3月20日 リベラルのリトマス試験紙
Source :Medicare for All Is Divisive (in the Democratic Party) (New York Times)
先に、"Medicare for All"法案が提出されたことを紹介した(「Topics2019年3月1日 Medicare for All法案」参照)。上記sourceによれば、4月にも下院の関係委員会での審議が始まるという。

同法案には100人以上の支持議員がいるそうだが、彼らの大半は新たに選出されてきた下院議員達だ。それだけに、風を感じているのだろう、同法案を支持するかどうかは、「リベラル派のリトマス試験紙」とまで言われている。

ところが、民主党中道派及びベテラン議員達は、全面改革に取り掛かるのではなく、先ずはPPACAの改善を図ることを優先しようとしている。具体的には、既往症 を持つ人の保険加入保証と、処方薬価格の引き下げである。

Kaiser Family Foundationが実施した世論調査によれば、"Medicare for All"法案よりも、上記2点を優先してほしいとの意見が強い。さらに、"Medicare for All"法案を支持すると回答した人の中でも、税負担が重くなる可能性があるとの説明を受けると不支持に回る人が多い。民主党首脳がこうした課題を優先する理由がここにある。

"Medicare for All"法案には、現行制度と較べて大きな欠点がある。
  1. 企業提供保険プランが廃止される。すなわち、企業が負担していた医療費を連邦または自治体が負担する、つまりは税負担が重くなるということだ。

  2. 保険会社の雇用が大きく損なわれる。
企業提供保険プラン、税負担、雇用といったアメリカ人にとって重要と考えられている所で理解が得られるかどうかが分岐点となる。もっとも、アメリカの若者が大きな政府を求めるのだという、時代の転換が起きているのなら、リベラル派の主張は勢いを増すことになるだろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「Medicare」、「医療保険プラン」、「大統領選(2020年)

3月16日 最低賃金引上げ法案
Source :$15 Federal Minimum-Wage Bill Moves Forward (SHRM)
連邦議会下院で、連邦最低賃金の引き上げに関する法案(Raise the Wage Act)が審議されている。既に教育労働委員会は3月6日に可決しており、下院本会議でも可決される見通しとなっている。

しかし、共和党が多数となっている上院での可決の見通しは立っていない。

法案は、現行では連邦最低賃金は$7.25/hとなっているのを、6年かけて徐々に引き上げ、2024年には$15/hと倍以上の水準に持っていくという内容だ。

共和党は、小規模事業者に打撃を与え、雇用が減少するとして反対を唱えているが、シンクタンクの評価は区々である。

雇用が減少するかどうかは、引き上げ時期の経済状況や技術革新の進展によって大きく左右される。6年間も連続して上げていけば、おそらく雇用は減少することになろう。

※ 参考テーマ「最低賃金

3月15日 残業代対象者新ルール提案
Source :Federal Overtime Rule Proposal Revives Debate on Fair Salary Cutoff (SHRM)
3月7日、労働省(DOL)が残業代対象者の新ルール提案を公表した。残業代支払いの対象となる労働者の所得上限を巡っては、オバマ政権時代に大幅引き上げ提案が行われ、施行時期まで決まっていたのに、裁判所の判決により施行されないままになっていた(「Topics2016年12月17日 残業代新ルールの行方(2)」参照)。

今回示された所得上限額は、現行制度の定める金額とオバマ政権時代の提案のほぼ中間の値となっている(「Topics2016年5月20日 残業代対象者新ルール」参照)。
現行制度オバマ大統領提案
(2015年6月)
DOLルール
(2016年5月)
新DOLルール提案
(2018年3月)
残業代対象者の年収最高額$23,660$50,400$47,476$35,308
新規対象者(増加分)-約500万人約420万人
州別増加人数
約100万人強
今回の労働省提案に関して、経営者側は概ね肯定的に捉えているそうだ。引き上げ額が大幅に下がったことに加え、多くの大企業が2016年の労働省ルールに素早く対応したため、今回の新ルール提案で影響を受けないこともその要因となっている(「Topics2016年12月9日 残業代新ルールの行方」参照)。

一方、労働団体や民主党議員は強く反発している。連邦議会民主党議員は、所得上限額をもっと引き上げるように法案の提出を検討しているそうだ。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

3月13日 Medicaid縮小提案
Source :White House proposes deep cuts to HHS and Medicaid in new budget (Modern Healthcare)
トランプ政権になって、大統領予算教書は単なるwishlistと化してしまったため、あまり興味が湧かない。それでも、大統領が何を考えているのかを知る証拠となるため、記録しておく。

今回の提案の中で特に目立つのは、医療関係の予算が大幅に削減されていることである。HHS予算については、2020年度で12%のカット提案になっている。

具体的には、
  1. Medicaid:PPACAに盛り込まれていた拡充策を廃止するとともに、各州への配分を人口割にすることで、2029年度までの10年間で$1.5Tの支出を削減する。

  2. Medicare:Part Bの処方薬に関する償還額を削減する。
といった提案が盛り込まれているそうだ。

何かもっと具体的に議会で議論ができるような提案にならないものか。

※ 参考テーマ「一般教書演説