当websiteでは、州職員レベルでは、同性パートナーに対するベネフィット提供に対して逆風が吹いていることを紹介してきた(「Topics2007年7月11日 MI大学の智恵」、「Topics2007年7月16日 RI州でも同性カップルに厳しい決定」参照)。
しかし、民間企業、特に大企業では、かなり柔軟な対応を取っているようだ。以下、上記sourceのポイント。
- Fortune500のうち、267社(53%)が、同性パートナーにベネフィットを提供している。これは、1997年当時の46社に較べると、6倍増である。
- 同性パートナーに対するベネフィットは、ベネフィット・コスト全体の1〜2%にすぎない。
- 全米で13州とD.C.が同性パートナーへのベネフィットを提供している。また、145の自治体が同様に提供している。
- PPA 2006(「Topics2006年8月9日 Pension Protection Act of 2006 概要」参照)の規定により、雇い主が認めれば、同性パートナーでも、加入者の退職年金を個人勘定(IRA)に無税で繰り入れることができるようになる。
- また、加入者が死亡した場合、生き残った同性パートナーが遺族年金として受け取ることができる。
そのものズバリのタイトルのレポートで、
@ERISAの制定目的は何なのか
Aそれが州レベルでの医療保険改革といかに衝突するのか
ということを簡単に説明している(「Topics2007年7月23日(1) 7月18日 ERISA vs States (3)」参照)。
さらに、関連の法令、論文へのリンクが役立つ。考察対象としては、やはり、MD州のWal-Mart法、MA州の皆保険法などが取り上げられている。
Texas Association of Health Underwritersという保険会社団体が、『企業が提供する医療保険の保険料について、100%企業が負担すべき』との提言を行った。
Texas州(TX)は、無保険者割合が全米一高い(24%)。
TX州の無保険者のうち、3分の2が働く成人であり、雇い主が医療保険プランを提供していない、またはプランの購入ができないために無保険となっている。また、働く無保険者のうち44%が従業員25人未満規模の企業に勤めている。
こうしたことを考えれば、皆保険にまでは至らないものの、企業が保険料を100%負担すれば、無保険者は確実に減少できるという提案なのである。
しかし、反論はすぐにできるもので、従業員は、個人のトータル(保険料+免責額+窓口負担)で負担可能かどうかを判断するのであり、保険料だけ甘い面を見せても、大きな動きはないだろう。
- 100%保険料負担を義務付ければ、その他の報酬を下げるか、医療保険提供そのものを止めてしまう可能性が高い。
- アメリカの潮流は、加入者の自己負担を求め、適正なプラン選択をしてもらう方向にある。
- 高免責額が設定されていれば、結局は自己負担をせざるを得ない。
そんなことよりも、保険会社のマージン率を規制する方が、よほど効果があるのではないだろうか。
Giuliani前NY市長が発表した医療保険政策に対し、保守系のメディアが批判的なコメントを掲載している。そのポイントは次の通り。つまり、Giulianiは医療保険政策で無策ではないか、と言われているのである。身内からの厳しい批判に、どう応えていくのだろうか。
- Giuliani前市長の提案は、Bush大統領が1月に行った提案に近い。民主党候補者達の提案に較べればずいぶんと見劣りするものであり、皆保険を達成しようというよりも、それを阻止しようとしているように見える。
- 企業による保険提供を理想と思っている人は誰もいない。その代わりとなるものを提案しているのならよいのだが、Giuliani前市長からその提案はない。ただ、国民が購入できる保険を市場で買えばよい、としているだけである。
- ここがそもそもの間違いの始まりだ。Giuliani前市長は選択肢を提供するのだ、と主張しているが、そもそも健康に問題を抱えている人にとって、選択肢がいくら用意されても意味はない。
- また、さんざん言われているように、低所得者層にとって、所得控除はほとんど意味がない。$15,000〜$60,000の所得層にとって、Bush&Giuliani提案の所得控除は、約$2,250の税負担軽減となる。しかし、平均的な家族にとって年間保険料は$12,000に達し、間尺に合わない。
- 税額控除も提案しているようだが、$15,000もの税額控除、しかも還付可能なのかどうか、定かではない。
- 企業による保険提供への税制上の優遇措置がなくなれば、却って無保険者は増加するとの主張もある。
- Giuliani前市長のアドバイザーの影響も大きい。David Gratzer氏 (Manhattan Institute)は、無保険者の多くが、公的医療保障プログラムの対象者であり、無保険者問題は過大視されている、と考えている。
- また、Gratzer氏とSally Pipes氏(Pacific Research Institute)の両アドバイザーは、皆保険制度に強く反対してきた。二人ともカナダ出身で、カナダの皆保険制度は、長時間待ち、先端医療なし、官僚的であると批判している。
- このこと自体は、2009年に皆保険制度導入が議論となった際に展開すればよい話であり、議論としては弱い。公的医療保障の加入資格を持つ人にとっては、加入手続きが難しく、なかなか加入しない。また、医療費に関する請求が高く、多くの国民が支払いが可能かどうか心配している。
- また、Democracy Corpsというシンクタンクは、医療の問題を「単なる購入可能かどうか、ではなく、保険加入が確実かどうか」の問題として捉えるべき、と主張している。民主党は、だから、生まれてから死ぬまで加入を保障する「皆保険制度」が必要だというが、Giuliani前市長には、そうした約束はとてもできない。いくらGiuliani前市長が「社会主義だ」と叫んだところで、それで民主党の作戦は充分成功なのである。
今週に入って、下院(1日)、上院(3日)にCHIP拡充法案が可決された。
議 会 法 案 名 投票結果 上 院 A bill to amend title XXI of the Social Security Act to reauthorize
the State Children'sHealth Insurance Program, and for other purposes (HR 976)68 v 31 下 院 The Children's Health and Medicare Protection Act (HR 3162) 225 v 204
夏休み後は、両院協議会で妥協案を作成し、大統領に署名させる必要がある。期限が9月30日で、大統領が拒否権を発動する意向(「Topics2007年7月25日 CHIP+Medicare」参照)を見せているため、大統領府との妥協点も探りながらの作業となる。
PDUFAの延長を巡る両院協議会の議論が進んでいないようだ。上院法案については、既に紹介した(「Topics2007年5月11日 処方薬本格輸入は道遠し」参照)が、下院(HR 2900)でも、7月11日に圧倒的賛成多数で可決している。
両法案はほとんど同じような内容になっているのだが、それぞれ個別項目では、下院法案の方がFDAの権限を強化しているそうだ(Kaisernetwork)。
ただ、夏休みを控え、両院協議会の議論が進んでいないために、FDAではレイオフの可能性がある旨職員に通知しなければならなくなっている。というのも、現行PDUFAは、9月30日に期限切れとなるからである。根拠法の期限が切れれば、関係職員の雇用を維持できなくなる、という、いかにもアメリカらしい懸念である。
両法案の間に大きな違いがなければ、9月に議論してもよいのだろうと思うが、FDAの通知が出回れば、職員の自主的退職や転職が頻発するかもしれない。そうなれば、人材の面からは大きな打撃となる。職員の不安もあろう。議会もその辺は配慮してあげて、もう一汗かいてあげてはどうなのか。
ちなみに、当初議論されていた法案(HR 380)には、処方薬の再輸入を認める条項が含まれていたが、この法案は放置されているとともに、上記HR 2900に同条項は含まれていないようだ。またしても、Kennedy vs Pelosi の勝負は、Kennedyに軍配が上がった。
新たなSECルールに基づく情報開示(「Topics2007年7月19日(1) Execsの報酬公開」参照)を基に、Fortune 200のCEO達の離職手当金額を調査した結果(いずれも中位数)が公表されている。
ケース 契約割合 一時金 自社株 年金等ベネフィット 総 額 所得税見合い分 解雇手当
(severance payments)71.5% $6.3M $17.4M $1.2M $24.9M - M&A等に伴う解雇手当
(change-in-control payments)81.8% $9.9M $16.5M $2.2M $28.6M $7.5M
こうしてみると、それほど大きな差はないように見えるが、最後の所得税見合い分を支払ってくれるかどうかは、結局大きな差となりそうだ。解雇手当の場合には、所得税まで面倒を見てくれる割合が4.4%しかないそうで、こうしたところに冷たい仕打ちが隠されているのだろう。
Rudy Giuliani前NY市長が、医療改革について構想を発表したが、それほど具体性が高まったわけではない(「Topics2007年6月10日 Giulianiの医療改革提案」参照)。それでも、具体的な提案があった部分をつなげると、「税制による無保険者対策」という性格をより強調した形になっている。
主な税制提案は次の3つ。これに対して、早速民主党Edwards前上院議員は、「無保険者対策とはほど遠い」と痛烈に批判している(Kaisernetwork)。
- 勤め先の企業が医療保険を提供していない場合、$15,000の所得控除を創設する(Bush大統領提案と同じ)。
- 低所得者層向けに、医療費税額控除(おそらく還付可)を創設する。
- HSAsの拡充
下院民主党の法案"The Children's Health and Medicare Protection Act"(HR 3162)(「Topics2007年7月26日(1) CHIP+Medicare(2) 」参照)に関する財政試算及び効果が示された。やはり、相当な財政赤字拡大を伴うことになる。
- 財政試算
提案項目 2008-2012 2008-2017 CHIP拡充等 $47.8B $159.9B Medicare Advantage補助削減等 -$50.2B -$157.0B 歳出総額 $27.5B $132.6B たばこ税等 $27.0B $53.8B 財政収支 $1.4B -$72.9B - 子供の保険加入数の増加(2012年時点)
CHIP Medicaid 合計 7.3M 28.3M 35.6M