Source : | Reviewing Employee E-Mails: When You Should, When You Shouldn't (SHRM) |
アメリカでは、『職場におけるe-mailに関して従業員のプライバシーは存在しない』というのが原則となっている。"The federal Electronic Communications Privacy Act (ECPA)"では、職場のe-mailは企業の所有物であると明記されているそうだ。
上記sourceによれば、少なくとも2/3の企業は不正なe-mailがないかどうかモニターしていて、1/2の企業が不正e-mailを理由に解雇したことがあるそうだ。
それくらい、従業員のe-mailをモニターすることが一般的になっているにもかかわらず、まだまだグレーの部分が残されているらしい。事前の判断はなかなか難しいものの、常に公使の区別を意識しておく必要はあるのだろう。
- PC、ネットワークが企業提供であれば、一般的に企業が従業員のe-mailをモニターすることは自由である。ただし、それは適切な事業目的である場合に限られる。『適切な事業目的』とは、
- 盗難や信用の失墜などから企業を守る
- 裁判に備えて証拠を確保する
- 職場にハラスメントがないかどうか確認する
- 競争相手に所有権や不適切な情報を提供していないかどうかを確認する
などが考えられる。
- NLRBは、「従業員は労働組合活動に関して企業のe-mailシステムを利用する権利を持っており、企業がその内容をモニターすることは認められない」との見解を持っている。
- 企業提供のPC上で使われている私用アカウントのe-mailについては、場合によって判断は異なる。州法一般では、従業員の私用e-mailを企業側がモニターすることは禁じられている。しかし、勤務時間内に企業提供PCを使用した場合などは、異なる扱いになる場合がある。
- CA州最高裁:公務員が個人所有のデバイスまたは私用アカウントから送ったe-mailは、公務にかかわる内容であれば公的記録である。
- NJ州最高裁:企業提供PCで私用アカウント(パスワード付Yahooメール)から送ったe-mailは、秘匿特権(attorney-client privilege)の適用を受ける。
- CA州控訴裁判所:企業提供PCで職場のアカウントから送ったe-mailは、プライバシー保護も秘匿特権も適用されない。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | Is Canada the Right Model for a Better U.S. Health Care System? (Knowledge@Wharton) |
当方にとってはとても関心のあるテーマである。「アメリカとカナダの医療保険はどうしてこんなに違うのか。」
上記sourceの前半では、国民性、文化の違いだとの主張が紹介されているが、後半部分ではもう少し現実的な理由が紹介されている。この違いは偏に人口密度の違いによるものだろう。保険数理がしっかりと働くためには母集団が充分に確保される必要があるからだ。やはり、国の成り立ちに遠因がありそうだ。
- 1950年代、Saskatchewan州が州民に対して病院保険を提供を開始した。その際、州政府は全州民の病院での診療費用を負担する考えであった。その10年後、診療所での診療費用も負担することを提案した。
- その頃、アメリカ国内では既に成熟した保険産業が成立していたが、カナダにはなかった。従って、カナダでは、州政府に代わって保険会社が診療報酬を支払うということができなかった。任意の保険プランや、医師自身が運営する前払い制度のようなものがあるだけだった。
※ 参考テーマ「カナダ事情」
Sources : |
Single-payer healthcare could cost $400 billion to implement in California (LA Times) $400 billion price tag for California single-payer bill (Modern Healthcare) |
CA州議会に、単一保険制度導入のための法案(SB 562)が提出されている(「Topics2016年9月30日 CA州:Public Optionの復活?」参照)。これに関連して、5月22日、法案審議のための調査分析結果が公表された。主なポイントは次の通り。単一保険制度の賛成派は、現行制度の下で保険会社が得ている利益と使っている管理コストをなくすことができるということを理由にしている。一方、企業サイドは、新税が課されれば、事業に悪影響が及び、CA州内で雇用を伸ばすことが難しくなると反論している。
- 加入者は全てのCA州住人。不法移民も含まれる。
- 保険料、窓口負担、免責額などの加入者負担はない。
- 州政府が医療機関等と直接契約し、診療報酬を支払う(Medicare方式)。
- 単一保険制度の運営に必要な経費(診療報酬+管理費用)は、年間$400B程度。
- その財源として検討されている項目は次の通り。
- 現行制度で医療関係に使われている公的支出総額は$200B/Y。これらを単一保険制度に振り向ける。
- 企業・従業員が負担している医療保険関係支出の総額は$100〜150B。単一保険制度の導入により、これらは負担減となる。
- 残る$50〜100Bについては、新たな財源を確保する必要がある。15%程度の給与税(payroll tax)が一案として示されている。
単一保険制度が導入されれば、CA州内の事業所は医療保険を提供する必要性がなくなるため、新たな税負担を求められるのはある意味当然だろう。新税となる給与税(payroll tax)については、事業主負担なのか、従業員負担なのか、それとも両方で分担なのかはこれからの議論である。
ただし、ここで注目したいのは、負担が誰なのかではなく、給与税という形での財源調達の意味合いについてである。
通常、企業提供保険プランの保険料は、給付プラン内容によって「定額」の保険料、つまり応益負担が求められる。ところが、給与税(payroll tax)という形で負担が求められるということは、「定率」での実質的な保険料負担ということになる。つまり、応能負担、所得再分配の機能が入ってくることになる。もしもこうした負担の形が成立すれば、65歳未満の医療保険制度の中に初めて所得再分配機能が盛り込まれることになる。
仮に新税を入れる場合には、州議会両院の2/3以上の賛成が必要となる(現状、民主党は両院とも2/3以上の議席を持っている)。さらに、Medicare、Medicaidの連邦政府負担分を新制度に投入するための認可をトランプ政権から獲得する必要がある。この点はかなりハードルが高そうだ。
※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」
Source : | Sununu proposes return of high-risk pool (New Hampshire Union Leader) |
2016年、New Hampshire州(NH)の保険会社は、Exchange個人市場で大幅赤字を計上した。保険料収入合計$431Mに対して赤字額が$43Mに達した。売上高利益率がマイナス10%である。
このままいくと、2018年の保険料引き上げ幅は44%にもなるとも報道されている。
このような事態に対応するため、州知事および州保険監督長は、連邦政府に対してPPACAの適用除外を申し入れることを検討すると表明した。検討の俎上にあがっているのが次の2つ。NH州は、PPACA施行前はハイリスク保険を導入していたので、その経験が活かせるということなのであろう(「Topics2017年5月18日 ME州ハイリスク保険の成功」参照)。
- 既往症のある者を対象としたハイリスク保険
- 保険会社間の再保険制度
※ 参考テーマ「無保険者対策/その他州」
Source : | H.R. 1628, American Health Care Act of 2017 (CBO) |
5月24日、下院で可決されたAHCA(HR 1628)に関するCBO再々推計がようやく公表された。
当初推計、再推計との比較では、となっている(「Topics2017年3月25日(1) CBO再推計」参照)。
- 連邦政府財政赤字の減少幅(2017-2026年):$337B ⇒ $150B ⇒ $119B
- 無保険者数(2026年):5,200万人 ⇒ 5,200万人 ⇒ 5,100万人
無保険者数の急増という予測は変わらない。
一方、5月23日、HHSは、PPACA施行状況のレビューを公表した。 4年間で保険料は倍になった、という訳だ。オバマケアで保険料が倍になって大変でしょう、AHCAなら保険料は下がりますよ、という主張の裏づけ資料なのである。ただし、この保険料の数値は、保険料補助金(tax credits)給付前の数字である。国民、特に低所得層の実感とは異なるものとなっている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Trump’s budget raises PBGC multiemployer premiums, hits federal employee benefits (Pensions & Investments) |
上記sourceによると、5月23日に公表された予算教書では、年金関係として次の2つの提案が盛り込まれている。何とも厳しい提案である。
- PBGC複数事業主プラン
積立不足のプランに対して課せられる可変保険料と退出保険料を、単独事業主プランと同様の水準に引き上げる(「Topics2015年11月13日 PBGC保険料スケジュール」参照)。
- 連邦政府職員退職年金プラン
- 年金額算定対象期間を、最終3年から5年に延長する。
- 必要な拠出金のうち、半額を職員が負担する。
- COLAを縮小または撤廃する。
※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」、「公的年金改革」、「一般教書演説」
Source : | Vermont approves voluntary private-sector retirement plan (Pensions & Investments) |
5月19日、州議会は退職貯蓄プラン法を可決した。州知事は署名する見通しである。これでVT州は全米で9番目に導入した州となる。 制度の主な概要は次の通り。
- 名称:Green Mountain Secure Retirement Plan
- 施行時期:2019年1月予定
- 対象企業:従業員50人未満、自営業者
- 参加企業の従業員は自動加入となるが、自主的に未加入を選択することは可能。
- 拠出金は従業員負担。将来的には企業拠出も可能となる。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | Trump to propose big cuts to safety-net in new budget, slashing Medicaid and opening door to other limits (Washington Post) |
トランプ大統領は、23日に予算教書を公表する予定になっている(「Topics2017年3月21日 大統領予算提案骨子」参照)。報道によれば、厳格な情報管理が行われていてなかなか全容がわからないらしい。
その中でも、上記sourceによると、Medicaid、貧困対策の連邦負担分の大幅削減が盛り込まれているそうだ。いずれも給付対象の選定基準を州政府に任せるとの方向性を示している。Medicaid予算削減案は、先に下院が可決したAHCA(HR 1628)に基づくものとなっている(「Topics2017年3月23日 AHCA修正案」参照)。
果たしてこれで上院共和党の同意を得られるだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「一般教書演説」
Source : | Minimum-wage hikes do close restaurants. Just not the ones you care about (Washington Post) |
連邦政府が最低賃金引き上げを検討する気配すらない中、州、自治体で独自に最低賃金を引き上げようとする動きが続いている(SHRM)。このままこうした動きが続いていけば、一国二制度の状況が明白になってしまう。
- Nevada州
現在、連邦政府と同じ$7.25/hとなっているが、これを2022年から引き上げ、最終的には$12/hとする案が検討されている。
- Illinois州
現在、$8.25/hとなっているが、2022年までに$15/hまで引き上げる案が検討されている。
ところで、『最低賃金を引き上げると雇用が減少する』という議論が行われる。上記sourceで紹介された調査研究では、そうした議論に一定の結論を示している。※ 参考テーマ「最低賃金」
- 調査対象は、San Francisco Bay Areaのレストラン3万店以上。(SF市はCA州に先駆けて最低賃金を引き上げている。「Topics2014年1月28日 SF市の最低賃金」参照。)
- 最低賃金の引き上げがレストランの閉店につながる可能性について分析。結果は、レストランの人気に拠る所が大きい。
- 5☆のレストランは、よいサービスを提供するために人材投資に積極的である。また、利益率も高いので、最低賃金引き上げの影響はほとんどないと考えられる。
- 最低賃金の引き上げは、(レストラン)市場の競争を高め、収益の悪い店の退出を促す。