2月20日(1) MD州FMLI施行延期提案
Source :Maryland DOL Seeks to Delay Paid Family and Medical Leave Insurance Program (Ogletree Deakins)
Maryland州(MD)労働省(DOL)は、2月14日、Family and Medical Leave Insurance (FMLI)の施行時期を遅らせることを提案した(「Topics2024年4月17日 MD州:FMLI実行段階へ」参照)。具体的には、 という提案となっている。

上記sourceは、この提案の背景に、3つの理由があると指摘している。
  1. 制度の細部まで詰まっていない。

  2. 全体のコストは$1.6Bと推計されており、現在の経済状況で巨額のプログラムが始められるかどうか懸念がある。

  3. トランプ大統領による政策変更の影響がどこまで広がるのかとの不安感がある。
特に、1.は深刻である。MD州全企業が加入を義務付けられるが、州制度よりも好条件で自社の有給休暇制度を設けるのであれば、非加入を選択できることになっている。非加入を選択する場合の申請書提出・受理は、今年5月1日から開始することになっているが、本体の制度が詰まっていなければ、非加入選択の提出しようがない。

※ 参考テーマ「FMLA

2月20日(2) IRS大量解雇
Source :IRS expected to fire 6,700 employees beginning Thursday (Government Executive)
2月20日から、IRSで、6,700人の解雇が始まるそうだ。試用期間中の職員が中心だそうだが、大統領就任早々の大量解雇である。まさにアメリカ流"Employment at Will"である(「アメリカ企業の解雇の実態 」参照)。

ただし、上記sourceによれば、バイデン政権発足当初は8万人の職員だったのが、2024年度は10万人に膨れ上がっていたようなので、バイデン政権法相当初よりは多い職員数となる。

また、トランプ大統領就任日にDanny Werfel氏が長官を退職し、現在、長官職は空席になっている。Werfel氏は、2023年からIRS次官を務めており、任期は2027年まであったのだが、それを待たずに退職した。

後任としてBilly Long元下院議員が指名されているが、未承認の状況である。

納税申告書提出時期に、トップはいないは職員は減らされるは、で、まさに踏んだり蹴ったりの状況となっている。

※ 参考テーマ「労働市場

2月18日 受託者責任とESG投資
Source :Federal Judge Reaffirms Biden Era ESG Rule (NAPA)
保守派の州地方長官26人が、バイデン政権時代に定められたESG投資原則は、DOLの越権行為であり、無効であると訴えていた(「Topics2022年8月19日(3) ESGと受託者責任」「Topics2022年11月30日 企業年金 ESG投資を是認」参照)。これに対して、TX州連邦地裁判事は、DOLの越権行為とは認められないと、この訴えを却下した。

一方、トランプ大統領は、就任初日にバイデン大統領が発した大統領令の破棄を指示している(INITIAL RESCISSIONS OF HARMFUL EXECUTIVE ORDERS AND ACTIONS)。その破棄リストには、上述ESG投資原則の基となったバイデン大統領令(Executive Order 14030 of May 20, 2021 (Climate-Related Financial Risk))もしっかりと掲載されている(「Topics2021年6月17日(2) 気候変動とERISA」参照)。今後は、トランプ大統領令に基づいたESG投資に関するルールが議論されることになる。

またもや受託者責任を巡る投資のあり方が議論されることになる。

※ 参考テーマ「受託者責任」、「企業年金関連法制

2月17日(1) NC州Amzon労組結成否決
Source :Amazon workers vote against unionizing a North Carolina warehouse (NPR)
North Carolina州にあるAmazon集配センターで、労働組合("Carolina Amazonians United for Solidarity and Empowerment (or CAUSE)")に参加するかどうかを問う従業員選挙が行なわれ、反対票多数で否決された。賛成は829票、反対は2,447票、未決が77票と、大差での否決であった。

Amazonにおける労組結成の勢いは衰えているように見える(「Topics2023年1月13日(2) 波に乗れないALU」参照)。

※ 参考テーマ「労働組合

2月17日(2) EEOC提訴取り下げ
Source :EEOC seeks to drop gender discrimination case after Trump executive order (NPR)
2月13日、EEOCは、Harmony Hospitality LLCに対する提訴("EEOC Sues Two Employers for Sex Discrimination")を取り下げた。従業員の性指向、性自認を理由に解雇されたとして、EEOCが提訴した訴訟である。

訴訟を続けることは、 で示された政権方針と一致しない、というのが取り下げ理由だ。

大統領令の具体化が始まっている(「Topics2025年2月3日(1) EEOC性自認案件調査中止」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「LGBTQ

2月14日 Kennedy HHS長官就任
Source :RFK Jr. confirmed as Trump's health secretary, over Democrats' loud objections (NPR)
2月13日、連邦議会上院は、Robert F. Kennedy Jr.氏HHS長官指名を承認した(Roll Call Vote #52)。投票結果は52 v 48であった。共和党が賛成、民主党が反対という党派色がはっきりした結果であったが、唯一、Mitch McConnell上院議員(共和党)が反対票を投じた。民主党は夜通しの演説で反対論を述べ立てた。

HHSは、アメリカ社会の健康と医療を扱う巨大な省庁である。HHS長官としての初仕事は、"MAKE AMERICA HEALTHY AGAIN COMMISSION"を設立せよとの大統領令を受け取ることであった(Press Release)。

上記sourceは、Kennedy長官が抱える課題を5点挙げている。
  1. Medicaid & Medicare

    大幅な歳出削減を目論むトランプ大統領、共和党にとって、医療に関する歳出は巨大過ぎると映っている。特にターゲットとなるのは、トランプがいない間(=バイデン政権)に膨れ上がったMedicaid関連支出である。トランプ政権の出だしこそ失敗した(「Topics2025年2月3日(2) Medicaid大混乱」参照)が、連邦議会共和党では着々と支出削減のための法案作りが進んでいる。

  2. ワクチン政策

    Kennedy長官は、反ワクチン派の先導者であった。そのため、医者であり連邦議会上院のHELP委員長でもあるDr. Bill Cassidy議員は、Kennedy長官の承認に強く反対していた。しかし、Kennedy氏が、
    • 現行のワクチン政策を阻害しない
    • HELP委員長がHHS長官の今後の政策決定を監視する
    ことを認めたことで、ようやく賛成に回った。一方、Mitch McConnell上院議員(共和党)が反対を貫いたのは、4歳の時にポリオに罹患し、そのための後遺症も残っているためだ。罹患時にはワクチンが普及していなかったことから、ワクチンの重要性を誰よりも強く認識している(NPR)。

  3. DOGEへの対応

    上述したように、HHSは、約8万人の職員を抱え、$1.8Tの支出を執行する巨大官庁である。当然のことながら、イーロン・マスク氏が率いるDepartment of Government Efficiency(DOGE)の査定対象となる。これにどう対応するかは、国民の健康問題に直結する。

  4. 科学的な調査研究

    Centers for Disease Control and Prevension(CDC)National Institutes of Health(NIH)など、科学的な調査研究を行なうことで有名だが、HHSが管轄する連邦政府機関である(HHS Organizational Charts)。こうした世界的権威の調査研究機関の活動が損なわれれば、国際的な科学的進歩も遅滞することになるし、先のパンデミックのような事態に直面する際、国際的な知見の共有と協力関係は大きく損なわれることになる(NPR)。

  5. MAHAの具体化

    トランプ大統領令の"MAKE AMERICA HEALTHY AGAIN (MAHA)"をどうやって具体策に落とし込むのか、Kennedy長官プランは垣間見えてこない。
※ 参考テーマ「大統領選(2024年)」、「Medicare」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル

2月13日 CPI足許上昇
Source :Consumer Price Index Summary (BLS)
2月12日、BLSは1月の消費者物価指数(CPI-U)を公表した。前年同月比3.0%の上昇と、4ヵ月連続の上昇となった(「Topics2025年1月16日 CPI前年比3ヵ月連続上昇」参照)。コアの伸び率は3.3%と再び上昇した。
足許については前月比で0.5%で、上昇の一途を辿っている。
食料品価格は2.5%で横ばいだが、鳥インフルエンザの影響で卵の価格が急上昇(15%上昇)している(NPR)。
エネルギー価格も前年比で1.0%と上昇に転じた。
住居費は少しずつ低下しているが、それでも前年同月比4.4%増。
サービス業の価格上昇率は4.3%とこちらも僅かな低下。
12月の実質時給は、前月比0.0%と横ばい、前年同月比で1.0%増となった(Real Earnings News Release)。
インフレはしつこく続いている、しかも足許は加速しているというのが実態だろう。

このCPI公表の前日、1月11日に、パウエルFRB議長は、半年に一回行なう議会証言(上院)で、次のように述べている(NPR)。
"With our policy stance now significantly less restrictive than it had been and the economy remaining strong, we do not need to be in a hurry to adjust our policy stance.
加えて、トランプ大統領が発動したアルミと鉄鋼に対する25%関税の影響も見極めなければならない(NPR)。

※ 参考テーマ「労働市場

2月11日(1) 元NLRB委員が提訴
Source :NLRB member removed by Trump files lawsuit (HR Dive)
NLRB委員を解任されたGwynne Wilcox氏が、トランプ大統領とMarvin E. Kaplan NLRB委員長を相手取って訴訟を起こした(「Topics2025年1月29日 NLRB/EEOC委員解任」参照)。

National Labor Relations Actには、次のような一節がある。
"Any member of the Board may be removed by the President, ①upon notice and hearing, for ②neglect of duty or malfeasance in office, ③but for no other cause."
大統領と長官は、上記3項目のいずれにも違反しているとの主張である。明らかにWilcox氏の主張は正当と思われる。しかも、1935年の連邦最高裁判決(Humphrey’s Executor v. United States)がある(「Topics2025年2月10日(2) EEOC事務局長代行指名」参照)。

ところが、上記sourceによれば、現在の連邦最高裁の保守系判事たち5人は、1935年の連邦最高裁判決を認めていない。こうなると、連邦最高裁ではトランプ大統領の罷免行為が認められるとの予想が立つ。この訴訟は長引きそうである。

※ 参考テーマ「労働組合

2月11日(2) 根強い入社一時金
Source :Signing bonus use fell but remains higher than pre-pandemic levels, Indeed says (HR Dive)
入社一時金(signing bonus)の提供は減ってきてはいるものの、依然としてパンデミック以前よりは高い水準を保っている(Indeed Hiring Lab)。
  1. 2024年12月の入社一時金の提供割合は3.7%で、パンデミック以前(1.9%)の倍のレベルとなっている。

    Line graph titled “Employers are still utilizing signing bonuses” with a vertical axis ranging from 2% to 5% tracking the share of US job postings on Indeed advertising pay upon hire. The ratio slowly picked up in 2020 then accelerated in 2021 and early 2022, but has declined since September 2022.
  2. 提案する賃金の水準よりもそのシェアは高いままである。

    Line graph titled “Posted wage growth has slowed faster than signing bonus offers” with a vertical axis ranging from 100 to 300 tracking an indexed version of the Indeed Wage Tracker and signing bonus share in US job postings. Signing bonus mentions started picking up before wage growth, stayed higher for longer, and have not come down as fast as advertised pay.
  3. 入社一時金を提供している業種は、医療・美容関係が多い。

    Chart titled “Signing bonuses are most common in healthcare & in-person roles, least common in knowledge work & remote roles” with columns named “ Sector,” “Dec 2024 (%),” and “% change in job postings since Feb 2020.” Indeed tracked the share of job postings offering signing bonuses in December 2024 and found that such advertisements are highest in healthcare and in-person jobs.
こうしたところにも、労働需要の堅調さが伺える(「Topics2025年2月10日(1) 労働需給は堅調」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場