Bush大統領が "State of the Union"の演説を行った。昨年、アメリカ旅行中に宿泊したモーテルで、Bush大統領の声が多くの部屋から聞こえてきたことに、少し驚いた経験がある。アメリカ人達は、旅行先でも結構テレビで見ているようなのだ。先に行われた日本の首相の施政方針演説とは、国内での注目度がだいぶ違うようである。特に、今年は大統領選挙の年。20日に始まった予備選の直後ということで、事実上の大統領の立候補宣言とも言えるので、注目度は一層高いものがある。
演説の前半は、イラク、テロ、国家安全保障問題であり、国内問題は後半に触れられた。そのうち、当websiteとして関心を持つ分野に関する演説内容は、次の通りであった。
- 成人教育
若者や成人が就職に必要となる技術を獲得できるようにしなければならない。そのために、『21世紀職業プログラム』を提案する。成人教育のためには、コミュニティ・カレッジ支援の拡大を提案する。
※コメント
アメリカは職業教育、成人教育で、コミュニティ・カレッジを活用している(拙稿「アメリカ企業の教育ベネフィット」(PDF)を参照)。こうしたインフラの整備が、強い経済の基盤となっていると考える。- 大型減税の恒久化
大規模減税は、経済の活性化に貢献しているので、恒久化を提案する。
- 公的年金の個人勘定創設
若い世代の人達が自ら退職後の所得を確保する機会を提供すべきであり、そのために、公的年金に個人勘定を創設すべきである。政府の役割は制限すべきなのである。
※コメント
エンロン事件で下火になっていた個人勘定創設の提案が、また出てきたようだ。やはり、Bush大統領は、相当のご執心のと見られる。確かに、9.11やエンロン事件がなければ、相当なところまで議論が進んでいたので、やはり再開したいということなのだろう。- 財政赤字の半減
これから予算教書を議会に送付するが、そこでは、裁量的支出の増加を4%以内に抑えるようにしている。そうするためには、政策課題の優先順位をはっきりさせ、無駄な支出を削る必要がある。そうすることで、今後5年間で財政赤字を半減する。
※コメント
財政赤字の半減は、相当大規模な増税、歳出削減を行わないと達成できない。相当に思い切った提案と考える。しかし、それくらいの決意表明をしなければならないくらい、最近のドルの軟調が気になるということだろう。- 移民法の改正
移民法の改正を提案する。これは、意欲のある外国人労働者と意欲のある事業主を結びつけることが目的であり、法を尊重する人々に市民権を獲得する道を拓くものである。
※コメント
先にtopicsで取り上げた通りの提案である(「Topics2004年1月7日(2) 非合法入国者の地位確認」参照)。- 医療改革
高騰する医療費を抑制し、充分な医療サービスを国民が受けられるようにするためには、超党派の協力が必要である。実際、Medicare改革法は、超党派の努力があって実現した。最終的な政策目標は、アメリカ国民が、各人のニーズに合った医療サービスを、選択し、購入できるようにすることである。小規模企業にとっては、一体となって保険料を抑制できるような仕組みが必要である。そのために、「共同医療保険プラン」の法制化を求める。また、低所得者層を対象とした税額控除制度の充実を提案する。政府による皆保険制度は、間違った処方箋だ。
※コメント
大統領選挙の年に、超党派による法案は無理だろう。無保険者対策を巡る、Bushチームからのカウンター・プロポーザルであり、いつものように、小刻みながら現実的なポイント稼ぎが狙いと見ておいた方がよさそう。- 結婚制度の再確認
強いアメリカは、結婚の慣行を尊重すべきである。議会では、既に1996年、クリントン大統領のもとで、『Defence of Marriage Act』を可決している。この法律は、連邦法のもとで、結婚を男女の絆として守り、州レベルで再定義することはできないとした。しかし、国民の意向を聞かずに、一部の裁判官が結婚の再定義を行い始めている。もしこのような傾向が強まるようならば、憲法改正に動かざるを得ない。わが国は、結婚の神聖さを守らなければならない。※コメント
これも、先にtopicsで取り上げた通りの提案である(「Topics2004年1月14日 Bushチームの結婚キャンペーン」参照)。ただし、予想以上に強いトーンで憲法改正に言及しており、民主党リベラルは相当な反発を覚えるのではないかと思われる。
PricewaterhouseCoopersの人事コンサルティング部門の2003年調査によれば、Restricted-Stockによる報酬制度(「Topics2003年7月15日(1) マイクロソフトの決断」参照)を採用している企業は、2002年に較べて15%増えているそうだ。
だからといって、トレンドが決定的になったとか、評価が固まってきたということではないようだ。 投資家サイドからの評価も、次のように分かれている。
どちらが適切な報酬制度なのかは、企業の成長具合、経営の目標、従業員の構成などによって異なるはずであり、一概には言えない。FASBがストック・オプションの費用化を強制するルール(「Topics2003年9月22日(1) ストック・オプション会計のFASB議論 その2」参照)を決定すれば、どちらも費用化されることになり、ますますその傾向は強まるだろう。その意味でも、FASBの検討結果には、注目しておく必要がある。
- ISS(「Topics2002年4月1日 Shareholder-Services Firm」参照)は、マイクロソフトの報酬制度変更について、700のクライアントに対して、「賛成票を投じること」を推奨した。
- 反対に、CalPERSは、反対票を投じた。
- AFL-CIOは、受給権付与が業績連動である限り、restricted-stock報酬は上級幹部に対する適切な報酬制度と判断している。
上記sourceは、人事関係の法令について、
・2003年にどのような立法、通達、判決があったのか
・2004年に検討される、または2003年から積み残された課題
をまとめたものである。
それぞれについて、簡単な経緯と概要が付されているので、あれはどうなっていたかな、と確認するのにとても便利そうなので、掲載しておきました。
「考察・コメント」に掲載しました。
ワシントンDCで発行されている機関誌に掲載された論文です。近年、日本政府は不良債権問題の解決に全力を傾けてきて、ここに来てようやく相応の目途がついたと言えます。しかし、その結果、日本の財政事情は、戦後最悪の事態に陥っています。今後の重要な政策課題は、財政再建と社会保障制度・地方財政改革のバランスであり、その鍵となるのが消費税増税と考えます。
Iowaに続き、NHでKerryが連勝した。特に、全米初のPrimaryで、かなりの差をつけて勝ったことは、今後の予備選に大きな影響をもたらすであろう。
当websiteで注目しているのは、Kerryが選出されている原因であり、それを知るためには、出口調査が大変役立つ。前回のIowa Caucusにおける「入口調査」(「Topics2004年1月20日(1) Bush大統領の無保険者対策」参照)に続き、今回のNHでも、NBC(テレビ局)が行った「出口調査」を、sourceとして掲載しておいたので、ご覧いただきたい。
中でも、政策に関する調査結果は、次の通りとなっている。
政策課題の中で、選挙民の関心が高かったのは、医療、経済・雇用、イラク戦争の順となっている。そのうち、医療、経済・雇用の分野で、Kerryの支持率が最も高くなっている。もちろん、大統領は政策だけで決まる訳ではないが、政策抜きには語ることはできまい。今後とも、このような出口調査における結果を注目していきたいと思う。
Which ONE issue mattered most in deciding how you voted today? (Check only one) • Category % Total Clark Dean Edwards Kerry Kucinich Lieberman Sharpton Taxes 6 13 23 19 27 0 14 3 Education 10 13 25 13 41 3 5 0 Health care/Medicare 28 6 31 13 41 0 7 0 The war in Iraq 20 17 40 3 30 3 7 0 National security/Terrorism 7 35 12 5 27 0 15 0 Economy/Jobs 22 10 22 17 44 1 6 0 Corporate reform 2 0 0 0 0 0 0 0
昨年末、店ざらしとなった年金救済法案(「Topics2003年12月11日(1) 年金救済法案は来年早々の課題に」参照)が、圧倒的多数(86 vs 9)により、上院で可決された。
今後は、下院案との調整のために両院協議会で議論されることになるが、上院可決も、選挙年におけるアピール程度の意味しか持たないようだ。Washington Post紙の記事によれば、PBGCに関与する3閣僚(Chao労働大臣、Snow財務長官、Evans商務長官)が同法案に反対しており、もし議会が法案を可決しても、大統領拒否権の発動を求めることになりそうだからだ。
この年金救済法案が可決されなければ、航空業界、鉄鋼業界は、まず間違いなくDBプランを凍結ないし廃止するであろうし、退職者を多く抱える製造業でも、同様な動きが出てくるだろう。例えば、同じWPの記事によれば、世界最大の自動車メーカーGMは、現役従業員一人に対して退職者が2.5人、その退職者に支払う年金給付額は、今年60億ドルに達するのである。
DBプランを巡る環境が厳しくなりつつある中で、アメリカ企業がDBプランを選択しつづけることができるのか、また、開示制度やERISAが人事制度、報酬制度を歪めていないか、企業による検証が厳しく進められることになろう。