2月29日 退職リスク指標(NRRI)
Source :The National Retirement Risk Index: An Update from the 2022 SCF (Center for Retirement Research)
上記sourceでは、『国民退職リスク指標(National Retirement Risk Index, "NRRI")』なるものが紹介されている。これは、退職前の生活水準を退職後に維持できなくなる家計の割合を示している。試算する元のデータは、FRBの"Survey of Consumer Finances"である。この調査は3年ごとに行なわれ、最新データは2022年調査分(2023年10月公表)となる。
  • 推計所得代替率=全退職時資産をフローに換算した所得/退職時の所得
    これを62歳退職、66歳退職、67歳退職時それぞれについて試算する。
    全資産:公的年金、DBプラン、DCプラン、その他金融資産、持家所得(リバースモーゲージを購入すると仮定した所得)

  • 目標所得代替率=退職後に退職前と同じ水準の生活をするために必要な所得/退職時の所得

  • NRRI={推計所得代替率目標所得代替率×90%}となる家計数/全家計数(%)
上記レポートのポイントは次の通り。
  1. 2022年のNRRIは、前回の2019年当時から大きく下落した。
  2. 下落の寄与度別分析は次の通り。
  3. 最も大きな理由は、持家価格の上昇である(「Topics2024年2月15日(1) CPI3%近傍」参照)。
  4. 次に大きいのが、金融資産の増加である。この時期、コロナ禍に伴う給付金が支給されていた(「Topics2021年3月4日 上院民主党が給付金制限」参照)。
  5. 株高、金利高も寄与した。
  6. 住宅価格が上昇したことで、持家家計のリスクは大幅に低下した。
  7. 株高により、DCプラン加入者のリスクは低下した。他方、退職所得プランに加入していない家計のリスクは、僅かな低下にとどまった。
  8. 持家をリバースモーゲージに変換することを前提としているため、リスクは低めに推計される。実際に持家をリバースモーゲージに変換することは稀である。持家を資産から除外した場合には、7割の家計が退職前の生活水準には達しないとの試算もある。
こういった試算をもとに、年金政策、高齢者医療政策が議論されるべきだと思う。

※ 参考テーマ「公的年金」、「DB/DCプラン」、「Medicare」、「人口/結婚/家庭/生活

2月27日 共同経営者新定義再延期
Source :Court bumps joint employer rule start date to March 11 (HR Dive)
2月23日、TX州連邦地方裁は、NLRBの共同経営者の新定義の施行を、3月11日まで延期するよう命じた(「Topics2023年12月8日(2) NLRB共同経営者新定義延期」参照)。前回の延期はNLRBの自主的な延期であったが、今回は連邦地裁の命令によるものとなった。

共同経営者の新定義については、全米商工会議所が反対していて、訴訟に持ち込んだ。2月13日には、原告の意見表明が行なわれた。また、International Franchise Association強く反対している。

雲行きはだいぶ怪しくなっている。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

2月22日(1) SB21店舗が労組申請
Source :Starbucks union organizes record 21 stores in 1 day (HR Dive)
2月20日、Starbucksの21店舗の従業員達が、労組結成のための申請を行なった。一日の申請数としては最大となるそうだ。SB社における労組結成の勢いは低迷していると思っていたが、今回は頑張ったようだ(「Topics2022年12月13日(1) SB労組結成総括」参照)。これにより、累計で482店舗が労組結成のための選挙申請を行ない、386店舗で労組が結成されたとのことだ(2月9日時点)。

もう一つ、注目点は、SB社は、今年中に全労組と労使協定を結びたいと表明している。ただ、これはまともに受け取ってよいものかどうかは疑問だ。

※ 参考テーマ「労働組合

2月22日(2) SAVE Plan債務免除開始
Source :Student loan balances wiped for the first batch of borrowers in Biden's SAVE plan (NPR)
アメリカ教育省(Department of Education)は、約153,000人に対し、学生ローンを免除するとの通知をEメールで発信した(Press Release)。今回免除されたローン総額は約$1.2Bに達する。

今回の措置は、バイデン政権が設けた"SAVE Plan"に基づく(「Topics2023年7月1日(2) 学生ローン返済免除案敗訴」参照)。

今後も対象者にはローン免除通知が届くそうだが、通知を受け取った者は、特に何もアクションを取る必要はない。

※ 参考テーマ「教 育

2月22日(3) Medicaid拡充に傾斜
Source :Red states that have resisted Medicaid expansion are feeling pressure to give up (NPR)
2023年9月22日、North Carolina州(CN)で予算案が成立し、Medicaid拡充策が決定された(「Topics2023年9月1日(2) NC州:Medicaid拡充できず」参照)。施行は2023年12月1日であった。これで、Medicaid拡充策を採用していないは、10州だけとなった。

Status of State Medicaid Expansion Decisions: Interactive Map (Kaiser Family Foundation)
上記sourceによれば、その10州の中でも、Medicaid拡充策を採用せざるを得ないとの雰囲気が、共和党議員達の間で広まっているそうだ。具体的には、Mississippi、Alabama、Georgiaが挙げられている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/NC州」、「無保険者対策/MS州」、「無保険者対策/AL州」、「無保険者対策/GA州