ねてきた判例を崩すものであり、司法の世界で言われる『vested rights doctrine』に対する挑戦である。

市長は、2014年の州民投票にかけたい、と意欲を見せているが、SJ市で支持を得られても、CA州民全体から支持を得るのは容易ではない。

※ 参考テーマ「地方政府年金

10月14日 デッドラインは2月15日 
Source :New wrinkle: Deadline to avoid health law fines will fall around Valentine’s Day, not March 31 (Washington Post)
これまで、ペナルティを課されないようにするためには、3月末までに保険加入しなければならない、と思っていた。当websiteでも、ごく当たり前のように記していた(「Topics2013年10月3日 Exchange:初日のトラブル」参照)。

ところが、上記sourceによると、10月9日、連邦政府は、ペナルティを課されないためには「2月15日」までに保険加入手続きを終える必要があることを、正式に確認した。これまで、HHSは3月末まで、IRSは2月半ばまで、と言っていたそうで、こういうところが日本と大きく異なるところである。

加入手続き開始日はトラブル続き、SHOPは1ヶ月遅れと、始まりがダッシュできず、お尻は早目に切られてしまう。アメリカ国民は落ち着かないことだろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

10月13日 診療報酬のばらつき 
Source :U.S. physician payments vary widely, mysteriously: study (Reuters Health)
ユニークな研究調査の結果が公表された。2007年の診療報酬請求400万件以上を精査したところ、診療報酬に大きなばらつきが見られるという。主な結果のポイントは次の通り。
  1. 最も多い事例は、「既に診たことのある患者について、問題個所に焦点を当てた15分間程度の診療」。その診療報酬の統計値は次の通り。
    下位5%平 均上位5%
    $47以下$63$86以上
  2. 複雑なのは、「診療時間が比較的長く、新規の患者も含めた場合の診療」。2.5倍もの差が存在する。
    下位5%上位5%
    $103以下$257以上
  3. こうした診療報酬のばらつきは、患者の年齢、性別、医師の専門性、保険プラン類型による説明は難しい。わずかに、地理的要件が説明できる部分はあるが、それでも1/3程度である。

  4. 診療報酬にばらつきの見られない地域がある。それは、大規模な保険会社が独占的な地位を占めている地域である。
最後に、本調査を実施した研究者が次のように述べていることが印象的であった。
『アメリカの医療制度は、悪い意味で特徴的である。診療報酬は、保険会社と医療機関の間の価格交渉力により決めている。このようなシステムは他国にはない。しかし、今回の調査により、医療の世界では、市場メカニズムが効率性をもたらさないことが判明した。』
医療の世界を完全に市場メカニズムに委ねようとするには、アメリカの国土や州が広すぎるのだと思う。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

10月12日 ME州:処方薬輸入解禁 
Sources : Maine OKs international prescription drug imports (Sun Journal)
Maine First State to Legalize Prescription Drug Imports (Newsmax)
久し振りの処方薬輸入ネタである。

Maine州で、10月9日、処方薬の輸入を認める州法が施行された。ポイントは次の3点。
  1. 一定の要件を満たした国(Canadaなど)の処方薬販売会社については、州法が定める販売免許取得を免じる。

  2. 州政府、州自治体、企業は、CanaRxのような処方薬販売会社との間で、合法的に(処方薬購入・輸入の)契約を結ぶことができる。

  3. 同様に、州民は、CanaRxのような処方薬販売会社から、処方薬を直接購入することができる。
Maine州政府は、従来、CanaRxと契約して、州政府職員向けに処方薬を購入していたが、昨年8月、当時の州司法長官が「違法性がある」と指摘したため、一旦中断していた。上記1.は、その違法性を解消するための措置である。

この法律が施行になったことにより、Maine州は、全米で初めて、処方薬の直接輸入が可能となった。Maine州民は、安価な処方薬を購入する選択肢を手に入れたことになるが、収まらないのが製薬業界である。安全性が確認できない、FDAルールに違反している、などの理由から、司法の場での論争を開始しているそうだ。

ところで、MaineのExchangeは、連邦立Exchangeである(Exchange & Medicaid (2013.9.3.現在)参照)。そこで販売される保険プランでは、輸入処方薬を利用できるのだろうか。ちょっと興味のあるところだ。

※ 参考テーマ「処方薬輸入」、「無保険者対策/ME州

10月11日 州立Exchangeは健闘 
Source :Uninsured Find More Success via Health Exchanges Run by States (New York Times)
連邦立Exchangeでトラブルが相次いでいる一方、州立Exchangeは健闘しているようだ(「Topics2013年10月3日 Exchange:初日のトラブル」「Topics2013年10月7日 Medicaidに繋がらない」参照)。 もちろん、州立Exchangeでも、当初はシステムに不具合が生じていたそうだが、その後の改修が素早く、すぐに立て直しができたようだ。それでも、いくつかの州では、連邦政府との情報のやり取りがうまくいかず、トラブルが続いている。加入申請者の本人証明は、連邦政府情報との照合が求められているが、そこがうまくいかないようである。

従って、最初にwebsiteで申請者のアカウント作成を求めている州立Exchangeでは、本人確認ができずにアカウントが作成できず、その先に進めないという状況が生まれてしまった。これに対し、申請者アカウントを作成しなくても、保険プランの内容照会やプラン同士の比較が可能となっている州立Exchangeでは、まずは希望する保険プランの選択肢を絞るという作業ができるため、仮にアカウントの作成ができない場合でも、州民のフラストレーションはたまりにくいと思われる。

話は変わるが、こうした全米規模での取材を基にした記事は、もはやNew York Times紙の独壇場になりつつある。その意味するところは、Washington Post紙のローカル紙化である。少し残念ではある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般