Source : | BRT Letter in Response to EEOC Actions Targeting Employer Wellness Programs (Business Roundtable) |
上記sourceは、Business Roundtable(BRT)の会長から、HHSの事務次官ほか宛に発出されたレターである。
内容は、『あなた方が所管しているPPACAに盛り込まれている健康管理プログラムを実施しようとする企業にいちゃもんを付けているEEOCを何とかしてくれ』というものである(「Topics2014年11月5日 EEOC差し止め請求棄却」参照)。ついに経済界がEEOCに対する怒りをぶつけ始めたのである。
こういう状況をちゃんとマネージできないと、Obama大統領の行政能力が問われるのである。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | PBGC Annual Report Shows Improvement in Single-Employer Program and Deterioration in Multiemployer Program (PBGC) |
11月17日、PBGCのアニュアルレポートが公表された。債務超過の状況は次の通り(「Topics2013年11月17日 PBGCは持続不可能」参照)。Single-employer programでは、経済状況が改善し、保険料が増えたこと、運用益が改善したことなどにより、債務超過が縮小した。しかし、最大の縮小要因は、保険料の大幅引き上げである(「Topics2012年7月5日 PBGC保険料大幅引上げ」参照)。来年も引き上げられることが予定されているため、この債務超過の縮小は来年も続くと思われる。
- 全体の債務超過:$35.7B(2013年)⇒$61.7B(2014年)
- Single-employer program:$27.4B(2013年)⇒$19.3B(2014年)
- Multiemployer program:$ 8.3B(2013年)⇒$42.4B(2014年)
一方、Multiemployer programの保険料は、2013年に引き上げられた後は固定されているため、保険料収入の大幅増加は見込めない。反対に、DBプランの凍結、廃止が続いているため、保険料収入は減り続けるものと思われる。
PBGCは、Multiemployer programから崩壊していくのかもしれない。
※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」
Source : | CMS Releases New Data Demonstrating Increased Choice, Competition in the Health Insurance Marketplace in 2015 (Centers for Medicare & Medicaid Services) |
2015年にExchangeで提供される保険プランに関するデータベースが公開された。CMSが全米のExchangeに関する情報を集約したもので、一般に公開されている(上記sourceにリンクあり)。
また、CMS自身でも分析を行っており、そのポイントは次の通り。いずれも、加入者にとっては選択肢が増えることを意味し、保険プラン提供者にとっては競争が増すことを意味する。
- Exchangeに保険プランを提供する保険機関は、25%増加する。
- 3つ以上の保険会社の中からプランを選択できる割合は90%以上(2014年は74%)。
- 加入申込者は、平均40プランの中から選択できる(2014年は31プラン)。
さらに、公表データを用いて、コンサルタント会社が保険料の平均伸び率を計算している(Bloomberg)。いずれも各州で一番安い保険料(50歳)を取り出してきて平均伸び率を算出している。この伸び率は意外に低い。ただし、上のグラフを見てもわかるように、州によって保険料は大きく異なるし、州内でも同じカテゴリーの中で保険料は大きく異なっているだろう。
- Blonze プラン ⇒ 約3%増
- Silver プラン ⇒ 約4%増
毎度申し上げている通り、保険料だけで保険プランを比較することはできない。金銭的には免責額が重要だし、給付内容についてはネットワークが重要である。さて、アメリカ国民は今年はどのような選択基準をもって臨むのだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | The Jobless Rate Could Fall to 4.7 Percent by the End of 2015 (Businessweek) |
ドイチェ・バンクのエコノミストが、2015年末には失業率が4.7%まで低下するとの見通しを公表した。その拠り所は、失業保険受給者率の低下である。労働力全体に占める失業保険受給資格保有者の割合は、一般の失業率に先行する指標で、2009年央にピークを打った後、ずっと下がり続けている。この傾向が続けば、来年末には失業率が4.7%まで低下するというのである。
ただ、リーマンショック以降、長期失業者の増大、労働市場からの大量退出、PPACAの労働ディスインセンティ効果、需給のミスマッチなど、労働市場に構造的な変化が生じている中、あと一年でそれだけ失業率が改善するとは俄かには信じ難い。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | Obama Plan May Allow Millions of Immigrants to Stay and Work in U.S. (New York Times) |
来週にもObama大統領は、不法移民の法的地位を保全するための大統領令を発する予定らしい。上記sourceが報じている大統領令の内容は次の通り。中間選挙で大敗した後に最初に出してくる大統領提案がこれでは、共和党は収まるまい。
- 子供がアメリカ国民または合法移民で、両親が不法移民の場合、その両親に合法的な就労許可、または国外退去の永久免除を与える。⇒ 約330万人
- 子供の時代にアメリカに連れてこられて不法移民になっている者とその両親に、何らかの保護的地位を与える。⇒ 約100万人以上
- 非合法に入国して数年間農業に従事している不法移民にも何らかの保護的地位を与える。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | Implementing Health Reform: New HHS 2015 Marketplace Enrollment Estimates (Health Affairs Blog) |
11月10日、HHSは2015年の連邦立Exchange加入者推計値を公表した。ポイントは次の通り。この2015年の加入者総数は、今年春のCBOの推計1,300万人を大きく下回る(「Topics2014年5月28日 個人市場への参入は増加へ」参照)。こうした控え目な推計となった要因はいくつか考えられる。
- 2014年10月時点での加入者数は、710万人。
- このうち、2015年も再加入する人数は、590万人。
- 新規加入者数は、320〜400万人
- 2015年の加入者総数は、910〜990万人。
それにしても、初年度目標が800万人で、瞬間風速ではあるものの達成したはずのに、そのうち590万人しか再加入しないというのでは、定着率が低すぎないだろうか。
- 今年の保険加入申し込み期間は3ヶ月間で、昨年の半分しかない。
- Medicaid加入資格の拡充が行われる州がある。
- 保険料の上昇が予想されている。
- 免責額が大きくて、負担に耐えられない。
- 無保険者の中には不法移民が多いが、不法移民等は加入者資格がない。
- 親族の不法移民が国外退去処分にあうかもしれないとの懸念が広がっている(「Topics2014年11月12日 ラテン系保険加入が伸びない訳」参照)。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Many Latinos shun Obamacare for fear of getting relatives deported (Los Angeles Times) |
PPACAの優等生であるCA州だが、ラテン系住民の保険加入が伸びていない。無保険者割合は11%にまで下がった(Commonwealth Fund)ものの、その無保険者のうちの62%がラテン系だという(Kaiser Family Foundation)。
昨年の加入申し込み時期は、スペイン語のwebsiteがなかった、ラテン系のアシスタントが不足していた、などの施策上の要因もあったが、最大の要因は、保険加入申し込みをきっかけに不法移民である家族が国外退去になってしまうのではないか、という懸念であった。
もともと不法移民はExchangeへの加入はできない。しかし、本人がアメリカ国民の地位を持っていても、妻や両親が不法移民の場合、家族の保険加入状況から不法移民であることが知られ、国外退去処分になる可能性はある。
州政府は、『Exchangeに提供した情報は個人情報として扱われ、決して移民局に情報は流れない』というコマーシャルを流している。Obama大統領も、今年3月にスペイン語のテレビネットワークに出演して、情報は流れないと話したが、そのObama政権が200万人もの国外退去処分を下しているところから、ラテン系社会ではまったく信用されていない(「Topics2013年12月25日 不法移民国外退去の実績」参照)。むしろ、不法移民を炙り出すための引っ掛けではないか、とまで疑われているそうだ。
不法移民制度改革の躓きが、PPACAの優等生に影を落としている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/CA州」、「移民/外国人労働者」
Source : | In surprise move, Supreme Court to hear healthcare law challenge (Los Angeles Times) |
11月7日、連邦最高裁は、PPACAで施行されている保険料補助金の合法性について審議すると発表した。『連邦立Exchangeで保険料補助金(tax credits)を出すことは認められるか』が争点である(「Topics2014年10月2日 保険料補助金の合法性」参照)。
法律の専門家の間では、12月のD.C.控訴裁判所大法廷の判決を待って連邦最高裁が審議するかどうかを判断すると見られていたために、この日の発表は大きな驚きをもって迎えられた。
連邦最高裁が審議すると決定するには、少なくとも4人の判事の賛成がなければならない。本件で何人が賛成したのかは明らかにされていないが、PPACAの個人加入義務化に関する判決で『反対』に回った4人の判事(Anthony M. Kennedy, Antonin Scalia, Clarence Thomas, Samuel A. Alito Jr.)が今回の審議に賛成したのではないかと見られている。
上記sourceでは何も触れていないが、中間選挙で共和党が圧勝したことも影響しているのではないだろうか。PPACAの存続基盤を揺るがしかねない司法判断に注目が集まる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」