Source : | Providing Quality Health Benefits for Our Associates (Walmart) |
10月7日、Walmartは、2015年の従業員向け医療保険プランの変更を公表した。他の大型店と同じだよ、と弁解しているのだが、Walmartの医療保険プラン提供努力は、ついに元の木阿弥になってしまった。
- 従業員が負担する保険料を$3.50引き上げて、$21.90とする(約19%増)。
- 週勤務30時間未満の従業員へのプラン提供を廃止する。廃止対象は従業員の約2%、3万人弱に相当する。
同社は、2007年以降、プラン変更により、何とか無保険状態の従業員を減らそうとしてきた(「Topics2007年9月19日(2) Wal-Mart 清水の舞台」参照)。しかし、PPACAが成立した翌年の2011年から、プラン対象外の短時間勤務新規採用者を徐々に広げてきて、ここに来て、新規採用に限らず、週30時間未満の従業員をすべて保険プランから外すことにした。PPACAの規定通りと言えばそれまでだが、無保険者を減らそうとする企業努力を止めてしまった。
※ 参考テーマ「Walmart」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Same-Sex Marriage Licenses in Five New States Could Be Available This Afternoon (Businessweek) |
10月6日、連邦最高裁は、旨の決定を下した。
- 同性婚を認める連邦控訴審の判決を不服とした上告を受理しない
- 連邦控訴審の判決を即時有効とする
この判決により、Utah, Oklahoma, Virginia, Wisconsin, Indiana各州の同性婚禁止法が無効となり、同性婚が認められることになる。VA州では、早速、同日13時から、同性カップルに結婚証明書を発行するとの発表を行った(New York Times)。
そして、今回の連邦最高裁の決定が及ぼす影響は、この5州に限らない。今回連邦最高裁が不受理とした連邦控訴審の判決は、第4、第7、第10控訴裁判所の判決である。従って、今回の5州以外の6州(North Carolina, South Carolina, West Virginia, Colorado, Wyoming, Kansas)でも、連邦地方裁に同性婚禁止州法の違憲訴訟を起こせば、ほぼ確実に勝訴することになる。
これまで同性婚を認めていたのが19州+D.C.(「Topics2014年6月4日 OR州/PA州 同性婚解禁へ」参照)。これに、今回の決定で5州の同性婚が認められ、さらに別の6州で近い将来認められることとなりそうだ。
もし全部の州で認められれば、全米で30州+D.C.で認められることになる。
さらに、その翌日の10月7日、今度は第9控訴裁判所小法廷が、『Idaho, Nevada両州の同性婚禁止法は違憲』との判決を下した(3-0)(New York Times)。両州知事は『対応を検討する』としているが、既に連邦最高裁が上告を受け付けないとしている以上、近いうちに、同性カップルに結婚証明書を発行することになろう。
そして、第9控訴裁判所管轄内で同性婚禁止法を持っている、Alaska, Arizona, Montana各州でも、近い将来同性婚が認められる可能性が高い。
これら5つの州で同性婚が認められれば、全米で35州+D.C.で認められることになる。
さらにさらに、近日中には、第6控訴裁判所で、Kentucky, Michigan, Ohio, Tennessee各州の同性婚禁止法に関する判決が下される予定である。
連邦最高裁は審理、判決をしなくても、事実上、同性婚を認めたことになり、それを受けてドミノ倒しのように一気に同性婚認可州が広がることになりそうだ。
もうこの表は不要かもね。
州 同性カップルの法的ステータス Marriage Civil Union Domestic Partnership 他州の法的ステータスの承認 施行日 州 法 州最高裁判決 連邦裁判決 Massachusetts 2004.5.17 A @ Same-sex marriage Connecticut 2008.11.10 A @ Same-sex marriage Iowa 2009.4.24 ○ Same-sex marriage Vermont 2009.9.1 ○ Same-sex marriage New Hampshire 2010.1.1 ○ Same-sex marriage Washington, D.C. 2010.3.3 ○ ○ (1992.6.11) Same-sex marriage New York 2011.7.24 ○ Same-sex marriage Maine 2012.12.29 ○→×→○** ○ (2004.7.30) Same-sex marriage Maryland 2013.1.1 ○ Same-sex marriage Washington 2013.6.1 ○ 2009.7.26〜2014.6.30:異性間は62歳以上のみ
2014.7.1〜:同性間、異性間とも62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与Same-sex marriage Delaware 2013.7.1 ○ Same-sex marriage Rhode Island 2013.8.1 ○ Same-sex marriage Minnesota 2013.8.1 ○ Same-sex marriage 2013.6.26. 連邦最高裁 DOMA違憲判決(「Topics2013年6月27日 連邦最高裁:同性婚を認める判決」参照) California 2008.6.17〜11.4,
2013.6.28〜○→×→○* ○ (2005.1.1)
異性間は62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与Same-sex marriage New Jersey 2014.10.21 ○ ○ (2007.2.19)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与○ (2004.7.10)
同性間、異性間とも62歳以上のみSame-sex marriage Hawaii 2013.12.2 ○ ○ (2012.1.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与Same-sex marriage Illinois 2014.6.1 ○ ○ (2011.6.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与Same-sex marriage New Mexico 2013.12.19 ○ Same-sex marriage Oregon 2014.5.19 ○ Same-sex marriag Pennsylvania 2014.5.20 ○ Same-sex marriag Indiana ○***
2014.10.6
最高裁不受理Same-sex marriag Oklahoma Same-sex marriag Utah Same-sex marriag Virginia 2014.10.10〜 Same-sex marriag Wisconsin ○ (2009.8.3)(同性間のみ) Same-sex marriag Colorado ○****
2014.10.6
最高裁不受理Kansas North Carolina South Carolina West Virginia Wyoming Idaho ○*****
2014.10.7
第9控訴裁Same-sex marriag Nevada ○ (2009.10.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与Same-sex marriag Alaska ○******
2014.10.7
第9控訴裁Arizona Montana Kentucky ?
第6控訴裁Michigan Ohio Tennessee
* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 連邦第9控訴裁判所小法廷○→ 連邦最高裁判所上告棄却、控訴審確定(2013.6.26)
**ME州議会可決(2009.5)○ → 州民投票(2009.11)× → 州民投票(2012.11)○
***連邦最高裁の上告不受理により、同性婚禁止州法が無効に(「Topics2014年10月9日 同性婚:最高裁が上告不受理」参照)
****連邦最高裁の上告不受理により、同性婚禁止州法が無効になる可能性大(同上)
*****第9控訴裁判所判決(同上)
******第9控訴裁判所判決により、同性婚禁止州法が無効になる可能性大(同上)
※ 参考テーマ「同性カップル」
Source : | $45.4 billion in retirement assets affected by HP split announcement (Pensions & Investments) |
久々のHPネタである。
Hewlett-Packard社は、10月6日、会社を2分割する計画であることを発表した。
上記sourceは、分割する際、年金プランはどうなるのか、との問題提起をしている。上記sourceによると、HPの年金プランの現状(2013年)は次のようになっている。なお、アメリカ国内のDBプランは、2008年以降、閉鎖年金となっている(「Topics2007年2月23日 HPのベネフィット変更」参照)。
アメリカ国内 アメリカ以外 DBプラン プラン資産 $12.5B $16.1B 給付債務 $11.9B $19.2B DCプラン プラン資産 $16.8B うちHP株 $524M
DCプランは個人の勘定が設定されているので、現HP社従業員の配属先に勘定ごと振り分ければ問題ない。
DBプランについては、受給権を賦与した分がいくらか、という計算を従業員ごとにしておけば、給付債務の振り分けは簡単にできる。問題は、資産の振り分けであろう。アメリカ国内のDBプランは資産超過になっているので、給付債務と同額をそれぞれの会社に分割すればよいが、国外のプランは積立不足になっており、これをどのように振り分けるのか、判断を要するところだ。振り分けられた従業員の給付債務の比率に応じて分割する、というのが順当だろうが、収益力や将来の成長性、資本金の比率など、考慮すべき要素もあろう。
※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「HP」
Source : | Bankruptcy judge: CalPERS pensions can be cut (Calpensions) |
10月1日、CA州連邦破産裁判所の判事は、Stockton市の再建計画に関する審議を終えた後、Stockton職員の年金給付削減は可能であるとの見解を示した。Detroit市の再建計画についても、連邦破産裁判所は同様の見解を示している(「Topics2013年12月5日 Detroit市:Chapter 9再建開始」参照)。
- 連邦破産法上、CalPERSは州政府機関ではない。
- 自治体はCalPERSに加入することもできるが、CalPERSを脱退して独自の年金制度を創設する、民間金融機関と契約するといったことも選択できる。
- 従って、CalPERSとの契約を変更したり、年金給付を変更することも可能である。
Stockton市の再建計画を巡っては、一般債権を有する金融機関が『CalPERSも平等に債権カットに応じるべきだ』との主張を続けていて、なかなか成案が得られないでいる(「Topics2014年4月26日 CA州3市のCalPERSとの闘い」参照)。Stockton市の再建計画に関する判決は、10月30日に予定されている。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | Boeing's Puget Sound Job Cuts Have Unions Questioning Billions in State Tax Breaks (Businessweek) |
9月29日、Boeing社は、WA州にある同社の防衛部門をリストラし、5,200人いるエンジニアのうち、約2,000人を労働コストの安い他州の工場に移転させると発表した。
これに対して、同社エンジニアで結成する労働組合は、『新機種工場のために用意した州政府の優遇策($8.7B)は何だったのか』と怒っている(「Topics2014年1月7日 Boeing:新型機種はWA州で」参照)。
一方のBoeing社は、と反論に努めている。
- 州政府の優遇策の対象は、今回のリストラ対象の防衛部門ではない
- この10年間でWA州での雇用を53%も増やしている
- $8.7Bの州政府優遇策はあくまでも試算であり、キャッシュで渡されているわけではない
WA州政府・議会は空しさを禁じ得ないだろう(「Topics2014年9月23日 誘致合戦はゼロサムゲーム」参照)。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | U.S. Cannot Subsidize Health Plans in States With No Marketplace, a Judge Rules (New York Times) |
9月30日、OK州連邦地方裁判所は、州立ExchangeではないExchangeの保険プランに対して保険料補助金(tax credits)を出すことはPPACAでは認められていない、との判決を下した。
現在、PPACAに基づく保険料補助金を巡る訴訟は4件ある(「Topics2014年7月26日 保険料補助金に2つの判決」参照)。やはり連邦最高裁の判決を待つしかないだろう。
DC控訴裁判所 小法廷(2-1)(7月22日) 違法:PPACAで規定している保険料補助金は、州立Exchange加入者に限定されている。
IRSには、連邦立Exchange加入者に保険料補助金を提供する権限はない。⇒ 小法廷での決定を一旦破棄し、12月に大法廷で審議を開始する予定。 第4控訴裁判所 小法廷(3-0)(7月22日) 合法:保険料補助に関するPPACAの規定は曖昧で、何通りもの解釈が可能である。
連邦立Exchange加入者に保険料補助金を提供することは、IRSの裁量権の範囲内である。⇒ 連邦最高裁へ? OK州東地区連邦地方裁判所 (9月30日) 違法:州立Exchangeを通じて保険料補助金が提供されるとPPACAに明記されている。 ⇒ 第10控訴裁判所へ? IN州南地区連邦地方裁判所 10月に審議予定 ? ⇒ 第7控訴裁判所へ?
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Why Hospitals Want Patients to Pay Upfront (Businessweek) |
“Today’s high deductibles are tomorrow’s bad debt.”上記sourceからの引用であるが、医療機関は、高免責額プランの増加に伴う未収金の急増に神経を尖らせている。
こうした医療機関の未収金急増の背景には、高免責額プランの普及があると考えられている。上記sourceによれば、免責額が$1,000を超える保険プランへの加入者割合は41%に達し、2006年よりも10%pt上昇している。また、PPACAで導入された保険プランクラスの中で下から2番目のクラス、"silver plans"では、免責額の平均が$2,267にまで高まっている。 一方で、保険加入者側の高免責額プランへの備えは不十分だ。
- 2012年の医療機関の未収金は$46Bに達した。
- ある大規模医療機関のグループ全体の未収金は、2013年に四半期あたり$15Mだったものが、2014年には$25Mに急増している。
こうした状況に対応し、医療機関側では『無慈悲な徴収』で評判を落とさないよう、低所得者向けの援助プログラム(「Topics2014年8月22日 医療機関の援助プログラム」参照)、無利子融資制度の紹介、Medicaidへの加入資格の確認、早期支払いによる割引制度などで患者を支援しようとしている。
- 成人の保険加入者で、免責額、保険料負担、自己負担の関係を正しく理解しているのは14%しかいない。
- 貯金が生活費の3ヵ月分に満たない家計が44%も存在する。
当websiteで警鐘を鳴らしてきた高免責額プランに伴う負担感の増大は、ようやく現実のものとなってきたようである。こうした高免責額に関する負担感が2015年のプラン選択にどのような影響をもたらすのか、注視しておきたい。
※ 参考テーマ「HSA」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」