1月19日 医療費の負担感 
Source :Trouble Paying Medical Bills: 2015 Versus 2005 (NCPA)
医療費の負担を賄うために、貯蓄を取り崩す、借金をする、医療機関に行くのを控える、最終的には自己破産を宣告する、といった金銭的トラブルに巻き込まれる度合いは、10年前とほぼ変わっていないそうだ。医療費のために自己破産を宣告したのは、何と3%もいるのである。

しかし、医療費の負担感の中身が変わってきているとの指摘が示されている(Modern Healthcare)。10年前の重い負担感は「無保険」であるが故の場合が多かったが、現在、Medicaidの拡充、PPACAに基づく保険料補助金などにより無保険者が大幅に減少しており、むしろ自己負担(Out-of-Pocket)の重さが負担感の中心となっているというのである。

その自己負担の重さの主要因は、「高免責額制」である。当websiteで何度も紹介している通り、企業負担の抑制、保険料上昇の抑制といった観点から「高免責額制」が急速に普及している。この流れを連邦政府も後押ししている。

前述のModern Healthcareの筆者は、免責額の対象から高額医療サービスを外すことから始めてはどうか、と提案している。しかし、その対象外とした高額医療サービスに要する費用をどこに求めるのか。企業負担の増額なのか、連邦政府の補助金増額なのか、保険料の引き上げなのか。

一方で、こうした重い自己負担を緩和する医療保険も開発され、徐々に普及しているとのことである(IFAwebnews.com)。"Critical Illness Plans"と呼ばれる保険プランで、ガンや心臓病など、医療費が高額となる特定疾病にかかると一時金を支払ってくれる。これにより、免責額や自己負担分を賄うことができるようになる。

特定疾病は各保険プランにより異なるし、罹病が2回目でも支払われる場合と支払われない場合があるそうで、なかなか一律に制度設計を表現することは難しいようだが、昨今の高免責額制の普及に合わせて、企業提供、個人購入とも増えている。例えば、Mercerの調査によれば、500人以上の従業員を雇用している企業で、Critical Illness Plansを提供している割合は、2009年には34%だったのが、2015年には45%にまで高まっている。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「HSA

1月17日 最高裁:組合費に大転換? 
Source :Supreme Court Seems Poised to Deal Unions a Major Setback (New York Times)
『連邦最高裁が、州政府労組の組合費について、大転換となる判決を下すのではないか』との観測記事が全米で流れている。

州政府労組の組合費については、1977年に連邦最高裁が次のような判決を下しており、以後40年間、ずっと変わらずにきている。 こうした判決に基づき、CA州など20州以上の州法では、 と定めている。

ところが、今回、訴えているCA州公立学校教師達は、非組合員は団体交渉分を含めて組合費を負担し続けなければならないのか、と問うているのである。

1月11日に行われた公判において、9人中5人の判事が負担する必要はない、との見解を示したのだ。いつもは中立的立場が多いKennedy判事が、保守系判事4人とともに、非組合員からの組合費徴収は違憲だと考えているそうだ。Kennedy判事は、「州政府が雇い主である以上、州政府労組が行うあらゆる団体交渉は政治的性格を持たざるを得ない」と厳しい態度を示した。 もしも本当に1977年判決がひっくり返れば、公的部門の労組にとっては大打撃となることは間違いない。

※ 参考テーマ「労働組合

1月16日 LA州:Medicaid拡充へ 
Source :Louisiana’s New Governor Signs an Order to Expand Medicaid (New York Times)
1月12日、LA州知事のJohn Bel Edwards氏は、PPACAの規定に基づきLA州のMedicaid対象者を拡充するとの州知事令(executive order)に署名した。州知事就任2日目の仕事である。

施行日は今年7月1日で、が、新たにMedicaid加入可能となる。

Edwards州知事は民主党で、選挙公約にMedicaid拡充を掲げていた。早速それを実行したわけだが、LA州議会はと圧倒的多数を共和党が握っている。従って、知事令という形式を取らざるを得なかった。当然のことながら、これから州議会共和党による知事令阻止工作が開始されることになるため、実際の施行に辿りつけるのかどうかも不透明だ。

ただし、全米の動きを見ると、LA州を含めてMedicaid拡充策を採ったのは31州+D.C.となる(Kaiser Family Foundation)。さらに、次の3州が拡充するかどうかを検討中とされている。 3州とも州議会上下両院を共和党が握っている。その中でSD州知事、WY州知事は共和党出身で、Medicaid拡充を議会に働きかけているという。

また、アプローチは異なるが、Nebraska州議会の共和党議員達は、連邦政府の負担金を使って民間保険プランへの加入を促進する方策を推進している。このように、共和党の中でもMedicaid拡充を進めようとする動きが強まっているのは確かである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/その他州」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル

1月14日(1) KY州:連邦立Exchangeへ 
Source :Kentucky governor moves to shut down state’s ACA insurance exchange (Washington Post)
昨年の12月30日、Kentucky州の新知事Matt Bevin氏は、選挙公約通り、州立Exchangeである"Kynect"を連邦立に移行させる旨、HHSに通告した(Seattle Times)(「Topics2015年12月6日 KY州知事:連邦立移行案」参照)。

実際の制度移行は1年以上を要するため、2016年中は"Kynect"が稼働することとなり、保険加入者への影響はほとんどない。HHSは、KY州政府の協力を得ながら淡々と移行手続きを進める考えだ。

現時点で、各州Exchangeの形態は次のようになっている(Kaiser Family Foundation)。
State-based MarketplaceStates running a State-based Marketplace are responsible for performing all Marketplace functions. Consumers in these states apply for and enroll in coverage through Marketplace websites established and maintained by the states.12州+D.C.
Federally-supported State-based MarketplaceStates with this type of Marketplace are considered to have a State-based Marketplace, and are responsible for performing all Marketplace functions, except that the state will rely on the Federally-facilitated Marketplace IT platform. Consumers in these states apply for and enroll in coverage through heatlhcare.gov.4州
State-Partnership MarketplaceStates entering into a Partnership Marketplace may administer in-person consumer assistance functions and HHS will perform the remaining Marketplace functions. Consumers in states with a Partnership Marketplace apply for and enroll in coverage through healthcare.gov.7州
Federally-facilitated MarketplaceIn a Federally-facilitated Marketplace, HHS performs all Marketplace functions. Consumers in states with a Federally-facilitated Marketplace apply for and enroll in coverage through healthcare.gov.27州
このままKY州の移行がスムーズに移行が進めば、連邦立Exchangeは28州となり、純粋な州立Exchangeはわずか11州+D.C.となってしまう。さらに、連邦立Exchangeへの移行を検討している州がいくつかあり、それらが実現すれば、一桁台となる(「Topics2015年5月5日 州立Exchange財政難」参照)。これで本当にPPACAは成功したのだろうか。連邦政府は大きな行政負担を負ってしまいかねない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/KY州」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル

1月14日(2) 一般教書演説の受け具合 
Source :State of the Union:Obama's greatest hits (The Washington Post)
Washington Post紙が面白い分析をしている。昨日の演説を含め、Obama大統領の7回にわたる一般教書演説を聴衆の拍手の長さで評価している。

やっぱり『寂しかった』という印象は当っていたようだ(「Topics2016年1月13日(2) 最後の一般教書演説」参照)。

※ 参考テーマ「一般教書演説

1月13日(1) NJ州退職貯蓄プランはお預け 
Source :N.J. Assembly agrees to Christie's changes on private-sector retirement plan (NJ.com)
New Jersey州知事は、1月11日、州立退職貯蓄プラン法案(A.4275, 2014-15)に対して、条件付拒否権(conditional veto)を発動した。州知事のメッセージは次の通りである。 NJ州知事は、Wahsington州が目指している市場ベースの退職貯蓄プランを選択すべきと考えている(Pension Right Center)。

同日、州議会上院が全員一致で州知事の条件付拒否を承認し、翌12日には同下院も全員一致で承認した。州知事、議会ともに仕切りなおしに同意した形になった。

※ 参考テーマ「地方政府年金

1月13日(2) 最後の一般教書演説 
Source :State of the Union (The White House)
Obama大統領は、1月12日、7回目、そして最後の一般教書演説を行った。主に、当website関心分野については大統領就任以来の成果を語ったために、これからの政策の方向性というのは特に見出せなかった。それも含めて、ちょっと寂しい演説だった。全部を見ていたわけではないので、正確ではないかもしれないが、本当のスタンディング・オベイションは、
"America is the strongest nation on Earth. We spend more on our military than the next eight nations combined, and our troops are the finest fighting force in the history of the world. "
の所だけだったような気がする。ただし、連邦最高裁判事たちは一切立たないけどね。

※ 参考テーマ「一般教書演説

1月12日 NJ州:上院も可決 
Source :New Jersey Senate follows General Assembly in approving Secure Choice bill (Pensions & Investments)
1月7日、NJ州議会上院は州立退職貯蓄プラン法案(A.4275)を可決した(「Topics2016年1月8日 NJ州:企業経営者は賛成?」参照)。

上院の投票結果は30対6。下院の投票結果は54対16と、圧倒的な賛成多数となっている。州議会の勢力を見てみると、上院は民主24、共和16で、下院は民主51、共和29となっている。つまり、共和党からも賛成票がかなり回っているのである。

さてさて、共和党の州知事は署名するのかどうか。

※ 参考テーマ「地方政府年金

1月11日 最低賃金と雇用 
Source :Low-Skilled Workers Fell Victim to Minimum Wage Hikes During Great Recession, Study Finds (U.S. Chamber of Commerce)
上記sourceでは、最低賃金の引き上げと雇用数の変化の関係について調査結果が紹介されている。 USCCとしては、「だから言ったじゃないの」と言いたいのだろう。 この調査研究では、最低賃金の引き上げにより、若年・低技術者の雇用が失われるとの結論を出している。

当該7年間、連邦政府最低賃金は、$5.15/hから$7.25/hへと大幅に引き上げられている。そのほかにも州レベルでも引き上げられているはずである。

Economic Policies for the 21st Centuryによれば、2016年1月1日、14州で最低賃金が引き上げられた。
今後も、最大$15/hに向けて、最低賃金引き上げの動きはどんどん強まっていくことが予想されている(「Topics2015年7月26日 DCも$15/hに名乗り」参照)。労働市場は改善に向かっているが、上述のような特定層への打撃は和らぐのかどうか。

※ 参考テーマ「最低賃金