11月30日 年金保険料引き下げ法案 
Source :Senate Democrats Propose Extended Payroll Tax Cut (New York Times)
予告通り、28日、上院民主党が年金保険料引き下げ法案(S.1917)を提出した(「Topics2011年11月29日 年金保険料引き下げに執着」参照)。法案の概要は次の通り。
  1. 2012年の従業員分の年金保険料率(payroll tax rate)を3.1%(←本来6.2%)に引き下げる。

  2. 年金保険料課税対象給与のうち、最初の$5M分については、企業負担分の年金保険料を3.1%(←本来6.2%)に引き下げる。

  3. 単身申告者並びに夫婦共同申告者について、$1M以上の総所得に対して、3.25%の付加税を課す。
これに対し、共和党は、『年金保険料率引き下げは結構だが、そのための財源は歳出削減で賄うべきだ』と抵抗している(Financial Times)。

この他にも、失業保険給付期間の特別延長が年末には終了してしまう。何も手当しなければ、最長99週が26週に戻ってしまう。共和党は、12週間くらいの短縮で済ませられないか、と検討しているそうだ。年金保険料率の引き下げよりは支持が多いらしい。

さらには、"Doc fix"の時限もやってくる。年末にかけて、両党の政策論議は対立を鮮明にしていくことになりそうだ。そうした中、どこかで妥協点を見出すことはできるのだろうか。

※ 参考テーマ「公的年金改革」、「労働市場」、「Medicare」、「解雇事情/失業対策

11月29日 年金保険料引き下げに執着 
Source :Democrats defiant on payroll tax cuts (Financial Times)
連邦議会上院民主党は、両院特別委員会の決裂を受け、水面下で、公的年金保険料(payroll tax)(従業員負担分)の引き下げ継続を模索している(「Topics2011年11月23日 両院特別委員会決裂」参照)。

上記sourceによれば、現行の引き下げ方法(6.2%⇒4.2%)の継続であれば$110B、Obama大統領の提案(6.2%⇒3.1%)であれば$250Bの負担軽減となる(「Topics2011年10月13日 雇用拡大戦略への支持は?」参照)。これらの穴埋めを、高額所得者を対象とした3.25%の特別課税(surtax)で行おうという腹づもりである。

当然、共和党は反対するのだが、それを承知で"political points"を稼いでおこうという思惑だそうだ。これでは、政治的な実現可能性はもともと放棄しているのであり、国民に対しても不誠実な対応とならないか。

何よりも、民主党内で出ている『年金財政を悪化させる』という批判にはどう応えるのだろうか。

※ 参考テーマ「公的年金改革」、「労働市場

11月27日 州知事は経済使節 
Source :India latest stop as Md. and Va. governors compete abroad for economic boost (Washington Post)
Robert F. McDonnell (R) VA州知事Martin O’Malley (D) MD州知事とも、海外での活動を盛んにしている。

政治的には、海外にも名を売ることで、将来への布石を打っている(=大統領選出馬)とも取れるそうだが、海外でやっていることは、と、まさに、経済使節として活動しているのだ。

例えば、今年のMcDonnell VA州知事の海外出張は次の通り。 また、O’Malley MD州知事の今年の活動は次の通り。 両知事とも、中国、韓国、インドを訪問先に含めている。この辺りが、世界の相場観というものだろう。

成果がすぐに出る部分とそうでないところとはあるにしても、充分に雇用拡大のための将来への布石となる。こういう活動をすることで、州民の雇用を守るんだ、創るんだ、という姿勢が明確になっている。

※ 参考テーマ「労働市場

11月25日 共和党候補者の移民政策(2) 
Source :Gingrich’s Words on Immigration Become a Target (New York Times)
共和党大統領候補予備選が近づく中、移民政策に関する議論が活発になっている(「Topics2011年9月7日 共和党候補者の移民政策」参照)。ことは、22日、Iowa州で起こった。現在、候補者選のトップを走っていると言われている、Newt Gingrich元下院議長が移民政策の持論を展開した。そのポイントは次のようなもの。
  1. 国境警備の強化が最優先。

  2. 移民手続きの不正を防止。

  3. 国内に居住し続けられるかどうかの判断を、市民委員会に委ねる。認められた場合には、投票権を賦与する。

  4. 「25年住み続け、納税し、法令を遵守し、教会に所属し、英語を話し、医療保険を購入していれば、家族から引き離して追い出すようなことはしない。」
これに対し、Mitt Romney氏Michele Bachmann氏が、『Amnestyへの道を開こうとしている』と噛み付いた。特に、Romney氏は、「25年ならいいのか、10年ならいいのか。特別扱いすべきではない」と激しく論じた。

この討論会で、Gingrich氏を取り巻く環境は一変したとの評価が示されている(Washington Post)。実は、Gingrich氏は、同じフレーズを9月の討論会でも発言している。その時はほとんど反論されなかった。それが、今回は激しく反論されてしまった。彼が大統領候補選のトップを走っているとされているからだ。

それ位、共和党支持者の間で、不法移民対策は決定的な要素となっているのである。しかも、Iowa州は、ヒスパニックが3.8%しかいない。ちなみに、全米では16.3%である。移民政策に限っていえば、Iowa州はGingrich氏にとって完全な"Away"だったのである。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「大統領選(2012年)

11月24日 CA州でも不法移民に不満 
Source :Survey finds ethnic divide among voters on DREAM Act (Los Angeles Times)
CA州のDREAM Actについて、一般州民の間でも意見が分かれているようだ(「Topics2011年10月10日 夢か悪夢か:CA州」参照)。

世論調査の主な結果は次の通り。
全 体ヒスパニック白 人民主党支持者共和党支持者
DREAM Actを支持する40%79%30%53%23%
DREAM Actに反対する55%
白人、共和党支持者の間では評判が悪い、ということになる。CA州は、従来、比較的不法移民に対して寛容な風土であったが、このDREAM Actに対してはかなり厳しい目が向けられている。

このように、風向きが変わってきた背景には、雇用環境、特に失業率が高止まりしていることがあるだろう。アメリカ全体の失業率は9.0%(10月)で、もちろん高水準なのだが、CA州は11.9%(9月)と大きく上回っている。また、不法移民に対して最も厳しいAL州も9.8%(9月)と全体を上回っている。

アメリカ経済全体がしばらく減速する見通しであるとすると、不法移民対策に対する世論は厳しい基調が続くことになろう。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

11月23日 両院特別委員会決裂 
Source :Panel Fails to Reach Deal on Plan for Deficit Reduction (New York Times)
21日、連邦議会特別委員会は、財政赤字削減策について合意に至らなかったことを公表した。これにより、夏の決定通りに運ぶとすれば、2013年度から自動的な歳出削減が行われることになる(「Topics2011年8月2日 Budget Control Act of 2011」参照)。

もちろん、連邦議会の両党議員達が、突如良心の呵責を感じて、急転直下、財政赤字削減策に合意する可能性もない訳ではない。しかし、現実には、共和党は防衛費の自動的な削減を食い止めようと法案を提出しようとしているし、Obama大統領は拒否権を発動する、と牽制している。両党派間で折り合いをつけようという雰囲気は今のところ見受けられない。

それでは、このまま時間が過ぎていき、自動的な歳出削減が実施されるということになった場合、どういったことが生じるのか。主に次の4点が考えられる(New York Times)。
  1. 連邦政府の支出減とともに、州政府の財政事情はさらに悪化する。州政府の財政健全化策も急ぐ必要が高まる。

  2. Bush減税の延長期限が来て、富裕層を中心とした増税が行われる。

  3. 長期失業者向けの失業保険特別給付の延長期限が来て、特別給付がなくなる。

  4. 公的年金保険料の本人負担分2%免除も期限切れとなり、通常の負担率となる。
2〜4は、昨年末のObama大統領と議会共和党の妥協の産物であり、これらが自動的に解消されることになる(「Topics2010年12月7日 ブッシュ減税と失業給付」参照)。

このような状況の中で、早速、Obama大統領は、公的年金保険料の2%免除を継続すべき、と主張し始めている(New York Times)。これでは、連邦議会共和党として納得する訳がなく、大統領自ら妥協の道を閉ざし、自動的な歳出削減に突き進もうとしているとしか思えない。

しかし、今の経済情勢をみると、欧州債務危機により、欧州経済の減速もしくはマイナス成長は免れない。アメリカの金融システムへの影響も必至だろう。そうした中で、増税+歳出削減という景気下押し圧力が相当に強まることになる。失業率の改善は望めないのではないか。

アメリカ経済社会の混乱が危惧される。

※ 参考テーマ「社会保障全般」、「公的年金改革」、「労働市場

11月22日 診療所@スーパー 
Source :The Walmart Opportunity: Can Retailers Revamp Primary Care? (Kaiser Health News)
Wal-Martが、店舗内診療所の展開を検討しているらしい。同社は、すでに処方薬の安売り事業を開始しており、本格的な医療提供サービスに参入しようとしているのかもしれない(「Topics2008年3月19日 $4処方薬」参照)。

店舗内診療所という事業では、すでにCVSが開始しており、すでに550店舗で診療所サービスを提供している。

店舗内診療所のメリットとしては、次のようなものが挙げられている。
  1. 利用者にとって便利である。
  2. 診療所の経営コストが安くて済むため、診療費が安くなる。。
  3. 保険会社にとっても魅力的である。保険加入者の店舗内診療所の利用も、2007年から2009年にかけて10倍になっている。
  4. プライマリーケア医師の不足に対応できる。特に、保険加入者が大幅に増加する2014年以降は、利用者が大幅に増える可能性が高い。
一方で、課題も示されている。
  1. 最初は急性期患者だけを診ているが、慢性期の患者への対応もできるのか。
  2. 他の医療機関との連携ができるのか。
  3. 診療所に関する州毎の規制はバラバラである。全国展開のスーパーで、これに対応できるのか。
また、通常の診療所でプライマリーケアを提供している医師達は、大きな懸念を抱いている。
  1. 店舗内診療所は、急性期や軽微な傷病の利用者のみ扱い、重篤であったり複雑な症状の利用者だけが通常の診療所に押し付けられるのではないか。
  2. (地域の医療機関との連携が希薄になるため)慢性期の患者に関する診療メニューがバラバラになってしまうのではないか。
その是非はともかく、医療サービス分野に新規参入者が登場しつつある。こうした企業活力がアメリカ社会を動かしている。

※ 参考テーマ「Wal-Mart

11月21日 Off-label use 
Source :Avastin Loses Approval From F.D.A. to Treat Breast Cancer (New York Times)
18日、FDAが、抗がん剤"Avastin"の乳がんへの使用認可を、正式に抹消した。理由は先に紹介したものと同じであった(「Topics2010年8月17日(2) Avastinの認可取消」参照)。

上記sourceの中から、興味深い事項を列記してみる。
  1. 今回の決定は、Avastinを乳がん治療薬として使用することを認めない、というものであり、その他の抗がん剤としては引き続き認められるため、市場に残ることになる。

  2. 医師は、"off-label use"により、Avastinを乳がん治療薬として処方することができる。

  3. 民間の医療保険プランでは、Avastinの"off-label use"に対して、保険給付を行うことはない。つまり、自費なら使用できるということになる。ただし、年額$88,000と高額である。

  4. 一方、Medicareは、当面、給付を継続するという。これは、National Breast Cancer Coalitionが、Avastinを乳がん治療のための選択肢の一つとして残しておくべき、との意見を公式に示しているためだ。
今回、"off-label use"という制度を初めて知った。おそらく、が並存することで成り立つ制度なのであろう。

※ 参考テーマ「医薬品