7月4日(1) 労働市場は堅調さ見せる
Source : The U.S. labor market remains solid, with employers adding 147,000 jobs last month (NPR)
7月3日、6月の雇用統計が公表された(BLS)。6月の雇用増は14.7万人となり、5月の増加幅を上回った(「Topics2025年6月8日(1) 労働市場に陰」参照)。4~5月の合計で1.6万人の上方修正が行なわれた。
雇用者数は170.4M人となった(Table B-1. Employees on nonfarm payrolls by industry sector and selected industry detail)。業種別増加数は次の通り。相変わらずサービス業での需要が高い。特に、医療、州・自治体が増加している。一方、連邦政府職員数の減少は6月だけで7,000人となった。また、製造業工場では7,000人の減少となった。製造業ISMは、4ヵ月連続の低下となっており、トランプ関税の影響に懸念を抱いている。
失業率は4.1%に低下(Table A-1. Employment status of the civilian population by sex and age)。
労働市場参加率は今月も62.3%に低下した。
25~54歳の労働市場参加率は83.5%に上昇した(BLS)。
労働市場に参加していない人の中で仕事を得たいと考えている人数は上昇傾向が続いている。
長期失業者(27週以上)の失業者全体に占める割合は、23.3%と大きく上昇した。
連邦政府の大量リストラと、トランプ関税発動の影響が発現し始めている。それが製造業の低迷に繋がっているというところが皮肉としか言いようがない。

※ 参考テーマ「労働市場

7月4日(2) HR1は大統領へ
Source :House Republicans pass Trump's megabill, sending the package to his desk to be signed (NPR)
7月3日、連邦議会下院は、H.R.1 - One Big Beautiful Bill Actを可決した(「Topics2025年7月2日 HR1修正法案下院へ」参照)。案の定、下院共和党議員達を説得するのに、時間を要したようだ。投票結果は、218 vs 214で、共和党の造反議員は2名だった(Roll Call 190)。 トランプ大統領は、7月4日に署名する見込みである。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

7月4日(3) 最低賃金2州引上げ
Source :Minimum wage increasing in over a dozen cities and 3 states on July 1 (USA TODAY)
7月1日に最低賃金を引き上げた州、自治体が紹介されている。そのうち、州等については、次のようになっている。

Economic Policy Institute
一方で、連邦政府レベル($7.25/h)にとどまっている州は、依然として20州も存在している(Consolidated Minimum Wage Table)。

※ 参考テーマ「最低賃金

7月3日 HR1修正法案で無保険者拡大
Source :Allocating CBO’s Estimates of Federal Medicaid Spending Reductions Across the States: Senate Reconciliation Bill (KFF)
上記sourceでは、7月1日に連邦議会上院が可決したHR1修正法案が成立すれば、次のような影響が出ると推計している(「Topics2025年7月2日 HR1修正法案下院へ」参照)。
  1. Medicaidに関する連邦支出削減幅は$1T(おそらく今後10年間)

  2. その内訳では、就労義務規定の影響が最も大きい。
  3. 2034年の無保険者数は、1,180万人増加する。これは下院可決版の1,090万人よりも大きくなる(「Topics2025年6月11日 HR1で無保険者急増」参照)。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

7月2日 HR1修正法案下院へ
Source :Senate GOP passes Trump's sweeping policy bill, setting up decisive vote in the House (NPR)
7月1日、連邦議会上院は、H.R.1 - One Big Beautiful Bill Actを可決した(「Topics2025年5月23日 Big Beautiful法案下院可決」参照)。投票結果は、50vs50で、議長である副大統領の賛成票により可決した(Roll Call 372)。共和党から3人の造反者が出た。 Collins議員は、Medicaid縮小に対して明確に反対を表明している(Press Release)。なお、Tillis議員は、既に来年の引退を表明している。

今回の上院での採決に関し、上院共和党は、民主党からのfilibusterを回避するために、元の法案を修正して"reconciliation"として採決に臨んだ(S.Amdt.2360Roll Call 371)。この手法では、法案の内容を予算と支出に関連するものに限定する必要があるため、下院可決法案の多くの部分を削除する必要があった。今度は、上院が可決した修正法案を下院が可決できるかどうか、つまりは下院共和党議員達がそれで我慢できるかどうか、が鍵となる。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

7月1日(1) 市民権データベース
Source :The Trump administration is building a national citizenship data system (NPR)
トランプ政権は、アメリカ市民権に関するデータベースを構築しつつあるという。3月の大統領令に基づく施策である(「Topics2025年3月27日(1) 選挙人登録制度変更案」参照)。概要は次の通り。
  1. システム名:Systematic Alien Verification for Entitlements(SAVE)

  2. 運用機関:The U.S. Citizenship and Immigration Service(CIS)

  3. Social Security Administrationが保有するアメリカ国民SSNのデータと、CISが保有する帰化国民、入国情報データを統合したもの。

  4. 各州政府、自治体は、このデータベースにアクセスすることにより、自ら保有する選挙人リストと市民権保有者の照合が可能となる。特別な身分証明書の提示は必要なくなる。

システムの開発を急いだためアメリカ国民への開示が不十分になっている、利用されているデータの信頼性が問われる、など、課題は多い。しかし、トランプ政権にとっては重要課題となっているので、さらなる開発、利用促進は進められるだろう。ターゲットは来年秋の中間選挙なのだろう。

さらに、選挙の先には、社会保障制度や福祉サービス、教育などにも利用されていくのかもしれない。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交」、「移民/外国人労働者

7月1日(2) 帰化取消策を強化
Source :DOJ announces plans to prioritize cases to revoke citizenship (NPR)
6月11日、Department of Justice(DOJ)のCivil Divisionは、今後の執行活動の重点分野5つを公表した(MEMORANDUM)。そのうちの一つが"Denaturalization"となっている。つまり、帰化の取り消しである。帰化してアメリカ市民権を獲得していても、違法行為を行なった場合には、市民権を剥奪することに全力を挙げるという。2023年時点で、帰化して市民権を獲得した外国出身者は2,500万人いるそうだ。

具体的な違反行為例として10例が示されているが、その中に、「Medicare/Medicaidの悪用」が含まれている。

不法移民だけでなく、既に市民権を得ている外国出身者にとっても厳しい事態になるかもしれない。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「Medicare」、「無保険者対策/州レベル全般

7月1日(3) 継続失業保険申請件数が急増
Source :Labor market slows as jobless claims rise to highest level since 2021 (HR Dive)
労働市場にまた一つネガティヴ要素が加わった(「Topics2025年6月8日(1) 労働市場に陰」参照)。新規失業保険申請件数が、2021年11月と同水準まで上昇してきたのである(News Release)。 特に継続件数が急上昇していることが懸念材料である。

※ 参考テーマ「労働市場