Source : | Utah shuts down Arches, the state’s nonprofit insurance co-op (Salt Lake Tribune) |
保険加入受付開始直前の10月27日、UT州のCO-OP、Arches Health Planは、2016年の保険プラン提供を停止するよう命じられた。本当にドミノ倒しのようである。
これで、9のCO-OPsが退出し、加入者の過半が他の保険プランへの移行を余儀なくされた。全米におけるCO-OPsの存在は薄い影となってしまった。しかも、UT州の場合、CO-OPが退出することで、深刻な事態が生じる。これでは、Exchangeの意味はほとんどない。人数は少ないものの、county住人にとって影響は大きい。
- 20 countiesでは、Exchange保険プランの選択肢が一つしかなくなる。
- しかも、その保険プランは同じcounty内の医療機関をネットワークに入れていない。つまり、out-of-networkの医療機関しかない。通常、out-of-networkの場合、自己負担が重くなる。
※ 参考テーマ「CO-OP」
Source : | Agreement Is Seen as Short-Term Relief for Medicare and Social Security (New York Times) |
先に紹介した連邦債務上限の引き上げ(2017年3月まで)と2016,2017会計年度の予算案は、10月28日、下院で可決された(「Topics2015年10月28日 PBGC保険料再引上げか」参照)。この中には、懸案であった案件がいくつもディールされて盛り込まれているようだ。
上記sourceによれば、暗礁に乗り上げていたMedicare保険料の抑制案やその他についても、今回の歳出法案の中で与野党合意として盛り込まれている(「Topics2015年10月20日 Medicare保険料の大幅引上げ」参照)。シングルイシューで議論している間は合意できないものでも、このようなドサクサ紛れの中では合意ができるようである。
- Medicare Part B 保険料
- Social Securityの2016年COLA適用は見送られた。
- 負担急増回避条項(Center for Medicare Advocacy)により、Medicare加入者の70%の保険料引き上げは見送られる。
- 適用とならない残り30%(約1,650万人)の保険料については、
【2015年】$104.90/M ⇒【現行規定通り】$159.30/M ⇒【民主党法案】$104.90/M ⇒【与野党合意】$120.00/M
- Medicare Part Bの免責額(加入者全員)については、
【2015年】$147 ⇒【現行規定通り】$223 ⇒【与野党合意】$167
- 必要となる財源を賄うため、2021年までの5年間、全加入者が$3/Mの追加保険料を負担する。
- Medicare診療報酬レートを適正化し、10年間で$9Bの歳出を抑制する。
- ジェネリック薬の価格上昇率がインフレ率より高い場合、Medicaidにおける購入割引率を高める。
※ 参考テーマ「Medicare」、「無保険者対策/州レベル全般」
2016年のExchange保険加入手続きが11月1日から開始される。全ての情報が明らかになっていないため、全容がわかるまでにはまだ時間がかかるようだ。それでも一部の都市や州全体の動向が紹介されつつある(「Topics2015年10月9日 Exchange保険料は上昇か」参照)。
各州Exchangeのシルバークラスで保険料が安い方から2番目の保険プランがBenchmarkとして位置づけられている。ネットワークを絞ってみても、保険料上昇を抑えられないプランが多いようだ。保険料補助金(tax credits)前で大きく上昇し、保険料補助金後ではほとんど上昇しないということは、保険料補助金支出が大幅に伸びるということなのだろうか。連邦政府、州政府ともに財源の確保が必要になるのかもしれない。
- 都市部のベンチマークプラン保険料上昇率(The Henry J. Kaiser Family Foundation)
保険料補助金前 保険料補助金後 単純平均 10.4% 0.1% 加重平均(2015年州加入者数) 3.6% -0.7% - 連邦立Exchange(37州)のベンチマークプラン保険料上昇率(HHS)
保険料補助金前 37州平均 7.5% 30都市平均 6.3% - 保険プランがカバーする医療機関ネットワーク
広範な医療機関・医師を提供するネットワークは減少し、限定された医療機関・医師のみに保険給付を行うプランが増加する。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | Premium Rates (PBGC) |
10月26日、PBGCは2016年の保険料を発表した。今年1月に公表した保険料見込みとの違いは、上表の緑の部分だ(「Topics2015年1月18日 PBGC保険料上昇」参照)。これはインフレ調整分の反映で、制度的な変更ではない。今後は、全ての保険料の制度変更は予定されておらず、インフレ調整分が加算されるだけである。Years after 2016
All rates are subject to indexing for years after 2016. There are no scheduled increases (other than indexing) for years after 2016.
Current and Historical information
Plan years beginning in
Single-Employer Plans
Multiemployer Plans
Per Participant Rate for Flat-Rate Premium
Variable-Rate Premium
Per Participant Rate for
Flat-Rate PremiumRate per $1,000 UVBs
Per Participant Cap
2016
$64 $30 $500 $27 2015
$57 $24 $418 $26 2014
$49 $14 $412 $12 2013
$42 $9 $400 $12 2012
$35 $9 N/A $9 2011
$35 $9 N/A $9 2010
$35 $9 N/A $9 2009
$34 $9 N/A $9 2008
$33 $9 N/A $9 2007
$31 $9 N/A $8
・・・・・・と、ここまで書いたところで、またまたPBGC保険料引き上げが提案されたとの報道が飛び込んできた。。
10月26日夜、連邦議会幹部と大統領府は、連邦債務上限の引き上げ(2017年3月まで)と2016,2017会計年度の予算案で合意に達した(ロイター)。下院共和党は27日に法案説明会を開催し、28日には下院で採決し、上院に送付する予定だ。
この合意内容の中に、が含まれていると報じられている(Pension & Investment)。
- PBGC保険料の更なる引き上げ
- 債務認識縮小制度(MAP-21)の2年延長(2022年まで)(「Topics2013年11月22日(1) MAP-21延長案」参照)
- PPACAで規定されている採用時の自動的保険加入義務の廃止
報道によれば、PBGC保険料引き上げ提案は次の通りである。この提案について、企業年金専門家は『信じられない最悪の提案であり、DBプランの凍結・廃止の流れを加速する』と批判している。さらに、当事者であるPBGCも『我々は保険料引き上げを求めたこともないし、その必要性も感じていない』とコメントしている。Proposed Rate, Years after 2016
Plan years beginning in
Single-Employer Plans
Multiemployer Plans
Per Participant Rate for Flat-Rate Premium
Variable-Rate Premium
Per Participant Rate for
Flat-Rate PremiumRate per $1,000 UVBs
Per Participant Cap
2019
$78 $38 2018
$73 2017
$68 2016
$64 $30 $500 $27 2015
$57 $24 $418 $26 2014
$49 $14 $412 $12 2013
$42 $9 $400 $12 2012
$35 $9 N/A $9 2011
$35 $9 N/A $9 2010
$35 $9 N/A $9 2009
$34 $9 N/A $9 2008
$33 $9 N/A $9 2007
$31 $9 N/A $8
今回も、安易な財源確保策が採られようとしている。
※ 参考テーマ「PBGC」、「企業年金関連法制」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | A New Attack on Health Care Reform (New York Times) |
厳しい事態を招いているCO-OPsだが、New York Times紙が論説で擁護論を展開している(「Topics2015年10月17日 CO-OP:CMSの締め付け」参照)。主張は正しいと思うが、CO-OPsに投入された連邦資金が失われたことを正当化することはできない。やはり、組織運営、見通し、ガバナンスの甘さは否めないだろう。
- そもそも医療保険改革法案の議論の際、民主党が州政府が運営する保険プランを提供できるようにしたいと提案したが、共和党が強く反対したため、妥協の産物としてCO-OPsが導入された。
- いくつか破綻した機関はあるが、健闘しているCO-OPsもある。Seattleに本拠を置くGroup Health Cooperativeは70年の歴史を持ち、60万人の加入者を抱えている。
- 共和党は、CO-OPsが脆弱なのでPPACA全体を廃止しろと主張しているが、PPACAが施行されているので破綻CO-OPsから他の保険プラン(Exchange)に容易に転入できるのである。
※ 参考テーマ「CO-OP」