Source : | For Obamacare Co-Ops, Teamwork Is a Survival Strategy (Businessweek) |
PPACAの下で創設されたCo-opsだが、加入者数については好調なところとそうでないところが分かれている(「Topics2014年3月22日 ME州:Co-opsが躍進」参照)。しかし、そうした初年度の実績は別にして、このCo-ops同士が協力関係を持っているという。中心になっているのは、全米23のCo-opsが加盟しているNational Association of State Health Co-Opsである。
協力の実態は様々なレベルで築かれている。狙いはコストダウンである。Co-opsが加入者を獲得して生き残るためには、コストダウンによる低保険料の提供が鍵になるからである。
- 定期的なミーティングやノウハウの交換
- ベンダーの共有化:広告会社、処方薬ベネフィット管理会社、医療機関へのアドバイス、アウトカム評価、オンライン加入手続き、等々。
- 州境を越えた保険の提供:Iowa=Nebraska, New Jersey=New York=Oregon, Massachusetts⇒New Hampshire, Kentucky⇒West Virginia, Montana⇒Idaho
保険提供機関同士がビジネスの場面で協力し合うという姿は、これまでアメリカ社会にはなかったことだろう。そうした新しいモデルを生み出しただけでも、PPACAによる社会実験は価値があったと認められる。
※ 参考テーマ「CO-OP」
Source : | Why extending unemployment benefits could be a logistical nightmare (Washington Post) |
4月7日、連邦議会上院は、再修正のうえ、失業給付を5カ月延長する法案(H.R. 3979)を可決した。Obama大統領、民主党の優先政策事項なので、粛々と可決していくのはわかるが、他方、下院で成立する見込みは、全くといってよいほど立っていない(「Topics2014年3月30日 当面の民主党のアジェンダ」参照)。
加えて、上記sourceでは、州政府の立場から当該法案を見ると、本当に法案が成立してしまうとその実施はまさに『悪夢』になる、としている。様々な実務上の問題が指摘されているが、その中で最も大きな課題は、ほとんどの州政府が長期失業者の追跡を止めてしまっている、ということである。
当該法案では、給付の5ヵ月延長とともに、失業給付が打ち切られた昨年末にまで遡って給付するとしている。つまり、失業給付に穴があかなかったことにしたい訳だ。 一方、州政府が失業給付を支払うには、当該労働者が求職活動を継続していることが証明されなければならない。そのために、州政府は、受給者に毎週事務所に来てもらって確認をしている。その確認作業をもう止めてしまっているというわけだ。
万が一にも法案が成立してまえば、どうやって受給者を特定するのか、求職活動の継続をどうやって確認するのか、という実務上の課題にぶつかることになる。このことは、州政府労働局連合が上院民主党・共和党の両党幹部にレターを送付して伝えている。にも拘わらず、民主党と共和党の一部は賛成して可決してしまったのである。
こうなると、上院の法案可決といえども、単純な中間選挙向けパフォーマンス以上の意味合いはない。連邦議会上院といえば、国家全体のことを考える良識の府というイメージがあったが、それも地に落ちた感が強い。
※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」
Source : | Maryland set to increase its minimum wage to $10.10 by 2018 (Washington Post) |
4月7日、MD州議会は、2018年7月1日に最低賃金を$10.10/hとする法案を可決した。MD州知事も歓迎のステートメントを公表しており、成立することは間違いない。
今年の大統領一般教書でObama大統領は最低賃金の$10.10/hへの引き上げを提案したが、その方針に従って州レベルの最低賃金を引き上げたのは、CT州に続いてMD州が2番目となる(「Topics2014年1月29日 Obama大統領も賃上げ要請」参照)。ちなみに、CT州は2017年1月1日に$10.10/hとする。CA州も2016年$10/hへの引き上げを決めているが、CT・MD両州の引き上げが完了すると、CA州を超えておそらく全米一の高さになりそうだ(「Topics2013年9月15日 CA州:最低賃金引き上げへ」参照)。(2014年1月1日時点の各州最低賃金水準)
MD州の最低賃金引き上げのスケジュール及び関連事項は次の通り。州レベルでは、引き上げのペースが小刻みであり、適用除外範囲も大きく、いろいろなところに配慮した施行となっている。やはり、連邦レベルでドンと上げていくよりも、州レベル、郡レベルで現実をよく見ながらの引き上げの方が受け容れやすいだろう。
- スケジュール
- 現 在:$7.25/h(連邦レベルと同水準)
- 2015年1月1日:$8.00/h
- 2015年7月1日:$8.25/h
- 2016年7月1日:$8.75/h
- 2017年7月1日:$9.25/h
- 2018年7月1日:$10.10/h
- Montgomery County, Prince George's Countyは、単独で2017年$11.50/hに引き上げることを決定している。
- チップを受け取る労働者のベース賃金は$3.63/hで凍結する。
- 20歳以下で、勤続6ヵ月までは研修賃金(=州最低賃金の85%)を適用する。
- 最低賃金適用を免除する職種:季節的なアミューズメントパーク、年収$400,000以下の喫茶店・レストラン、ドライブイン映画館
※ 参考テーマ「最低賃金」
Source : | NLRB classification of athletes as employees highlights a health care reform land mine (Employee Benefits Law Report) |
上記sourceは、『カレッジフットボーラーは従業員であり、労働組合を結成できる』としたNLRBシカゴ支部の見解に疑問を呈している(「Topics2014年3月28日 カレッジフットボール労組」参照)。特に、後者の医療保険プランの提供義務の有無は、大学の財政を大きく左右する。
- 従業員ということであれば、IRSも、カレッジフットボーラーに課税義務が発生すると考えるのか。
- 同様に、PPACAの下、Northwestern Universityには、医療保険プランの提供義務が発生するのか。提供しない場合にはペナルティが課されれるのか。
これだから、アメリカ社会は面白い。おそらく、連邦裁判所の判断を仰ぐことになるだろう。
※ 参考テーマ「労働組合」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | THE EMPLOYMENT SITUATION .MARCH 2014 (BLS) |
4日に公表された労働統計は、まずまずの結果だったと見られている。いつものグラフは次の通り。 失業率は徐々に低下しているものの、やはり不本意にも労働市場から退出した人、パートタイマーになった人達の割合がほとんど低下していない。
また、労働市場参加率は若干ながら改善しているが、大きく低下した後の回復はほとんど見られない。また、Budget and Policy Prioritiesのレポートでは、就職している人口の割合が、景気回復期になってもほとんど改善していないことを示している。 アメリカの景気は回復している、というのが多数の見解だと思うが、労働市場の状況は改善しているとは言い難い。
BLS
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | Why Some Don’t Pay Their Obamacare Premium: It’s Not What You Think (Kaiser Health News) |
『加入者は710万人』とObama大統領は高く評価しているが、"signing-up"だけでは加入手続きが完了したことにはならない(「Topics2014年4月2日 710万人加入」参照)。実際に最初の保険料を支払って初めて加入手続きが終わったことになる。さらに厳しいことをいえば、その後の保険料を12ヵ月分払うと、無保険者ではなくなる。
従って、710万人のうち、どれだけ歩留まりがあるのかが、本当の意味での政策効果となる。その歩留まりの予見の一助となりそうなのが、上記sourceである。U.C. Berkeley Labor Centerは、4月2日、Coverd Californiaの加入者について推計を行った結果を公表した。ポイントは次の通り。なお、Coverd Californiaは、3月31日の時点で、実際に保険料を支払ったのは加入手続き者のうち87%としている。12ヵ月間保険料の支払いが継続できないのは、保険料が払えなくなるからである。
- Coverd Californiaで加入手続きを行った者のうち約20%は、勤務先の保険プランに加入する。
- 同じく約20%は、Medicaidへの加入資格を得て、Medi-Calに移行する。
- 同じく2〜8%は、無保険者に戻ってしまう。
- Coverd Californiaで加入手続きを終えた者のうち、53〜58%は12ヵ月間保険加入を継続する。
- Medi-Cal加入者のうち、75%は1年間加入を継続する。約16%が所得増からCoverd Californiaへ戻り、約10%が就職に伴い職場の保険プランに加入する。
Coverd Californiaの加入手続きを行った者のうち無保険者に戻ってしまう人の割合は、次のように計算できる。なお、単純化のために、3.については5%、4.については55%と仮置きする。5% + (100-20-20-5)% x (100-55)% = 29.75%約3割が無保険者に戻ってしまうことになる。もしもこれが全米で当てはまるとすれば、710万人のうち210万人は無保険者に戻ってしまい、500万人だけが12ヵ月間保険加入を続ける、ということになる。この数字は、果たして2015年の保険料上昇を招くのかどうか。結果の分析が待たれるところである。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Congress Repeals ACA Cap on Small Group Health Plan Deductibles (Kushner & Company) |
昨日紹介した"Doc Fix"と同じ法案(H.R.4302)で、連邦議会は小規模グループ保険に設けられていた免責額の上限を撤廃した。大統領は4月1日に署名しており、既に発効している。また、上限額の撤廃は、PPACA成立当初にまで遡って有効とのことなので、上限額は初めからなかったことにする、という訳だ。
このような大事な法案がいとも簡単に成立してしまうのか、というと、現実は既に上限額の存在を無視してしまっているからである(「Topics2014年1月23日 給付率レベル別の『超』高免責額プラン」参照)。つまり、現状を追認しただけ、ということである。
本当にこんなに高い免責額で"affordable"と言えるのだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Congress Delays Medicare Cuts until 2015 (Healthcare Law Blog) |
3月31日、連邦議会上院は、SGRに基づくMedicare診療報酬支払いを延期する法案(H.R.4302)を可決した。その主な内容は次の通り。これで当面のアジェンダの一つが解決されたことになる(「Topics2014年3月30日 当面の民主党のアジェンダ」参照)。しかし、超党派で合意が形成されたはずのMedicare抜本改革については、まったく議論が進んでいない(「Topics2014年2月12日 SGR廃止法案:本当に合意?」参照)。中間選挙までの残された時間を考えると、当面の先送りを決めたことでそろそろ幕引きということだろうか。
- 2014年末まで、Medicare診療報酬をSGRに基づいて24%削減することを延期し、0.5%増とする。
- 最低二晩以上は病院で過ごさない限り、入院料を支払わないという規定の施行を、2015年3月31日まで延期する。
※ 参考テーマ「Medicare」
Source : | Obama says 7.1 million sign up for health care (CNN) |
4月1日、Obama大統領は『最初の保険加入期間で710万人がExchangeに加入した』と、高らかに公表した。2月までの加入者数が思うように伸びず、目標である700万人に達するかどうか危ぶまれていただけに、喜びも一入であろう(「Topics2014年3月13日 加入者数の増勢つかず」参照)。各地で相当な追い込みを行ったのであろう。
しかし、この数字は総数だけが公表されており、などは公表されていない。
- 実際に最初の保険料の振込みまで進んだ(本当の意味で加入手続き完了)者の人数
- 若者の加入者割合
前者の保険料振込みについて、保険会社の感触は、現時点で約8〜9割程度であろう、とのことである。こちらは時間が経てば割合は高まってこよう。
また、後者の若者についても、保険会社は満足のいく数字になっているのではないか、との感触を得ているらしい。こちらは、2015年の保険料を大きく左右する要素となるので、詳細の発表を待ちたい。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Harsh immigration realities set in for many 'dreamers' (Los Angeles Times) |
『国外退去猶予措置』("Deferred Action for Childhood Arrivals")は、必ずしも不法移民の若者に夢をもたらしている訳ではないようだ。
同措置を受けた若者2,381人について追跡調査をした結果は次の通り。同措置を受けた若者が必ずしも職と所得を得られない理由は、次のように考えられている。
- 就労許可を得た後に就職できたのは40%強。
- 給与が上昇したのは45%。
そうこうしている間に、来る8月には、最初に与えられた猶予措置の期限、2年がやってくる。しかし、猶予措置の延長手続きについては何も公表されていない。不法移民の若者の間に、諦めと焦りが広がっているようである。
- 不法移民であったがために、高校・大学の卒業資格を得られていない。
- 不法移民であることに加えて学歴が低いために、長い間職に就けず、必要なスキルを身につけることができていない。
- 措置を受けたといっても不法移民であることに変わりはなく、企業側に雇う意欲がない。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」