9月30日 公的プランを財政委員会が否決 
Source :Senate Finance Committee Rejects Both Public Option Amendments (Washington Post)
上院財政委員会では、引き続きBaucus法案への修正論議が続いている。公的プランの創設については、次の2つの修正案が審議された。 ところが、身内の民主党議員から反対が出て、いずれの修正案も否決された。財政委員会のメンバーは次の通りとなっている。
Democrats Republicans

MAX BAUCUS, MT
JOHN D. ROCKEFELLER IV, WV
KENT CONRAD, ND
JEFF BINGAMAN, NM
JOHN F. KERRY, MA
BLANCHE L. LINCOLN, AR
RON WYDEN, OR
CHARLES E. SCHUMER, NY
DEBBIE STABENOW, MI

MARIA CANTWELL, WA
BILL NELSON, FL
ROBERT MENENDEZ, NJ
THOMAS CARPER, DE

CHUCK GRASSLEY, IA
ORRIN G. HATCH, UT
OLYMPIA J. SNOWE, ME
JON KYL, AZ
JIM BUNNING, KY

MIKE CRAPO, ID
PAT ROBERTS, KS
JOHN ENSIGN, NV
MIKE ENZI, WY
JOHN CORNYN, TX

 

民主党議員のうち、Rockefeller上院議員修正案に反対票を投じたのは、Baucus, Conrad, Lincoln, Nelson, Carperの5人。Schumer上院議員修正案に反対票を投じたのは、Baucus, Conrad, Lincolnの3人であった。共和党議員は、Snowe上院議員も含め、全員が反対した。

Rockefeller、Schumer上院議員は、上院本会議でも争う意欲を見せている(New York Times)。また、Pelosi下院議長は、「公的プラン」創設が上院案に盛り込まれそうもない情勢を踏まえ、早くも両院協議会マターと位置づけている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月29日 州で保険加入義務化を禁止 
Source :In Some States, a Push to Ban Mandate on Insurance (New York Times)
州憲法または州法で、個人の保険加入義務化を禁止しようという動きがあるそうだ。こうした規定が裁判で有効と認められる可能性は低いと見られているが、そうした判決が出るまでの間、混乱が生じることは間違いない。また、このような州レベルでの立法の動きは、連邦議会での法案審議にアピールする効果はある。

州レベルで保険加入義務化を阻止しようという動きは、MA州で皆保険法が成立した直後から起きているそうだ。保険加入とプラン内容について、個人の選択の自由を確保したいという考え方である。

保険を州で管轄することの問題点が、ここでも現れているといえる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/MA州

9月28日 賃金下落の脅威 
Source :Why Paychecks Could Shrink (BusinessWeek)
2010年の賃金の見通しについて、経営者調査では"+3%"と楽観的な見通しを示しているようだが、"−2%"とかなり悲観的な見通しを持っているエコノミストもいるそうだ。

この四半世紀、アメリカの報酬コストは、ずっと2%以上を維持してきている。
しかし、足許の数字を見ると、2007年1Qにピークを打ったあと、伸び率はじりじりと下がり続け、今年2Qは、おそらく初めて2%台を割った。失業率は9.7%からさらに上昇する気配であり、経済情勢からみて急速に雇用が改善するとは思われない。また、住宅や商業用不動産の価格はまだまだ下がり続けており、家計への圧迫は相当なマグマに達しているものと思われる。

働き手としては、安い賃金に甘んじてでも雇用は確保しておきたいとの思いが働くだろうし、そうした状況下では、消費の拡大もままならないだろう。これは日本が金融危機以降、経験してきた事象である。

アメリカ経済は、日本と同様の経路を辿ることになるのか、それとも着実に復活への道を歩むことになるのか。まさに岐路に立っている。

※ 参考テーマ「労働市場

9月27日 民主党内で高まる緊張感 
Source :For Democrats, the Cracks in a United Front on Health Care (New York Times)
自ら設定した最終期限である先週末までに上院財政委員会で成案が得られなくなったため、Baucus上院議員のイニシアティブは失速してしまった。Baucus法案の枠組みこそ残るものの、そこに盛り込まれる内容は、別途、民主党議員の間で議論が進んでいるようだ(Washington Post)。

こうした状況を踏まえ、活気付いているのが民主党リベラル派である。特に、「公的プラン」の創設、企業への"Pay-or-Play"ルールの適用などについて、主張を強めている。つまり、上院でどのような法案が出てくるにしても、共和党の意向に配慮した内容は薄まらざるを得ず、両院協議になった場合でも、下院案を可能な限り左側に持っていくことで、リベラル色の濃い法案に仕上げることが可能となる。

こうした戦略は、Obama大統領からも支援を受けているようで、先週のPelosi下院議長の強行発言は、大統領との連携と見ることができる。この時点で、Obama大統領とBaucus上院議員とのタッグは解消されたとみてよいだろう。

こうした事態に緊張感を高めているのは、民主党中道派である。中間選挙を控え、保守派を刺激したくない彼らは、連邦政府が大きな権限と予算を使い、結局は増税となることを嫌っている。財政健全化も錦の御旗である。

舞台は、再び民主党内の論争に移りつつある。

※ 「無保険者対策/連邦レベル

9月26日(1) やはり説明不足 
Source :Public Wary of Obama on War and Health Care, Poll Finds (New York Times)
やはり、という調査結果である。上記sourceは、New York TimesとCBS Newsが行った世論調査で、医療保険改革とアフガニスタン問題に焦点を絞って調査している。詳細は、上記sourceからリンクを貼ってあるので、そちらを見ていただきたいと思うが、当websiteとして、注目しておきたい2点をまとめておく。
  1. まず、「どのような改革を行いたいのか、大統領は明確に説明しているか」との問いに対し、6割前後が説明していない、と考えている(Q31&32)。この点は、当websiteでもずいぶんと指摘してきた事柄である。その結果、59%の回答者が、改革案の内容が理解できないと感じている(Q38)。

  2. 「民主党は独自の改革案を貫くべきか、共和党からの支持も得て法案を作成すべきか」との問いに対し、65%が共和党の支持も必要と回答している(Q66)。これは、当初、Obama大統領が目指した方向性である。しかし、現時点では、下院民主党は独自路線に走ろうとしているし、Obama大統領も共和党の非協力的姿勢を批判している。こうした現状に対して、世論調査では、民主党、共和党とも改革案の内容の良し悪しではなく、政治的理由により対立している、と見ている(Q67&68)。
こうした結果をみると、国民は、またワシントン内で政治的せめぎ合いをしていて、肝心の改革の効果を議論しているのではない、と見ているようだ。では、国民は医療改革を支持していないのかというと、そんなことはなく、医療改革に関しては、Obama大統領への信頼はまだまだ厚い(Q34, 35&36)。こうした現状からどのように法案成立まで持っていくのか。年内というタイムリミットは、もう3ヵ月後である。

※ 「無保険者対策/連邦レベル

9月26日(2) 製薬会社との取引を優先 
Source :Senate Finance Committee Rejects Drug Discount (New York Times)
上院財政委員会で、法案修正議論が続けられている。上記sourceによれば、Baucus法案に含まれていた、Medicare加入者が低中所得者の場合の処方薬50%割引案が否決された。これは"donut hole"を埋めるための改正案で、民主党議員からのサポートはあったものの、共和党委員+Baucus上院議員を含む民主党委員3人の投票により、否決された。

処方薬50%割引が否決された背景には、Obama大統領と製薬会社との取引がある。両者の間で、「製薬会社から10年間で$80Bの貢献をする」という取引が6月に成立しており、これを条件に製薬会社は医療保険改革の推進に賛成している。ここで処方薬50%割引案が含まれてしまうと、この取引の貢献額が倍増してしまうことになるため、製薬会社としてはとても飲めない。従って、White Houseも飲めない、ということになる。

Obama大統領としては、改革の推進力を保つため、身内の提案よりも製薬会社との取引を優先した、という訳である。

一方、下院でも採決に持ち込むための法案作りが続けられている。下院本会議での議論開始目標は10月中旬とのことである。

その過程で、Pelosi下院議長は、公的プランの創設を強く主張している。しかも、『"trigger option"などは何もしないことの言い訳に過ぎない』とまで断じた。完全にリベラル派に軸足を移しており、『落とし所が見えつつある』などという推測はまったくの間違いであったようだ(「Topics2009年9月24日(5) Pelosi下院議長の賭け」参照)。完全にガチンコ勝負に出たことになる。再び、Pelosi下院議長と上院民主党の暗闘になりそうだ(「Topics2009年3月26日 Obama vs Pelosi 」参照)。

※ 「無保険者対策/連邦レベル

9月25日(1) 企業の冷やかな視線 
Source :Vast Majority of Employers Expect Health Care Reform to Increase Costs, Watson Wyatt Poll Finds (Watson Wyatt)
Watson Wyattが医療保険改革について、企業を対象にアンケート調査を行った。上記sourceで紹介されている主なポイントは次の通り。
1医療改革法案が成立すれば医療費が増加する73%
2企業の医療保険プラン提供の役割は低下する86%
3高額プランへ加入者への課税に賛成29%
4高額プランを提供している保険会社への課税に賛成19%
5保険プラン企業拠出分への課税に賛成11%
6企業の保険プラン提供義務化に賛成10%
7個人の保険プラン加入義務化に賛成50%
8企業、個人ともに義務化に賛成10%
9企業、個人ともに義務化に反対30%
この結果を見て、まずいなと思うのは、1と2のところである。1が4分の3近くを占めるようでは、今回の医療保険改革の二大目的の一つが達成されないことになる。また、Obama大統領は、企業提供の医療保険プランに過半数が依存している現状を踏まえて改革を進める、と主張してきたにも拘わらず、企業側の受け止めはまったく逆に向いている。

この二点について、国民が懐疑的であるならば、医療保険改革を進める意味がなくなってしまう。なぜなら、アメリカの医療保険制度は公的プランへの依存度を急速に高め、極めて厳しい財政状況をもたらすことになるからである。立法府、大統領府からの説明、説得が必要になっているのではないだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月25日(2) 臨時上院議員は元側近 
Source :Former Kennedy Aide Is Appointed to Fill His Senate Seat (New York Times)
MA州選出の臨時上院議員に指名されたのは、故Kennedy上院議員の元側近であるPaul G. Kirk Jr.氏であった。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「政治/外交

9月24日(1) 2つの数字 
Source :Editorial - The Numbers and Health Care Reform (New York Times)
2つの数字が公表され、New York Times紙の論説が、医療保険改革の必要性を訴えている。
  1. 保険料

    1999年には家族保険料が$5,800であったのに、2009年には$13,300に急騰した。このまま高騰が続けば、2019年には$30,800にまで上昇してしまう。

  2. 無保険状態

    1997年から2006年までの間に、少なくとも1ヵ月間無保険状態を経験した現役(65歳未満)は48%。6ヵ月経験した割合は41%、1年以上が36%となった。つまりは、半分近くの現役国民が、無保険状態に陥る可能性があるということになる。
アメリカ医療保険の問題点、@保険料(=医療費)の高騰と、A無保険者問題という、二大課題が指摘されている。課題は既に明白だ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月24日(2) ベテラン上院議員の苦境 
Source :G.O.P. Senator Draws Critics in Both Parties (New York Times)
Charles Grassley上院議員が苦境に陥っている。同上院議員は、1981年から上院議員を務めており、押しも押されぬ上院共和党のドンである。現在継続されている医療保険改革論議でも、超党派6人組に入っており、影響力は絶大だ。

ところが、そのGrassley上院議員が苦境に陥っているという。背景には、選出州のIowa州で、支持基盤である保守層の同議員に対する態度が硬化しているところにある。
  1. Grassley上院議員が2008年の共和党大会の代表に選出されなかった
  2. $700Bにものぼる金融機関支援策に賛成票を投じた
  3. Iowa州最高裁が同性婚を認可したことに、強い反対を表明しなかった(「Topics2009年4月8日 同性婚は東海岸へ 」参照)
要するに、保守派大御所として不甲斐ないという訳である。さらに、今度の医療保険改革で少しでも民主党に譲歩するようなことがあれば、来年の改選選挙の予備選で他の候補の擁立を模索する覚悟、とされている。

一方、地元の世論調査で、同議員に対する支持率が、1月の75%から先週57%へと、大幅に下落している。原因は、民主党、中道派の支持率が激減していることにある。同議員が医療保険改革に否定的な見解を表明し続けているためだ。

こうした流れを民主党幹部は逸早く見抜いていた(「Topics2009年8月20日(2) 民主党首脳が単独採決を模索」参照)。上院共和党は、超党派メンバーが交渉者としての立場を失ってしまったため、今後、Baucus上院議員との交渉ルートをどう確保するかが課題となる。民主党内も誰が主導権を持ってまとめていくのかがはっきりしていない中、Obama大統領とBaucus上院議員の微妙なタッグが続いている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月24日(3) 法案比較表 
Source :Side-by-Side Comparison of Major Health Care Reform Proposals (Kaiser Family Foundation)
上記sourceでは、Obama大統領提案、連邦議会で審議された主な法案を、全体、項目毎に、カスタマイズして比較できるようになっている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月24日(4) 臨時上院議員の指名 
Source :Bill Approved to Expedite a Successor to Kennedy (New York Times)
22日、MA州議会上院で、臨時上院議員を州知事が指名できるという法案が可決された。23日に両院で最終投票が行われた後、州知事に送付される。州知事は即署名、即日施行という運びとなる。

今回選任された臨時上院議員は、特別選挙が実施されるまでが任期であり、その意味では象徴的な意味合いもあるが、その間、医療保険改革、温室効果ガスなど、重要な政策課題に関する投票が行われる可能性も高い。

上記sourceでは、様々な名前が上がっているが、そのうちの一人が、Michael S. Dukakis元MA州知事となっている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「政治/外交

9月24日(5) Pelosi下院議長の賭け 
Source :Pelosi, House Dems Finding Compromise On Health Bills Difficult (Kaiser Health News)
上記sourceによると、Pelosi下院議長は、医療改革法案を前進させるため、Blue Dogsとの提携を捨て、リベラル派の"Congressional Progressive Caucus"の主張を取り込む決断をした、と報じられている。

同グループは、夏休み前、「公的プランを含まない法案には一切協力しない」とする激しい調子のレターをPelosi下院議長に送付している(「Topics2009年8月1日 下院3委員会可決」参照)。

しかし、上記sourceをよく読んでみると、同グループの一人は、「(公的プラン設立は)最終的には州ごとの選択ということもあり得る」と述べている。一方のBlue Dogsのメンバーも、「一定の無保険者割合に達している州での設立("trigger option")はあり得る」と発言している。

昨日紹介したように、上院で交渉姿勢を唯一保っている共和党のSnowe上院議員も同様の修正要望を出している(「Topics2009年9月23日(2) Baucus法案修正要望」参照)。

一瞬、Pelosi下院議長の決断は、中道派を捨ててリベラルに寄せる、という過激な姿勢のようにも見えたが、実は落とし所("trigger option")が見えつつあるということなのかもしれない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月23日(1) 高額プラン課税に懸念 
Source :A Proposed Tax on the Cadillac Health Insurance Plans May Also Hit the Chevys (New York Times)
Baucus法案に盛り込まれた高額保険プラン課税に対して、懸念の声が広がっている(「Topics2009年9月18日 Baucus法案」参照)。
  1. 10家庭に一つは課税を受ける保険プランに加入しているのではないか。

  2. 今の保険料上昇率では、数年のうちに課税最低限まで達するプランが多数存在するのではないか。

  3. 労働組合が加入している保険プランの多くが対象になるのではないか。

  4. 地域的に保険料の高い地域(CA州北東部、MA州など)だけが対象になるのではないか。

  5. 炭鉱労働者、消防士などリスクの高い労働者が加入している保険プランが対象になるのではないか。

  6. 保険料が高めになってしまう小規模企業では、加入している保険プランの14%が対象になるのではないか。
こうした懸念を背景に、Rockefeller上院議員をはじめとした上院民主党でもBaucus法案を公然と批判する声が出ている。

ところで、このRockefeller上院議員は、当初は医療保険改革を論議する上院超党派チーム(「Topics2009年3月14日 上院の役者達」参照)に入っていたのだが、Baucus上院議員が超党派6人組を結成したときにはずされた経緯がある。リベラル色が強すぎるというのが理由であったと思われる。

Baucus法案は、その作成の過程で既に同僚から恨みを買っており、すんなりと可決に向かうのかどうか。見通しは厳しそうである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月23日(2) Baucus法案修正要望 
Source :Baucus to Boost Aid for Uninsured, May Trim Plan Tax (Bloomberg)
上院財政委員会では、Baucus法案に対する修正案が次々と挙げられている。上記sourceによれば、主に次の3つの分野に集中しているという。
  1. 低所得者に対する補助の増加
  2. 高額プラン課税の縮小
  3. 保険未加入者へのペナルティの縮小
その修正要望項目は、既に564にものぼる(Workforce Management)。主な修正要望項目を、Baucus法案の概要(「Topics2009年9月18日 Baucus法案」参照)に書き込んでいくと次のようになる。
  1. 質の高い保険を全国民へ

    1. 個人市場の改革
      1. 保険会社は、健康状態を理由に、保険加入を拒否してはならない。
      2. 病歴を理由に、保険範囲を限定してはならない。
      3. 保険料の加算理由は、喫煙、年齢、家族構成に限る。
      4. 地域間の保険料格差は認めるが、地域内では認めない。

    2. 小グループ市場の改革
      1. 個人市場の保険料ルールを同様に適用する。
      2. 小グループ市場の定義は州に委任する。
      3. 1〜50人が単位となるが、従業員規模100人未満も適用対象となり得る。

    3. "Exchange"の創設
      1. 各州に"exchange"を創設する。
      2. 個人は、exchangeを通じて、郵便番号エリア毎に、直接保険プランを購入できる
      3. "Exchange"では、保険加入申請書を標準化する。
      4. 税額控除の受給資格、公的プログラムへの加入資格は、ここで審査する。

    4. " SHOP Exchange"の創設
      小グループ市場用の"Small Business Health Options Program (SHOP) exchange"を創設する。

    5. 移行期間の特例
      現在加入中の保険プランに加入し続けることは認める。ただし、新たな基準を満たしているプランに加入した場合に限り、新設する税額控除は受けらることとする。

    6. Medicaidの拡充
      1. 2014年に、加入資格をFPL133%に引き上げる。←対象をさらに拡充する。
      2. FPL100〜133%の人は、Medicaidか、"exchange"を通じて民間保険プランに加入するかの選択肢を有する。
      3. Medicaid新規加入に伴う財政負担について、連邦政府から州政府に追加拠出する。
      4. Medicaid加入者全員に処方薬プランを保証する。

    7. Medicare Part D
      Part D加入者で低中所得者が"donut hole"に達してしまった場合、ブランド処方薬については50%の割引を受ける。

    8. SCHIP
      1. 2013年9月30日まで、現行制度を維持する。
      2. その後、加入資格をFPL133〜250%にまで拡大する。

  2. 保険価格の適正化

    1. プラン内容の標準タイプ
      1. 4つの標準タイプを定める(bronze, silver, gold, platinum)
      2. 個人市場、小グループ市場の保険プランは、いずれかのタイプの基準を満たさなければならない。
      3. 4タイプとも、プライマリー・ケアを含み、予防医療や救急医療、手術等について免責額なしとする。
      4. 生涯給付や年間給付の限度額を設けてはならない。
      5. 自己負担の上限額をHSA拠出額(個人$5,950、家族$11,900)同等とする。

    2. 医療税額控除
      1. 低中所得者の医療保険購入を補助するため、医療税額控除制度(還付付き)を設ける。
      2. 保険料を補助するため、2013年、FPL134〜300%を対象に税額控除を認める。
      3. 2014年に、対象をFPL100〜133%に拡大する。
      4. 控除額は、保険料/所得をベースにする。FPL100%の場合は3%までが自己負担となり、それ以上は税額控除。所得が上がるにつれ徐々にこの割合を引き上げ、FPL300%で13%とする。FPL300〜400%では、所得の13%を自己負担の上限とし、それ以上の保険料負担を税額控除できる。←自己負担割合13%は高すぎる。
      5. FPL100〜200%で自己負担が発生した場合には、一定額以上は補助する。

    3. 小規模企業医療税額控除
      1. 従業員に医療保険プランを提供する小規模企業に税額控除を認める。
      2. 2011、2012年は、企業拠出の35%を上限とする。
      3. "Exchange"が創設される2013年以降は、拠出額の50%を上限に、2年間の税額控除を認める。
      4. 従業員10人以下かつ平均課税給与$20,000の場合、上記の全額が認めらる。
      5. これを超えると徐々に控除額は減少し、従業員25人以上または平均課税給与$40,000以上になると、まったく認められない。

    4. カフェテリア・プラン
      小規模企業が従業員に非課税のベネフィットを提供しやすくするよう、"Simple Cafeteria Plan"を創設する。

    5. CO-OP
      1. "Consumer Owned and Oriented Plan (CO-OP)"の創設を認める。←@まったく削除する案。A95%以上の州民が保険購入できない場合は非営利公的保険プランを創設(Snowe上院議員(R))
      2. 州内で活動する非営利組織で、個人、小規模グループ市場で保険を提供する。
      3. 基金、初期費用のために、連邦政府が$6Bを用意する。

    6. 個人の保険加入義務化
      1. 宗教上の理由等の免責事項を設ける。
      2. 保険加入しない場合にはペナルティを課す。
      3. ペナルティは、FPL100〜300%の場合、一人当たり年額$750、家族での上限を$1,500(つまり二人分まで)とする。
      4. FPL300%以上では、一人当たり年額$950、家族での上限を$3,800(つまり四人分まで)とする。 ←ペナルティが高すぎる。半分に引き下げろ。
      5. 次のような場合にはペナルティは課さない。
        • 最も安価なプランの保険料負担(補助金等は除く)が調整総所得(adjusted gross income, AGI)の10%を超える
        • FPL100%未満(2013年からはFPL133%未満)
        • 宗教団体等が運営する保険プランに加入している、等々

    7. 企業の責務
      1. 企業に保険プラン提供の義務は課さない。←企業の医療保険提供義務を高める。
      2. ただし、2013年以降、従業員50人以上で保険プランを提供しない企業については、フルタイムの従業員(週30時間以上)がexchangeを通じて医療税額控除を受け取った場合、"平均補助金額(上限$400)×従業員総数"を連邦政府に拠出しなければならない。

  3. Medicare、Medicaidの予防診療を強化

  4. 医療サービス提供の改革

    1. Medicareの出来高払い制を質・価値を基準とした支払制に変更する。
    2. 2012年から入院に関する支払いを価値基準の支払制に移行する。医師への支払いについても同様。

  5. 医療機関の連携強化

    1. Medicareで、質の高い医療機関が連携して生み出した医療費節約分は、医療機関の間で分配することを認める。
    2. Medicareで、再入院をなるべく防ぐようにする。

  6. プライマリー・ケアの充実

  7. Medicare改革

    1. 現行法では、2010年に医師への支払いが22%削減されることになっている。これをプラス改定に置き換える。
    2. Medicare Advantageへの補助制度を見直す。

  8. 保険会社規制

    1. 保険給付内容を4ページ以内で分かりやすく説明するパンフレットの基準を設ける。
    2. 保険料収入に占める管理費等の保険給付費以外の割合を公表する。

  9. 無駄の排除

  10. Medicareの持続性確保

    1. Part A, Bの償還価格の見直し
    2. 高額所得者のPart D保険料補助の見直し
    3. Medicare Commission(15人で構成する独立した委員会組織)の創設。目的はMedicareの行き過ぎた支払いの削減。議会の立法でとめられない限り、その提言は施行される。
    4. 現行の医療訴訟制度に代わる制度を、州政府が試行できるよう促す。

  11. 医療改革の財源確保策

    1. 高額保険プラン課税
      1. 個人加入で$8,000以上、家族加入で$21,000以上の保険プランについて、35%の課税をする。←課税率が高く、影響を受ける加入者が多いため、下限額を引き上げ、課税対象を絞る。
      2. 課税対象は、上記価値を超える分の保険料総額。
      3. 納税義務者は保険会社で、損金算入は認めない。

    2. 従業員が加入する保険プラン価値の開示
      2010年より、Form W-2(源泉徴収票)に、各従業員が加入している保険プランの価値を記入する。

    3. FSA拠出額の上限設定
      2013年より、FSAへの年額拠出額を$2,000以内とする。

    4. Part Dの企業補助
      2011年より、Part Dに対して企業補助を出している場合、その分の損金算入を認めない。

    5. 適格医療支出の定義の統一
      2011年より、HSA、FSA、HRAにおける適格医療支出の定義を統一する。

    6. HSAにおける非適格医療支出へのペナルティの強化

    7. 製薬会社からの拠出
      2010年より、製薬会社は、毎年$2.3Bを拠出する。損金算入は認めない。市場シェアに応じて分担する。

    8. 医療器具メーカーからの拠出
      2010年より、医療器具メーカーは、毎年$4Bを拠出する。損金算入は認めない。市場シェアに応じて分担する。

    9. 保険会社からの拠出
      2010年より、保険会社は、毎年$6Bを拠出する。損金算入は認めない。市場シェアに応じて分担する。

    10. 医療研究所からの拠出
      2010年より、医療研究所は、毎年$0.75Bを拠出する。損金算入は認めない。市場シェアに応じて分担する。

こうした修正要望が寄せられる中、Baucus上院議員は、柔軟な対応を約束している。ただし、大幅な修正を求める場合には、それに見合った新たな財源を示すよう求めている(Washington Post)。

このように集中砲火を浴びるBaucus上院議員だが、支持してくれる味方もまだまだいる。 Baucus上院議員は、共和党からの支持も諦めておらず、粘り強く働きかけを続けていく考えのようだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月22日 NY州知事選に介入 
Source :Obama Said to Request That Paterson Drop Campaign (New York Times)
今度は、NY州知事選である。来年の中間選挙時にNY州知事選が行われる予定だが、現職のDavid A. Paterson州知事が再選に意欲を燃やしている。ところが、Obama大統領は、早々に再選を諦めるよう、要請しているという。

理由は、同知事の不人気と、Clinton上院議員の欠員後の後継人事を巡るWhite Houseとの間の確執がこじれていることのようだ。

上記sourceによると、人間関係は次のようにつながっている。
 民主党共和党
次期知事選(2010年)候補David A. Paterson
NY州知事
Andrew M. Cuomo
Attorney General
Rudolph W. Giuliani
元NY市長
NY州選出連邦議会議員Sen. Kirsten E. Gillibrand
Rep. Charles B. Rangel
Rep. Gregory W. Meeks 
The White House Obama大統領 
NY州知事という局面だけ見れば、White Houseの介入もわからないではない。NY州知事は、全米でも注目されているところであり、まして、共和党から抜群の人気を誇るGiuliani元市長が出馬するかもしれない、ということでは、いても立ってもいられないところであろう。

しかし、上表を見れば、Paterson州知事にはRangel下院議員が連なる。彼は、下院医療改革法案の鍵を握る3委員長の一人である(「Topics2009年7月15日 下院3委員会案 」参照)。また、リベラル派と見られており、Obama大統領からみれば、今後の協力を求めなければいけない相手となる。

また、Gillibrand上院議員は、クリントン上院議員が国務長官に就任した後の議席補充で指名され、下院から上院に鞍替えした議員である。ほぼ無名の議員ではあるものの、下院時代はBlue Dogsに数えられている(「Topics2009年7月22日(1) Blue Dogsの反乱」参照)。医療改革法案を成立させるためには、重要な中道派の協力者である。

大統領が地方選挙にプライマリーの段階から介入することは、選挙戦略上必要な場合もあろうが、上記やPA州(「Topics2009年9月16日 Specter上院議員の選挙活動」参照)のように、連邦議会で身内に敵を抱える可能性も出てくる。Obama大統領は、こうしたリスクをどこまで取っていくつもりなのだろうか。

一日置いて伝えられた続報(New York Times)によると、Paterson州知事は一旦は選挙戦からの離脱をほのめかしたものの、一夜明けると態度を硬化させ、選挙戦続行を明言している。他方、White Houseの方は、「そのような介入の意図はない」と弁明に終始しているようだ。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「無保険者対策/連邦レベル

9月21日 MA州保険料急騰 
Source :Health insurers plan 10% rise in rates (The Boston Globe)
2010年のMA州の医療保険料が約10%上昇するとの見通しである。同州では、この10年間で131%の上昇を記録すると見られている。ちなみに、2008年の家族プラン保険料の平均は、$13,788である。

さらに、豚由来のインフルエンザ(A/H1N1)が予想以上に流行したり、現在連邦議会で検討されている高額プランへの課税(「Topics2009年9月18日 Baucus法案」参照)などが実現すると、さらに保険料は引き上げられる可能性があるという。

ご存知の通り、MA州は無保険者割合を飛躍的に低下させることには成功したが、医療費そのものを抑制することには成功していないようだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州」、「無保険者対策/連邦レベル