Source : | Medical Loss Ratio (CMS) |
25日、WI州がMLRの特例申請を行った。ところが、同州内では、この申請を巡って意見が対立しているそうだ(Journal Sentinel)。
州政府は次のように主張している。これに対し、民主党州議会議員を中心に、次のような異論が出されている。
- MLR規制により、WI州内の保険会社24社中6社が影響を受ける。
- これら6社のMLRは、65〜72.9%となっている。
- これら6社の個人保険市場におけるシェアは35%に達する。
実際、いくつかの指標(Kaiser Family Foundation)を見ても、WI州の個人・小規模保険市場は、競争度は高いようである。そこで、いつもの表に、KFFの競争度指数(HHI/2010年)を併記してみる。
- 昨年、州内の保険会社すべてが、MLR規制に適用することに問題はない、と述べている。
- WI州の個人保険市場は競争的であり、MLR規制を理由にいくつかの保険会社が撤退したとしても、個人が選択肢を失うことはない。
- 州政府は消費者の利益よりも保険会社の利益を優先している。
HHI:Herfindahl-Hirschman Index
- The HHI is calculated as the sum of squares of market share of the 50 largest companies. For example, if a state had five insurance carriers, and one carrier has 60% market share while the others each have 10%, the HHI would be 4,000 (because 602 + 102 + 102 + 102 + 102 = 4,000).
- 〜1,000:市場が競争的
- 1,000〜1,500:独占的ではない
- 1,500〜2,500:若干独占的
- 2,500〜:かなり独占的
こうしてみると、確かにWI州の保険市場の独占度はかなり低い。この点に関していえば、民主党議員達の主張は間違っていないようだ。
州・地域 申請内容 HHS決定 個人保険市場 HHI 小規模グループ保険市場 HHI 2011年 2012年 2013年 2011年 2012年 2013年 中位数 3761 中位数 3595 Maine 65% 65% 65% 65% 65% 65% 3812 3849 New Hampshire 70% 70% 70% 72% 75% 80% 4865 4312 Nevada 72% - - 75% - - 2928 2826 Kentucky 65% 70% 75% 75% 80% 6968 4807 Florida 保険会社65%
HMO 70%保険会社65%
HMO 70%保険会社65%
HMO 70%(審査中) 2821 2908 Georgia 65% 70% 75% (審査中) 2597 1798 North Dakota 65% 70% 75% 80%(特例申請却下) 6682 7793 Iowa 60% 70% 75% 67% 75% 80% 7045 4549 Louisiana 70% 75% - (審査中) 5463 6532 Guam 65% 65% 65% (審査中) Kansas 70% 73% 76% (審査中) 2695 4107 Delaware 65% 70% 75% 80%(特例申請却下) 3293 3932 Indiana 65% 68.75% 72.5% (審査中) 4480 3313 2014年:76.25% 2015年:80% (審査中) Michigan 65% 70% 75% (審査中) 3761 4056 Texas 71% 74% 77% (審査中) 3337 2429 Oklahoma 65% 70% 75% (審査中) 3784 2672 North Carolina 72% 74% 76% (審査中) 6548 4620 Wisconsin 71% 74% 77% (審査中) 1434 1716
ただし、市場の独占度だけが特例申請認可の基準になっていないようであることは、容易に判断できる。今後も、この動きには注目していきたい。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | SCOTUS health review call looms (POLITICO) |
医療保険改革法で定められた個人の保険プラン加入義務規定が憲法違反かどうかの判断を、連邦最高裁が今期取り上げるかどうか、来月中旬には明らかになりそうである。
上記sourceによれば、来月10日の最高裁判事による非公式会合で決定され、14日に公表される見込みという。その際、取り上げることとした場合には、これまで別々に争われてきた訴訟を一本化するのか、代表的な事件のみを取り上げるのかも決定するという。
いよいよ、医療保険改革法の核心部分に対する司法判断が開始される。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | VEBA cuts health care costs for retirees (Business Insurance) |
NYの破産裁判所が、新たな型のVEBA設立を認める判決を下した。 VEBAの適格要件の特例と、保険料補助金を取れるように制度設計したところが特徴である。上記sourceによれば、同じ業種で複数企業によりVEBAを設立できたところが新しい点とのことである。 これからもVEBAを利用した新たなモデルが開発されていくことだろう。
※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost」
Source : | New Affordable Care Act Tools Offer Incentives for Providers to Work Together When Caring for People with Medicare (HealthCare.gov) |
20日、HHSは、ACOに関する基準を公表した。上記sourceはその概要である。
ACOとは、"Accountable Care Organizations"の略で、医師、医療機関が一人の患者ごとに連携して治療にあたることにより、効率化と適正化を図る手法で、理論的には、医療機関が質の高い診療サービスを提供すれば収入も高まる仕組みである。
2010年医療保険改革法で、2012年1月から、Medicare医療機関に導入することを規定していた。当時の推計では、この手法の導入により、連邦政府のMedicare支出のうち、4年間で$940Mの削減ができるという(Washington Post)。
今回、最終決定となった基準は、当初案に較べ、ACOが提供する医療の質を確保するための要件が、65項目から33項目へと大幅に縮小された。そればかりか、医療機関の収入も高めに確保できるような算定式を認めているとのことだ。
このような最終基準に対し、医療機関側は驚きをもって高く評価している。一方、保険会社、企業など保険プランを提供する側は、医療機関の統合が進み、その結果、競争が低下し、価格高騰を引き起こすと不満を述べている(Washington Post)。もしそうだとすれば、ただでさえMedicare支出削減が課題になっている中で、逆効果を招くこととなる。
少し視点が離れるが、この連邦医療保険改革法の施策は、先に紹介したMA州が試みようとしている医療機関ネットワークに対する定額払い制と、方向性を同じくしているのではないだろうか(「Topics2011年10月21日 民主党州知事達の試み」参照)。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/MA州」
Source : | Medical Loss Ratio (CMS) |
連邦医療保険改革法で定められたMLR(Medical Loss Ratio, 償還割合規制)(個人保険プラン:80%)について、特例を申請する州が増え続けている(「Topics2011年5月29日 MLRの特例申請」、(「Topics2011年7月26日 MLRの特例申請(2)」参照)。
これまでの結果をまとめると次のようになる。17の州・地域が特例申請し、5州が特例を認められ、1州が却下されている。以前から何回か述べているが、こうした全米で行う規制について、なるべく特例は認めない方がよい。
州・地域 申請内容 HHS決定 2011年 2012年 2013年 2011年 2012年 2013年 Maine 65% 65% 65% 65% 65% 65% New Hampshire 70% 70% 70% 72% 75% 80% Nevada 72% - - 75% - - Kentucky 65% 70% 75% 75% 80% Florida 保険会社65%
HMO 70%保険会社65%
HMO 70%保険会社65%
HMO 70%(審査中) Georgia 65% 70% 75% (審査中) North Dakota 65% 70% 75% 80%(特例申請却下) Iowa 60% 70% 75% 67% 75% 80% Louisiana 70% 75% - (審査中) Guam 65% 65% 65% (審査中) Kansas 70% 73% 76% (審査中) Delaware 65% 70% 75% (審査中) Indiana 65% 68.75% 72.5% (審査中) 2014年:76.25% 2015年:80% (審査中) Michigan 65% 70% 75% (審査中) Texas 71% 74% 77% (審査中) Oklahoma 65% 70% 75% (審査中) North Carolina 72% 74% 76% (審査中)
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Wal-Mart Cuts Some Health Care Benefits (New York Times) |
Wal-Martが提供する医療保険プランの内容が大幅に後退する。会社側が公表した2012年の医療保険プランの変更点は次の通り。これに伴い、上記sourceには、次のような従業員の事例が紹介されている。
- 週平均労働時間24時間未満の新規パートタイマーには、医療保険プランを提供しない。
- 週平均労働時間24〜33時間の新規パートタイマーの配偶者には、医療保険プランを提供しない。子供の加入は現行と同様、認める。
- 保険料を40%以上引き上げる。
- 免責額を引き上げる。
- 喫煙者には$10〜90/2W($260〜2340/Y)ペナルティ保険料を課す。(保険料は2週間毎に徴収するようである)
- 医療貯蓄勘定への拠出額を、$1,000/Yから$5000/Yに半減する。
いずれも年収の30%近くに達する負担である。病気になって診療機関に行けば、さらに窓口負担や処方薬代がかかることになろう。
- Tammy Yancey:ガソリンスタンド店員、喫煙者、時給$9.50
- 保険料は、現在の$53.80/2Wから$127.90/2Wに急増する。
- 年収は$12,000
- 年間保険料負担は$3,325。年収の28%に相当する。
- Barbara Collins:店舗販売員、5歳の子一人、HMOプラン加入
- 保険料は、現在の$10/2Wから$18/2Wに急増する。
- 免責額は、$1,000/Yから$5,000/Y
- 年収は$19,000
- 年間保険料負担と免責額の合計は$5,468。年収の29%に相当する。
Wal-Martは、公的医療保証制度にタダ乗りしている、との強い批判を受け、ここ数年は医療保険プランの提供、質の向上に努めてきていた。しかし、会社側の説明では、医療費の高騰、ライバル他社とのコスト比較により、やむを得ない措置とのことである。
また、会社側は否定しているそうだが、医療保険改革法の施行を睨みながら医療保険コストの移転を図っていると思われても仕方ないだろう。間違いなく社会的な批判が集中してくるだろう。
※ 参考テーマ「Wal-Mart」
Source : | Obama’s Jobs Plan Is Blocked Again by Senate Republicans (New York Times) |
上院民主党は、先週の雇用戦略法案の否決(「Topics2011年10月13日 雇用拡大戦略への支持は?」参照)を受け、部分法案第1弾(S.1723)を提出していた。そのポイントは次の通り。しかし、20日の議事進行動議は、50vs50で否決されてしまった。
- 公立学校教師、警察官、消防官のレイオフを回避するため、州政府・自治体に$35Bを供与する。
- 財源確保のため、2013年より、$1M超の所得に付加税0.5%を課す。
今回も、民主党系から3票の反対票が投じられた。
賛成 反対 無投票 民主党 49 2 - 共和党 0 47 - 独 立 1 1 - 合 計 50 50 - 雇用拡大戦略を細切れにして法案にし、次々と審議していく、という戦略は、最初から躓いた。民主党は、共和党を苦しい立場に追い込むことができた、と評価しているようだが、この法案内容には3つの問題がある。
- Ben Nelson(先週も反対票を投じた)
- Mark Pryor(医療保険改革法に反対票を投じた)
- Joe Lieberman (I)(超党派で支持されない政策はダメ)
もっと説得力のある内容の法案から出すべきではなかったのか。
- 雇用確保の対象が公務員である。公務員の雇用が保証され、優遇されているという風潮の中、余りにも労組を意識した内容であり、世論から反発を受けかねない。
- 州政府・自治体に金を回すだけで、直接的な雇用拡大効果はない。
- 増税が2年後からであり、本気度が感じられない。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | Some states seek flexibility to push health-care overhaul further (Washington Post) Massachusetts Tries to Rein in Its Health Cost (New York Times) |
これまで、共和党州知事達が医療保険改革法の中核、「個人の保険加入義務」を阻止しようとする動きを紹介してきた。一方、民主党州知事達も、医療保険改革に取り組んでいる。こうした各州独自の取り組みを進めていくためには、連邦政府から医療保険改革法の適用除外許可を得なければならない。各州知事は、そのためにワシントン詣でを重ねているようだが、適用除外を獲得するためには、医療保険改革法よりも無保険者が確実に減少することを説明しなければならない。結構、高いハードルが設けられている。
- Oregon:Gov. John Kitzhaber
- 今年、同州は独自の医療保障制度に関する法律を可決した。
- 診療報酬の手法を変更する。
- 最終的に、公務員のMedicaid加入を認める。
- Vermont:Gov. Peter Shumlin
- 州内単一保険制度の創設を目指す。
- Montana:Gov. Brian Schweitzer
- 単一保険制度に向けた基盤作りを目指す。カナダのSaskatchewan州の保険制度をモデルとして検討している。
- 公務員、個人のMedicaid加入を認める。
- Medicaid非加入者に処方薬プランを提供する。
- Medicaidに関する連邦負担を定額化する(=共和党の主張と同じ)。
- Connecticut:Gov. Dan Malloy
- 州政府が運営する保険プラン創設を目指す。
- Massachusetts:Gov. Deval Patrick
- 出来高払いになっている診療報酬を抜本的に見直し、定額払いの"global payments"制度を導入する。これにより、医療費の抑制を図る。
- 診療機関ネットワークは、保険加入者一人当たり定額(年単位)を受け取る。加入者の健康状態が良ければ、医療機関の収入は高まる。
- 今年2月には、州政府職員、Medicaid加入者、その他州政府の医療保証制度加入者に、"global payments"を適用する法案を提出した。
そうした中で、唯一アドバンテージを持っているのがMA州である。MA州は、既に保険加入義務化を実施しており、実際に無保険者割合は圧倒的に低い。上記の諸措置は、医療費高騰を抑制するための政策である。
そうした意味では、VT州、MT州、CT州も、診療報酬から医療費を抑制しようという意図を持っているはずだ。医療保険改革法が施行され、加入義務が普遍化すれば、次の課題は医療費そのものの抑制ということになろう。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/MA州」、「無保険者対策/VT州」、「無保険者対策/CT州」、「無保険者対策/OR州」、「無保険者対策/その他州」