6月28日 PPACAと大統領選
Source :The Daily 202: Trump’s legal argument for throwing out all of the ACA is a nightmare for Senate Republicans (Washington Post)
6月25日、PPACAの存廃を巡る裁判で、連邦政府代表が連邦最高裁に意見書を提出した。そこでは、トランプ大統領はPPACAの全廃を望んでいると記しているそうだ。

これは秋の選挙で共和党候補者に不利に働くとみられている。

同じ25日にCMSが公表した集計によると、期間途中でExchangeに加入した人数は今年急激に増えている。特に4月の増加幅が大きいのは、COVID-19関連であることを伺わせる。


つまり、PPACAはセーフティネットとして機能した訳であり、その恩恵を国民は実感している。COVID-19感染者数が再拡大(「Topics2020年6月26日 3,000万人が失業給付」参照)して、来年の医療保険加入申し込み時期になれば、その恩恵はますます大きなものとなる(「Topics2020年5月14日 失業者の医療保険の行方」参照)。ちょうどその頃に大統領選、連邦議会選挙が行われるのである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「大統領選(2020年)

6月27日 MA州適格プラン免責額
Source :Massachusetts Announces Individual Mandate Figures for 2021 (Wagner Law Group)
PPACAで定められていた保険未加入者に対するペナルティ課税は、実質上廃止となっている(「Topics2017年12月21日 ペナルティ課税ゼロ」参照)。その中で、ペナルティ課税のパイオニアMA州は、ペナルティ課税を復活させて執行し続けている(「Topics2019年7月23日 個人加入義務の広がり」参照)。

上記sourceは、ペナルティ課税の対象とならない適格医療保険プランについて、2021年の免責額が決定したことを伝えている。
個 人家 族
医 療$2,700$5,400
処方薬$330$660
HSAで定められた高免責額プラン最低限度額に較べると、かなり高い水準に設定されている(「Topics2020年6月9日 医療貯蓄勘定(3)」参照)。医療費全体をマクロで抑制する意図があるのだろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

6月26日 3,000万人が失業給付
Source :With Unemployment Offices Busy, Recovery Seems a ‘Long Haul’ (New York Times)
6月25日、労働省は新規失業保険申請数を公表した。今週は148.0万人と、先週に続いて微減となった。14週間で累計4,725万人となる。(新規失業保険申請件数data

雇用保険被保険者の中の失業者数(1,952万人)は、一旦ピークアウトした後に高止まりの状態とどまっている。
上記の既存の失業保険給付のほかに、COVID-19対策として個人事業主向けに給付されているPandemic Unemployment Assistanceがある(「Topics2020年3月30日 2兆ドル対策(COVID-19)」参照)。上記sourceによれば、6月6日時点で1,100万人以上が受給している。失業保険給付と個人向け失業給付の受給者は、総計約3,000万人となる。

他方、COVID-19対策として中小企業向けの融資制度(Paycheck Protection Program)がある。ここでは、8週間の雇用維持等の条件がクリアできれば、返済免除となる。制度開始が4月27日だったので、制度施行当初に借り入れることができた中小企業は、間もなく返済免除の特権を得ることになる。

間の悪いことに、アメリカではコロナ感染症の再拡大が懸念されている。

Johns Hopkins University
こうした状況下、経済再開が危ぶまれる州が多くなっている。そうなると、8週間の条件がクリアできた途端に解雇に踏み切る中小企業が多くなるのではないだろうか。新規失業保険申請件数は再び増加の道を辿る可能性がある。

※ 参考テーマ「労働市場」、「解雇事情/失業対策

6月23日 就労ビザ規制年内延長
Source :Trump announces new visa restrictions on immigrant workers but exempts agriculture, food service, health (Los Angeles Times)
6月22日、トランプ大統領は、外国人就労・交流ビザの新規発給を停止する措置を年内一杯まで延長する大統領令に署名した。上記sourceで言及されているのは、H-1B, H-2B, L-1, J-1である。グリーンカードの発行も、引き続き停止される。ただし、農業、ヘルスケア、食品加工業については例外措置が設けられる。家事労働者も例外扱いになるようだ。いずれも、外国人労働者がいなければ成り立たない産業として、連邦政府に対して強烈に要請した結果だ。既にビザを取得して米国内にいる場合には影響を受けない。

6月24日からの執行で、政府当局の試算では、この措置のお蔭で50万人のアメリカ人の雇用が確保されるという。

コロナウィルス感染が拡大する以前から、トランプ政権はビザの発給規制強化を検討していた(「Topics2019年12月20日 ビザ規制強化案」参照)。国内の失業率が急激に上昇したため、大手を振って外国人就労の制限に踏み切ったと思われる(「Topics2020年6月19日 13週間で4,574万人」参照)。

こうしたトランプ政権の姿勢は、ビジネス界からは歓迎されていない。一方で、移民反対派は勢いづいている。秋の大統領選にも多少は影響を及ぼすであろう。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

6月22日 トランプ:キャンペーン再開
Source :Trump Returns To Campaign Trail With A Familiar Message In A Changing World (NPR)
6月20日夜、トランプ大統領再選キャンペーンを再開した。ラリー参加登録は100万件にのぼり、会場の外にもう一つステージを設けたものの、実際の参加者は屋内会場を満たすことはなく、屋外ステージは撤去された。

これについては、SNSによる架空登録が広まったとする報道(日経新聞)があるが、コロナウィルス感染を恐れた共和党支持者もいただろう。なにせ、会場となったオクラホマ州では、感染者が2週間で3倍に急増しており、経済活動再開に赤信号が灯っているのだから。

トランプ大統領にとっては、再選に向けた環境は悪化しているように見える。 こうした状況下、世論調査はトランプ大統領に不利に動いている(FiveThirtyFiveNPR)。トランプ大統領のコア支持者は今後どう動くのか。

※ 参考テーマ「大統領選(2020年)

6月21日 連邦最高裁:DACA終了差し止め
Source :Supreme Court Rules Against Trump Administration In DACA Case (NPR)
6月18日、連邦最高裁は、「DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals)を段階的に終了するとのトランプ政権の方針は認められない」との判決を下した(「Topics2017年9月7日 DACA段階的終了」「Topics2018年2月27日 Dreamersは一息」参照)。

判決理由は、政権の方針に関する必要な合理的説明が行なわれていない、というものであった。逆に言えば、DACA終了について充分に合理的な説明が行なわれれば、政権は終了させることができるということだ。判決の賛否は5対4だったが、この点については全判事が合意している模様だ。

今回の判決は、事前の予想通り、Roberts長官がキャスティング・ボートを握っていたようだ(「Topics2019年11月15日 DACA裁判の行方」参照)。実際、判決主文も長官自ら記している。

Current Justices of the US Supreme Court

Name Born Appt. by First day University
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005 Harvard
× Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991 Yale
Ruth Bader Ginsburg 01933-03-15 March 15, 1933 Bill Clinton 01993-08-10 August 10, 1993 Harvard
Stephen Breyer 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994 Harvard
× Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006 Yale
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009 Yale
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010 Harvard
× Neil McGill Gorsuch 01967-08-29 August 29, 1967 Donald Trump 02017-04-10 April 10, 2017 Harvard
× Brett Kavanaugh 01965-02-12 February 12, 1965 Donald Trump October 6, 2018 Yale
これで、トランプ大統領は、短期間にワンツーパンチをくらったことになる(「Topics2020年6月16日 連邦最高裁:性に基づく解雇は違法」参照)。『ひどい判決だ。俺は連邦最高裁から嫌われているのか』とコメントしている。

一方、共和党議員達はほっと胸をなでおろしているそうだ。連邦最高裁がDACA終了を認めれば、連邦議会で上程されるであろうDREAMersを守るための法案に関して、立場を鮮明にせざるを得なくなる。大統領からは反対しろとの圧力がかかってくるのは必至だ。他方、国民の多くはDREAMersに寛容であり(「Topics2018年2月8日 若い不法移民には寛容」参照)、民間企業もそうした法案を支持している。選挙向けには賛成の意思表明が必要となる。そうした板挟みの状態に追い込まれることは、取り合えず先送りとなった。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「司 法」、「大統領選(2020年)