8月31日 CA州:ネットワーク規制強化法案 
Source :California may enact protections against surprise medical bills (Modern Healthcare)
CA州議会は、今週にも保険プランにおけるネットワーク規制を強化する法案を可決する見通しである。主な強化策は次の3点。
  1. 保険プランで設定されたネットワークに加入している医療機関で受診した場合には、保険加入者はネットワーク内の規定分を負担する。

  2. 保険プランから契約外の医師に対して支払う償還額は、Max[平均契約額、Medicare償還額×125%]とする。

  3. 保険会社に対して適切なネットワークを提供するよう、要請を強める。
既にNY、FL両州では同様の法制が採択されており、GA州でも検討中とのことである。

これは、想定していなかった高額の自己負担を受診後に求められるという社会問題に対処するための法案であり、保険プランが自己負担上限額をなくすことで対応しようとしていたことに対する州政府の規制強化である(「Topics2015年12月4日 契約外診療自己負担の実態」参照)。そうすると、保険会社は保険料を引き上げるか、免責額を引き上げるか、という対応になろう。

専門医の団体は強く反対を表明しているが、医療機関の間では諦めムードが広がっているという。州議会両派の支持を得ている法案のため、抵抗しても成立するだろうとの見立てである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「医療保険プラン

8月29日 岐路に立つExchange 
Source :Health-care exchange sign-ups fall far short of forecasts (Washington Post)
Exchange加入者の推計が、PPACA成立当初の推計の半分にしかならないという。2013年2月のCBO推計では、今年のExhange加入者は2,400万人になるとなっていた(「Topics2015年11月19日 CBO:Exchange加入者推計」参照)。ところが、今年3月時点での加入者は1,110万人しかなっていない。

これだけ加入者推計が下回った理由は次のように説明されている。
  1. 保険プランの提供を止める企業数を過大推計してしまった。現実には企業、特に大企業は、保険プランの提供を継続している。

  2. Exchnageのオンライン加入が複雑。

  3. 免責額が高く、保険料補助金を受け取っても保険加入が難しい。

  4. 保険未加入に対するペナルティが安い。
Exchange加入者が少ないことにより、赤字が続き、大手保険会社の撤退が相次いでいる(「Topics2016年8月19日 Aetnaも大幅撤退」参照)。今年、保険プラン提供会社が1社しかないcountyが約7%であったのが、来年は4分の1以上になってしまうかもしれないとの推計が公表されている。

こうなると、保険料が上がり、さらに加入者の増加が伸びないという、悪循環に陥ってしまう。Exchangeは岐路に立っているのかもしれない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

8月28日 クリントン福祉改革の評価 
Source :How welfare reform changed American poverty, in 9 charts (Washington Post)
上記sourceは、20年前のクリントン大統領が行った福祉改革の評価を行っている。クリントン大統領は、それまでの現金支給依存を改め、なるべく低所得者が雇用に向かうように政策変更を行った。概ねその政策意図は実現できたものの、新たな課題が浮かび上がっている。以下、そのポイント。
  1. 連邦政府から現金支給を受け取る人数は大きく減少している。
  2. ところが貧困層の割合は、クリントン改革時期よりも高まっている。
  3. 貧困に陥っている子供の割合は減少が続いている。これは、クリントン改革後も子供の貧困対策が強化されてきた成果でもある。
  4. ところが、結婚していない母親が貧困に陥っている割合が増えているとみられている。育児のために就職できないケースが多いと考えられている(「Topics2016年8月12日 時代遅れの家族給付 」参照)。このため、結婚していない母親達がフードスタンプに依存する割合が高まっている。
  5. また、就労していない成人のいる家計で、最下層貧困層の割合(貧困ラインの半分の収入しかない層が貧困層に占める割合)が高まっている。
クリントン福祉改革20年を迎えて、社会の変化に応じた対応が求められているのかもしれない。

※ 参考テーマ「社会保障全般

8月27日 PPACA持続可能性への懸念 
Source :American Hospital Association calls for changes to exchanges (Modern Healthcare)
アメリカ病院協会(AHA)は、HHS長官に対して公開書簡を送付し、『今のままではPPACAの持続可能性を確保することは難しく、HHSは早急に対策を採る必要がある』旨を伝えた。保険会社の大幅撤退や保険料の急騰に対して、相当な懸念を抱いている。

採るべき対策としては、 などを列記しているそうだ。

他方、全米商工会議所(USCC)は、NY連銀の調査を引用して、PPACAの持続可能性が確保されていないと論じている(USCC)。NY連銀調査のポイントは次の2点。
  1. NY州の製造業では、PPACAを理由に雇用を減らしたとしている企業が21%を占める。サービス産業では17%。

  2. NY州の製造業では、PPACAを理由に報酬を削減したとしている企業が24%に達する。同じくサービス産業では18%。
こうした対応に出ている最大の理由は、医療コストの上昇である。同じ調査によると、NY企業にとって、医療コスト(中位数)は2016年8.5%増、2017年10%増と見込まれている。

やはり医療費抑制に本格的に乗り出さない限り、PPACAの持続可能性は見込めない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月26日 2017年のExchangeは?
Source :HHS says 2017 ACA plans will still be affordable despite insurer exits (Modern Healthcare)
保険料が急増する、大手保険会社がExchangeから大幅撤退するといったネガティブなニュースが飛び交っていることに対し、HHSがこれらの懸念を沈静化する狙いで、2017年のExchnageの姿を推計し、公表した(「Topics2016年8月9日 NY州保険料:最大の上昇率」「Topics2016年8月19日 Aetnaも大幅撤退」参照)。主なポイントは次の通り。
  1. 2017年のExchnageプラン保険料は、前年比25%増となる。

  2. しかし、7割以上の加入者は、月額保険料$75以下の負担で保険プランを選ぶことができる。

  3. これは、加入者にとって複数の選択肢が存在するうえに、保険料が上がればtax credits(保険料補助金)も増えるからである。

  4. 実際、2015年から2016年にかけてExchangeプランに加入した人のうち、43%は加入プランを変更している。これにより、平均月額$42の保険料節約となった。
しかし、足許では、容易には安心できない数字が示されている。

まず、プラン保険料については、まだ多くの州で公式発表されていない。テネシー州保険監督局は、「州Exchangeは、ほとんど崩壊状態になっている」と表明している。来年の保険料について、44.3〜62%の上昇を認可したためである。こうした州が今後も続くと思われる。

その最大の要因が、保険プランの選択肢が狭まっていることである。コンサルティング会社の調査結果では、昨年に較べて選択肢が大幅に減少している(Modern Healthcare)。 いくらたくさんのExchangeに保険プランを提供しても、競合者がいなければ保険料は下がらない。こうしたところに、大手保険会社の撤退の影響が現れている。

次に、保険料補助金があるから保険料も低額で済むというが、保険料補助金を受け取ることのできない中所得者層は、保険料大幅引き上げの波をもろにかぶることになる。

さらには、保険料が上昇して保険料補助金が増額されるということは、連邦政府の財政負担が膨らむということである。その財源はどこから捻出してくるのだろうか。

PPACAは正念場を迎えているのかもしれない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「医療保険プラン

8月25日 "T"無差別規定訴訟 
Source :States sue to block Obamacare's transgender protections (POLITICO)
HHSは、今年5月、PPACAに盛り込まれている無差別規定に基づき、"Transgender"に関する新たな規則を公表した(「Topics2015年9月8日 Transgender差別禁止規則案」参照)。ポイントは次の2点。
  1. 保険会社が性転換診療への給付を全面禁止することを認めない。

  2. 医療機関が性転換者への診療を拒否することを禁止する。
この新規則に対して、5州政府(Texas, Wisconsin, Kentucky, Nebraska, Kansas)と3団体(the Franciscan Alliance, Specialty Physicians of Illinois, Christian Medical and Dental Associations)が、
  1. 不適切な診療行為をせざるを得なくなり、過大な賠償請求を受けかねない

  2. 宗教上の信条に反する行為を強制されかねない

  3. 診療行為に対する連邦政府の過剰な介入を招く(Reuters
として、連邦地方裁判所に訴訟を起こした。場所は、U.S. District Court for the Northern District of Texasである。

同連邦地方裁判所は、今回の訴訟の2日前、自ら認識する性別に基づきトイレを使用できるようにするというObama政権の諸施策を仮差止するとの判決を下している(「Topics2015年7月22日 職場の性別」参照)。これを訴えていたのは、やはり13の州政府(含むTexas州)である。(Reuters

LGBTを巡る議論は、トイレ、医療という個人の生活に密着した分野で激しくなっている。

※ 参考テーマ「LGBT」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

8月24日 CA州"All-gender" bathroom法可決 
Source :"All-gender" bathroom bill heads to Jerry Brown (Sacramento Bee)
CA州議会は、"All-gender" bathroom法(AB 1732)を可決した。上院は8月16日、下院は8月22日である。州知事の意向は報道されていないが、おそらく署名するのだろう。

同法の主旨は単純明快だ。法案の主な項目は次のようになっている(太字は管理人による)。
(a) All single-user toilet facilities in any business establishment, place of public accommodation, or state or local government agency shall be identified as all-gender toilet facilities by signage that complies with Title 24 of the California Code of Regulations, and designated for use by no more than one occupant at a time or for family or assisted use.

(c) For the purposes of this section, "single-user toilet facility" means a toilet facility with no more than one water closet and one urinal with a locking mechanism controlled by the user.
まず、企業の社屋、事務所もこの法律の適用を受けることになる。

次に、大事なポイントだと思うが、一人用個室トイレの定義が記されている。上記の文章通りだとすると、『一つの水洗便器(WC)と小便器を備えた鍵のかけられる一人用トイレ施設』ということになる。

企業の立場からみると、この法律により、『一つの水洗便器(WC)と小便器を備えた鍵のかけられるトイレ施設』については、誰でも使用が可能との表示をしなければならない、ということになろう。

あとは、企業側がどれだけコストをかけて、こうした施設を事業所に設けていくか、ということになる。施行日は2017年3月1日である。

東京オリンピックの際にも参考になるだろう。

※ 参考テーマ「LGBT

8月23日 Co-workingの現状 
Source :Kegs, Climbing, Kombucha: This Is Co-Working Now (Bloomberg)
Co-workingスペースがどんどん拡大しているそうだ。マンハッタンでは500万平方フィート(46万4,500u)、サンフランシスコでは30万平方フィート(2万7,870u)にもなっている。先日紹介した"gig economy"の広がりと呼応しているのかもしれない(「Topics2016年8月5日 Gig economyと社会保障」参照)

上記sourceは、いくつかのCo-workingスペースを訪問して、その特徴を紹介しているのだが、ちょっと驚くのは、そこで提供されているサービスである。 働く場所としてのスペースにこうしたサービスが提供されているのである。WorkとLifeが一体となり、一緒の場所で働く、運動する、遊ぶ・・・。人との交流を求めている。孤立したくないという心境なのだろう。

※ 参考テーマ「Flexible Work

8月21日 ヘリ親の増幅 
Source :When Mom Wants to Sit in on a Son’s Job Interview (SHRM)
採用現場に親が登場してくるケースが増えているそうだ。昨年末に実施された調査では、採用担当者のうち35%は、採用現場に親が登場してきて困惑したという経験を持っている。以下は、その実例。 採用後、勤務初日に親同伴で出勤してくるケースまであるそうだ。

上記sourceは、家庭における子供の数が減っていることを挙げているが、同居するケースが増えていることも一因だろう(「Topics2013年11月24日 若者が親と同居する訳 」参照)。

日本でも、親子向けの大学主催会社説明会があるらしい。世の中変わっていくものだ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活