Source : | Separation of Church and Cubicle: Religion in the Workplace (Knowledge@Wharton) |
職場における差別問題として、同性カップルの次に宗教が課題になりそうだといわれている。イスラム教の礼拝などを頭に置いておくと想像がしやすいと思うが、職場にどこまで宗教、または宗教問題を持ち込むか、持ち込むことが許されるのか、という、とても微妙で個人の判断、職場の雰囲気に左右されやすい課題である。
もともと宗教がらみの職場、例えば宗教団体によって設立された大学などでは、その問題はある程度雇い主側の意向に沿う形で決められていくと思うが、一般的な事業者にとっては頭の痛い問題である。
アメリカ社会では、古くから"Amish"の扱いが課題となっていたが、現代はより複雑に、様々な宗教が絡んできている。
現時点で最も注目されているのは、Abercrombie & Fitchという服飾メーカーが、企業イメージを考慮して"hijab"を着用した就職希望者の採用を断った、という案件である。この就職希望者が差別扱いだとして訴えており、連邦最高裁の判決を待っているところである。
アメリカ社会では、特定の宗教を信じていないとする国民の割合が、1990年の8%から2014年の21%に上昇している(General Social Survey)。また、宗教の社会的影響力が低下していると考えている国民の割合は72%に達している(Pew Research Center)。
他方、宗教を理由に職場で差別を受けたと訴える件数は、1997年の1,709件から2014年には3,549件と倍増している(EEOC統計)。
また、コネチカット大学が実施したフィールド調査では、次のような結果が得られている。南部に所在する企業に就職希望書を送付したところ、その他の宗教の場合でもほぼ同様で、福音主義、ユダヤ教の場合だけは大きな影響がなかったそうだ。
- 履歴書に宗教を記入した場合、記入しなかった場合よりも返答が26%少なかった。
- イスラム教の信者であることを記入した場合、e-mailでの返信が38%、電話での返答が54%少なかった。
先に言及したAbercrombie & Fitch社の場合、hijabが宗教に基づく着用品であるとは知らなかったと説明している。もし仮に、最高裁判決によって、就職希望者が宗教的な施設、品物を必要とするかどうかを企業側が予め採用前に知っておかなければならないという事態になった場合、企業は採用前に応募者の宗教を聞かなければならず、これがまた大量の差別訴訟を引き起こすのではないかと懸念されている。
宗教は本来、人間の心を平穏に保つことができるように営まれる行為のはずなのに、宗教に固執すればするほど社会に混乱と溝をもたらすという事態になっている。これは今の中東社会および欧州社会の混乱をみれば明白である。
雇用と宗教の関係はどんどん複雑になっている。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」
Source : | When Obama signs a bill he doesn’t always use his own hand (Washington Post) |
アメリカ合衆国(連邦)の法律は、連邦上下両院で法案可決の後、大統領の署名により公法として有効となる。いわば法案に生命を賦与するのが大統領署名である。従って、大統領署名というのは、大々的なセレモニーとして活用されることが多い。
今となっては懐かしさすら感じるが、Obama大統領誕生興奮の渦の中、大統領としての最初の署名式は、2009年1月、シンボリックにかつ華々しく催された(「Topics2009年1月31日 Obama政権立法第1号」参照)。そして、署名に使用されたペンは、関係者に贈呈され、ほぼ一生の記念として大事にされていく。
ところが、上記sourceによると、最近、Obama大統領は、自筆による署名ではなく、"Autopen"による署名が増えているそうだ。法案成立に緊急を要する場合で外交日程と重なったような場合には致し方ないように思うが、それほど緊急性のないものでもautopenによるものがいくつもあるという。
自筆は右側のもので、左はautopenによるものだそうだ。
見たところほとんど見分けはつかないし、連邦政府司法省は、自筆でなければならないということではないとの見解を示しており、法的に問題にされることはないそうだ。
法的見解としてはそうであっても、大統領の想いの濃淡が国民に伝わっているのではないかと思う。
※ 参考テーマ「政治/外交」
Source : | Healthcare for those in U.S. illegally could cost California $740 million a year (Los Angeles Times) |
CA州議会が検討している不法移民にも医療保険加入を認めようとする法案が成立した場合、必要となる財源は、最大で年間$740Mに達するとの推計が示された。 この推計額は、法案提出当初の推計値($350M)の倍以上の金額となる(「Topics2015年4月14日 不法移民医療保険提供法案」参照)。
ここからが審議の本番である。
※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「移民/外国人労働者」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Individual Mandate Penalty May Be Too Low to Attract Middle-Income Individuals to Enroll in Exchanges (Avalere Health) |
当websiteでも何度か紹介してきたが、PPACAに基づいて無保険者に課されるpenaltyの金額がかなり安く設定されている。上記sourceは、それを実際の保険料負担との比較により検証している。 27歳の100%FPLのところをみると、保険料補助金(tax credit)が大きく、保険購入した方が有利なのは明らかだ。所得が上昇するにつれてペナルティの金額は上昇するが、それよりも保険料補助金の減額の方が大きいために、保険料負担の増加が大きくなり、ペナルティの負担は相対的にどんどん小さくなっていく。
2015年については、ペナルティが大幅に引き上げられるものの、そのギャップは依然として大きい。もちろん、病気になった場合の負担は極めて重いものだが、健康な若者にとって、ペナルティを敢えて選択することへの魅力は大きい。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Almost half of Obamacare exchanges face financial struggles in the future (Washington Post) |
17ある州立Exchangeのうち、約半数は、財政的困難に直面している、または今後直面することが見込まれているそうだ。財政的困難に直面する理由として、次のような事項が挙げられている。このような財政的困難に対応するため、各州政府は次のような対応を検討しているそうだ。
- 州立Exchange創設のために用意されていた連邦政府基金が、今年初めに終了した。
- 州立Exchangeへの加入者数が予想通り増えなかった。そのため、加入者数に応じて保険会社に課している手数料収入が伸び悩んでいる。
- コールセンターの運営経費が嵩んでいる。
- IT投資、及びIT関係のトラブルへの対応費用が嵩んでいる。
もし仮に、連邦最高裁が連邦立Exchangeにおける保険料補助金(tax credit)が合法であるとの判決を下した場合、州立Exchangeを連邦立に移行させようという動きは強まっていくものと見られている。 上の表を見てわかる通り、現在でさえ、州立Exchangeは17州にしかなく、そのうち3州は加入手続きに利用するwebsiteを連邦立のwebsiteに依存している(緑色で示された州)。Kaiser Family Foundationの定義によれば、これら3州のExchangeは、既に"State-based Exchange"ではなくなっている。純粋な州立Exchangeは14しかないことになる。
- 保険会社に課している手数料を値上げする。
- 他州との間で、IT投資を共通化する。
- 州立Exchangeの機能の一部または全部を連邦政府に移管する。⇒ Minnesota, Vermont
- 州立Exchangeを廃止する。⇒ 既にOregon州議会は廃止法案を3月に可決した。
これでさらに連邦立への移行が進めば、州立Exchangeはどんどん少なくなってしまいかねない。逆に連邦政府側からすると、Exchange運営費が想定以上に嵩張ることになる。
連邦最高裁の判決は、と、どちらに転んでも難しい局面を招きそうである。 ※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル」
- 合法判決 ⇒ 州立Exchangeから連邦立Exchangeへの移行を促す
- 不法判決 ⇒ 連邦立Exchangeの機能不全をもたらす