トランプ政権は、行政手続きの順法化により、不法移民を炙り出そうとしている。アメリカはとっても住み心地の悪い社会になりそうだ。
- センサス(国勢調査)
10年に1回行われるセンサス(2020年実施)で、3月26日、商務省は、アメリカ市民権の有無を問う項目を盛り込む予定だと発表した。名目は、選挙権を持つ住民を正確に知ることが大切だ、ということだ。
不法移民だと自覚している住民は、そのデータが移民管理当局に転送されることを恐れ、調査員が回ってきても居留守を使うことにしているという。
そうなると、実際に住んでいるのにデータがないということで、住民数が実際よりも少なくカウントされてしまうことになる。そうなると、不法移民が多く居住する地域の人口は少なくなってしまい、連邦政府からの補助金や拠出金が減ってしまうことになる。
こうした事態が充分に予想されるため、少なくとも現時点で12の州が、市民権の有無を問う項目を入れないよう訴訟を起こす予定だ。12州とは、New York , Connecticut, Delaware, Illinois, Massachusetts, New Jersey, New Mexico, Oregon, Pennsylvania, Rhode Island, Washington, California(単独訴訟の予定)となっている。
- 補助金受け取りに対する罰金
市民権を有さない不法移民は、連邦政府が拠出している福祉的な支援を受け取ることはできない。Department of Homeland Security (DHS)は、不法移民が受け取ってはいけない給付の範囲を大幅に拡大し、Earned Income Tax CreditやExchage保険料補助金等も含めるとともに、受け取った場合には罰金を科すことを検討している。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交」
Source : | California Employers Must Navigate Range of Background Check Laws (SHRM) |
求職者に関する金融関係信用調査を行なう場合、企業側は"Fair Credit Reporting Act (FCRA)"を遵守しなければならない。アメリカには個人の金融信用に関するデータを収集、提供するサービスを行なう会社(Consumer reporting agencies, CRAs)がある。そうしたサービス会社から求職者に関する個人信用情報を入手する場合の規定となる。
先ずは、連邦法(FCRA)である。上記sourceで指摘しているポイントは次の通り。次に、上記で紹介しているのは、CA州の"Ban-the-Box"法である。"Ban-the-Box"とは、求職者が記入する求職票の中で「犯罪歴があるかどうか」を確認するチェック・ボックスを禁止するものである。CA州では、昨年10月に、"California Fair Employment and Housing Act (FEHA) "が成立し、2018年1月1日より施行されている。ちなみに、こうした州法を定めている州は10州あるそうだ。
- 企業側は、求職者に対して、金融信用調査を行なう予定であることを、独立した文書を以って告知しなければならない。
- そして、金融信用調査を発注する前に、求職者から書面にて許可を得なければならない。
- 金融信用調査に基づいて不採用の方針が出た場合、予めその旨を文書で求職者に通知しなければならない。
- その通知の際、金融信用調査の結果の写しと求職者が有する権利について情報提供しなければならない。これは求職者が金融信用調査結果の正確性を確認するためのもので、企業側は適切な期間を与えなければならない。
- その後、企業側は正式に不採用の通知を送付しなければならない。
- その際、情報を提供したCRAの窓口情報を提供しなければならない。同時に、CRAが不採用を決定したのではないことも明示しなければならない。
主なポイントは次の通り。これだけ面倒な手続きが必要となれば、中小企業は事前に経歴調査を行なうことを諦めるだろう。しかし、大企業はそれでも経歴調査を行なうのではないだろうか。採用した求職者が面倒な問題を起こせば、採用担当の責任が問われることになるだろうし、再犯ということになれば、株主からも追及されるだろう。そこは外部の誰かが保証してくれて初めて信用するアメリカ社会の本質であり、変わらないと思われる。
- 企業側から暫定的な採用通知を出す前に、求職者の犯罪歴を質問することを禁止する。
- 適用企業は従業員5人以上の企業。ただし、法律で経歴調査が義務付けられている職種には適用されない。
- 経歴調査に基づいて不採用の方針が出た場合、企業側は求職者の犯罪歴が職種と関連しているかどうかを評価しなければならない。
- 暫定的な不採用通知を求職者に送付する際、企業側は問題となった犯罪歴を特定するとともに、経歴調査の写しを添付しなければならない。
- その通知の際、求職者に対して、経歴調査の訂正、更生の証拠提出など最終決定前に執行できる権利について告知しなければならない。
- 求職者には、最初の反応をするまでに5営業日、経歴調査の訂正や証拠集めのためにさらに5営業日の猶予を与えられる。
- 求職者が提出した情報について、企業側は真摯に検討しなければならない。
- 経歴調査に基づいて正式に不採用となった場合は、その旨求職者に文書で伝えなければならない。その際、州政府に訴え出る権利を有することも伝えなければならない。
そうした意味でも、今注目されている"Boomerangers"は重宝だ。ある意味、氏素性は既にわかっており、こうした採用コストをかけずに採用の判断ができるからだ。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Sources : |
Romance at Work: Employees Don’t Trust HR to Keep Their Secret (SHRM) New ‘Love @ Work’ Survey Sheds Light on Office Romance (Namely) |
上記sourcesでは、社内恋愛について調査した結果が紹介されている。ポイントは次の通り。社内恋愛は個人的な問題であり、信頼感が低いHRに報告したくないと考えるのだという。報告を義務付けている社内規定があっても42%しか守ろうとはしない。この傾向は、男性の方が強いらしい。
- 職場の人間と親しい関係になったことがある。⇒ 41%
- 上司と関係を持ったことがある。⇒ 5%。ミレニアム世代は他の世代よりも多い。
- 関係を持っても何も変わらなかった。⇒ 70%
生産性が低下した。⇒ 15%
生産性が向上した。⇒ 14%
- 社内恋愛の結果、昇進できた。⇒ 社内恋愛経験者の5%
- 直属の上司と部下が関係した場合、HRは上司を異動させるべきだと思う。⇒ 34%
部下を異動させるべきだと」思う。⇒ 29%
- 職場に社内恋愛に関する規定がない。⇒ 60%
- 報告義務があるかどうかに関わらず、社内恋愛についてHRに報告する。⇒ 5%。何故それだけ少ないかというと、従業員のHRに対する信頼感が低いからだ。49%の従業員がHRに対する評価を平均以下としている。5段階でHRに最高の評価を与えた従業員は14%しかいない。
HRには報告しない一方で、社内恋愛について誰かに話してしまう割合は2/3に達する。 これでは、当人が誰とどういった付き合いをしていたかは周囲の人間はわかってしまう。セクハラ対策はしっかりやっている(6割)と言っても、社内恋愛が破綻した場合のリスクは相当高まる。
それにしても、やっと本音ベースの記事を目にすることができた。社内恋愛に関して報告義務を課しても、あまり効果はない。多くの従業員が、HRを信頼せず、秘密にしておきたいと思っている。それが本当だろう。上司と部下の関係であれば、多くの人がどちらかを異動させるべきと考えており、なおさら秘匿したくなるだろう。Love contract(「Topics2007年2月14日(2) Love Contract」参照)なんて、本当にトップの人達だけがリスク回避のために行う決めごとに過ぎないのではないだろうか。
※ 参考テーマ「社内恋愛」
3月19日、WA州商務省は、オンラインでプランを選択できる州立退職貯蓄プランの開始を宣言した。これにより、約200万人の州民が新たに退職貯蓄プランに加入できるようになる。サイトの名称は"The Retirement Marketplace"。 注目なのは、OR州のように中小企業の従業員だけでなく、自営業者、パートタイマー、個人契約など個人で働いている人々も加入できることだ。また、貯蓄プランについても、401(k)、IRA、Roth IRAなどが選択肢として用意されている。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | Salary History Bans Could Reshape Pay Negotiations (SHRM) |
新規採用応募者の採用判断に当たって、過去の給与について質問したり、調査したりすることを州法・条例で禁止する自治体が増えている(上記source事例)。その理由は、給与の男女格差をなくすため、ということだそうだ。もともと格差のある過去の給与水準に準拠した給与が支払われていては、永遠に格差がなくならないからだ。
ところが、給与や人事の専門家達は、こうした法令により給与格差がなくなるとは思えないとしている。なぜなら、既にアメリカ企業や人材派遣会社では、過去の給与水準を参考にしておらず、地域の労働市場の動向、応募者の経験、資格、教育水準などにより、新規採用者の給与を決定しているからだという。
企業側の人材ニーズと市場動向が明確になっていれば、こうした決定方法は可能となるだろう。日本の転職市場でも、人材派遣、人材紹介会社の役割はどんどん大きくなる。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働市場」