11月20日 DuPont:DBプラン凍結 
Source :DuPont to freeze defined benefit plan in 2018 (Pension & Investment)
11月17日、DuPontはDBプランを凍結すると発表した。いよいよDuPontもDBプランから去ることになる。

今回の発表内容は次の通り。
  1. 2018年11月30日時点で、DBプラン加入者の受給権付与を停止する。

  2. 同時点で50歳未満の従業員は、退職後の医療保険、生命保険の給付は受けられない。

2015年12月31日時点で、DBプランの資産は$14B、給付債務は$19B、加入者13.3万人の内現役従業員は1.3万人である。この1.3万人にとっての影響は小さいものではない。

しかし、これまでDuPontがDBプランを縮小するのにかけてきた時間はとても長い。

加えて、手厚いDCプランを提供している。企業拠出は、『報酬の3%+マッチング拠出(最大6%)』である。

上記sourceでは、従業員への通知の早さも評価している。規則上は凍結の45日前に通知しなければならないとされているが、上述の通り、DuPontは2年前に通知しているのである。

従業員に優しい企業というのはこういうことなのだろう。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

11月17日 PBGC複数事業主プランの破綻(2) 
Source :PBGC Fiscal Year 2016 Annual Report Shows Increasing Deficit in Multiemployer Program (PBGC)
11月16日、PBGCが2016年度末(2016年9月末時点)の財政状況(Fiscal Year 2016 Annual Report)を公表した。 PBGCは、今年6月17日に、両プランの財政状況についての将来予測(Projections Report)を公表している。
単独事業主プランの積立比率は、リーマンショック後の低下傾向にようやく歯止めがかかった感がある。一方、複数事業主プランの財政状況の悪化は加速化している。このように明暗が分かれたのは、保険料の変更の違いからくる所が大きい。単独事業主プランの保険料は大幅に引き上げられたものの、複数事業主プランの保険料は、ほぼ据え置かれている。この傾向は今後数年は続くことになっている(「Topics2015年11月13日 PBGC保険料スケジュール」参照)。

このような状況を踏まえ、PBGCは2025年までに複数事業主プランの持続可能性が確保できなくなる(insolvencyの確率が50%を超える)と予想している。
もしも現状のまま制度を継続しようとすれば、巨額の財政支援が必要となる。この図でも明らかなように、保険料収入が絶対的に不足している。
毎度申し上げているが、もうこの制度は廃止した方がよい。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

11月15日 Medicare保険料急増の意味 
Source :2017 Medicare Parts A & B Premiums and Deductibles Announced (Centers for Medicare & Medicaid Services)
11月10日、来年のMedicare保険料と免責額が公表された。

先に紹介した通り、特に新たな措置は採られなかったため、新規加入者等の標準保険料は10%引き上げられた(「Topics2016年10月21日 Medicare保険料再燃」参照)。これまでの既加入者の多くは負担急増回避条項で守られ、保険料負担はわずかにしか増えないが、新規加入者等は10%も保険料が上げられる。 このような制度が続くと、既得権益を持つ既加入者と新規加入者の間の保険料格差がどんどん大きくなっていくことになる。これはある意味、制度の持続可能性を失うことになる。世代間格差が急速に広がるからだ。基金の方も2030年前には枯渇する(「Topics2016年6月24日 公的年金・Medicareの財政見通し」参照)。

やはりMedicare制度改革は急務である。

※ 参考テーマ「Medicare

11月14日 WallとFence 
Source :Donald Trump Says He'll Deport 2-3 Million People Once In Office (NPR)
トランプ氏が大統領就任が決まってから、初めてのロングインタビューを受けたとして、その内容が注目を浴びている。上記sourceでは、主に2つの政策課題への言及について紹介している。
  1. 不法移民対策

    • 犯罪歴のある者、暴力団や麻薬組織に入っていた者など、200〜300万人の不法移民者を国外追放とする。

    • ブッシュ、オバマ両大統領だって、同様の措置を講じてきた。

    • その前に、国境対策を万全にすることが重要だ。

    • メキシコ国境に壁(Wall)を築きたいが、一部の地域は柵(Fence)になるかもしれない。

  2. PPACA

    • PPACAを廃止し、新たな制度を導入する。

    • ただし、『既往症のある者の保険加入』や『親元に暮らす子供の親の保険加入』などの規定は残したい。
不法移民の国外追放については、トランプ氏の言う通りで、オバマ大統領の就任期間中(2009〜2105年の7年間)で、251万人の国外追放が行なわれている(「Topics2015年12月24日 国外退去者減少」参照)。
決して非現実的な政策目標ではないのである。

しかし、選挙戦の間中唱えていた「メキシコ国境に壁を築く」のは非現実的なため、柵でもいいと言い始めているのだろう。

一方、相変わらずPPACAの廃案を唱えているが、これは上院で60議席を確保していないため、極めて難しい。いくつかの規定は残すにしても、骨格を崩してしまうような廃案に賛成する民主党上院議員がそんなにたくさん出てくるとは思えない。ただし、トランプ氏は『いくつかの規定を残す』という現実的な選択肢も示し始めたことで、連邦財政に関わらないマイナーチェンジを模索しようとしているとも考えられる。

就任までの期間、トランプ氏の言動からその意図を読み取る作業が続くことになる。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「無保険者対策/連邦レベル」、「大統領選(2016年)

11月13日 薬価抑制が緊急課題 
Source :Drug Prices (Bloomberg)
上記sourceによると、ある世論調査で3/4以上の回答者が『連邦政府は薬価の適正化を医療政策の第一優先課題にすべきだ』としているそうだ。

当websiteでも薬価の高騰について紹介してきているし、国際比較でもアメリカ国民の医薬品消費高は突出している。
2013年の調査では、負担に耐え切れずに処方薬の利用を中断した人の割合が、アメリカでは5人に1人にも昇っている。一方、ドイツ、カナダ、オーストラリアでは10人に1人にとどまっている。

PPACAの審議の時から、連邦政府が薬価について製薬会社と直接交渉できるようにする政策が議論されてきているが、なかなか実現しない。来年1月からの共和党政権では更に難しいだろうと思われる。

※ 参考テーマ「医薬品

11月12日 医療保険政策への影響 
Source :Where Clinton and Trump stand on healthcare policy (Modern Healthcare)
大統領選、連邦議会選の結果、国政にどのような影響が及ぶのか、正直言って判らない。上記sourceは、日付を見ればわかる通り、選挙結果が出る前に書かれたものであり、比較的冷静に分析している。トランプ氏の大統領就任に伴う医療政策への影響のポイントは次の通り。
  1. トランプ氏、議会共和党とも、PPACAの廃止を訴えてきた。しかし、これを廃止すれば、一気に無保険者が膨らむという社会問題があることに加え、連邦議会上院で共和党が60議席を占めていないことから、廃止法案を可決することは難しい。

  2. PPACAの規定のうち、個人・企業の加入義務の撤廃、給付内容規制の見直し、保険料補助金の見直しなどには手を着けるのではないか。

  3. 保険料補助金に代わって、還付付税額控除を提案する可能性もある。

  4. Medicareについて、トランプ氏自身は変更しないと言っているものの、議会共和党は保険料を補助する制度に変更したいと考えている。市場原理をもっと活用しようという主張である。

  5. Medicaidについては、トランプ氏、議会共和党とも連邦負担金を包括払いにして、州政府に裁量を持たせる制度に変更したいとしている。
いずれも不確定要素が多く、また政治的な決着は簡単ではない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「Medicare」、「大統領選(2016年)

11月11日(1) CA州3市でSoda Tax成立 
Source :Soda taxes win in Oakland, San Francisco and Albany (East Bay Times)
アメリカ国民の生活にとって大事なことは、州民投票、住民投票で決まっていく。

CA州の3市(Oakland, San Francisco, Albany)の住民投票で、Soda Taxが可決された(「Topics2016年10月13日 Soda Taxに援軍」参照)。それも、結構大きな得票差で、である。

いずれの市でも、1オンス当たり1¢である。

先に導入したBerkeley市では、しっかりとSoda Taxの効果が現れているという。税収は年間150万ドルに達し、加糖飲料の消費量は21%減少したという調査結果が出ている。

次第にSoda Taxは普及しつつつあるようだ。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

11月11日(2) 4州で最低賃金引き上げ 
Source :Voters In These States Just Raised The Minimum Wage (Huffington Post)
CA州ほど派手な引き上げではないが、今回の州民投票で、4州が最低賃金引き上げを決めた。
現 在2020年
Arizona$8.05/h$12.0/h
Colorado$8.31/h$12.0/h
Maine$7.50/h$12.0/h
Washington$9.47/h$13.50/h
最低賃金引き上げは地道に広がっている。

※ 参考テーマ「最低賃金

11月11日(3) CO州:単一保険制度否決 
Source :ColoradoCare measure Amendment 69 defeated soundly (The Denver Post)
CO州の単一保険制度提案(Amendment 69)は、79.6% vs 20.4%の大差で否決された(「Topics2016年10月25日 CO州:単一保険州民投票」参照)。

これでしばらくは、単一保険制度導入の議論は起こらないだろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CO州