7月10日 UAWがVEBA設立に合意 Source : UAW Reaches Agreement With Auto Parts Manufacturer on Health Care Trust (Kaisernetwork)

UAWUSWが、自動車部品メーカーのDanaとの間で、退職者医療等のためのVEBA設立に合意した。

USWにとっては、Goodyearに続いての合意である(「Topics2007年3月2日(2) Goodyearのベネフィット見直し」参照)。

また、UAWにとっては、Big3とのVEBA設立の布石となるかどうかだが、状況は微妙だ。というのも、Danaは、昨年3月からChapter 11による再建過程に入っているからだ。労組とすれば、
VEBA設立→債務縮小→経費縮小→再建→雇用確保
という道筋を期待しているから、協力できる。ところが、Big3の場合には、雇用の確保に本当に繋がるかどうか、見通しは暗い。

さらには、拠出に要する金額の桁が違う。Danaの場合には、総額で$780M。Big3の場合には、$100Bを超える見通しだ(「Topics2007年6月12日(1) Big3は本気?」参照)。

一方、Danaの年間経費は$100M以上の節減となる見通しだ。また、拠出方法は、現金が$700Mで、残り$80Mは再建成功後の自社株で行なう予定である。これでは、労組はますます協力せざるを得ない訳だ。

今後の主な日程は、次の通り。
7月20日 USWのDana支部で賛否を問う投票(UAWの投票日は未定)

7月23日 Big3とUAWの交渉開始

7月25日 DanaがVEBA設立計画を破産裁判所に提示

7月9日 TX州がGAS45を正式に拒否 Source : HB 2365 (Texas Legislature Online)

TX州下院がGAS45を拒否する法案(HB2365)を可決させてから、テンポは速かった(「Topics2007年5月13日 TX州下院がGAS45を拒否」参照)。
5月10日 下院 可決

5月22日 上院 修正案可決

5月24日 下院 上院修正案承認

6月15日 州知事署名、法案成立。即日施行。
これにより、TX州は、完全にGAS 45から逸脱することになる。これに対して、出てくる財務諸表に基づくTX州債のレイティングがどうなるのか、注目していきたい。

7月8日 MA皆保険法リンク集

いよいよ施行となった、MA皆保険法だが、関連の法律や規定に関するリンク集があったので、掲載しておく。

7月5日 SECの純正IFRS提案 Source : Proposed Rule Release No. 33-8818 (SEC)

7月2日、外国企業がIFRSに基づく財務諸表により上場する場合のルールについて、SECが案を公表した(「Topics2007年6月24日 外国企業のIFRS」参照)。

上記sourceは、121ページとかなり分厚いが、コンバージェンスを巡る歴史やIFRSの位置付けなどから、わかりやすく解説しているので、一読の価値はあると思う。その中で、当websiteとして興味を持った点をまとめておく。
  1. 今回の提案のエッセンスが、次の2つのパラグラフ(本文P.8)に集約されている。
    Foreign private issuers that register securities with the SEC, and that report on a periodic basis thereafter under Section 13(a) or 15(d) of the Exchange Act, are currently required to present audited statements of income, financial position, changes in shareholders' equity and cash flows for each of the past three financial years, prepared on a consistent basis of accounting. All foreign private issuers are currently required to reconcile to U.S. GAAP the financial statements that they file with the Commission if the financial statements are prepared using any basis of accounting other than U.S. GAAP.

    The Commission is proposing for comment revisions to Form 20-F and Regulation S-X under which it would accept financial statements of @foreign private issuers that are prepared on the basis of Athe English language version of BIFRS as published by the IASB Cwithout a reconciliation to U.S. GAAP. The revisions would allow a foreign private issuer to file financial statements prepared in accordance with IFRS as published by the IASB without reconciliation to U.S. GAAP. We are not proposing to change existing reconciliation requirements for foreign private issuers that file their financial statements under other sets of accounting standards, or that are not in full compliance with IFRS as published by the IASB.


    ※ ○数字および下線は、管理人が付したもの。
    要するに、今回のSEC提案は、
    @外国企業が、
    A英語版の
    BIASBにより公表されているIFRSに基づき財務諸表を作成した場合、
    CUS GAAPとの差異調整なしで、
    SECは受け容れる、というものである。ここで、A、Bが、『純正IFRS』を意味している(「Topics2007年6月28日 純正IFRSの意味」参照)。

  2. 2006年のIFRS財務諸表について、SECスタッフは検証したそうだが、IFRSの経験が浅いことと、SECに登録していない外国企業のIFRSについては検証したことがないため、「充分な検証は行なえていない」と告白している。

  3. 一方、市場参加者は、外国企業のIFRS採用について、基本的に支持しているし、会計士も、概ね有効な基準であるとの評価を下している、と記述し、SECだけでは確信は持てないものの、投資家、監査人はある程度お墨付きを与えていることを示唆している。

  4. 『純正IFRS』に限定する理由として、SECは、次のようなコメントを用意している(本文P.40)。
    We believe that the benefits of moving towards a single set of globally accepted standards as a long-term objective, including increased transparency and comparability of financial statements, are attainable only if IFRS represents a single set of high-quality accounting standards and not a multiplicity of divergent standards using the same name. Thus, we believe that it is appropriate to condition our acceptance of IFRS without reconciliation on the financial statements being in full compliance with IFRS as published by the IASB.
    「長期的に見て、会計基準が統一されていくことが望ましく、IFRSの名のもとに、ローカルバージョンが乱発されることは望ましくない。従って、今回も、純正IFRSのみ、差異調整表を求めないこととした」という訳である。

    これは、かなり含蓄のあるフレーズである。現在、IASBとFASBの間で、コンバージェンスの作業が続いている。これは、お互いの差異をなるべく縮小しようということであり、IFRSとUS GAAPが並存することを前提にしている。

    会計基準の統一というのは、長い年月にわたって言い古されてきた「建前」とも言えるが、一方で、SECは、本気でアメリカ企業にIFRSを認めようとしている節がある(「Topics2007年6月13日 SECは本気」参照)。そうした段階での上記理由は、それなりの意味があるとみてよいのではないか。

    今回の外国企業のIFRSに加え、アメリカ企業のIFRSを認めることになるとすると、アメリカ市場では、当面、2つの会計基準が正式に並存することになる。その間、FASBからIASBへの影響力を強めることにより、2つの基準の差異を縮小していき、最終的に差異がほとんどなくなったところで、アメリカはどう判断するのだろうか。選択肢は、次の3つとなる。

    1. アメリカ市場で、IFRSとUS GAAPの並存を続ける
    2. カナダのように、US GAAPを放棄する(「Topics2006年1月11日(2) カナダの会計基準」参照)
    3. 欧州市場でUS GAAPを公認させる

    欧米の証券市場間の連携が深まりつつある中、選択肢c.というのも、充分SECの念頭にあるのではないだろうか。

  5. SECの分析によれば、アメリカ市場に登録している外国企業(1000〜1200社)は、次のように分類されている(本文P.93)。

    1. 純正IFRSを採用している外国企業は、約110社。これらの企業の中には、母国版IFRSに準拠したうえで、純正IFRSにも合致しているとしているケースもある。

    2. 母国版IFRSのみに準拠しているとする外国企業は、約70社。

    3. 母国がIFRSへの移行段階にあり、現在は、US GAAPを採用しているという外国企業は、約50社。

    4. その他の企業は、母国基準をベースにしている。その中には、母国市場でIFRSを使用することを認められていない場合もある(日本もその一つ)。
パブリック・コメントの期間は75日間である。9月半ばまでに、どのようなコメントが寄せられるのか、注目しておきたい。

7月4日 医療保険改革連合 Source : One CEO's Health-Care Crusade (BusinessWeek)

上記sourceは、BusinessWeek Onlineのトップ記事である。BusinessWeekでさえも、医療保険改革には、前向きな姿勢を示さざるを得なくなっているようだ。

上記sourceを読んでの感想は、次の3点。
  1. 当websiteでは、Steve Burd氏(Chairman, President & CEO of the Safeway)の医療改革キャンペーンは、シュワ知事を助け、加州で単一公的保険の導入を回避するためのものではないか、とネガティブなとらえ方をしていた(「Topics2007年5月8日 加州経済界が分裂?」参照)。ところが、彼は、もう少し、個人的な信念から、医療保険改革に取り組んでいるようだ。 上記sourceに出てくる、SEIUのpresident、Andy Stern氏との会見の模様や、その後の労使連合の動きを見ていると、単なる政治的な思惑のみに基づく行動とは思えなくなる。

  2. 医療保険改革をすべき、との連合の広がりは、政党、労使の枠を超えて広がりつつあるようだ。その際の合言葉は、次の2つ。

    1. 制度改革提案の詳細は口にしない。
    2. 今何もしないことが、一番コストのかかる選択だ。

  3. 今回はどうなるかわからないが、NH州は大統領予備選の先頭を切る州である。そのNH州で、医療保険改革の機運を盛り上げようと、改革派のキャンペーンが繰り広げられており、その中には、例の『Sicko』も含まれているそうだ。選挙と映画の組み合わせが、功を奏すかどうか、注目されるところである。

7月3日 IT化のトップランナー:MN州 Source : PAWLENTY SIGNS THREE OMNIBUS FUNDING BILLS (Press Release)

ミネソタ(MN)州では、5月に医療保険事務に関してIT化を義務付ける法案が立法化された。ポイントは次の2点。
  1. 全ての医療保険事務(償還請求、加入手続き、等々)をIT化する。施行日は、2009年1月15日。

  2. 全ての医療機関における医療記録をIT化する。施行日は、2015年1月1日。

こうした取り組みは、全米でも最も進んでいるらしい(MN Department of Hhealth)。紙ベースでの医療保険事務をIT化すると、管理コストは約半減するという。医療保険事務と医療記録のIT化により、事務コストに留まらない大きな効果が期待できよう。

MN州は、無保険者も少なく、皆保険制度の検討も進んでいる(「Topics2007年3月15日(2) ミネソタ州の皆保険法案」参照)。皆保険と医療保険のIT化が同時並行で進んでいけば、かなりのコスト抑制に繋がるのではないだろうか。