7月16日(1) CPI上昇鮮明
Source :Consumer Price Index Summary (BLS)
7月15日、BLSは6月の消費者物価指数(CPI-U)を公表した。前年同月比2.7%の上昇と、前月から上昇幅が拡大した(「Topics2025年6月13日(1) CPI上昇率じわり」参照)。コアの伸び率は2.9%でこちらも上昇した。
足許については前月比でプラスの0.3%に上昇した。年率に直せば3%を大きく超える伸び幅だ。
食料品価格は3.0%とさらに上昇した。
エネルギー価格はマイナス幅が急速に縮小し、前年同月比-0.8%となった。ガソリン価格も下げ幅が縮小(-8.3%)している。
電気代の大幅上昇(前年同期比5.8%)が続いている。これは、H.R.1 - One Big Beautiful Bill Actの成立を反映したものである。同法には、再生可能エネルギー(風力、太陽光)への税制優遇措置の終了が含まれている。優遇措置終了により、全米の電気料金は今後10年間で60~350%上昇する見込みとの予測がある(NPR)。
住居費は前年同月比3.8%増とほぼ横ばいが続いている。ただし、貸家の家賃が急上昇しており、6月の物価上昇の主要因になっているそうだ。
サービス業の価格上昇率は3.6%と横ばい。
6月の実質時給は、前月比-0.1%、前年同月比-0.1%となった(Real Earnings News Release)。
報道によれば、 となったそうだ(NPR)。

いよいよ関税引き上げの影響が出始めた上に、再生可能エネルギー税制の変更により電気代が急上昇している。いずれもトランプ政権の政策変更の結果である。 ※ 参考テーマ「労働市場

7月16日(2) 最高裁:PBM規制はERISA対象
Source :ERISA Preempts State PBM Law (Segal)
6月30日、連邦最高裁は、第10控訴裁判所の判決を支持し、PBMに関する州法よりもERISAが優先するとの判断を示した。

これまでの経緯は次の通り。 理屈から言えば、第10控訴裁判所の管轄地域、具体的にはColorado, Kansas, New Mexico, Oklahoma, Utah, Wyomingの6州で判決の効果が及ぶことになるが、今回のケースは連邦最高裁がレビューを却下しているので、他の控訴裁判所の管轄地域でも結論は変わらない。事実上、全米に効果が及ぶことになる。

ただし、すべての法的規制が対象となるわけではない。上記sourceでは、次のような事例が紹介されている。 PBMに対する規制は州レベルで進んでいるが、今回の最高裁判決でおおまかな方向性が見えてきたのではないだろうか。

※ 参考テーマ「医薬品

7月16日(3) センサス論争再び
Source :Republicans renew a bid to remove noncitizens from the census tally behind voting maps (NPR)
2030年国勢調査(センサス)に向けて、再びバトルが開始される(「Topics2018年3月30日 不法移民の炙り出し」「Topics2020年12月21日 最高裁:センサス大統領令を棚上げ」参照)。

現時点で、連邦議会下院には、2030年センサスに関する法案が4本提出されている。
  1. 2030年の下院議席州配分において、センサス局が不法移民を含めることを禁じる。小委員会で可決。

  2. 議席配分に、グリーンカード保有者、ビザ保有者を含めて全ての非市民を除く。センサス調査において、移民の法的地位に関する質問項目を設ける。

  3. 議席配分に、グリーンカード保有者、ビザ保有者を含めて全ての非市民を除く。

  4. 2030年国勢調査の前に、連邦議会下院の議席配分と選挙区割のための国勢調査(10年に1回)を実施する。
1.~3.法案とも、州政府、自治体に対する連邦資金配分については、非市民をカウントするかどうかについては触れていない。資金の流れについては言及せず、大統領選挙と連邦議会下院議員選挙の見直しに集中しようという戦略だ。

しかし、実際に強制捜査が頻繁に行なわれている中で、不法移民が本当の法的地位を申告することは期待できない(「Topics2025年6月13日(2) Worksite Enforcement」参照)。結局は、資金の流れにも影響を及ぼすことになろう。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交」、「移民/外国人労働者

7月15日(1) HR1の従業員ベネフィット
Sources : Hot Dogs, Fireworks, and the One Big Beautiful Bill: What Employers Need to Know About the Employee Benefits and Executive Compensation Changes (Epstein Becker Green)
The “One Big Beautiful Bill Act, 2025” Makes Major Employee Benefits Changes (Kutak Rock)
7月4日、トランプ大統領は、H.R.1 - One Big Beautiful Bill Actに署名した(「Topics2025年7月4日(2) HR1は大統領へ」参照)。既に紹介したが、連邦議会上院での可決にあたっては、法案内容が予算・歳出関連事項に絞られたため、下院可決案とは大きく異なる部分がある(「Topics2025年5月23日 Big Beautiful法案下院可決」「Topics2025年7月2日 HR1修正法案下院へ」参照)。

上記sourceは、最終法案に盛り込まれた従業員ベネフィット関係を紹介したものである。主なものは次の通り。
  1. 学生ローン返済支援:企業が従業員に年間$5,250を非課税で支給できる。2026年から施行、それ以降は物価スライド適用。恒久措置。

  2. トランプ勘定("Trump Accounts")の創設:18歳未満の子どもに向けて勘定を設け、子ども一人当たり年間$5,000(物価スライド適用)を非課税で拠出できる。従業員ベネフィットにすることも可能。企業は対従業員、または対従業員被扶養者に対して年間$2,500を上限に非課税で拠出することができる。勘定内の運用益は非課税。2026年から施行。

  3. トランプ勘定への一時金支給:2025年1月1日~2028年12月31日の間に誕生した子どものトランプ勘定に、連邦政府から$1,000の一時金を支給する。対象となる子どもはアメリカ市民で、両親がSSNを保有していることが要件。

  4. 自転車通勤補助:2018~2025年の間、自転車通勤に対する補助は、月$20までの非課税扱いを取り止めていた。2026年からは非課税扱いが復活すると見られていたが、OBBB成立により、2026年から恒久的に課税扱いとなる。

  5. 転居補助:2026年から課税扱いとなる。

  6. 保険料補助金(premium tax crecit):移民の法的地位によって、保険料補助金の受給資格を変更する。2027年1月1日以降に施行。

  7. Exchange加入資格の精査:2027年12月31日以降、Exchange個人保険プランの自動更新・加入を禁止する。保険料補助金の受け取り資格を精査する。(「Topics2025年6月24日 Exchange加入規制強化」参照)

結構大きな変更がみられる一方、HSAs、PBMなどに関する項目は削除されている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「ベネフィット」、「教育」、「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交」、「HSA」、「医薬品

7月15日(2) Trump Accounts
Source :Trump Accounts for newborns: How should families use them? (NPR)
"Trump Accounts (TAs)"が創設された(「Topics2025年7月15日(1) HR1の従業員ベネフィット」参照)。上記sourceはその内容を紹介している。ポイントは次の通り。
  1. 親、親戚その他は、18歳未満の子どもを対象に、TAsを開設できる。

  2. 年間$5,000(物価スライド適用)を上限に非課税で拠出できる。

  3. 企業は、従業員の子どものTAsに年間$2,500を上限に拠出できる。対象従業員の所得税は非課税。

  4. TAs資金の運用対象は、ミューチャルファンドまたはETFなど。

  5. 管理手数料は、0.1%以下。

  6. 法律上は、IRA扱い。

  7. 連邦政府から$1,000の一時金支給
    1. 対象者は、2025~2028年の4年間に出生した者で、市民権、SSNを有する者。

    2. 米国株価指数で運用。

    3. 勘定保有者が18歳になると、勘定内で保有者が利用できるようになる。
一般的な株式投資指標である年率8%で運用すると、18歳になった時点で、 になるという。

専門家は、 ことから、格差拡大の一要因になると、懸念を表明している。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「人口/結婚/家庭/生活」、「ベネフィット」、「DB/DCプラン

7月15日(3) 最高裁:NLRB委員復職差止
Source :Supreme Court Decides Against Reinstating Wilcox to NLRB as They Rule on Her Termination - NLRB Remains Without a Quorum (Sheppard Mullin)
5月22日、連邦最高裁は、D.C.控訴審の判決を支持し、Wilcox元NLRB委員の復職を差し止めた「Topics2025年4月2日(2) 元NLRB委員復職停止判決」参照)。判決は6vs3で、保守派とリベラル派に分かれたものだった。

ただし、最終判決は、意見陳述を充分行なってから下すということで、最終判断は先延ばしされた。
【2025年1月29日時点】()内は、トランプ大統領により解任。
役 職氏 名政 党指名者任 期
Chairman
2025.1.20~
Marvin E. KaplanRPresident Trump①2017.8.10~2020.8.27
②~2025.8.27
Member(Gwynne Wilcox)(D)(President Biden)(①2021.8.5~2023.8.27
②~2028.8.27)
MemberDavid ProutyDPresident Biden2021.8.28~2026.8.27
Member -
Member -
General Counsel(Jennifer Abruzzo)(D)(President Biden)(2021.7.22~2025.7.21)
※ 参考テーマ「労働組合

7月14日 市民権制限大統領令再差止
Source :New Hampshire judge blocks Trump birthright citizenship order nationwide (New Hampshire Public Radio)
7月10日、New Hampshire連邦地方裁は、トランプ大統領の市民権制限を強める大統領令の暫定的執行差し止め判決を下した。連邦最高裁判決に基づき、クラスアクションとしての訴訟を認めたものである(「Topics2025年6月30日 最高裁:市民権制限を判断せず」参照)。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交」、「移民/外国人労働者