Source : | Health Law Tax Penalty? I’ll Take It, Millions Say (New York Times) |
当websiteでは、これまでも「ペナルティ」という用語を使用し、今回の標題でも「ペナルティ」としたが、オフィシャルには、"The fee for not having health insurance"とされている(HealthCare.gov)。公式説明は、次のようになっている。If you can afford health insurance but choose not to buy it, you must pay a fee called the individual shared responsibility payment. (The fee is sometimes called the "penalty," "fine," or "individual mandate.")2014年に保険加入が義務付けになってから、「ペナルティ」額は次のように規定されている。2017年以降はCOLAが適用されることが法律上規定されているが、正式な公表はまだない。ただ、COLA適用ということであれば、これまでの3年間のように、ぐんぐん引き上げられていくことはないだろう。
A(所得基準) B(人数基準) ペナルティ額 2014年 家計所得*の1%
(上限:Bronzeプラン年間保険料の全国平均)$95(18歳未満$47.5)×人数
(上限:$285)max{A,B} 2015年 家計所得の2%
(上限:同 上)$325(18歳未満$162.5)×人数
(上限:$975)max{A,B} 2016年 家計所得の2.5%
(上限:同 上)$695(18歳未満$347.5)×人数
(上限:$2,085)max{A,B}
*家計所得:課税最低限を超えた部分のみが対象。
今、仮に2017年、27歳独身で年収が$50,000(!)の若者がいたとしよう。Exchangeのベンチマークとなる保険プランの保険料年間負担は、約$3,600と見込まれる(2017年のExchangeに関するHHSレポート)。これに、免責額や窓口負担が加わってくる。
一方、ペナルティは、$1,000弱で済んでしまう。絶対水準としてペナルティの負担は小さい。
おまけに、2017年のExchange保険料は平均で25%も上昇する。一方のペナルティが大きく引き上げられることはない。こうした状況を勘案すると、敢えて無保険を選択し、ペナルティを負担する若者が増えるだろう。実際、上記sourceでは、そうした選択を真剣に考えている国民が紹介されている。そうなれば、またまた保険料は上がっていくという悪循環に陥りかねない。
2017年は、PPACAにとっての正念場になるかもしれない。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | New data expose mysterious world of off-exchange health plans (Modern Healthcare) |
全米のデータを分析すると、Exchangeの外で販売された保険プランの方が、保険料が高いことがわかったそうだ。上記sourceでは、その理由をいくつか挙げている。
(2016年) Exchange Exchange外 Silver Plan 保険料 $279 $314 Silver Plan 保険料
個人プラン(27歳)$283 $320 いくつ理由は考えられるが、Exchangeの内外で保険料に差があること自体、問題視できる。専門家は、Exchangeとその外の市場を統合すべき、と主張している。市場を分断せず、完全に比較可能にすれば、こうした差異は生じなくなるはずだというわけだ。実際、VT州、D.C.はそうしているそうだ。こうした主張に保険会社が強く反対しているところからして胡散臭い。
- ネットワークの内容が異なる。Exchange保険プランは、ネットワークを絞ったタイプが多い。
- Exchange外保険プランのみを販売している保険会社は、管理コスト、利益が大きい。
- 保険料補助金を受給できないとわかれば、Exchangeの外で保険購入する方が簡単。
- Obamacareに反対している人は、多少高くてもExchange外で保険購入する。
- 専門医の診療(障害、生活習慣病等)を必要としている人はExchangeの外で保険購入する傾向がある。
- 保険料補助金はExchange保険に加入しなければ受け取れないということを知らない。
- 保険斡旋会社が、利益率の高いExchange外保険プランに誘導している。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/VT州」、「無保険者対策/D.C.」
Source : | Average premiums for popular ACA plans rising 25 percent (Washington Post) |
10月24日、HHSは2017年のExchangeに関するレポートを公表した。ポイントは次の通り。全体を要約すると、保険会社の退出が相次ぎExchangeの競争度が低下し、保険料が引き上げられた。もちろん、これまでの3年間、保険料が無理やり抑制されてきたという面もある。
- ベンチマークプラン(Silver Planの中で保険料が下から2番目のプラン)の保険料は、連邦立Exchangeで平均25%、中位数16%、連邦立+州立(一部)で平均22%の上昇率となる。
- 上の数字はあくまで平均値であり、州ベースで見ると、30%以上の上昇率となるところもたくさんある。
- Exchangeで保険プランを提供する保険会社は、ざっくりと3割程度退出する。
- 州ベースでみた平均的な保険会社数、保険プラン数は次の通り。保険会社の選択肢が2社しかない住民が44%、1社しかない住民が21%もいることになる。
2017年のExchangeの姿が明らかになり、アメリカ国民はどのような反応を示すのだろうか。大統領選、連邦議会選挙にはどのような影響をもたらすのだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | In Colorado, a push for single-payer healthcare (Modern Healthcare) |
Colorado州では、昨年、単一保険制度導入のための法案が審議されていたが、不調に終わった(「Topics2015年11月28日 CO州:単一保険制度を検討」参照)。
ところが、民間団体主導で15万人以上の署名が集まり、11月8日に改めて単一保険制度導入の是非を問う州民投票にかけられることになった(Amendment 69)。現時点で想定されている基本的な制度設計は次の通り。これに対して、病院団体は診療報酬を低く抑えられるのではないかとの懸念から、強く反対している。また、一般州民の意識調査でも、9月時点での支持率は27%しかない。かなり厳しい状況ではあるが、投票結果を注目しておきたい。
- 制度名は"ColoradCare"。PPACAの適用除外で制度を創設する。
- 主な財源は、
- 10%の所得税(労使折半)
- 加入者の窓口負担
- Medicaid等用の連邦・州政府負担、等々。
- 予防診療、プライマリーケアについては免責額、窓口負担なし。
- 州立Exchangeは廃止し、新制度に統合。
- Medicare、Veterans Healthは現行制度を維持。
- 州民は、民間保険に加入することも可能。
- 保険給付、診療報酬等については、21人で構成する委員会で決定する。
※ 参考テーマ「無保険者対策/CO州」
Source : | Obamacare headed for change, no matter who wins in November (Deseret News) |
今回の大統領選は、本当につまらない。いつもなら政策論争自体が勉強になるのだが、今回はそうした議論が深まらない。それでも、上記sourceでは、医療保険制度、特にPPACAに関して、新大統領にとっての課題が列挙されている。また、企業提供保険プランについても、新政権がどのような方針を打ち出すのか、たくさんの論点を抱えているだけに、懸念が広がっている(IFEBP)。
ただし、どちらの候補も政策提案はしてもその先に具体化する方策を示していないため、なかなか現実味が見えてこない。そうした中で、上記sourceの最後に、シンクタンク研究者による3つの提案を紹介している。いずれの方策も実現できるかどうかはわからないが、少なくとも医療費高騰に取り組まなければ本質的な問題解決にならないことはわかっている。そして、そうした問題に取り組むのは州政府でしかできないだろう。実際、当websiteでも紹介してきた通り、MD州、MA州は独自に医療費抑制に取り組んでいる。
- 医師への報酬を、診療ベースから基本給(salary)に変更する。これにより、医療費高騰を抑制できる。
- Medicaidを拡充していない州で、低所得者をカバーする新たな制度を創設する。
- 莫大な医療費がかかる疾病や予防診療を保険給付に含めるよう義務付ける。
これも上記sourceで紹介されているが、元連邦議員達が『PPACAが提供している主要な給付を提供できるのであれば、州にPPACAからの脱退を認める』との提案(Washington Post)をしている。しかも、これは既にPPACAに盛り込まれた規定で、2017年から脱退可能になっているのである。
MD、MA両州の努力を支援し、その他州にも働きかけ、国全体で医療費を抑制していくためには、州政府の自助努力を促すことが重要だと思う。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/MD州」、「無保険者対策/MA州」
Source : | Medicare premiums to soar - again (AEI) |
昨年10月、Medicare保険料の一部高騰を抑制する法案が可決され、実施された(「Topics2015年10月30日 Medicare保険料合意」参照)。上記sourceでは、今年も同様の懸念があり、レームダック議会で何らかの対応を採らなければ、Medicare保険料が一部高騰する可能性があると訴えている。
ポイントは次の通り。所得再分配政策として考えれば、充分ありの引き上げのような気もするが、AEIというシンクタンクとしては認めがたいのであろう。
- 10月18日、SSAは、「2017年のCOLAは0.3%」となることを公表した(Press Release)。
- これにより、2017年の公的年金受給額は約$4増額されることになる。
- ところが、Medicare医療にかかわる物価上昇率は、約3.1%と見込まれている。
- 負担急増回避条項("hold harmless" provision)により、ほとんどのMedicare加入者保険料は、公的年金増額の範囲内でしか引き上げられないこととなっている。そのため、ほとんどの加入者のMedicare Part B保険料は、$125/M(現行$120/M)となる。
- ただし、新規加入者と一定額以上の所得のある加入者、約1,500万人については、大幅な保険料引き上げが見込まれる。
- 2017年新規加入者の保険料は、前年加入者よりも$25/M高くなる。
- 年間所得$85,000以上の加入者については負担急増回避条項が適用されないため、$38〜86/Mの増額となる。ただし、キャップは約$475に設定されている。
※ 参考テーマ「Medicare」、「公的年金改革」