7月20日 CA州:Exchangeの課題 
Source :California health exchange seeks to make buying insurance a breeze (Sacramento Bee)
Exchangeの創設に向けての動きが鈍い中、CA州は、PPACA成立後、積極的にExchange創設に動いている(「Topics2012年7月17日 Exchange & Medicaid」参照)。

そのように前向きに取り組んでいるCA州でも、制度発足までに解決すべき課題は残されている。上記sourceによれば、大きな課題は次の3点とのことである。
  1. Exchange利用可能者をいかに惹きつけるか。

  2. 加入制度をいかに簡便なものにするか。当局責任者は、Amazonで本を購入するように簡単にする、としている。

  3. 保険プラン及びその提供者をいかに選択するか。
特に、1.で、健康な人々が加入するようにすることが、保険料を適切な水準に抑える鍵となる。しかし、現時点で、どれだけ「健康な人々」が参加するか、皆目見当がつかないという。これは、まさにペナルティの経済的効果をどう見るか、という問題と直結する(「Topics2012年7月16日 保険非加入がお得」参照)。

さらに、上記sourceは、もっと深刻な課題を提起している。それは、『Exchangeにとっての最大のリスクは、(加入者への)補助金が削減されることである。』連邦政府が大きな赤字を抱え、秋の選挙の結果次第では、大きな方針転換が起きるかもしれない。そうなると、連邦政府からの補助金支給が大幅に削減される可能性が出てくる。このリスクは、Medicaid拡張策とも共通するものである(「Topics2012年7月4日 Medicaid拡充に慎重」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/CA州

7月19日 医者の薬剤販売 
Source :Insurers Pay Big Markups as Doctors Dispense Drugs (New York Times)
いくつかの州では、医者が薬剤を処方し、直接販売することで、多額の利益が生み出されているという。これは、州法で規制されている企業医療保険プランに抜け穴があり、高額の利幅を乗せて保険給付請求ができるためである。

上記sourceでは、"Soma"という薬について、薬局での販売価格と医者の直接販売の比較を示している。これらの州はいずれも抜け穴があると認められているところである。

PRICE RATIO

$5

$4

$3

$2

$1

Price per pill of carisoprodol, a muscle relaxant often sold as Soma

2

1

6

1

3

0

9.

7.

6.

6.

5.

5.

North Carolina

Florida

South Carolina

Illinois

Maryland

Louisiana

BOUGHT IN

DOCTORS’ OFFICES

BOUGHT IN

PHARMACIES

Source: NCCI Holdings

こんなことができる仕掛けが2通りある。
  1. 仲介業者が、医者の診療所設立を支援する際、処方薬請求のソフトを提供する。医者が直接販売した場合には、医者が保険給付請求をせず、このソフトにより仲介業者に請求書を回す。仲介業者は(高い)代金の還付請求を保険会社に行い、7割を医者に還付する。つまり、高値で販売して得た利益を7:3で山分けしているのである。こうした仲介業者の例として、上記sourceでは、Florida州のAutomated HealthCare Solutionsという会社を紹介している。

  2. 薬剤の卸業者が、他の卸業者から買い入れ、診療所に再販売する。その際、大量に仕入れた薬剤を再販するために小分けにするが、診療所に納入する際に高額にしてしまう。これにより、「卸売り価格の平均」が大きく上がってしまい、保険給付の単価も引き上げられてしまう。
いずれにしても人為的に薬剤価格を上げて、マージンを医者と業者で山分けするシステムである。

当然、州議会でもこうした抜け穴を阻止しようと立法を試みるのだが、政治献金とロビー活動により、悉く失敗するそうである。州議会議員達は『贈収賄だ』と言い切っている。

※ 参考テーマ「医薬品

7月18日 連邦政府職員のテレワーク
Source :2012 Status of Telework in the Federal Government (OPM)
2010年12月に、"Telework Enhancement Act"が成立した。上記sourceは、この法律に基づき、連邦政府職員のTeleworkの実態を調査した最初のレポートである。

とっても分厚い資料なのだが、当websiteとして関心を持ったところだけ抽出してみる。
  1. 連邦政府職員のうち、teleworkが可能となるのは約1/3。そのうち、2011年9月時点で、実際にteleworkを行っていたのは25%にもなる。
  2. Teleworkを開始する際に最も大きな障害となるのが、マネジメントの抵抗とされている。
  3. Teleworkの頻度は、あまりばらつきがなく、1週間のうち1〜3日がそれぞれ25%以上ある。
  4. Teleworkをしない理由として、@現場にいなければいけない、A上司が認めてくれなかった、などが挙げられている。
  5. Teleworkを導入する目的として、トップは緊急事態への対応ということだが、その次からは従業員の効用が高めることを挙げている。
現場ではteleworkの導入が進んでいるようだが、障害となっているのは指揮官たちの意識のようである。これも、年月が経てば変わってくるのか。

※ 参考テーマ「Flexible Work

7月17日 Exchange & Medicaid 
Source :How each state will approach health care act (USA Today)
全国紙の強みを活かして、USA Todayが、各州知事の意向を調査した。調査項目は、
  1. (州営)Exchangeを創設する意向はあるのか
  2. 連邦最高裁判決を踏まえ、Medicaidを拡充する意向はあるのか
の2項目である。結果は次の通り。
ExchangeにしてもMedicaidにしても、はっきりとした推進派、反対派はいるものの、意外にも、結構迷っている州知事達がいるようだ。また、Exchangeについて、州知事も州議会両院とも民主党が押さえていながら、連邦運営のExchangeにしようとしているところがあるのはちょっと驚きだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル

7月16日 保険非加入がお得 
Source :Should You Drop Your Personal Health Insurance Under ObamaCare? (Business Insider)
個人加入義務規定が合憲、との判断は出たものの、単純に金銭的な比較考量をすれば、保険に加入しない方がお得、という分析である。
個 人家 族
企業提供プラン実績(2011年)
(Kaiser Family Foundation)
$5,429$15,073
ペナルティ税(2016年)max.($695, 年間所得の2.5%)max.($2,085, 年間所得の2.5%)
個人の場合だと年間所得が$217,160、家族の場合では年間所得$602,920という、とてつもない高額所得者でなければ、保険に入らずにペナルティを払った方が金銭的にはお得となる。仮に大病したとしても、保険加入はすぐに認めなければいけないので、その時だけ入って、治ってしまえばまた止めてしまえばいい。

この問題は、PPACAが成立した当初から指摘されていた(「Topics2010年5月8日 "Play"より"Pay"」参照)。

もちろん、企業の医療保険プラン提供は、金銭的判断だけではないことは当然だが、そうした判断をしてくる企業も出てくる可能性は高い。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン

7月15日 AZ州が上告:同性ベネフィット 
Source :Ariz. Asks for Supreme Court Review of Partner Benefits (PLANSPONSOR.com)
AZ州議会は、州政府・州立大学職員の同性パートナー、異性パートナー、被扶養の成人に対する医療給付を廃止する法案を可決している(「Topics2009年6月6日 同性婚に逆風-AZ州」参照)。

しかし、州政府職員達が、同性パートナーの医療給付廃止は差別に当たる、として訴え、連邦地方裁、第9控訴裁判所とも、その訴えを認めている。これに対して、7月2日、AZ州政府が連邦最高裁に上告し、同法は合憲であるとの主張を認めるよう求めたのである。

折しも、来期は同性婚について争われることになっており、本件についても連邦最高裁がどのような判決を下すのか、当websiteとしては関心を持っている所である。

※ 参考テーマ「同性カップル

7月14日 増加する Medicare ACOs 
Source :HHS ANNOUNCES 89 NEW ACCOUNTABLE CARE ORGANIZATIONS (CMS)
CMSは、9日、新たに89の組織がMedicare ACOsに参入する旨を発表した(「Topics2012年2月15日 ACOは普及するか?」参照)。そのリストはここ

これで、Medicare ACOsの現状は次のようになる(Kaiser Health News)。 2013年1月参入分については、2012年8月1日〜9月6日の間に申請を受け付けることになっており、既に400程度の機関が関心を寄せているという。

機関数は確実に増えており、あとは実績(コストの低下、医療の質の確保)がついてくるかどうか、である。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「Medicare

7月13日 ObamaCare廃止法案 
Source :House passes health care repeal -- again (GovExec.com)
11日、連邦議会下院は、医療保険改革法廃止法案(H.R. 6079)を賛成多数で可決した。投票結果は次の通り。
賛成反対無投票
共和党239-1
民主党51851
独 立---
合 計2441852
Soouceの標題に、"again"とあるのは、2011年1月にも下院で同様の廃止法案を可決しているからである(「Topics2011年1月20日 下院で廃止法案可決」参照)。その時の投票結果は次の通りであった。
賛成反対無投票
共和党242--
民主党31891
独 立---
合 計2451891
この時は、2010年の中間選挙で共和党が勝利したことを受けて、政治的アピールが目的であった。今回も、連邦最高裁の判決を受け、今年秋の大統領・議会選挙に向けてのアピールが目的である。ほぼ間違いなく、今回も上院で否決されて終わりになるだろう。

結局、連邦議会下院は、医療保険については何も変わらなかったし、何もしなかったのである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

7月12日 最高裁判決の波紋 
Source :US hospitals face financial problems (Financial Times)
最高裁判決がいろいろな所に波紋を広げている。Medicaid拡充策について、州政府に採用しない選択肢を認めたことで、共和党の州知事達がMedicaidを拡充しない意向を示している(「Topics2012年7月7日 Medicaid拡充に慎重(2)」参照)。

この動きに戸惑っているのが病院会である。病院会としては、Medicaid拡充策、Exchange設立をそれに伴う保険料補助金により、収入が増えることと引き換えに、無保険者の救急診療に関する診療報酬の大幅削減($155B/10Y)を受け入れ、PPACAを支持した経緯がある。

しかし、今回の連邦最高裁の判決により、州によっては前提が変わってしまいかねない。当該州の病院会の対応策は、次の2つと考えられている。
  1. Medicaid拡充策を受け入れるよう、州知事、州議会に働きかけを強める。

  2. 大幅に削減した救急診療報酬を復活するよう、連邦議会に働きかける。
どちらにしても、立法が必要であり、実現するには相当の労力と時間をかけなければならない。そして、どちらも実現しなかった場合、低所得無保険者の救急診療からの締め出し、という事態が起きるかもしれない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/連邦レベル

7月11日 A.A.が退職者医療打ち切り請求 
Source :AMR sues retired workers over health benefits (Associated Press)
Chapter 11で再建中のAMR (American Airlines)は、年金プランの廃止方針を変更し、プラン凍結を検討している(「Topics2012年3月9日 A.A.が方針転換」参照)。他方、退職者医療プランについて、廃止を求める訴えを破産裁判所に提出した。 AMRの説明によれば、退職者医療給付の負担額は、2010年で1.37Bにのぼる。

世界経済、アメリカ経済の減速がはっきりしてくるような経済環境の中で、A.A.の経営再建は思うように進んでいないようだ。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「PBGC/Chapter 11