10月31日 IL州年金と税制
Source :Illinois pension crisis would devour ‘millionaire tax’ (Illinois Policy)
アメリカ大統領選挙と同時に行なわれる各州の州民投票は面白い。上記sourceで紹介されているのは、Illinois州(IL)の州民投票の一つである。今年5月に成立した州法(Senate Bill 2412)は、州民に対して3つの問いかけ(質問)を決定した。いずれも投票結果に拘束力のない州民投票である。そのうちの一つの質問は、次のようになっている。
Property Tax Relief and Fairness Referendum Act:
“Should the Illinois Constitution be amended to create an additional 3% tax on income greater than $1,000,000 for the purpose of dedicating funds raised to property tax relief?”
IL州憲法は、所得税率を3%のフラット税率と定めている。州民全員に影響を及ぼすことによって、州議会が簡単に増税できないようにするためである。上記質問は、これを改めて、年間所得100万ドル以上の州民には3%の追加課税を行ない、その財源をもって固定資産税を減免すべきかどうかを問うている。

これに上記sourceは噛みついているのである。論点は次の〇点。
  1. IL州政府年金の財政状況が悪い。IL州政府年金全体で積立比率は50.9%(2023年)、全米で見ると下から2番目の低さである(Pension Plan Funded Ratio Rankings 2023)。

    州政府から州政府年金基金に拠出される金額は年間$11.2B。これは州政府一般予算の20%超にあたる。ところが、数理計算により必要となる拠出金額は$16.1Bとなっている。つまり、毎年$4.9Bが不足することになる。
    ところが、州民投票にかけられる『年間所得100万ドル以上の州民には3%の追加課税』で得られる増収は、$3~4.3にしかならない。本来必要となる年金基金への拠出額を満たすこともできない。
    とても固定資産税減免に回す余裕はない。

  2. IL州自治体の年金基金自体も$68B以上の退職給付債務超過となっている。2019年に固定資産税(住宅)を$756引き上げ、その後の増収は$15B近くに達しているが、固定資産税減免には至っていない。

  3. 定率課税の原則を崩すと、州議会は増税攻勢をかけてくる。ここ30年間で唯一累進課税制度を導入したCT州では、中間所得層の課税率が高まり、貧困者も1.5倍になっている。
少し年金至上主義の主張のような気がする。そもそも積立比率に関心を持っていれば、こんなに低い積立率にはならないと思う。州民投票の問でも、『固定資産税の減免のため』と謳っているのだから、年金基金への拠出増に回すとも思えない。しかし、年金債務を放棄することはできず、いずれにしても何らかの手立ては必要だ。

(11月12日追記)

上記州民投票は、60%超の賛成を得た(‘Millionaire tax’ being backed by Illinois voters)。

※ 参考テーマ「地方政府年金

10月30日(1) 落ち着いた労働市場
Source :Job Openings and Labor Turnover Summary (BLS)
10月29日、BLSが、9月末の求人数を発表した。9月末の求人数は744.3万人で、前月比5.3%の減少となった(「Topics2024年10月2日 労働市場の落ち着き続く」参照)。
労働力人口に占める求人数の割合は4.5%と低下した。
新規雇用数は555.8万人と増加した。
失業者数/求人数は、0.9で横ばいであった。
9月の自発的失業(Quits)は307.1万人と、減少が続いている。
Quits level, Total nonfarm - 2019~2024年

Quits level, Total nonfarm - 2007~2024年
アトランタ連銀による時間給のデータは、9月の前年比で、全体は4.7%増、勤続組は4.6%増、転職組は4.9%増となった。8月に較べて伸び率が若干高まっている。

Federal Reserve Bank of Atlanta's Wage Growth Tracker
雇用市場の落ち着きが継続している。

※ 参考テーマ「労働市場

10月30日(2) 企業もPBM見直し検討
Source :Employers eye PBM changes, fearing legal threat (Axios)
上記sourceによると、医療保険プランを提供する企業も、Pharmacy Benefit Management(PBM)に対して厳しい目を向け始めている(「Topics2024年7月16日 FTC:PBM調査レポート」参照)。 ※ 参考テーマ「医薬品

10月24日(1) 2025年FSA限度額
Source :2025 Health FSA Limit Increases to $3,300 (NEWFRONT)
IRSは、2025年のFSAプランの拠出限度額、繰り越し限度額を公表した。 ※ 参考テーマ「HSA

10月24日(2) 大学新入生減少か
Source :Colleges enrolled fewer freshmen, first decline since the pandemic (Washington Post)
10月23日、National Student Clearinghouseは、今年秋の大学入学者数について、暫定速報値を公表した(「Topics2024年1月26日 大学入学者数反転増」参照)。
  1. Undergraduatesの総人数は、3.0%の増加となった。
  2. ところが、新入学生数は、5.0%の減少となった。これは、パンデミック発生以来初めてのことである。
※ 参考テーマ「教 育

10月24日(3) 労働省は半分出勤求める
Source :Labor Dept. to require workers to spend half of work time in-person, angering union (Government Executive)
10月16日、労働長官は労働省職員に対して、『2週間のうち最低5日間は従来の職場で働くことを求める』と通知した。今年12月1日から執行する予定である。「2週間」としているのは、給与が2週間単位で支払われていることによる。

もともと労働省は、2023年11月に公表し、2024年1月から実施する予定であった。しかし、労組との折り合いがつかず、言わば見切り発車のような形で執行することにしたのである。

これに対して、労働省職員15,000人の2/3が加入する労働組合"National Council of Field Labor Locals"は猛反発している。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働組合

10月24日(4) CA州:E-Verify不人気
Source :Inside a flawed immigration system: Millions of undocumented workers and a verification program that few use (Los Angeles Times)
上記sourceによると、全米でE-Verifyに登録している企業・団体等は27%となっている。ところが、California州(CA)に限ってみると、約16%しかないという。その理由は、CA州の雇用が、既に不法移民に頼っているからだというのだ。 これらは例示だが、CA州経済界は、現状維持が望ましい状況なのである。

ところで、上記sourceでは、E-Verifyについて"highly reliable"と表現している。これまで当websiteでは、欠陥システムであるとの認識を記録してきたので、少し驚きである(「Topics2023年5月31日(1) FL州不法移民規制強化」参照)。もしも信頼性の高いシステムなのに全米で27%の企業しか登録していないということになると、全米の企業はCA州と同じで、不法移民に労働力を頼っているところがある、現状維持が望ましいと思っていることにならないだろうか。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

10月22日 PBGC2025年保証月額
Source :Maximum monthly guarantee tables (PBGC)
10月17日、PBGCは、2025年の最大保証月額を公表した。ここには、過去1974年からの保証月額が掲載されている。

ただし、これらは単独事業主DBプランの場合のみである。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11