6月30日 最高裁:市民権制限を判断せず
Sources : Supreme Court limits nationwide injunctions in birthright citizenship order (NPR)
What is birthright citizenship and what happens after the Supreme Court ruling? (NPR)
6月27日、連邦最高裁は、出生地主義に基づく市民権に制限を課すとの大統領令(PROTECTING THE MEANING AND VALUE OF AMERICAN CITIZENSHIP)に関する判決を下した。ポイントは次の2点。
  1. 下級審が大統領令の施行を全米で差し止めるのは、越権行為である。

  2. Birthright Citizenshipに関する大統領令の合憲性、合法性について判断を下さなかった。
前者の1.については、大統領令を多発しているトランプ政権にとっては朗報である。

後者の2.については、 との整合性が問われることなるが、今回の最高裁判決では是非を示さなかった。その代わり、大統領令発効まで30日間の猶予を設け、訴訟を受け付ける期間とした。

余談ではあるが、大統領令発効から30日後に適用ということなので、うちの次男坊まで遡って取り消されることはないようだ(「Topics2025年3月27日(1) 選挙人登録制度変更案」参照)。

(7月2日追記)

連邦最高裁は大統領令発効まで30日間の猶予を設けた。7月27日までに何も訴訟がなければそのまま大統領令が発効することになる。報道(KUOW)によれば、今のところ、2件のクラスアクションの準備が進められており、それらが提訴されれば、連邦地方裁において大統領令の全国的な差し止めが必要かどうかを判断することになる。

また、大統領令により出生地主義に基づく市民権を与えられなくなるのは、 の子どもたちということになる。

①片親が法的地位を有していないアメリカ生まれの子供たちは400万人、②両親とも法的地位を有していないアメリカ生まれの子供たちは180万人いるそうだ。7月27日以降に生まれて、②の範疇に入るベイビーが、アメリカ市民権を持てないことになり、無国籍者となる可能性がある。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「政治/外交」、「移民/外国人労働者

6月27日 レイオフ時の心構え
Sources : Just got laid off? Get back on your feet with this step-by-step guide (NPR)
Layoff survivors say a lack of retraining has led to pricey mistakes (HR Dive)
解雇通知を受け取った時、アメリカ人も冷静ではいられないらしい。もっと淡々と受け止めているのかと思っていた。上記sourceは、解雇通知を受け取った際の心構えと取るべき行動を紹介している。

先ずは、 と呼びかけている。

そのうえで、充分な時間を使いながら段階を追って手続きを進めていくよう勧めている。その中で、一つ新しい発見があった。それは医療保険に関する説明である。

管理人としては、解雇通知を受けてもしばらくはCOBRAで繋げられるから問題ないと思っていたが、上記sourceは、 を検討してはどうかと提案している(「Topics2014年7月10日 COBRAとPPACA」参照)。

他方、解雇を免れた従業員も安閑としてはいられないらしい。大量レイオフの後、残った従業員達は新しい職務を与えられる場合が多く、企業側から適切なトレーニングや正確な情報が提供されなければ、やがて従業員のエンゲージメントは低下し、自ら離職してしまう可能性が高まる。実際、残った従業員の65%が、適切なトレーニングを受けていないと感じている(Kahoot!)。

解雇された場合も、解雇されなかった場合も、自らの立ち位置をいつも確認しておく必要があるようだ。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」、「医療保険プラン

6月26日 就労許可の大量取消
Source :Employers should regularly check E-Verify for authorization status changes, DHS warns (HR Dive)
バイデン政権下で、Department of Homeland Security(DHS)は、Cuba, Haiti, Nicaragua and Venezuela(CHNV)からの不法入国者に対し、仮釈放措置を講じていた。トランプ政権に移行し、3月25日、DHSはこの仮釈放措置を廃止することを公表した(Federal Register)。これにより、特別な法的措置が講じられた場合を除き、仮釈放中の不法入国者は国外に退去しなければならなくなった。仮釈放措置が廃止となった個人には、個別に通知が行なわれている。

この仮釈放措置を受けたCHNV不法入国者には、就労許可証(Employment Authorization Document, EAD)が与えられていたが、これらも取り消された。取り消し措置が取られたのは、4月9日~6月13日の間で、50万人以上の規模となっている。雇い主側から見れば、彼らを雇い続けることは法令違反となる。

従来、雇い主がE-Verifyに加入していれば、従業員の就労許可証が取り消された場合には「Case Alerts」としてその雇い主に通知が来ることになっていた。ところが、6月23日、トランプ政権は、この「Case Alerts」による通知を廃止し、代わりに雇い主側で定期的にE-Verifyをチェックして、従業員の就労許可の状況を確認するよう求めることとした(EAD Revocation Guidance For E-Verify Employers)。今回の大規模取り消しの結果は、6月20日から雇い主に示されているそうだ。従業員のEADが取り消されていた場合には、雇い主は当該従業員にEAD取り消し通知が来ているかどうかを確認したうえで、改めて届け出をする必要がある。

上記sourceで紹介されている専門家のコメントでは、 と警告している。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

6月25日 HR1:医療債務も増大
Sources : GOP Health Care Cuts: A Recipe for Medical Debt Disaster (THIRD WAY)
Health-care cuts in GOP’s budget bill may add up to $22,800 in medical debt for some families (CNBC)
これまで無保険者割合が低下してきたことに連れて、医療債務を抱える家計の割合も低下してきた。

THIRD WAY
ところが、CBOの推計によれば、現在審議されている歳出フレーム法案(H.R.1 - One Big Beautiful Bill Act)により、無保険者が増加する(「Topics2025年6月11日 HR1で無保険者急増」参照)。
上記sourceによれば、このCBO推計に基づいて、医療債務の推計が行なわれている。そのポイントは次の通り。
  1. 2034年時点での無保険者1,600万人のうち、
    • Medicaidに加入できないことで無保険者になる:780万人
    • Exchangeで保険加入できないことで無保険者になる:820万人(※6/20発表のExchange加入規制強化がさらに加わる(「Topics2025年6月24日 Exchange加入規制強化」参照))

  2. 現在医療債務を抱えている家計の人数は1億人、債務総額は3,400億ドル。これが人数では540万人増加し、債務総額では500億ドル増加(約15%増)する。

  3. 増加する540万人の内訳は、
    • Medicaid:220万人
    • Exchange:320万人
こうした懸念を踏まえ、6月20日、連邦議会上院の民主党議員幹部達は、共和党議員に法案の再考を求めるレターを発出した。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

6月24日 Exchange加入規制強化
Source :HHS Finalizes ACA Marketplace Rule, Part 1: Enrollment Restrictions, Premiums, Actuarial Value, And More (Health Affairs)
6月20日、HHSは、Exchangeに関する制度変更の最終決定を公表した(Press Release)。ポイントは次の通り(「Topics2025年3月13日 Exchange規制強化策」参照)。
  1. Exchange加入申込期間を、11月1日~12月15日に限定する。全州に適用される。適用年度は2026年加入分から、つまりは今年秋の加入申込期間から、となる。

  2. PFL150%以下の家計には毎月加入申し込みを認めていた(Special Enrollment Period, SEP)のをやめる。2025年8月時点でのデータにより判断することとなる。この時点で加入資格が認められなければ、次の年の加入が認められるまでは無保険者とならざるを得ない。

  3. 保険料補助金により保険料負担がゼロとなった(Federally Facilitated Marketplace FFMの)Exchange加入者が、自動加入更新を行なった場合、月額$5の課徴金を課す(新規)。当該加入者が加入資格を満たしていることを証明するまで継続する。こちらも、2026年保険加入時から開始する。
上記sourceによれば、これらの措置により、2026年だけで180万人がExvchangeに加入できなくなる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般