Sources : |
Despite high inflation, Americans are spending like crazy ・and it's kind of puzzling (NPR) What Layoffs? Many Employers Are Eager to Hang On to Workers (New York Times) |
2月24日、商務省(DOC)より、2023年1月の個人所得/消費統計が公表された(News Release)。
名目所得は前月比0.6%増、可処分所得は前月比2.0%、名目個人消費は前月比1.8%となった。 そのうち、財については前月比2.8%増、サービスは前月比1.3%増であった。 FRBが政策金利を上げてくる中で、この消費の強さは驚きをもって迎えられた(「Topics2023年2月2日(2) FRB依然として警戒」参照)。これまでの常識では、政策金利引き上げ ⇒ 市場金利上昇 ⇒ ローン金利引き上げ ⇒ 消費の抑制という経路で、経済の過熱状態が解消されるはずであった。ところが、上記sourceの表題の通り、「狂乱消費」と表現されるくらいの消費増となったのである。
その要因として、上記soureは3点を挙げている。加えて、コロナ禍で消費が抑制されていた、政府から多額の給付金が支給された、などの要因も考えられている。
- ガソリン価格が下がってきた。
- 労働市場が逼迫して、賃金が上昇している。
- 公的年金の給付額が大幅上昇した(「Topics2022年10月14日(2) 年金COLA8.7%」参照)。
こうした国民の消費行動を捉え、企業側はレイオフなど考えられないといった状況にあるという。一部ハイテク産業で大量レイオフが発生しているものの、労働市場全体でのレイオフは極めて低水準にとどまっている(「Topics2022年11月16日(1) ITのレイオフ急増」参照)。 これは、財・サービスともに、やがては景気後退がやってくることは予想されるものの、足許の旺盛な消費に対応するためには、今現在、従業員をレイオフする選択肢はないということだ。企業経営者は、将来再び雇用を増やすことがいかに大変かを、今回のコロナ過からの回復期に学んだからだ。
こうした状況を踏まえ、FRBの金融引き締め策はさらなる注目を集めることになる。一旦引き上げ幅を0.25%に縮小したものの、次回のFOMCでどのような姿勢になるのか。その姿勢次第で、この消費市場、労働市場の過熱状態がどうなるかが左右される。小さな後退で済むのか、大きな後退がやってくるのか、それらを受けて消費行動はどうなるのか。しばらく目が離せない状況が続く。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | Unlikely alliances in Supreme Court opinions on overtime, death penalty (NPR) |
2月22日、時間外勤務に対する割増賃金に関して、連邦最高裁が重要な判断を示した。
時間外勤務に対する割増賃金を支払わなくてもよい条件とは、年間報酬$107, 432以上、または週報酬$684以上など、3つが挙げられている(HR Dive)。
企業側は、当該従業員の年収が$200,000を超えているとの理由で、割増賃金対象者ではないと主張した。
しかし、連邦最高裁は、と判断した。
- 当該従業員は、一日でも勤務すれば、その週の報酬$963を保証されていた。
- しかし、当該従業員の報酬は、日ベースで報酬を支払われている。まったく勤務しなければ、その週の報酬は支払われない。
- これは、定義されている"salary"ベースの報酬とは言えない。
- 従って、年間報酬がいくら高くても、当該従業員が"salary"ベースで報酬が払われていない以上、時間外勤務に対する割増賃金を払う義務がある。
この判決は裁判官の間で6対3に分かれたのだが、ちょっと面白いのは、この判決に賛成した裁判官の顔ぶれである。下の表の◎が付いているのが、賛成した裁判官である。いつもの保守vsリベラルの6対3ではなく、お互いに入り混じっているのである。こういう判決ができるようになれば、国民からの信頼も高まるのではないだろうか。Current Justices of the US Supreme Court (as of June 30, 2022)
Name Born Appt. by First day University ◎ John G. Roberts
(Chief Justice)January 27, 1955 George W. Bush September 29, 2005 Harvard ◎ Clarence Thomas June 23, 1948 George H. W. Bush October 23, 1991 Yale Samuel Alito April 1, 1950 George W. Bush January 31, 2006 Yale ◎ Sonia Sotomayor June 25, 1954 Barack Obama August 8, 2009 Yale ◎ Elena Kagan April 28, 1960 Barack Obama August 7, 2010 Harvard Neil McGill Gorsuch August 29, 1967 Donald Trump April 10, 2017 Harvard Brett Kavanaugh February 12, 1965 Donald Trump October 6, 2018 Yale ◎ Amy Coney Barrett January 28, 1972 Donald Trump October 26, 2020 Notre Dame Law School ◎ Katanji Brown Jackson September 14, 1970 Joe Biden June 30, 2022 Harvard
※ 参考テーマ「雇用政策/労働法制」、「司 法」
Source : | U.S. LGBT Identification Steady at 7.2% (GALLUP) |
毎年行われている性的指向に関する調査である(「Topics2022年2月18日(1) LGBT自認7.1%に増加」参照)。ポイントは次の通り。ところで、上記2.の表で、新しい用語を目にした。 どんどん幅が広がっているという印象だ。これも多様性の一例なのだろう。
- LGBTQ自認率は7.2%で、昨年と同水準。
- 割合としては、Bisexualが圧倒的に多い。
- 世代別では、若い層でLGBTQ自認率が高い。
※ 参考テーマ「LGBTQ」
Source : | Job seekers say they prefer in-person interviews, but equity issues persist (HR Dive) |
圧倒的に多くのアメリカ人は、採用面接は対面式で行ないたいと考えている。しかし、その面接までに、容姿を修整する必要があるとも感じている。上記sourceで紹介されている調査結果(American Staffing Association)のポイントは次の通り。特に、黒人にとって、ヘアスタイルに対する偏見が厳しいものに感じられるそうだ。
- 採用面接で対面式を希望する⇒70%。オンラインビデオを希望する⇒17%。音声のみを希望する⇒9%。
- 採用面接前に容姿を修正する必要があると感じているヒスパニック⇒74%。白人⇒65%。
- 採用面接前に顔ひげをそる必要がると感じている黒人⇒33%。ヒスパニック⇒25%。白人⇒22%。
- 採用面接前に刺青を隠す必要がると感じているヒスパニック⇒19%。黒人⇒17%。白人⇒10%。
- 採用面接前にピアスをはずす隠す必要がると感じているヒスパニック⇒18%。黒人⇒14%。白人⇒9%。
- ヘアスタイルを整える必要があると感じている男性⇒39%。女性⇒23%。
ヘアスタイルに対する偏見を防止するための差別禁止法が、"CROWN(Create a Respectful and Open Workplace for Natural Hair) Act"と呼ばれている。2019年7月に、全米初となる同法がCA州で成立した。その後、8州で同様の法律が成立している。
連邦議会レベルでは、2022年3月に下院で法案が可決されたものの、上院ではほとんど審議が行われず、廃案となっている。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | Retirement Income Security: Issues and Policies (CRS) |
上記sourceは、2017年時点での高齢者(65歳以上)の退職後所得の構成比を紹介している。
高齢者全体では、次のような構成比となっている。概ね1/4ずつ、という感じだが、これを所得階層別(5分位)でみると、様相が異なってくる。 公的年金の占める割合は、第1分位で83.2%、第2分位で66.4%と、公的年金に大きく依存していることがわかる。
公的年金 企業/個人年金 勤労所得 その他 28.0% 25.8% 23.8% 22.4%
低所得層の高齢者にとって、公的年金給付は命綱といってよい存在だ。ところが、何も制度変更をしなければ、2035年に基金が枯渇し、その後の給付は、現在水準の8割弱に下がってしまう(「Topics2022年9月29日(2) 年金基金枯渇のインパクト」参照)。その影響は低所得高齢者にとっては甚大だ。
バイデン大統領は、予算教書で改革案を示すとしている(2023年2月12日 一般教書で超党派連携提唱)。しかし、ねじれ議会の中で決着を見るのはかなり難しいだろう。
大きな艦船の舵を切るには、長いリードタイムが必要なのに…。
※ 参考テーマ「公的年金改革」、「DB/DCプラン」