3月31日 ペナルティ免除規定 
Source :14 Ways To Avoid The Obamacare Tax (Forbes)
保険加入受付期間が終了すると、今年の無保険であることに伴うペナルティが確定する。ただし、そのペナルティを免除される規定が14あると、上記sourceは紹介している。

経済的な困窮事態、災害、家庭内暴力など、そうだろうな、と思われる項目が多いのだが、一つだけ、政治的な要素が入っている。それは12番の項目で、居住する州政府がMedicaid加入資格を緩和しなかったためにMedicaidに加入できなかった者はペナルティを免除するとなっている。

つまり、共和党支配の州でMedicaid拡充が行われなかったために無保険になってしまった人達は、連邦政府としてはペナルティを課しませんよ、ということである。

余談だが、上記sourceは、15番目の免除規定も紹介している。毎月最低一日間刑務所に入っていれば、課税されない・・・・・・。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般

3月30日 当面の民主党のアジェンダ 
Sources : Six Senators, Fearing Political Cost, Urge Changes to Health Act (New York Times)
Jobs and Health Bills Make for Busy Day at Capitol (New York Times)
まずは、PPACAである。今月末に加入申し込み期間が終了するが、その先を見据えて上院民主党員がPPACA改正法案を公表した。その主な内容は次の通り。
  1. "Copper Plan"を創設する。今の4類型(Platinum, Gold, Silver, and Bronze)に加え、さらに保険料が安くて免責額が大きいクラスを創設する。

  2. 州政府保険当局に対し、州境を越えて販売できる保険プランをを創設するよう命じる。

  3. 小規模企業向けの保険料補助金(tax credit)の適用を延長するとともに、適用範囲を拡大する。

  4. 連邦政府が運営している保険加入のためのwebsite "HealthCare.gov" と並存する恒久的な別サイトを立ち上げる。
いずれも、来夏以降、選挙民から文句が出てきそうなところに対処するための提案のようである。

上記sourceでは、今秋の中間選挙に向けて、PPACAと一定の距離を保つようなスタンスを打ち出す狙いがあると解説している。上院民主党議員から距離を置かれる医療保険改革法とは、一体どういう政治的な意味合いを持つことになるのだろうか。まさか、Obama大統領の『ペット・プロジェクト』ではあるまい。

続いて、同じ医療関係で、Medicareの"doc fix"である。こちらは4月1日にデッドラインが到来する。それまでに何の手当もしなければ、Medicare診療報酬は24%削減されてしまう。Medicareについては、抜本的な改革法案(H.R. 2810)が既に下院に提出されており、その中で"doc fix"は恒久化されることになっている。超党派で作成された法案であるにも拘らず、下院での成立の見通しは立っていない。共和党の超保守派が財政問題を盾に強行に反対しているからだ。

次に、失業保険特別給付の5ヵ月間延長のための法案(H.R. 3979)である(「Topics2013年12月30日 失業給付延長打ち切り」参照)。3月27日、上院では、10人の共和党議員が賛成に回って、65 v 34で可決した。昨年末で打ち切りになってから5ヵ月間の給付延長ということで、1〜3月分は遡及して支払うという。しかし、これも財政問題を盾に下院共和党保守派が反対しており、成立の見込みはない。

これらの他にも、最低賃金の引き上げ、大学授業料の補助、そして移民制度改革など、民主党としてアピールしたい政策・法案が目白押しになっているが、悉く下院で詰まってしまう。11月の中間選挙に向けて、民主党、共和党とも自説に固執する議員、人気取りに走りたい議員が交錯する。こんな状況では、TPPなどとても俎上に上げられないだろうな。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「Medicare」、「解雇事情/失業対策

3月29日 MI州:同性婚判決で混乱 
Source :Federal Government Recognizing Gay Marriages in Michigan (New York Times)
MI州にある連邦地方裁判所の判決が混乱を招いている。タイムラインは次の通り。 同じ同姓カップルについて、MI州政府は婚姻関係を認知せず、連邦政府は認知するということになる。連邦地方裁の判決で、当面の差し止め措置に言及しなかったことが混乱の大元であろう(「Topics2014年1月18日 OK州:同性婚憲法違反判決」参照)。

同性婚を巡る混乱が全米に広がっている。

※ 参考テーマ「同姓カップル

3月28日 カレッジフットボール労組 
Sources : College athletes can unionize, federal agency says (Washington Post)
NLRB says Northwestern football players can unionize. Will others follow? (Los Angeles Times)
3月26日、NLRBシカゴ支部は、カレッジフットボールの選手は労働組合を結成することができる、との見解を示した。

主なロジックは次の通りである。

【争 点】 Big Ten(本件では、Northwestern University)でフルに奨学金を支給されているフットボール選手は、連邦法の下で従業員と看做されるか。合法的に労働組合を結成できるか。
  1. 従業員とは、サービスの対価を受け取り、管理職から直接管理される者をいう。Northwesternの選手たちは、コーチという管理職のもと、奨学金(scholarship)の形で報酬を受け取っている。

  2. 大学への進学・奨学金の付与は、フットボール選手としての能力により決定されており、学業の成績により決定されている訳ではない。

  3. 奨学金を受け取っている選手たちは、授業に参加するために練習や試合を休むことが許されてはいない。

  4. フットボール選手たちは生活全般を厳しく管理されている。

  5. NCAAがシーズン中の練習・試合時間を週20時間以内に制限しているにもかかわらず、フットボール選手たちは週50〜60時間を練習・試合時間に使っている。
このNLRBシカゴ支部の決定を受け、元UCLAラインバッカーのHuma氏は、30日以内にNorthwestern大学の奨学金プレーヤー達による労組結成の可否を問う選挙を実施すると述べている。

一方、Northwestern大学、NCAAは、シカゴ支部の決定に反対する立場を表明している。

今回の決定の今後の取り扱いだが、上記sourcesによると、主に次のような手順が踏まれることになると思われる。 フットボーラーが高校から大学に進学するときの模様は、"The Blind Side"という映画で見たことがある。印象としては、各大学のスカウト合戦は、日本のプロ野球でドラフト会議がないようなものである。まさに相対で進学先と条件が話し合われている。こうしたことからすれば、NLRBシカゴ支部の判断は実態を捉えたものと言えよう。まさにプロフェッショナル・プレーヤーの入団交渉そのものである。

しかし、大学生として大学に所属している者が『従業員』であるとの判断は、なかなか受け容れ難いものがある。建前ではそんなことは認められないし、大学スポーツの根幹を揺るがすことになる。

今回の件は、単なる一大学スポーツの紛争にとどまらず、広くアメリカ社会で議論されていくことになると思われる。

※ 参考テーマ「労働組合

3月27日 同性婚配偶者の保険加入 
Source :Insurers Offering Spousal Coverage Must Offer Coverage for Same-Sex Spouses (EBIA)
3月14日、CMSは同性婚に関する規定を公表した。内容は次の通り。
  1. 保険会社が、配偶者も加入できるような保険プランを提供する場合、異性婚と同じ条件で同性婚の配偶者も加入できるようにしなければならない。これは保険プランが販売されている州、地域、加入者の居住に拘わらない。

  2. プランスポンサーが配偶者を既定しているグループ保険の場合には、その既定に反してまで同性婚配偶者を加入できるようにする必要はない。

  3. 施行は2015年度(保険加入年度)から。
同性婚を認めている州ではスムーズにことが運ぶだろうが、認めていない州では、保険プランの提供の仕方が複雑になりかねない。保険会社としては、このCMSの規定に沿ってプランを提供するのが最も簡便であるが、州政府の保険行政に関する監督権限とはどう調整をつけるのだろうか。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「同性カップル

3月26日 大企業DBプラン健全化 
Source :Financial Health of Largest U.S. Corporate Pension Plans Improved Sharply in 2013, Towers Watson Analysis Finds (Towers Watson)
大企業100社のDBプランの財政状況が、2013年急速に改善している。 株式市場が好調なことに加え、給付債務の割引率が、4.02%(2012年)から4.85%(2013年)に上昇したことが大きい。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

3月25日 Private Exchangeのお勧め先 
Source :Private Health Exchanges: Who's Buying It? (Marsh Consulting Group)
先に「Private Exchange(="PE")はこれからどんどん広がっていく」との分析を紹介した際、『多少宣伝要素もあるのだろうが』と注意書きを添えていた(「Topics2013年11月25日 Exchangeの進化」参照)。上記sourceは、そうした分析をしているのは、PEを手掛けているコンサルタント会社が自らそのように紹介しているだけで、何の意味もない、と批判している。

上記sourceは、PEを利用しているのは企業のうちの僅か3%であり、そのほとんどが従業員50人未満の企業であるとしたうえで、PEをお勧めする企業は、 の2種類だけである、と結論付けている。以下、そのような結論に至る理由を簡単にまとめておく。
  1. PEにすれば医療コストを固定化できるというが、単純にDCプランを導入するだけでは、コスト増を従業員負担にシフトさせるだけになり、従業員の不満、高い離職率につながる。DCプランにしたければ、カフェテリア・プランを導入する方がよい。

  2. PEにすればコストと管理業務を減らすことができるというが、中規模企業には当てはまらない。"Self-funded"プランにすれば、州税がかからず、州政府による給付内容の要件も満たす必要がない。PEではこうしたコストは必ず負担することになる。自分達の顧客で、PEによりこれらのコストを縮減しようとする者は皆無である。

  3. 従業員の選択肢が増えるというが、本当に従業員は多くの選択肢を求めているのか。一般の従業員は、保険プランの選択よりも車の選択の方に時間をかけている、との調査もある。従業員にとって大事なのは、ベネフィット・マネージャーとのコミュニケーションである。

  4. 海外駐在員は、PEで十分な保険プランを探し出すことはできない。

  5. リスク・プールができるというが、500人以上の従業員規模があれば、それは可能になる。PEに参加してしまうと、コストコントロールを企業自らはできなくなり、外的要因に従った保険料を受け入れるしかなくなる。また、PEでは、健康管理のインセンティブを提供することはできない。
ベネフィットの提供を経営戦略、人事雇用戦略の一環として積極的に位置づけている企業にとって、このような説明は説得的であろう。

※ 参考テーマ「Private Exchange

3月24日 Target-date fundの増勢 
Source :Target-date fund adoption in 2013 (Vanguard)
DCプランの中にtarget-date fund("TDF")を組み込む流れが強まっている。
  1. Vanguardが提供するDCプランの中で、TDFを提供しているプランが占める割合は2013年に86%に達している。
  2. TDFに投資している加入者は、2013年に31%となった。2018年には48%まで高まる見込みである。

  3. これが新規加入者に限定すると、2013年に75%にも達している。

  4. TDFをデフォルトにしているプランは、2013年に71%となった。

  5. DCプラン加入者のうち、TDFが提供されている割合は2013年、90%に達した。そのうち、実際にTDFを採用した加入者は61%を占めている。
『DCプラン+自動加入+TDF』というプランが典型になりつつあるようだ。アメリカ社会は、投資選択にあくせくするような時代は終わったようである。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

3月23日 2015年の保険料は? 
Source :O-Care premiums to skyrocket (The Hill)
少し気が早いようだが、2015年の保険料について議論が始まっている。主な日程感は次の通り。 保険会社の中では、地域によっては保険料を2倍、3倍に引き上げざる可能性もある、と語られているそうだ。トレンドとして保険料が上昇傾向にあることは間違いないが、その上昇幅を大きくさせる要因があるという。
  1. 保険会社の戦略として、1年目(2014年)の保険料は低めに抑えておいて、2年目に引き上げることを考えているところがある。

  2. PPACAの施行規定を遅らせた項目がたくさんある。特に、不適格プランにとどまることを認めたのは、健康な者がExchangeに入ってくる確率を低下させることになった。(「Topics2013年11月15日 Obama大統領の弥縫策」参照)

  3. Exchangeの新規加入者のうち、若年世代が1/4しか占めていない。(「Topics2014年3月13日 加入者数の増勢つかず」参照)
Obama政権・民主党にとって脅威となるのは、上記のように、中間選挙前に2015年の保険料が公表されることである。そこで、軒並み保険料が大幅上昇するようであれば、中間選挙での結果は目に見えている。ちなみに、上記sourceの最後に紹介されているのだが、今年上院議員選挙が行われるIowa州では、 と報じられている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月22日 ME州:Co-opsが躍進 
Source :Maine company among insurance startups winning share of Obamacare enrollees (Bangor Daily News)
以前にも、"Consumer-Oriented and -Operated Plan (CO-OP)"が好調なところとそうでないところを紹介した(「Topics2014年3月8日 Co-opsの成果と課題」参照)。

上記sourceによると、好調な中でもMaine州では、Exchangeを通じた加入者のうちの80%がco-opsを選択したということで、大きな躍進を遂げている。 不調の要因は、@exchangeのonlineがうまく作動していない、A保険料を高く設定してしまった、などが挙げられている。VT州は特別で、州政府がco-opのexchange参入を認めなったため、当該co-opは昨年9月に解散してしまったそうだ(「Topics2013年6月13日 VT州:CO-OPを却下」参照)。

加入が好調なのは結構なのだが、そこには一つ課題があるという。保険業務から撤退した場合にも保険給付が確保できるよう、保険機関は一定の引当金を積んでおくことが求められている。しかし、co-opは、連邦政府からの借入金を受けるなど財務状況が厳しく、しかもその借入金は加入者目標に合わせた額で上限が設けられている。目標を上回った分だけ、引き当てを余計に積まねばならず、資金繰りに障害が出かねない。

※ 参考テーマ「CO-OP」、「無保険者対策/ME州」」、「無保険者対策/VT州

3月21日 Exchangeは競争的市場をもたらすか 
Source :Sizing Up Exchange Market Competition (Kaiser Family Foundation)
上記sourceでは、Exchangeの導入により、州レベルの保険市場が競争的になったかどうか、検証しようとしている。もちろん、まだ新市場への加入者が全て決まった訳でもなく、データが全米レベルで公表されているわけでもないので、かなり限定的な分析であることは間違いない。主な制約要件は次の通り。 市場が競争的かどうかの判断基準は、Exchangeに参加している保険機関の数、新規参入数などが考えられるが、今回の分析では、次の3つを利用している。
  1. Herfindahl-Hirschman Index (HHI)

  2. 最大シェアを有する保険機関のシェア

  3. シェア5%以上を有する保険機関数
これらの3つの指標をもとに、2012年と2014年について7州を分析した結果は、大まかに次のようになっている。
競争的になっているCA, NY, NV
変化なしRI
競争がやや減退しているMN
競争が減退しているCT, WA
要するに、区々の結果となっているのである。まだまだカバーするデータが不足しているので、致し方ないところであろう。3月末に加入を締め切った後、データが各州政府から公表されたところで、改めて分析結果が示されることになろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル