Source : | A Shy Employee, a Drug Test, and the ADA Meet in a Bar … (Workforce.com) |
4月15日、Ohio連邦裁判所は、『従業員が自らのハンディキャップを企業側に伝えていない場合、差別禁止法に基づく訴訟はできない』との判決を下した。
事件の概要は次の通り。判決では、企業Bは従業員Aの持病のことは知らされておらず、また、積極的に確認する義務は負っていない、との理由から、従業員Bが差別で訴えることはできないとの判断を示した。
- 従業員Aは"paruresis/shy bladder syndrome"を患っていたが、雇い主である企業Bにそのことは伝えていなかった。
- 従業員Aを雇っている企業Bは、"drug-free"の経営方針を持っており、定期的に従業員の検尿を行っていた。
- 従業員Aは、検尿検査を終えることができなかった。
- 企業Bは、経営方針に反したことから、従業員Aを解雇した。
- 従業員Aは、持病と解雇を結びつけ、差別であると訴えた。
このような不幸な結果を招かないためにも、企業と従業員の間のコミュニケーション、オープンな雰囲気が必要である。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | Medicare Physician Payment Rates:Better Data and Greater Transparency Could Improve Accuracy (GAO) |
5月21日、GAOは、Medicare診療報酬に関する課題を公表した。ポイントは次の3点。第1点は、医師の間でももっとプライマリーケア医師や利用者代表、経営者、経済学者なども含めるべきだ、との批判が出ている(New York Times)。
- 診療報酬に関する医師の意見、特に専門医の意見が強く反映されている。これは利益相反の問題を孕んでいる。
- 診療報酬を算定するためにMedicare診療の時間、集中度などを調査しているが、その回答数、回答率が極めて低く、分散も大きい。
- 5年毎に行う診療報酬見直しに使ったデータの更新ができていない。
- 診療報酬見直しのプロセスの透明性を欠いている。
- 診療報酬見直しに関する文書の作成ができていない。
Medicareは診療報酬の包括払い割合を高めようとしている(「Topics2015年2月1日 Medicare:出来高払いを半分に」参照)。包括払いのためには、効果の測定が不可欠であり、特定の分野の人間だけで評価することは禁物である。
※ 参考テーマ「Medicare」
Source : | Los Angeles Shows Us the Real Reason Why Unions are Pushing for Minimum Wage Increases (U.S. Chamber of Commerce) |
先月、Los Angeles City (LA市)市議会は、最低賃金を$15/hに引き上げる法案を可決した(「Topics2015年5月24日 LAも$15へ」参照)。しかし、そこには労組が仕掛けたからくりがあるという。結局は、最低賃金引き上げを謳いながら、自らの収入増を目論んでいる、というのが上記sourceの主張である。
- 最低賃金引き上げの議論の中で、労組代表はずっと『レストランなどの個人経営者への配慮』に反対していた。
- ところが、法案採決の直前になって、労組代表は「労組が結成されている職場は最低賃金適用対象外にすべきだ」と要求した。
- 普通なら、「労組の組合員こそ最低賃金で守られるべき」と思うので、意外な要求と見える。
- しかし、労組の理屈は、「最低賃金$15/hの適用を免れたいのであれば、職場で労組の結成を認めたらいい」というものだ。
- つまり、最低賃金引上げは、労組加入者増加戦略に使われている。
- 労組加入者が増えれば、労組の収入も増えていく。
全米商工会議所らしい主張だが、労組があれば最低賃金適用免除というのも変な話である。もっと言えば、既存の労組加入者は、最低賃金以上の収入を得ているので最低賃金引き上げによる影響はない。むしろ、収入の少ない労働者には最低賃金を適用させず、職場に労組を結成させて組合費を徴収しようということであり、労組の中で上層部が下層部から搾取しようとする構図に見えてくる。
※ 参考テーマ「最低賃金」、「労働組合」
Source : | California Senate approves health care for undocumented immigrants (Sacramento Bee) |
6月2日、CA州議会上院は、不法移民医療保険提供法案(SB 4)を可決(28 v 11)した(「Topics2015年4月14日 不法移民医療保険提供法案」参照)。
既に、州議会下院は同じ2日に審議しており、近日中に可決する見込みである。しかし、州知事は署名に難色を示しているそうだ。それは必要な財源が年間$740Mと大きな負担となるからだ。
また、仮に州知事が署名したとしても、Exchangeで不法移民が保険加入できるようにするためには、連邦政府の認可が必要だし、保険料補助金(tax credits)の扱いも大きな課題となる。連邦議会、特に共和党議員達は黙っていないだろう。
※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「移民/外国人労働者」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Public Review of Proposed Health Insurance Rate Increases for the 2016 Coverage Year (CMS) |
案の定、2016年のExchange保険プランの保険料は大幅アップされそうだ(「Topics2015年6月1日 2016年保険料は大きく上昇か」参照)。
6月2日、CMSは、保険機関が申請した2016年保険料を公表した(上記source)。例によって州別にばらつきがあるものの、大きな引上げ率を申請しているところが多いようだ。
- 公表された2016年保険料の属性は次の通り。
- HealthCare.govを利用している連邦立Exchangeまたは州立Exchangeで提供されている保険プラン(Exchange一覧表参照)。
- 2015年の保険料と比較して、引上げ率が10%以上の申請となっている保険プランについて公表。
- 今後精査し、10月までに最終保険料を決定。
これだけの引上げ率で保険機関が申請してくる背景には、次のような3つのリスク要因があると言われている(New York Times)。
- Delaware:2つの保険会社がそれぞれ、25%、16%の引上げ率で申請。
- Georgia:申請ベースで平均38%の引上げ率。最高は85%増。
初年度(2014年)の保険料をかなり低く抑えたものと思われるので、上記のようなリスクを認識しながら保険料を抑制していくことは経営上のリスクにつながるのだろう。ましてや、医療費そのものの大幅上昇が見込まれる中、リーズナブルな引上げ申請も多くあるに違いない。そうした状況の中で、PPACAを民主党政権の成果として認識してくれる国民がどれだけいるのか、かなり難しいものがあるだろう。
- 今度どれだけの人が加入してくれるか。また、彼らの健康状態はどうなのか。
- 保険機関が大きな損失を被った場合、PPACAの規定でどれだけ補填できるのか。
- 連邦最高裁の保険料補助金(tax credits)に関する判決はどうなるのか。またその影響はどれだけか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「医療保険プラン」
Source : | Muslim Woman Denied Job Over Head Scarf Wins in Supreme Court (New York Times) |
6月1日、連邦最高裁は、注目の"Hijab事件"について控訴裁判所に差し戻す判決を下した(「Topics2015年5月10日 職場と宗教」参照)。事実上、原告側の勝訴で、「宗教を理由とした採用拒否であり差別行為」として認定されたことになる。 判決内容のポイントは次の通り。共和党系の判事達の中で意見が割れた形になっている(「Topics2015年3月6日 連邦最高裁判事の色分け」参照)。
- 賛成:反対は"8:1"。
- 主判事はAntonin Scalia。判決理由は次の通り。
- 企業側は『ヘッドスカーフは当社のドレスコードに反するし、その着用が宗教上の理由であるとは知らなかった』としている。しかし、少なくとも一度は宗教上の理由ではないかと推測しており、宗教上の習慣を持ち込ませないように採用を拒否した。これだけで差別禁止法違反で訴えるに充分に足りる。
- 採用の是非に、宗教的習慣を判断材料として持ち込んではならない。
- 差し戻しには賛成ながら、Samuel Alito判事は、
- 宗教的習慣を実践することを従業員が企業側に告知しない限り、企業側が差別したことにはならない。
- しかし、今回のケースでは、原告が宗教上の理由でhijabを着用していることを企業側は充分知り得たはずだ。
との意見を付している。
- Clarence Thomasが唯一の反対者であった。反対理由は、『企業のドレスコードは差別訴訟の対象外』とのことである。
ところで、一般的に、企業にとっては心配の種が増えることとなってしまった。従業員が宗教的習慣の実践を告知しなくても、企業側としては配慮せざるを得なくなったわけで、まさしくセンシティブ情報を従業員、または採用候補者との間でやり取りせざるを得なくなるかもしれない。おそらく、企業側としては、せめて上記のAlito判事の意見がmajorityの意見になればよかったのにと思っているに違いない。
差別禁止法による訴訟を回避するために、複雑な取り組みが必要になりそうだ。これもアメリカ社会の宿命かもしれない。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「人口/結婚/家庭/生活」、「司法」
Source : | Executive Compensation Bulletin: The Changing Landscape of Golden Parachutes in a Say-on-Pay World (Towers Watson) |
Obama政権になって変質してきたGolden Parachutesだが、その経年変化を分析した調査結果が公表された(「Topics2012年1月17日 Golden Parachuteの変質」参照)。ポイントは次の4点。経営幹部にとっても「医療保険」が最大の保険であるというところがアメリカらしい。
- 相変わらず、M&Aなどで経営陣の交代を迫られた場合、離職手当のツールとしてGolden Parachutesは多用されている。
- しかし、その給付水準は、4年前に較べて低下してきている。これは2012年当時の傾向とは異なっている。どこかの時点で反転したものと思われる。
- Golden Parachutesの中身として、医療給付が含まれている場合が圧倒的に多い。その一方で、細かな便宜は整理されているようだ。
- 「所得税分までカバーするような支払い方法(gross-up payment)は減少している」、「二重の受給権賦与("double-trigger vesting")が増えている」といった傾向は変わらない(「Topics2012年1月17日 Golden Parachuteの変質」参照)。
※ 参考テーマ「経営者報酬」
Source : | Insurers Expect Larger Premium Rise for 2016 (SHRM) |
全国規模の保険会社65社を調査した結果、2016年の医療費は2015年を上回り、9%前後の伸びとなりそうである。特に、処方薬の伸びは2桁となるため、保険料も大きく伸びそうだということである。こうした医療費増加の伸び率上昇は、Exchange保険プランにも反映されることになろう。大統領選挙の年に厳しい状況が訪れそうである。
Health Claims Cost Growth
2015
(average)2016
(projected)Health maintenance organizations (HMOs)
7.2%
8.6%
Point-of-service (POS) plans
7.7%
8.8%
Preferred provider organizations (PPO)s
7.9%
8.7%
Consumer-driven health plans (CDHPs)
8.0%
8.9%
Indemnity plans
9.0%
9.6%
Prescription plans
10.2%
10.1%
Source: Wells Fargo Insurance
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「大統領選(2016年)」