10月19日 女性の学生ローン債務
Source :The end of student loan forbearance will be tougher on women (AP)
2022年1月31日に、連邦学生ローンの返済、利払い停止措置が解除される(「Topics2021年8月9日 学生ローン返済停止措置延長」参照)。そうなった場合、女性の債務者の方が厳しい立場に追い込まれると、上記sourceは紹介している。
  1. 女性の平均債務残高は$31,276と、男性のそれよりも7%強多い。

  2. 所得の男女格差は依然として残っている。

  3. 共働きの夫婦の場合、保育園・学校の閉鎖で仕事を離れるのは女性が多い。

  4. 在宅勤務で子供たちが周りにいるのを見られると、昇格が遅れそう。

  5. 債務を負いながら学士が取得できなかった女性が、一番危うい状況に陥りやすい。
労働市場参加率を見ると、確かに女性の参加率の低迷が目立つ。
なお、女性の学生ローンに関する情報は、"Student Loan Debt by Gender"でも確認できる。

※ 参考テーマ「教 育

10月18日 年金基金枯渇後の対策
Source :Social Security : What would Happen if the Trust Funds Ran Out/Summary (Congressional Research Service)
10月15日、CRSが、公的年金基金が枯渇した後に何が起きるのかをまとめたレポートを公表した。ポイントは次の通り。
  1. 最新の財政レポートでは、OASI基金は2033年、DI基金は2057年に枯渇すると予測されている(「Topics2021年9月1日(3) 公的年金/Medicare基金」参照)。ただし、両者は一体と見做されており、統合基金は2034年に枯渇するとされている。
  2. 基金が枯渇すると、基金の収入(Social Security Tax)は、その時点で給付に必要な額の78%を満たすのみである。

  3. 基金が枯渇した時点で、2つの法律が矛盾することになる。
    1. Social Security Act:受給者/加入者は、依然として現行法で定められた年金給付額を受け取る権利を有する。

    2. Antideficiency Act:連邦機関の支出は、その財源の範囲でしか支出できない。SSAは基金の収入である税収の範囲内でしか給付できない。

  4. 従って、給付の仕方の考え方として、二通りが考えられる。
    1. 年金給付額の権利は変えないものの、給付を遅らせる。

    2. 給付額を削減する。

  5. そのいずれにしても、他の財源が入らない限り、毎年の給付額は下げざるを得ない。基金が枯渇する2034年の削減割合は約22%。その後徐々に削減幅を徐々に広げ、2095年には26%にする。
  6. 一方、年金給付額を満額給付しようとすれば、議会は税率を引き上げなければならない。現在は12.4%だが、枯渇する2034年には15.8%、その後徐々に引き上げて、2095年までに16.7%にしなければならない。
2022年の給付額上昇により、基金枯渇は早まるかもしれない(「Topics2021年10月15日(1) 2022年年金COLA」参照)。

最後に、反省の意味も込めて、これまでの基金枯渇時期の予測の変遷を記録しておく。

※ 参考テーマ「公的年金改革

10月17日(1) Amazon:出勤頻度は部署ごとに
Source :Amazon scraps January 2022 in-office requirement for corporate employees (HR Dive)
Amazonは、2022年1月3日に週3日の職場勤務を再開する予定であった(「Topics2021年8月19日(1) 従業員は接種義務化に両論」参照)。しかし、10月11日付の従業員向けレターで、『職員の出勤日数は部署ごとに決定する』と通達した。コロナ感染症の再拡大に対応したものとみられる(「Topics2021年10月9日 労働市場への復帰が進まない」参照)。

ポイントは次の通り。
  1. 各職場で、誰がどういった頻度で出勤するかは、部長レベルが決定する。

  2. 従業員は、一日前の通知で出勤できるよう、職場の近くに滞在する。

  3. 従業員は、年間最大4週間の国内リモートワークを認める。
Amazon CEOは、職場ごとの決定の難しさを指摘して、次の3点を確認している。
  1. 誰も絶対的な正解を知らない。

  2. 全てに対応できる一つのやり方というものは存在しない。

  3. 今は実験段階であり、コロナ禍への対応を探っている時期である。
管理人の感覚からすると、やっとそこに辿り着いたか、という想いである。一方で、権限移譲が進み、組織のフラット化が加速されることになろう。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

10月17日(2) 2段階給与制度提案
Source :A two-tier wage system roiled the auto industry. Workers today say no way (NPR)
現在労働組合が展開しているストライキが注目されている。いずれも2段階給与制度の導入提案を巡る対立である。 2段階制度は、今に始まったことではない。リーマンショック後の自動車会社の延命策として導入されたのが典型である(「Topics2007年9月27日 VEBA設立へ」参照)。当時としては必要な措置として認められたが、年数が経過して労使とも、同じ仕事をしていながら給与水準が2段階になっていることを不健全な職場環境だと思うようになっている。

Kelloggはコロナ禍で利益が上がっているらしく、2段階給与制度の導入を提案する理由はよくわからない。企業側は過去の制度導入の教訓を学ばないといけないのではないだろうか。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

10月16日(1) KY/ME/NM 州立Exchangeへ
Source :ACA In The States: New State-Based Marketplaces, Section 1332 Updates (Health Affairs)
10月4日、CMSは、Kentucky(KY)、Maine(ME)、New Mexico(NM)の3州が2022年から州立Exchangeに移行することを認めたと公表した(CMS Press Release)。今年からNJ、PA州が州立Exchangeに移行したのに続くものである(「Topics2020年12月24日 Exchange加入者増加」参照)。

3州で合わせて17.3万人が移行の対象となる。

現在の州別のExchange分類は次の通りになっている。

State Health Insurance Marketplace Types, 2021(Kaiser Family Foundation)
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/KY州」、「無保険者対策/ME州」、「無保険者対策/NM州

10月16日(2) TX州:接種義務拒否法案
Source :Texas lawmakers weigh a bill to let workers sue employers over COVID vaccine mandates (NPR)
Texas州議会下院で、労働者にワクチン接種義務を拒否できる法的根拠を設けるとともに、企業が応じない場合には訴訟できるという内容の法案(HB 155)を審議している。TX州知事の接種義務化禁止令を法制化しようとするものである(「Topics2021年10月13日(2) TX州:接種義務化禁止令」参照)。労働者が拒否できるのは、『健康上の理由または個人の良心による』のだそうだ。現在は、委員会での議論中だ。

この法案の嫌らしい所は、企業が最も警戒している接種義務化に反発した従業員の訴訟を促している点である。

公衆衛生に関する課題で、連邦政府と州政府の方針が真反対ではいけない。早急な調整が求められる。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

10月15日(1) 2022年年金COLA
Source :2022 Wage Cap Jumps to $147,000 for Social Security Payroll Taxes (SHRM)
10月13日、SSAは、2022年の公的年金、Medicareに関する適用数値を公表した。上記sourceはとてもよい資料なので、丁寧にまとめておきたい。
  1. 公的年金保険料、Medicare保険料の対象となる所得は、下表の通り。公的年金の上限額は、全米平均賃金に基づいて自動的に毎年計算される。2017年からの5年間で15%上昇したことになる。

    Payroll Taxes: Cap on Maximum Earnings

    Type of Payroll Tax

    2022 Maximum Earnings

    2021 Maximum Earnings

    Social Security

    $147,000

    $142,800

    Medicare

    No limit

    No limit

    Source: Social Security Administration.

  2. 物価スライド率(COLA)は5.9%となり、平均受給金額は月額$1,657($92増)となる。1980年代以降で、最大の伸び率となる。8月頃の予想も上回る結果となった(「Topics2021年8月14日(1) 公的年金物価スライド率」参照)。

  3. 各保険料率(Federal Insurance Contributions Act (FICA) tax rate)は法定されており、変更はない。
    FICA Rate (Social Security + Medicare Withholding)
    Employee7.65%
    (6.2% + 1.45%)
    Employer
    7.65%
    (6.2% + 1.45%)
    Self-Employed
    15.3%
    (12.4% + 2.9%)
    Note: For employed wage earners, their Social Security portion is 6.2% on earnings up to the taxable maximum. Their Medicare portion is 1.45% on all earnings.
  4. Medicare高額所得者保険料加算(加算保険料率0.9%)の対象所得も法定されており、変更はない。下表を超える所得に対して加算保険料が課される。

    • $250,000 for married taxpayers who file jointly.
    • $125,000 for married taxpayers who file separately.
    • $200,000 for single and all other taxpayers.

  5. 1956年生まれの人の受給開始年齢は66歳4ヵ月になる。年金受給者のうち、他の所得が一定以上ある場合には、給付額を減額する(受給調整)。受給開始年齢に達した後は、適用されない。
    2022年2021年
    受給開始年齢前年間$19,560超の所得$2ごとに$1減額年間$18,960超の所得$2ごとに$1減額
    2022年に受給開始年齢に達する場合年間$51,960超の所得$3ごとに$1減額年間$50,520超の所得$3ごとに$1減額
※ 参考テーマ「公的年金改革」、「Medicare

10月15日(2) UA無給自宅待機に待った
Source :United Airlines must delay its vaccine mandate for workers seeking an exemption (NPR)
United Airlinesは、早々に従業員のワクチン接種義務化の方針を打ち出した(「Topics2021年9月30日 UA vs Delta」参照)。ワクチン接種証明書の提出期限は9月27日であった。一方で、健康上または宗教上の理由で接種免除申請を行なった者については、10月2日から無給の自宅待機の予定であったが、これは延期されている。

この接種免除申請を行なった従業員のうち6名が、『無給自宅待機は適切な代替措置ではない』と訴えていた。これに関して、10月12日、TX州連邦地方裁判事は、無給自宅待機措置は当面延期との仮処分を言い渡した。期限は10月26日。

TX州は、州知事令で接種義務化を禁止した(「Topics2021年10月13日(2) TX州:接種義務化禁止令」参照)。法廷は連邦地方裁なので、直接の影響はないと思われるが、TX州内の世論がどう動くかも微妙な影響をもたらす可能性がある。United Airlinesも、連邦政府とTX州の間の板挟みに巻き込まれるかもしれない。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活

10月14日(1) ICE一斉摘発禁止
Source :Homeland Security secretary orders ICE to stop mass raids on immigrants' workplaces (NPR)
10月12日、Department of Homeland Security(DHS)は、Immigration and Customes Enforcement(ICE)に対して、
  1. 賃金保護、職場の安全確保、労働者の権利、その他雇用関連法の執行に注力する("to take actions to promote a fair labor market by supporting more effective enforcement of wage protections, workplace safety, labor rights, and other employment laws and standards" )

  2. 不法移民労働者の一斉摘発という手法はやめる
との方針を指示した(DHS Press Release)。

これは、既に2月にICEが表明していた執行方針を明確化、具体化したということだ(「Topics2021年2月20日(2) ICEが限定執行」参照)。取り締まるべき対象は不法移民労働者ではなく、彼らを利用し搾取する経営者であるという考え方に変更した。

これは、トランプ政権時代の一斉摘発で華々しく話題をさらっていた手法を禁じるというメッセージだ(「Topics2019年11月18日 恐怖の日々」参照)。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

10月14日(2) 公的年金とメディア
Source :How does Medica Coverage of Social Security Affect Worker Behavior ? (Center for Retirement Research at Boston College)
今年のノーベル経済学賞(NHK)にちなんだわけではないだろうが、上記sourceは、公的年金に関する報道振りによって制度加入者の行動が変化するかどうかを実験した調査結果である。

ポイントは次の通り。
  1. 比較対象の基準となるグループ(Control)に分けられた実験参加者には、次の記事を読んでもらう。
  2. 他の3つのグループには、タイトルと出だしの文章を変えた記事を読んでもらう。

  3. 次の4つの質問に回答してもらう。
  4. 基準グループとの回答の違いは、次の通り。
    Question
    2.何歳で年金受給を開始するか -0.5歳-1.1歳-0.7歳
    3.現行の給付水準の何%を受け取れると思うか 41-60%が7%ポイント上昇41-60%が7%ポイント上昇61-80%が7%ポイント上昇
    4.貯蓄率を変更するか 変化なし変化なし変化なし
野心的な試みとは思うが、被験者たちが初めてこの事実を突きつけられたのであれば、タイトルにより受け取り方、今後の行動に違いが生じるのはわかる。しかし、公的年金基金が枯渇するとの情報は、既にずっと以前から世の中に流れている。そのような状況の中で、ヘッドラインだけで行動に変化をもたらすという仮設は無理だろう。

※ 参考テーマ「公的年金改革

10月13日(1) 自発的離職が急増
Source :Americans quit their jobs at a record pace in August (AP)
10月12日、BLS8月末の求人数を発表した。8月末の求人数は1,040万人となり、7月末から微減となった(「Topics2021年9月9日(1) 失業者数/求人数低下続く」参照)

BLS
また、新規雇用数は、6月682.7万人をピークに、7月676.1万人、8月632.2万人と減少を続けている。雇用統計の勢いが低下しているのと平仄が合っている(「Topics2021年10月9日 労働市場への復帰が進まない」参照)。

BLS
8月の失業者数/求人数は0.8と、7月と同じ低水準となった。

BLS
自発的失業(Quits)も、5月末は一旦減少したものの、6月、7月、8月と増加した。8月の自発的失業は427万人(P)で、2000年12月以来の高水準となった。
Quits level, Total nonfarm - 2019~2021年

Quits level, Total nonfarm - 2007~2021年
上記sourceでは、最近の労働供給不足の要因を2つ挙げている。なお、本調査時点が8月末なので、ワクチン接種義務化に関する大統領提案の影響があるかどうかはまだわからない(「Topics2021年9月11日 民間企業接種義務化大統領案」参照)。
  1. コロナ感染症の再拡大を怖れて、離職している者が多い。レストラン、ホテル、小売り、教育など、対面が求められる職種で自発的離職が多い。

  2. 賃金が上昇しているため、高い賃金を求めて離職している労働者が増えている。

    BLS
労働市場の逼迫は当分続きそうである。

※ 参考テーマ「労働市場

10月13日(2) TX州:接種義務化禁止令
Sources : Texas Gov. Greg Abbott orders a ban on all COVID-19 vaccine mandates in the state (NPR)
Some States Are Pushing Back on Workplace Vaccination Mandates (SHRM)
10月11日、Texas州知事は、いかなる組織も従業員に対してワクチン接種義務を課してはならないとの知事令(Executive Order)を発するとともに、州議会に同様の主旨の立法を求めた。ワクチン接種は強く推奨するものの、あくまでも任意であるべきだ、とも述べた。

この知事令に困惑しているのが、テキサスをベースとしている、American AirlinesとSouthwest Airlinesだ。両航空会社ともバイデン大統領の大統領令に従って、従業員のワクチン接種義務化の導入を検討中である(「Topics2021年10月3日(1) 航空会社への接種義務化圧力」参照)。New York Timesによれば、両社とも連邦政府との契約企業として、大統領令に従ってワクチン接種を義務付けることに変わらないとしている。州知事令に従わず、ということになる。

そもそも、共和党の州司法長官達は、バイデン大統領が提案している民間企業の接種義務化に反対している(「Topics2021年9月23日 州司法長官が接種義務化に反対」参照)。TX州同様の法制化の動きは、Arkansas、Ohio、Montanaなどの州で出ている。

一方で、TX州知事令に反対する訴訟が起こることは確実で、しかも司法判断はワクチン接種義務化を支持することになろうというのが、司法専門家の見立てである。TX州裁判所は、ワクチン接種義務化に反対する医療従事者の訴えを却下しているからだ(New York Times)。また、連邦最高裁も接種義務化に寛容だ(「Topics2021年10月3日(2) 連邦最高裁は接種義務化に寛容」参照)。

今回の州知事令の発出は多分に政治的要素が強いそうだが、民間企業にとっては連邦政府の方針との板挟みになり、迷惑な話である。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活