10月10日(1) 雇用は伸びず 
Source :Unemployment stays at 9.6% as schools, governments slash jobs (Los Angeles Times)、Job Losses Rise as Private Hiring Slows and Public Payroll Shrinks (New York Times)
9月の失業率は9.6%と、前月と同水準にとどまったものの、内容が悪い。
  1. アメリカ全体で、95,000人の雇用減。
  2. 民間雇用は、64,000人増。
  3. その内訳は、低賃金、パートタイマー、短期間雇用などが多く、業種も、人材派遣業、飲食業(33,900人増)、医療(23,900人増)が多い。製造業では2ヵ月連続で雇用減となっており、建設業も再び減少となった。

  4. 政府部門は、15万9,000人の雇用減。

  5. センサス関係では、77,000人の雇用減。

  6. 地方自治体全体で、76,000人の雇用減。そのうち3分の2は、教師などの公立学校関係である。また、地方政府では7,000人の雇用減。公立学校の大幅雇用減は一度のショックと見られるが、財政赤字に悩む地方政府の雇用減は、まだまだ続く見込みである。2009年から2011年の間に48万人の減少があるとの推計もある。

  7. "実感失業率"は、8月の16.7%から、9月は17.1%に急増した。これを見ると、就業を諦めた人、やむを得ずパートタイマーを選択している人が急増していることが見て取れる。

    ○失業率データ(BLS数値
Obama大統領と連邦議会民主党が夏休みを削ってまで対策を打った教職員確保策は、予想通り効果を発揮しなかった(「Topics2010年8月21日 誰も雇わない」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

10月10日(2) 中央銀行総裁の関心事 
Source :Fiscal Sustainability and Fiscal Rules (FRB)
Greenspan氏も積極的に社会保障制度について発言していた(「Topics2005年2月19日 グリーンスパン議長の発言」参照)が、Bernanke氏も社会保障制度の持続可能性について言及している。

上記sourceで社会保障制度について触れた部分のポイントは次の通り。
  1. 各自治体政府は、高齢化が進む中で、医療保険の提供や年金の支給に伴う長期的な圧力を受ける。

  2. 高齢化が進む中で、医療コストを抑制することは重要である。それは、財政的理由のみならず、経済の活力を左右するからである。

  3. 公的年金に伴う支出圧力よりは医療提供に伴う支出圧力の方が大きいと思われるが、いずれも重要な政策課題である。

  4. 州政府にとっても、年金プランと退職者医療は、対処が困難な課題となりつつある。

  5. 制度改正に対処するために、個々人には長い準備期間を用意する必要がある。
これだけを読んでも、連邦レベルでも州レベルでも、いずれ改革は避けられないというFRB議長の認識が窺われる。

※ 参考テーマ「社会保障全般

10月9日 Mini-medは例外扱い 
Source :Administration's Waivers Of Health Law Raise Questions About 'Mini-Med' Plans (Kaiser Health News)
"Mini-med" plansという、保険プランの種類がある。保険給付額や診療医を限定することで、保険料を安く抑えているプランである。ここのサイトには、そのサンプルが紹介されている。低賃金労働者やパートタイマーを対象として、企業が提供している場合も多い。

一方、医療保険改革法では、保険プランの給付限度額の撤廃を求めており、2011年から2014年にかけて徐々に限度額を引き上げていくことにしている。 この規定がそのまま適用になると、これまでの"mini-med"は、保険料を上げていかざるを得なくなる。そうなると、低所得者層では、これまで加入していた"mini-med"の加入を続けられないというところが出てくる。さらには、企業が提供する保険プランの選択肢からはずす、ということになりかねない。

こうした事態を受けて、HHSが、給付上減額引き上げ規定の例外を認めた。例外期間は1年間である。

HHSの理屈は、無保険者になるよりはまし、ということである。しかし、医療保険改革法の推進者達は、"under-insured"の状態を放任することになり、改革の精神にもとると批判している。

2014年になれば、"Exchange"が創設され、"tax credits"も提供されるので、低所得者層が"under-insured"の状態に置かれたままになるということはなくなるはずである。しかし、それまでの移行期間をどうするか、民主党政権も揺れているところである。理想は改革法通りに粛々と改革を実行していくことなのだろうが、この中間選挙を控え、100万人もの加入者がいる"mini-med"がつぶれ、加入者達が無保険者に転落するという事態なれば、混乱は必至だ。

おそらく、例外は一年、となっているが、例外継続の状態が2013年まで続き、2014年を目前にした今頃の季節に、また一悶着あることになろう。

さらには、"Exchange"の創設も、一部で危惧されている。New York Times紙によれば、ミネソタ州のPawlenty(R)知事は、公に"Exchange"の創設に反対している。

当分は移行期間中のごたごたが続きそうである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

10月8日 "Part D" Planの動向 
Source :Medicare Part D Spotlight: Part D Plan Availability in 2011 and Key Changes Since 2006 (Kaiser Family Foundation)
上記sourceは、2006年から始まったMedicare Part Dプランの動向をまとめたものである。制度開始から5年経ったわけだが、医療保険改革法により、今後10年間で、また大きく姿を変えていく見込みである。

上記sourceのポイントは次の通り。なお、調査対象は、独立したプラン(Medicare Part D stand-alone prescription drug plans, "PDP")である。
  1. Part Dプランの加入者は、全体で2,800万人だが、その60%はPDPに加入している。

  2. 2011年は、加入者一人あたり平均33のPDPの選択肢が用意される。これは従前よりも少ない。CMSの規制強化により、保険会社が似たようなプランや加入者の少ないプランを廃止したことが影響している。
  3. 平均保険料は、10%上昇する。
  4. "Doughnut hole"の縮小がみられる。
保険料は今後も上昇する見込みである。

※ 参考テーマ「Medicare

10月5日(1) Three-Martini Lunch 
Source :The Return of the Three-Martini Lunch (BusinessWeek)
最近、"Three-Martini Lunch"が復活しつつあるそうだ。"Three-Martini Lunch"とは、日本でいえば夜の宴席のようなものらしく、場合によっては午後の4時くらいまで続くそうである。

ただ、このような贅沢なランチは、NYのビジネス街ではあるのだろうが、同じアメリカでもワシントンD.C.ではあまり一般的ではなかったような気がする。また、上記sourceにある通り、ワインが一般的になりつつあるというのも理解できる。

いずれにしても、ビジネスの潤滑油が復活しつつあることは、アメリカ経済にとっては朗報といえるのだろう。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

10月5日(2) Prenup 
Source :実践ビジネス英語10月号 (NHK)
正式には、"Prenuptial Agreement"という。簡単に言えば『婚前契約』であるが、例えば、こんな形式になっている。

なぜこれを取り上げたかというと、以前紹介した"Love Contract"(「Topics2007年2月14日(2) Love Contract」参照)と似ているからである。何かトラブルがあるといけない、ということで、社内恋愛や結婚においても事前契約を結んでおく、というのである。

とても日本では馴染まない、と思っていたが、やはりアメリカ人にとっても『最も気まずいことの一つ』のようである。上記sourceで紹介されている特徴を列記しておく。 つくづく契約が好きな国民だと思う。ただ、身の回りにも、財産の帰属先を明確にしているという夫婦も増えている現状を見ると、将来的には日本でも必要になってくるのかもしれない。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「社内恋愛

10月4日 USCCがAZ州法に反対 
Source :US court to rule on state laws (The Financial Times)
全米商工会議所(USCC)が、『アリゾナ州法が定めている"E-Verify"の利用義務付けは、連邦政府の専権事項を侵しており、違憲である』と訴えているそうだ(「Topics2010年6月23日 不法移民締め出し政策」参照)。

『移民政策は連邦政府の専権事項』という連邦政府の主張(「Topics2010年7月7日 連邦政府がAZ州を提訴」参照)に相い乗りし、その連邦政府は『"E-Verify"の利用を義務付けてはいない』という論法である。

やはり、この不法移民問題の本質は、連邦政府の専権事項か否か、なのである(「Topics2010年7月9日 問題の本質は「専権事項」」参照)。

ちなみに、"E-Verify"の利用義務付けを求めている自治体は、一人AZ州ばかりではない。仮に、USCCの主張が連邦裁判所で認められることになると、全米で一気に議論が燃え上がる可能性がある。そうした意味で、注目の裁判である。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

10月1日 "Exchange":8つの課題 
Source :Health Insurance Exchanges and the Affordable Care Act: Eight Difficult Issues (The Commonwealth Fund)
当websiteでは、"Tax Credits"と"Exchange"について取り上げたばかり(「Topics2010年9月19日 Tax Creditsと"Exchange"」参照)だが、その後者の設立にあたっては8つの実務的な課題がある、と上記sourceは説いている。

  1. ガバナンス

    1. 独立した行政組織とする
    2. 州政府の法律や行政管理の管轄外にする
    3. 運営委員会は関係者や専門家も参加する
    4. 外部に競争的な市場が存在するような業務については外部委託する

  2. 逆選択の排除

    1. "Exchange"の内外でルールを統一する
    2. "Exchange"に参加する保険会社と参加しない保険会社との間のリスク調整ルールを決める(HHS

  3. "Self-Insured" Plansとの両立

    1. "Self-Insured" Planとは、『医療コストに関するリスクを十分負担できるものである』ことを明確に定義する(DOL, DOT)(「Topics2010年1月21日(2) 2つの企業提供保険プラン」参照)
    2. 州政府による"Self-Insured" Planへの監督・規制について検討する("Self-Insured" Plansは連邦法に基づくプランのため)

  4. 事業主にとっての魅力

    1. 事業主の保険料負担割合を固定する
    2. 所得、喫煙の有無、健康増進運動への参加状況により従業員の負担を変える

  5. 適格プランの選定

    1. "Exchange"側に保険会社の選択肢を確保する
    2. 可能な限り、保険料の抑制と競争性の確保の両立を図る

  6. 州民への情報開示

  7. "Tax Credits"の算出(「Topics2010年9月19日 Tax Creditsと"Exchange"」参照)

  8. 管理コストの抑制
やはり、時間のかかる作業が必要なのである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル