Source : | Governor OKs college aid for undocumented immigrants in California (Sacramento Bee) |
8日、CA州知事は、"California Dream Act"に署名した(「Topics2011年9月5日 American DreamよりもCalifornia Dream」参照)。これにより、法的地位のない移民学生でも公的な奨学金を受け取ることができるようになった。
州民授業料の適用とともに、不法移民の子弟にとって、CA州は安心して教育を受けられる州として認知されることになろう。
一方、州議会共和党は、同法を"Nightmare Act"と位置づけ、早速、その可否を州民投票にかける手続きを開始するという。
いずれにしても、不法移民の地位のままでは就労に影響が及ぶ可能性がある。その点を解決しなければ、夢は正夢とならない。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | Pension contribution levels rise (GovExec.com) |
上記sourceによれば、来年度の連邦政府職員年金プランに対する連邦政府拠出が増えるそうだ。
実は知らなかったのだが、連邦政府職員については、従業員個人の拠出割合は固定(0.8%)されており、年金給付に必要な金額が増えてくると、連邦政府の拠出割合が高められてくる仕組みになっている。この固定されている従業員個人の拠出割合が、Obama大統領の歳出削減プランで標的にされている。個人拠出の割合を段階的に引き上げて、連邦政府の拠出額を減らそうという訳である。その他の年金プラン改革とともに、10年間で$21Bの歳出削減が可能となるとされている。
年金プラン加入者 2011年度 2012年度
(2011.10〜)Obama提案 2013年度 2014年度 2015年度 連邦政府職員 連邦政府拠出率(%) 11.7 11.9 個人拠出率(%) 0.8 0.8 1.2 1.6 2.0 合 計(%) 12.5 12.7 連邦議会議員 連邦政府拠出率(%) 17.9 18.3 個人拠出率(%) 1.3 1.3 合 計(%) 19.2 19.6
果たして、Obama大統領の提案は、民主党内で受け入れられるのであろうか。
※ 参考テーマ「公的年金改革」
Source : | AMR pilot retirements fuel bankruptcy fears (MarketWatch) |
American Airlinesの親会社であるAMR Corp.の株価が急落している。Wall Streetでは、AMRは破綻候補と考えられている。構造改善が進んでおらず、大手航空会社の中で唯一、2010年、2011年と連続して赤字を計上する見通しである。
加えて、パイロットが大量に退職しているのである。8月に111人、9月に129人が退職した。同社のパイロット全員で1万人規模なので、その影響は小さくない。
これについて、同社のパイロット労組(Allied Pilots Association)は、次のようにコメントしている。これに対し、AMR側は次のようにコメントしている(Business Insurance)。
- AMRの破綻懸念もあるかもしれないが、もっと大きな要素は株価の不安定性である。
- 彼らが加入するDBプランでは、一時金で受け取るか、年金で受け取るかの選択肢が用意されている。
- AMRの破綻は年金に大きな影響を与えかねず、ほとんどのパイロット退職者は一時金で受け取っている。
また、航空会社の破綻と言えば、当websiteでお馴染みのPBGCが登場してくるわけだが、PBGCは、
- 2007年に退職年齢を60歳から65歳に引き上げたために、この時期になって退職となったパイロットが多くなった。
- 破綻を懸念しているのであれば、もっと多くのパイロットが退職を希望するだろう。
- 今後もDBプランを維持する考えである。
と、平静を保っている。しかし、内心、心配で仕方ないのではないだろうか。上記sourceによれば、
- コメントするには時期尚早である。
- 仮にChapter 11の申請が行われたとしても、その中での再建計画や資産状況によってPBGCの役割は異なってくる。
DBプランの総資産の時価はどうなっているのか、給付債務とのバランスはどうなっているのか。内々の調査は始まっているかもしれない。
- AMRは4つのDBプランを運営しているが、その総資産は、2010年9月時点で$7.8Bある。
- また、DCプランの資産を$10.1B保有しているが、自社株への投資は行われていない。
※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」
Source : | Supreme Court justices worry California Medicaid case could unleash lawsuit flood (Sacramento Bee) |
今期の連邦最高裁は、もう一つ厄介な問題を抱えていることがわかった。上記sourceは、CA州のMedicaid診療報酬削減法を巡る訴訟を取り上げている。問題は、Medicaidの診療報酬削減そのものではなく、本件について医師が提訴できる権限を有するかどうかの判断が求められていることである。
本件の概要は次の通り。もしも連邦最高裁が訴訟権限を認めるとなると、その波及効果は果てしないことになる。
- CA州議会は、2008年、2009年に、Medicaid診療報酬を1〜10%の幅で削減する法案を可決した。
- これに反対する医師、医療機関は、連邦裁判所に無効の訴えを起こし、第9控訴裁判所はその訴えを認め、執行停止命令を下した。
- CA州政府は、医師達に訴訟権限がないとして、連邦最高裁に最終判断を求めている。
- 慣習上、民間の個人・団体は、連邦議会が明示的に法定した場合のみ、連邦法の執行を求める訴訟を起こすことができると考えられている。
- Medicaid関連法には、そうした明確な規定はなく、CA州政府はこの点を主張の根拠としている。
- ところが、CA州の医師・医療機関は、「連邦議会が最高決定機関であり、州法に優先する」という連邦憲法の優先規定を根拠に、訴訟権限を有すると主張している。
- これまでの連邦最高裁判例でも、特定の法規定がなくても訴訟権限を個人に認めたケースがある。
まず、商工会議所などの経済団体も、俺たちも州法に不満が出れば訴訟する、というだろう。
また、政策課題も、Medicaidにとどまらず、連邦と州が協力して運営する制度はすべからく不安定性を増すことになる。すぐに思い付くのが、医療保険改革法で規定された"Exchange"である。こうした諸制度について、全米で次々と誰からとなく訴訟が起こされるという事態も想定できる。
今期の連邦最高裁は、極めて重い決断を迫られることになりそうだ。
※ 参考テーマ「司 法」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」
Source : | Supreme Court term will include cases highlighting extent of federal power (Washington Post) |
連邦最高裁の新年度が始まった。新年度は、10月最初の月曜日(今年は10月3日)から始まり、通常、翌年6月末または7月初めまで審議が行われる(Wikipedia)。
上記sourceでは、今期の最大のテーマは、『連邦政府の権限はどこまで及ぶのか』であり、その事例として、など、当websiteとしてはお馴染みの政策課題が挙げられている。
- 医療保険改革法:個人の保険加入義務規定
- 不法移民対策:州法と連邦法の役割分担
- 同性婚:CA州Proposition 8、DOMA
これらに関する連邦最高裁の判決は、来年の大統領選を左右する可能性があり、しばらくはこれらの司法判断に注目である。
※ 参考テーマ「司 法」、「無保険者対策/連邦レベル」、「移民/外国人労働者」、「同性カップル」、「大統領選(2012年)」
Source : | Obama administration widens challenges to state immigration laws (Washington Post) |
連邦政府は、各州の(不法)移民法を精査し、次々と訴訟を起こす考えという。
既にAZ州、AL州については訴訟を起こしているが、その他にもUT州、GA州、IN州、SC州についても訴訟を検討しているそうだ。上記sourceで取り上げられているのは、例の警官に職務質問をさせる規定である。
法律の専門家達は、連邦政府がこれほど州法に対して訴訟を試みるのは珍しいという。
この記事を読んでの感想をいくつか。さて、州政府の不法移民対策のうち、当websiteの関心事は"E-verify"である。各州の適用状況の最新情報は次の通り(E-Verify: Frequently Asked Questions (NCSL)参照)。
- 移民法は、連邦政府が責任を持つべきと考えられているが、実際の生活や犯罪、不法入国のことを考えると、各州、特にメキシコと国境を接する南部の州では他人事ではいられない事情がある。医療保険改革法では、従来の州政府の所管範囲に連邦政府が入り込もうとしているが、不法移民対策では、本来、連邦政府が果たすべき役割を果たせていないので、州政府が取り組まざるを得ないという状況になっている。
同じ『連邦政府vs州政府』の構図でも、意味合いが異なっている。
- 連邦政府の積極的な姿勢は、来年秋の大統領選を睨んだキャンペーンの色彩が強い。不法移民に対する規制を強める南部の州を牽制することで、それらの動きに同調している共和党候補者達にダメージを与えようという作戦である。不法移民政策は、ヒスパニックの間では関心の高い課題である。
- やっぱりObama大統領は野党的な政治ポジションが得意のようである。この不法移民対策でも、労働組合優遇策でも、選挙公約通りに政策を進めることができていない。しかし、対立する立場の州政府や企業に対しては攻撃的な施策を講じてくる。
そして、選挙まであと1年というこの時期になって、対立軸を鮮明にする戦略をとり始めた。これは、2008年の大統領選で、ワシントンの政治家を敵にする("Change")という立場とよく似ている。『自分はこうした社会を作るんだ』というよりも『あいつらが悪いんだ』と訴える方が得意のようだ。Rhode Islandで利用を義務付けた知事命令が廃止されたことを例外として、着実にその利用義務化が広がっている。この点について、Obama政権からの意見発信は見当たらない。人権問題に絡んだところ(=警官の職務質問)には熱心でも、経済活動(=E-Verify)については何もアクションを採ろうとしていないように見えてしまう。
州 名 "E-Verify"利用義務付け対象雇用主 All Employers
(public & private)Publice employers State agencies Contractors Sub contractors Alabama ◎ Arizona ◎ Colorado ○
(state contractors)Florida ○
(state employers)○ ○
(state contractors)○
(state sub contractors)Georgia ○ ○ ○ Idaho ○ ○ Indiana ○ ○ Louisiana ○
(state contractors)Minnesota ○ ○
(state contractors)Mississippi ◎ Missouri ○ ○ ○ Nebraska ○ ○
(public contractors)North Carolina ○
(Localities)○ Oklahoma ○ ○ ○ South Carolina ◎ Tennessee ◎ Utah ◎
(従業員15人以上)○ ○ ○ Virginia ○ ○ ○ Pennsylvania 利用を推奨 Tennessee 利用を推奨 Illinois データの正確性が確保されるまで利用を制限
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「大統領選(2012年)」
Source : | Healthcare reform looms over Romney campaign (Financial Times) |
共和党大統領候補選で、Rick Perry TX州知事が移民政策でアキレス腱を抱えている(「Topics2011年9月27日 移民政策で溝」参照)のと同じように、Mitt Romney前MA州知事も医療保険政策でアキレスけんを抱えている。共和党が廃止に追い込もうと躍起になっている『医療保険改革法(PPAPA)』は、MA州皆保険制度をモデルとしており、その法案に署名したのが、Romney前知事なのである。
共和党の他候補者は、Romney前知事に、"Father of Obamacare"というレッテルを貼ろうしているが、今のところそれは成功していない。理由は2つ考えられる。Romney前知事にとっての正念場は、共和党候補になった後であろう。Obama大統領と対峙した際、MA州皆保険制度を持ち出されての論争になると、かなり分が悪いのではないだろうか。
- Romney前知事は、政権公約で、Day Oneに"Obamacare"の停止を命ずる、としている(「Topics2011年9月9日 Romney 4%成長宣言」参照)。一応、PPACAに反対の立場を明確にしているのである。
- こちらの方がより重要だと思われるが、PPACAの最大の問題点を「医療保険政策を州政府の所管から連邦政府の所管に移そうとしている」点と位置付けている。保守層の最大の関心事は「個人の保険加入義務」であるのだが、26州政府による合同訴訟に見られるように、『個人の保険加入義務を求めることは、連邦政府の権限を逸脱している』との主張の後半部分を強調している。これにより、保険加入義務から州政府権限侵害に争点をすり替え、MA州の保険加入義務への批判を回避しているのである。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/MA州」、「大統領選(2012年)」
Source : | Supreme Court Is Asked to Rule on Health Care (New York Times) |
9月28日、連邦政府は、医療保険改革法に対する違憲訴訟に関するヒアリングを要請した。
26州による合同訴訟では、8月、第11控訴裁判所で違憲判決が出された(「Topics2011年8月16日 PPACA:第11控訴裁判所は違憲判決」参照)。これは、3人の判事による判決であり、敗訴した連邦政府には、第11控訴裁判所に対して全判事による審議を求める選択肢も残されていた。この選択をすれば、連邦最高裁に行ったとしても、最終判決は来年11月の大統領選後になる可能性が高かった。
ところが、Obama政権は、敢えてこの選択肢を捨て、連邦最高裁に早く判決を出すように求めたのである。もちろん、最高裁がどのようなスケジュールで動くことになるかは未定だが、大統領選の真っ只中で判決が下される可能性も出てきたのである。
Obama政権は、ここでも賭けに出たのではないだろうか(「Topics2011年9月21日 大統領の財政赤字削減策」参照)。もし、連邦最高裁で合憲判決が出れば、大統領としての4年間の最大の実績を不動のものにすることができるからである。
しかし、いい話ばかりではなさそうである。上記sourceによれば、違憲判決が出れば相当な打撃となることは間違いないし、仮に合憲判決が出たとしても、これに怒り狂った保守層が、大統領選挙で反オバマキャンペーンを強め、雪崩を打って共和党に投票するかもしれないのである。
PPAPAとObama政権の行く末は、いよいよ最終幕に入ろうとしている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「大統領選(2012年)」