7月20日 FL州:医療現場で診療拒否 
Source :Some South Florida docs decline to accept Obamacare (Miami Herald)
Florida州(FL)は、Exchange初年度に100万人近くが加入した。この数字は、連邦立Exchangeでは最も多く、全米でもCA州(140万人)に次ぐ数となっている。

そのFL州で、俄かには信じがたいが、医師がExchange加入者の診療を拒否するケースが相次いでいるとのことである。上記sourceから、その理由をピックアップしてみる。
  1. 保険会社とExchange保険プランで契約を交わした場合、保険プラン加入者全てを診察しなければならないことを、医者が理解していないケースがある。

  2. 医療機関・医師との契約が保険プランのネットワークに入っているかどうかの情報が正確ではない場合がある。

  3. FL州の医師の中には、PPACAに強く反対している者がいる。‘We do not accept anything from the marketplace [Obamacare]’という看板を掲げている医師までいる。

  4. 保険加入者が加入している保険給付内容を確認するのに大変な手間がかかる。しかも、正確な情報が得られない場合がある。

  5. 高免責額、自己負担に関して支払い能力が加入者にあるのかどうか確認のしようがない。

  6. 「90日猶予制度」が混乱をもたらす。加入者は決められた期限までに毎月の保険料を支払わなければならないが、3ヵ月は猶予期間が与えられる。その間、保険会社は、最初の30日間は、保険給付をしなければならないが、残る60日間は保険給付を止めることができる。結局、医師が償還を受けられないケースが出てくる。

  7. 新しい保険プランのために、保険会社からの償還が送れるケースが出ている。
4.〜7.は、金銭トラブルになりかねない、という理由で、おそらく複合的に発生するものだと思う。また、加入者自身の問題だけでなく、保険会社と州政府との間の情報交換、資金のやり取りに不具合がある可能性もある。時間が経てば解決する部分もあると思うが、Exchangeに対する不信感が、加入者と医療機関の間で増幅するようでは困ったことになってしまう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/FL州」、「無保険者対策/州レベル全般

7月19日 下院が大統領告訴を検討 
Sources : Behind the GOP focus on Obamacare (POLITICO)
5 questions about John Boehner’s lawsuit against Barack Obama (POLITICO)
当websiteでも紹介している通り、連邦議会、特に下院との協調ができないため、Obama大統領は大統領令により自ら推進したい政策を動かそうとしている。不法移民強制退去の猶予、同性婚のベネフィット、最低賃金、等々。

こうした大統領の動きに対抗するため、下院共和党は、大統領令の乱発は大統領に賦与された権限を超えているとして、下院として訴訟を起こすことを検討している。ただし、『PPACAに基づく企業の医療保険提供義務の先送り』に焦点を置く考えだ(「Topics2014年2月11日 企業ペナルティ再延期」参照)。

議会側からすると、議会がまとめ、大統領が署名した法律の施行期日を、勝手に2回も延期したことはけしからん、ということになるのだろう。

しかし、仮に実際に告訴を行い、長い時間をかけて、下院の主張が正しいという判決が下ったとして、それで何が変わるのだろうか。PPACAの規定通り、2014年からの提供義務化と、提供しなかった場合のペナルティを遡及して支払え、とでも言うのだろうか。まったく現実的ではない気がする。

こんなことをしていては、中間選挙で優勢と伝えられている共和党全体の地盤を崩すことになるのではないだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「中間選挙(2014年)

7月18日 CO-OPsは正念場 
Source :Health CO-OPs Stumble; Subsidies for Catastrophic Coverage Unlikely (HighRoads)
上記sourceは、ここ数年でCO-OPsの存続意義が問われることになるという。ポイントは次の通り。
  1. Exchangeの初年度(2014年)、CO-OPsは期待通りの加入者を獲得できなかった。全米で23のCO-OPsが参入したが、
    • 14が目標どおりの加入者を獲得できなかった。
    • 9のCO-OPsは、競争的な価格により目標以上の加入者を獲得し、市場を競争的なものにすることができた。

  2. 連邦政府からのローン(総額$2B)は、いずれ返却しなければならず、目標通りの加入者を獲得できなければ、その返済に窮することになる。
    • Start-up loans ⇒ 5年以内
    • Massive solvency loans ⇒ 15年以内

  3. CO-OPsがうまくいかないとなると、連邦政府は、政治的に苦しい立場に立たされる。両政党とも、CO-OPsに替わる安価な保険プランを提案し始めているからだ。
CO-OPsのうち快調なところは報じられてきたが、全体が順調というわけではなさそうである。

※ 参考テーマ「CO-OP

7月17日 MAP-21延長を議論 
Source :This Road Work Made Possible by Underfunding Pensions (New York Times)
連邦議会でMAP-21の延長論が議論されている(「Topics2012年7月5日 PBGC保険料大幅引上げ」参照)。かつて財政健全化方策の中で議論されたこともあるが、今回は、来月にも枯渇すると見られている"Federal Highway Trust Fund"の財源に充てようというものである(「Topics2013年11月22日(1) MAP-21延長案」参照)。

財源捻出の理屈は前回と同じで、『給付債務認識額を縮小⇒企業の拠出額縮小⇒課税所得の拡大⇒税収増』というものである。ただし、前回は財政健全化全体のための財源の一つとして検討されたが、今回は、道路財源として検討されている。

本来であれば、道路財源はガソリン税の引き上げで対応すべきなのだが、車社会のアメリカでは圧倒的な不人気策で、1993年以来、ガソリン税の引き上げは行われていない。そんな不人気な増税を中間選挙直前にやる訳にはいかない。

一方、MAP-21による給付債務認識額の縮小は、誰も文句を言わない。いわば、『ポピュリズム×ポピュリズム』の施策であり、連邦議会議員としてはどうしても手が伸びてしまう。

それにしても、受給権保護の裏打ちである積立基準を変更して道路財源にしようというのは、余りにも乱暴な議論だと思う。

ここまで書いたところで、7月15日、連邦議会下院が"Federal Highway Trust Fund"関連法案(H.R.5021)を可決した、とのニュースが入ってきた(Pensions & Investments)。このsourceによると、同法案により、 となるそうだ。

ちなみに、下院での投票結果を見ると、367 vs 55 と党派色なしの圧倒的多数による可決であった。やはり、下院議員達は企業年金のことはあまり深く考えず、道路財源を確保することを最優先、つまり、選挙対策のために投票したと思われる。やはり、受給権はポピュリズムの犠牲になったようだ。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制

7月16日 2015年保険料・免責額速報 
Sources : Rising Healthcare Premiums (National Center for Policy Analysis)
2015 Obamacare Rate Filings Reveal Changes in Out-of-Pocket Costs (HealthPocket)
2015年のExchange保険プラン申請がほぼ終わり、上記sourcesは、既に公開されている申請資料から、保険料ならびに加入者自己負担の動向をまとめている。

初めに、保険料の動向についてのポイントは次の通り。
  1. 10州中9州で保険料引き上げ(8.5〜22.8%)の申請が行われている。

  2. 保険料引き上げの要因は、@処方薬の価格上昇、A診療費の上昇(2014年5.4%)、BPPACAによる給付内容の義務付け、などが挙げられている。

  3. 2014年に加入者を多く獲得した保険プランの保険料は、最も安いかその次くらいに安いものであった。そうした安い保険料で大量の加入者を獲得した保険会社は、大幅な保険料引き上げを申請している傾向がある。他方、2014年に加入者の獲得が少なかった保険会社は、保険料を抑制する傾向にある。

  4. ただし、各社とも、連邦政府が検討している、加入延長手続きの簡素化に関する具体案を注視している(「Topics2014年6月30日 Exchange自動加入制」参照)。
少なくとも、Exchangeにおいては価格メカニズムが働き始めているようである。

次に、免責額(個人プラン)に関するポイントは次の通り。

  1. 集計対象は次の9州。
    • Arizona
    • Connecticut
    • Indiana
    • Maine
    • Michigan
    • North Carolina
    • Rhode Island
    • Tennessee
    • Virginia

  2. 各カテゴリにおける免責額(個人プラン)の水準は次の通り。相変わらず、ブロンズレベルの免責額は圧倒的に高い。
  3. しかし、その変化を見ると、 ブロンズは微減、シルバー、ゴールドは大幅減、プラチナのみ大幅増となっている。
    Metal Plans 2015 Averages from Early Rate Filings 2014 Averages Difference
    Bronze $5,058 $5,081 1% decrease
    Silver $2,659 $2,907 9% decrease
    Gold $1,127 $1,277 12% decrease
    Platinum $497 $347 43% increase
シルバー、ゴールドは、少し用心をし過ぎて2014年は高めに設定してしまったのだろう。10%前後の引き下げは加入者にとってはありがたい。一方、プラチナは2014年の設定が甘すぎたとの反省であろう。

いずれにしても、まだ9〜10州だけの話であり、人口が大きい州の数字が出てこないと、全体の傾向も判断できない。

保険料だけでなく、免責額にも注目が集まっていることは適切だと思う。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/州レベル全般

7月15日 健康管理と保険料 
Source :Kaiser Health Tracking Poll: June 2014 (The Henry J. Kaiser Family Foundation)
企業が健康管理プログラムを提供するのはよいけれど、その結果を保険料に反映させることは適切ではない、との意見が大勢のようだ。 食事や睡眠、運動といったところを職場に管理されるようなイメージが強いのだと思う。自ら好んで管理するのと、ペナルティを楯に職場から管理されるのとでは、だいぶ受け止めが異なる。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

7月14日 中堅女性の労働市場退出 
Source :For Women in Midlife, Career Gains Slip Away (New York Times)
上記sourceによると、中堅女性の労働市場退出が目立っているという。 中堅女性の労働市場退出が多い理由として、次の4点を挙げている。
  1. 高齢者の寿命が伸びているため、高齢の両親の面倒を見なければならない。

  2. 一方で、自身の子供の面倒も見なければならない。

  3. 職場での柔軟な働き方がなかなか認められない。

  4. 地方政府公務員、特に女性就業者の割合が高い学校関係の削減数が多かった。
上記sourceは、中堅女性労働者が退出してしまったままになってしまうと、生涯獲得所得が減少してしまうと懸念している。紹介している試算では、約32.5万ドルを失うことになるそうだ。

確かに生涯所得も問題だが、アメリカでさえ女性の介護退職を解決できていないということは、日本人としてよく肝に銘じておく必要があると思う。

※ 参考テーマ「労働市場」、「Flexible Work

7月13日 PEの普及は2018年前後か 
Source :Cheapest Plans from Major Off-Exchange Companies Over 40% More Expensive than Cheapest Exchange Plans (HealthPocket)
本来ならなかなか比較は難しいのだが、上記sourceでは、一定の前提を置いて、Exchangeで提供された保険プランとその外で提供された保険プランの保険料比較を行っている。 Bronzeでは、明らかにExchangeで提供されているプランの方が、保険料も免責額も低く抑えられている。また、Silverでは、保険料がかなり低く抑えられている。

Exchangeでは、医療機関ネットワークを絞ることでこうした保険料抑制ができているのである。このようなExchangeにおけるメリットを利用しようとする企業も、これから増えてくると思われる。

少し視点は異なるが、公立のExhcnageとPrivate Exchange(PE)に関するサーベイ結果(A Survey on Private Health Insurance Exchange by Array Health)でも、そうした動きが伺われる。 2018年は、"Cadillac Tax"の課税が始まる年である(「Topics2012年10月30日 Cadillac Taxのインパクト」参照)。この年を巡って、企業が提供する医療保険プランの姿が大きく変わるとの見方が強まっている(「Topics2014年4月28日 企業提供プランの将来」参照)。

※ 参考テーマ「Private Exchange」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル

7月12日 SB市:債務支払いを約束か? 
Source :CalPERS ‘victory’ a warning to uppity cities (UTSanDiego)
San Bernardino市(SB市)の新市長は、今年の4月、次のように述べていた(「Topics2014年4月26日 CA州3市のCalPERSとの闘い」参照)。
『Chapter 9から抜け出すための再建計画では、この$17Mの負債を大きく削減する必要がある』
$17Mの負債とは、SB市がCalPERSへの拠出をストップしていた時期の未払い金と延滞利子のことである。

ところが、6月18日の市長ステートメントでは、詳細は明らかにできないものの、「この$17Mについても返済を開始することで、CalPERSとの合意に至った」としている。やはり、他の債権者と同様に扱うことはできなかったようだ。
CalPERSは強し。

※ 参考テーマ「地方政府年金

7月11日 PA州知事予算案拒否 
Source :Pennsylvania governor refuses to sign state budget without pension cuts (Pensions & Investments)
州議会が可決した2014-2015年年度予算案について、Pennsylvania州知事は署名を拒否している。それは州政府職員年金に関する改革案が含まれていないからだ。

州政府職員年金の積立不足状況は6割前後と芳しくなく、2018年までに現在よりも38%増えて$65Bに達すると見込まれている。州議会では、新規職員をCBまたはDCプランに加入させるという職員年金改革法案を審議していたが、現在は事実上の廃案扱いとなっている。

ちなみに、PA州知事は共和党、上下州議会とも共和党が多数を握っており、政党間の問題ではない。州知事は、州政府予算を人質に年金改革を迫っている訳で、かなり無謀な試みではあるが、それだけ真剣ということも言える。

※ 参考テーマ「地方政府年金