12月31日 保険プランと価格感応度
Source :4 Findings About Cost-Conscious Consumer Behavior and High-Deductible Health Plans (Becker's Hospital Review)
上記sourceは、EBRIの調査資料(the 2013 Employee Benefit Research Institute/Greenwald & Associates Consumer Engagement in Health Care survey)から、保険プランの形態によって、加入者の価格感応度が異なっていることを紹介している。 まず、保険プラン形態別の加入者の定義は次のようになっている。 この三者を比較した場合、次のようなケースで明確な差が表れる。
  1. 保険加入を検討する際に、給付内容を確認する。⇒ CDE > HDE > TRE

  2. ジェネリックの処方を要望する。⇒ CDE > HDE > TRE

  3. 診療を受ける前に支払額を確認する。⇒ CDE > HDE > TRE

  4. 医師に対して、代替処置やその価格について質問する。⇒ CDE > HDE > TRE
なお、オリジナル資料の該当部分は次の通り。
CDプラン+HSA/HRAの組み合わせが加入者のコスト意識を高める効果があるのだとすれば、今後もますますこうしたタイプの保険プランが普及していくことになろう。その意味で、Exchangeが示した方向性は間違っていない。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「CDプラン」、「HSA」、「無保険者対策/連邦レベル

12月30日 失業給付延長打ち切り 
Source :Benefits Ending for One Million Unemployed (New York Times)
ついに連邦政府から給付される失業給付の延長が切れ、即座に130万人が給付を受けられなくなった。

こうした事態について、民主党は『共和党が認めないからだ』と主張し、共和党は『延長してもいいが、民主党がほかの歳出削減を提案しないからだ』と非難合戦をしている。しかし、2年間の歳出フレームに両党で合意したのだから、どちらも失業給付の延長はプライオリティが低いと見ているのだ(「Topics2013年12月15日 2年間の予算決議案」参照)。

さて、この失業給付の延長がなくなると、経済にどういう影響があるのか。これまでもいくつか紹介してきたが、上記sourceでは、次の3つの意見が紹介されている。
  1. 経済成長が鈍化する

    失業給付はすぐに消費に回る。それがなくなり、消費が減少することから、2014年の雇用は31万人減少する。また、2014年第1四半期の経済成長率は0.4%ポイント押し下げられる。

  2. 失業率が低下する

    失業者のうち給付が打ち切られた者、もうすぐ打ち切られる者が、真剣に職探しを始める。また、これまで断っていた不本意な職や給与でも、受け入れて就職する者が増える。一方、失業給付が受けられないなら職探しをあきらめて、労働市場から退出する者も増える。特に、高齢者は退出して年金を受け取る方を選択する可能性が高い。このように、分母、分子の両方の影響から、失業率は最大0.5%ポイント低下するとの見方がある。

  3. 貧困者が増加する

    失業給付が得られず、職も見つからない者は、所得がなくなるため、貧困層に入ってしまう。2012年、失業給付があったために貧困層に入らなかった者は170万人と推計されている。
※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」、「労働市場

12月29日 年金税制見直しの必要性 
Source :Retirement Tax Incentives Are Ripe for Reform (Center on Budget and Policy Priorities)
上記sourceは、年金税制を見直す時期に来ている、と主張している。そのポイントは次の通り。
  1. 年金優遇税制に伴う所得税軽減額は、66%が所得上位20%の層に行き、所得低位20%の層にはたったの2%しか行っていない。
  2. 年金優遇税制に伴う所得税軽減額は、総額1,370億ドルにのぼる。うち、DCプランは570億ドル、DBプランは330億ドルとなっている。
  3. DCプラン、IRAプランの拠出上限額は、2000年代に大幅に引き上げられてきた。
  4. この拠出限度額の大幅引き上げは、圧倒的に高所得者を優遇する結果となっている。

    1. ほとんどのプラン加入者は、拠出限度額に達していない。さらに、拠出限度額まで達しているのは、高額所得層に偏っている。
    2. 高い累進税率を課されている層の方が、優遇額が大きくなる。

    3. そもそも退職年金プランに加入しているのは、高額所得者が多く、低所得層の加入は少ない。
  5. 低所得層ほど、退職後の所得確保ができていない。

  6. このように、現行の年金優遇税制は、『高コスト』で、『不公平』で、『経済的に非効率』である。
連邦政府の財政健全化の議論の中で、見直しが必要になるのだろうが、不人気な制度変更となるだけに、議会がどのように動くのか。また、Obama大統領が政策アジェンダに乗せてくる気力があるのか。専ら政治の側の受け止めにかかっているような気がする。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制」、「DB/DCプラン

12月28日 SJ市:Measure B 判決 
Source :Statement from Mayor Chuck Reed regarding Judge Lucas’ Tentative Decision in the Measure B Lawsuit (San Jose City Mayor Press Release)
San Jose市(CA州)が進めている市職員のベネフィット削減策に対して、CA州地方裁判所が判決を下した(「Topics2013年9月27日 San Jose市の挑戦」参照)。判決のポイントの一部は、上記sourceに示されているが、主要な論点は次の2点である。 つまり、年金給付のフォーミュラを変更することは認められないが、給付の基礎となる報酬を削減することで給付債務を減らすことは認めるという訳である。

San Jose市長は、『手法が制限された』としながらも、年金財政の健全化に向けて道筋がつけられたと一定の評価をしている。一方、労組側は、給付額の削減が認められなかったことを評価しつつも、『労使協議の外で報酬が下げられた場合には提訴する』としている(New York Times)。

市当局、労組ともに判決から15日以内に反対意見を提出しなければ、今回の判決は確定する。

※ 参考テーマ「地方政府年金

12月27日 同性婚:連邦裁判所の介入 
Source :Same-Sex-Marriage Supporters Applaud Ohio and Utah Rulings (New York Times)
まず、UT州の続報である(「Topics2013年12月23日 UT州:郡が同姓婚証明書発行」参照)。 どちらのサイドも、本件は連邦最高裁まで持ち込まれるだろうと予想しており、その間、結婚証明書は発行され続ける。事実上の同性婚承認が続くこととなる。

一方、OH州の連邦地方裁判所は、他州で結婚証明書を得ていた夫婦の片方が死亡した際、『同州の死亡確認書で同性配偶者を未亡人として認定する』との判断を示した。OH州は州憲法で結婚を男女間のものと定義している(NCSL)。つまり、今回の連邦地方裁判所の判決は、OH州憲法を真っ向から否定することにつながる。

今年6月の連邦最高裁のDOMA判決は、『結婚の定義そのものは州の権限であるとして、連邦最高裁としての判断にはまったく踏み込まなかった』のが特徴である(「Topics2013年6月27日 連邦最高裁:同性婚を認める判決」参照)。こうした判断を下した連邦最高裁に、上記2件が持ち込まれた場合、最高裁はどのように判断するのだろうか。

※ 参考テーマ「同性カップル

12月26日 締切日の再々延長 
Source :Sign-Up Period Extended Again for Health Plan (New York Times)
来年1月1日から保険加入状態となるための加入手続きの締切日は、延長されて12月24日となった(「Topics2013年12月24日 PPACA:締切日を1日延長」参照)。ところが、この24日中に手続きが完了していなくても、『システム障害により手続きが完了しなかった』場合には、コールセンターに連絡してアドバイスを受ければ、1月1日からの保険加入が可能となるそうだ。
締切日の変更経緯
本 則12月15日
11月22日12月23日
12月23日12月24日
12月24日
最後の『?』は、今回の延長措置がいつまで受け付けてもらえるのか、明らかにされていないという意味である。他にも、どういう証明があればシステム障害で完了しなかったと認めてもらえるのか、といった詳細も明らかにされていない。

こうした措置に対し、想定通り、保険会社は困惑しているという。また、共和党議員達は、『Obama政権が保険加入者数を増やしたいためだけに行なっている』と批判を強めている。

一体、アメリカ連邦政府の行政はどうなっているのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

12月25日 不法移民国外退去の実績 
Source :FY 2013 ICE Immigration Removals (U.S. Immigration and Customs Enforcement (ICE) )
12月19日、U.S. Immigration and Customs Enforcement (ICE)が、FY2013の不法移民の国外退去実績を公表した。そのポイントは次の通り。
  1. 国外退去者数は、368,644人。そのうち、国内滞在者は133,551人、国境における不法入国阻止は235,093人。

  2. 国内滞在者の国外退去者(133,551人)のうち、犯罪歴のある者の割合は82%。

  3. 国外退去者(368,644)のうち、2012年3月に定めた優先事項に抵触する者の割合は98%。
    1. 犯罪歴のある者
    2. 重大な移民法違反を犯した者
    3. 最近不法入国した者
40万人近い国外退去者数はかなり大きな数字だと思うが、これは連邦議会からの要請が背景にあるとのことである。連邦議会は、ICEに対し、月平均34,000人の国外退去実績を上げるよう求めているのである(New York Times)。

こうした国外退去措置に関し、不法移民を守ろうとする側からは『過酷すぎる』との批判が出る一方、保守派からは『2012年度の実績よりも10%も少なく、Obama政権が移民法をまじめに執行しようとしていない』との批判が出ている。

現行法に基づく不法移民に関する執行の評価が分かれる中、肝心の移民法改革の議論は下院に移ったまま、何も動きが出ていない(「Topics2013年9月13日 移民制度改革法案:議論停止」参照)。現在、連邦議会はPPACAへの対応で手一杯となっており、来年になれば、その対応必要度はますます高まるであろう。

そして、秋には中間選挙である。保守・リベラルともその主張を強めることになるため、移民法の抜本改革は遠のきそうである。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

12月24日 PPACA:締切日を1日延長 
Source :Obama administration quietly extends health-care enrollment deadline by a day (Washington Post)
来年1月1日から保険加入となるために、加入申し込み手続きを終えなければいけない締切日がある。従来、この締切日は12月15日とされてきたが、websiteの不具合、不適格プランの大量キャンセルなどの混乱から、12月23日と変更になっていた。

ところが、上記sourceによれば、その締切日がひっそりと12月24日に変更されている、というのである。正確には、12月24日の23時59分までに手続きを終えれば、来年1月1日から保険加入状態となる。

州立Exchangeを運営している州では、自主的に締切日を延長しているところがある。 延長自体は仕方ないとしても、やはり次のような課題が残される。
  1. 締切日が次々と変更され、しかも今回のように、延長が公表されていないとなると、国民の間に苛立ちと不公平感が高まる。

  2. 実際の保険給付を行う民間保険会社との間の意思疎通ができておらず、保険会社に混乱と不満が広がる。
今回の締切日延長で一体どれだけの保険加入者が増えるのだろうか。むしろ、混乱が増すばかりのような気がする。また、休暇中のObama大統領(@Hawaii)にはどこまで報告されているのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

12月23日 UT州:郡が同姓婚証明書発行 
Source :Federal Judge Rules That Same-Sex Marriage Is Legal in Utah (New York Times)
12月20日、Utah州の連邦地方裁判所が、『Utah州が法律で同性婚を禁じているのは連邦憲法違反である』との判決を下した。

これまで、州裁判所の判決により同性婚を認めた州は5つある。また、CA州の場合は、州最高裁でも決着がつかず、連邦最高裁の判決により最終決着がついた。しかし、いずれも州裁判所の判決があっての同性婚認可なのであるが、今回のUT州の場合は、連邦地方裁の判決に基づくものであり、これまでの6州とは状況が異なる。

今回の連邦地方裁の判決に対し、州知事は批判しており、伝統的な結婚観を護っていくつもりだ、との見解を示している。UT州は、州知事、州議会両院とも共和党が握っており、法制上、同性婚を認めることは難しい状況にある。

ところが、驚いたことに、今回の連邦地方裁の判決を受けて、Salt Lake Countyは、同じ20日、同姓カップルに対して結婚証明書を発行し始めたのである。担当者は、郡司法長官から『何か命令が来ない限り発行を行う』よう指示を受けた、と言う。郡のMayorは民主党であり、この辺りからそうした指示が出ているのであろう。

州知事や州議会は何等かの対抗措置を講じてくるだろうが、一旦発行してしまった結婚証明書を取り消すのは難しいだろう。アメリカ社会では、とんでもないことが起きるものである。
同性カップルの法的ステータス
MarriageCivil UnionDomestic Partnership他州の法的ステータスの承認
施行日州 法州最高裁判決
Massachusetts2004.5.17A@Same-sex marriage
Connecticut2008.11.10A@Same-sex marriage
Iowa2009.4.24Same-sex marriage
Vermont2009.9.1Same-sex marriage
New Hampshire2010.1.1Same-sex marriage
Washington, D.C.2010.3.3○ (1992.6.11)Same-sex marriage
New York2011.7.24Same-sex marriage
Maine2012.12.29○→×→○**○ (2004.7.30)Same-sex marriage
Maryland2013.1.1Same-sex marriage
Washington2013.6.12009.7.26〜2014.6.30:異性間は62歳以上のみ
2014.7.1〜:同性間、異性間とも62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriage
Delaware2013.7.1Same-sex marriage
Rhode Island2013.8.1Same-sex marriage
Minnesota2013.8.1Same-sex marriage
California2008.6.17〜11.4,
2013.6.28〜
○→×→○*○ (2005.1.1)
異性間は62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriage
New Jersey2014.10.21○ (2007.2.19)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
○ (2004.7.10)
同性間、異性間とも62歳以上のみ
Same-sex marriage
Hawaii2013.12.2○ (2012.1.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriage
Illinois2014.6.1○ (2011.6.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriage
New Mexico2013.12.19Same-sex marriage
Utah
(Salt Lake County)
2013.12.20
(連邦地方裁)
-
Oregon○ (2008.2.4)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriag
Wisconsin○ (2009.8.3)(同性間のみ)認知しない
Nevada○ (2009.10.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚以外は認知

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 連邦第9控訴裁判所小法廷○→ 連邦最高裁判所上告棄却、控訴審確定(2013.6.26)
**ME州議会可決(2009.5)○ → 州民投票(2009.11)× → 州民投票(2012.11)○
※ 参考テーマ「同姓カップル

12月22日 キャンセルは加入義務免除 
Source :The individual mandate no longer applies to people whose plans were canceled (Washington Post)
従来加入していた保険プランが内容不足のためキャンセルされ、Obama大統領は『公約違反』と批判されてきた(「Topics2013年10月30日 公約違反」参照)。

それから2ヵ月ほど経って、ようやく連邦政府から正式な対策が公表された(CMS)。それは、『キャンセルされた保険プランに加入していた者については、2014年1月1日から10月1日をキャンセルされた保険プランから他の保険プランへの移行期間と認定し、保険加入義務を免除する』というものである。

これで、Exchangeを通じて加入する者が大きく減退することは間違いないだろう。なぜなら、キャンセルされた保険に加入していた人達は、保険加入したいが簡易なもので構わない、という選択をしてきた人達だ。フル装備で高い免責額を負担しなければならないExchangeの保険加入には二の足を踏むだろう。

2014年は、PPACAの本格稼動の年であったはずなのに、かなりスケールバックした内容で発信せざるを得ないようである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

12月21日 通勤は自家用車優先 
Source :Clock Expires for Mass Transit Benefit Fix (Government Executive)
小ネタを一つ。

連邦政府職員が公共交通機関を利用して通勤する場合の補助金が大幅カットになるそうだ。

2009年3月の経済危機対応策の中で、公共交通機関を利用した通勤への補助金は、当時の$115/Mから$230/Mに引き上げられた。駐車料に対する補助金と同水準にしたのである。その後、物価スライドにより、2013年は$245/Mまでなっていたのだが、関連法の期限切れで、2014年は$130/Mに大幅引き下げとなる。

一方、自家用車で通勤した場合の駐車料に対する補助金は、今年の$245/Mから物価スライドで$5引き上げられ、2014年は$250/Mとなる。こちらは恒久法で手当てされているからだ。

これで、公共交通機関と自家用車では、補助金が倍近く異なることになる。D.C.の連邦機関への通勤を想定すれば、公共交通機関といえば、大半はMetroである。このMetroを連邦政府職員が利用しているかというと、それほどは利用していないだろう。管理人の経験からすると、Metro利用者は低所得層が多い。また、統計上も、MD州、VA州からMetro等の公共交通機関を利用している割合は8%(2000年)しかない(「Topics2002年6月4日 Portrait of the Washington Region」参照)。

要するに、連邦政府職員にとって大事なのは、駐車料に対する補助金なのである。本当にアメリカ人は車が大好きだ。

※ 参考テーマ「ベネフィット