Wal-Martは、2006年9月より、"$4 Prescription Program"を展開している。店頭で、ジェネリックを中心に、処方薬を$4で販売するというキャンペーンだ。これは、社員向けのプログラムとしても打ち出しており、社内外で同社が推進している形になっている(「Topics2007年9月19日(2) Wal-Mart 清水の舞台」参照)。
上記sourceでは、このキャンペーンにより、アメリカ国民は処方薬で10億ドル以上の節約ができた、と宣伝している。しかも、ご丁寧に、州別の節約額まで用意されている。確かに、処方薬の高騰が続いており、社会問題になっている中で、このキャンペーンは国民受けすると思われる。
一時はヒール役を一手に引き受けていた同社だが、「安売り」を武器に社会的評価を高めることに成功しつつあるようだ。
先に、州知事が保険改革提案を行っていたIA州(「Topics2008年2月21日 IA州の保険改革」参照)で、州議会下院が満場一致で医療保険改革法案を可決した(AIS)。同法案のポイントは次の通り。まあ、財源手当の目途が立っていない状況では、満場一致も当然だろう。今後は、IA州議会上院に議論の場は移っていく。
ワシントンで製薬業界が政治的影響力、特に民主党に対する影響力を高めることに成功しているそうだ。その中心となっているのは、PhRMAだ。日本でもかなり活発に活動しているので、ご存知の方も多いと思う。
上記sourceから、その成功事例をピックアップすると、次のようになる。ワシントンDCでも、選挙区でも、地道かつ強力な資金提供が行われているのである。上記sourceでは、PhRMAが影響力を行使している大物政治家として、4人の名前(Nancy Pelosi、Max Baucus、Charles B. Rangel、Edward M. Kennedy)を挙げているが、当然、Mrs. Clintonも含まれる(「Topics2006年7月13日(1) Clinton上院議員と医療産業」参照)。こんなところにも、Clintonをはじめとする既存の民主党リーダーでは変われない、という空気を国民が感じ取ってしまうのではないだろうか。
- 民主党の関心が高い法案のうち、
- SCHIP拡充法案(「Topics2007年12月31日 SCHIP延長法案成立」参照)
については、AARP、Families USAなど、プロ民主党の団体と協力して支持する一方、
- カナダからの処方薬輸入法案(「Topics2007年8月2日(1) PDUFA延長法案」参照)
- Medicareにおける政府の価格交渉権を認める法案(「Topics2007年4月19日(2) 処方薬価格交渉法案は暗礁に」参照)
をブロックすることで、しっかりと権益を守っている。
- 昨年、PhRMAのロビー活動費用は25%増の$22M超に達し、全米商工会議所(USCC)に次いで第2位の支出団体となっている。
- また、政党別の献金額も、過去10年間は3分の2を共和党に回していたが、昨年は、共和党・民主党とも50%ずつとなっている。
- Partnership for Prescription Assistanceというキャンペーンを通じて、低所得者層に処方薬を提供している。その恩恵を受けた人数は3年間で500万人にのぼり、連邦議会議員の地元を効率よく回っている。
"Employment at will"は、アメリカの雇用関係を象徴する言葉である(拙稿「アメリカ企業の解雇の実態 」参照)。ところが、それは机上の空論に過ぎない、というのが、上記sourceの警告である。
単純な"at-will"がいけない理由として、などを挙げたうえで、どうしても解雇するのであれば、その理由を文書化しておくことが必須という。
- 従業員に対する公正性の確保
- 新規採用よりは従業員の能力向上の方がコスト安
- 従業員からの訴訟リスク
つまり、管理職の単純な判断で解雇するのは危険、という訳である。
上記拙稿でも述べている通り、"at-will"という大原則はあるものの、差別禁止等その他の法制により、従業員の地位は固く守られている。おそらくアメリカで最も通用する解雇理由は、業績悪化であろう。そのこと自体は、現在の日本でも次第に定着しつつあるように思われる。
Prudentialが提案する、新しい退職後所得制度である。PPAで確定拠出年金における自動加入制度が規定されたことにヒントを得ているものと思われる。
"Automatic IRA"の提案コンセプトは次の通り。穿った見方をすると、民主党が大統領/連邦議会を掌握した場合のビジネスチャンスを仕込んでいるとも考えられる。
- 適用対象企業
(次の項目すべてに該当する場合)
- 従業員数11人以上
- 起業から2年以上経過
- 退職給付プランを提供していない
- 従業員の加入拒否権
従業員が加入を望まない場合には加入しないことができる。
- 現行IRAとの類似点
- 59.5歳以前の引き出しには10%の超過課税
- 拠出額は所得控除対象
- Automatic IRAの特徴
- 給与からの天引き
- 自動加入
- 初期拠出額の自動決定
- 拠出は税引き後扱い
- 拠出額の自動増額
- 拠出限度額はIRAと同水準
- 投資対象商品の簡素化
- 運用会社の事前選定
- 転職時のポータビリティ確保
- 口座変更回数の制限
- 付随サービスの限定
- 低額の手数料
- マッチング拠出なし
- 借入金規定なし
- 企業にとっての特徴
- 企業による設定不要
- 加入者資格の設定不要
- 従業員教育不要
- ERISAの適用なし
- 善管注意義務なし
- 非課税扱い
当websiteでも、一度ラフな形で提起したことのある(「Topics2008年1月8日 医療保険改革の対立軸」参照)テーマであるが、Kaiser Family Foundationという医療シンクタンクではトップクラスの機関が、「木を見ないで森を見よう」という骨太な分析を行っているので紹介しておきたい。
上記sourceで強調しているのは、という点である。
- 個別の候補者の主張は少しずつ違っていても、その背景にある考え方は、党派別に色分けできる。
- どの候補者が大統領になったとしても、2009年以降の政策論議の中で、いずれ埋めなければならない溝を浮き彫りにする。
その主張を表にまとめてみると、次のようになる。こうしてみると、究極の考え方の違いは、医療というサービスを市場原理に乗せるべきかどうかにあるのではないかと思う。
項 目 民 主 党 共 和 党 医療保険改革の最終目標 皆保険または皆保険に近い姿 効率的で安価な民間医療保険市場 (背景にある考え方)
- 手法や政策が少しずつ異なってはいても、皆保険を達成すべきという考え方では一致
- 皆保険を保証するためには、大きな政府と過大なコストが必要。
- 民間市場と税制優遇措置、個人の選択と競争により、保険を購入しやすくすることが基本。
医療保険改革の手法 現行の企業提供プランと公的プランが基本 個人保険市場での個人による購入が基本 (背景にある考え方)
- 保険会社に対する規制を強化
- 保険会社に対する規制はなるべくしない
医療保険の目的 事前予防 事後保障 (背景にある考え方)
- 総合的な医療保険と予防医療を普及させることで、罹病による金銭的リスクを軽減する
- 高免責制とカタストロフィック・リスクの保護を推進
- こうした保険プランの方が、被保険者が忠実になれる。つまり市場原理になじむ。