3月10日 5人の判事候補 
Source :President Obama Meets With Supreme Court Candidates (NPR)
連邦最高裁判事の人選が本格化したようだ(「Topics2016年2月16日 連邦最高裁判事の指名問題」参照)。上記sourceによると、次の5人が候補者として挙げられており、順次、Obama大統領が面接するとのことである。中でも、上位3人が有力候補とされている。
候補者名現  職特  徴
Merrick GarlandChief Judge, U.S. Court of Appeals for D.C. ・63歳
・穏健リベラル
・民主、共和両党議員から支持
Sri SrinivasanJudge, U.S. Court of Appeals for D.C. ・49歳
・Obama大統領により控訴裁判所判事に指名
・上院の指名承認投票は97-0
・インド出身の移民
Paul WatfordJudge, 9th Circuit Court of Appeal ・48歳
・上院の指名承認投票は、両党から賛成票が入り、61-34
・慎重な判断で有名
Jane L. KellyJudge, 8th Circuit Court of Appeals ・51歳
・Obama大統領により控訴裁判所判事に指名
・上院の指名承認投票は97-0
・保守派より?
Ketanji Brown JacksonJudge, U.S. District Court ・45歳
・Obama大統領により判事に指名
・Ryan下院議長と縁戚関係
さて、どのような人選になるのだろうか。

※ 参考テーマ「司法

3月9日 Medicare処方薬価格抑制策 
Source :Obama administration proposes new effort to combat high drug prices (LA Times)
3月8日、CMSは、Medicare Part Dの処方薬価格について、パフォーマンスベースの価格付けを試行するとの提案公表した(Press Release)。薬価の高騰を抑制する措置として検討したいということである(「Topics2016年1月6日 薬価抑制策に注目」参照)。

これまでは、総原価方式であったために、ある意味、製薬会社の値付けに従わざるを得なかった。そこから脱却しようという試みである。Part Bは、年間$20B程度で、支出規模としてはそれほど大きくないが、Medicareの価格付けが変更になるということは、全米にとって大きなインパクトを持つ。

当然のことながら、PhRMA強く反対している。価格設定の見通しが立たなくなり、研究開発が萎縮するという主張である。

本提案について、2ヶ月間のパブリック・コメント募集期間が設けられる。

※ 参考テーマ「Medicare」、「医薬品

3月8日 ネットワークでランク付け 
Source :Health Law Insurance Plans to be Rated by Network Size (New York Times)
連邦政府は、連邦立Exchangeに提供される医療保険プランについて、2017年から適用される3つのルール変更を公表した。
  1. 保険プランが契約する診療機関のネットワークの広さに応じて、ランク付けを行なう。これにより、保険プラン選択時にネットワークの広さを定量的に比較することができるようになる。

  2. 加入者自己負担額の上限を引き上げる(「Topics2016年1月7日 加入者自己負担再引き上げ」参照)。

  3. 保険プランのネットワークから診療機関を外したとしても、適切な理由がない限り、当該診療機関での診療について、最大90日間の継続を認める(新規)。
1.のランク付けは、ネットワークの広さを示すと同時に、保険料が低めに抑えられているかどうかの目安にもなる。ネットワークの広さと保険料の水準は、ほぼトレードオフの関係にあるからだ。

一方、3.は、保険会社にとってはコスト増要因となる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「医療保険プラン

3月4日 次は学校のトイレ 
Source :South Dakota governor vetoes bill that would have restricted transgender students’ access to school restrooms (Washington Post)
公衆トイレの次は、学校のトイレが標的になっている(「Topics2016年1月9日 公衆トイレ使用規制」参照)。

South Dakota州(SD州)議会は、 との法案(HB 1008)を可決したものの、3月1日、州知事はこれに拒否権を発動した。拒否権発動の理由として、 州議会は両院とも共和党が圧倒的多数を占めている。そうした中で共和党出身の州知事が拒否権を発動するのは苦渋の判断であったと思われる。実際、拒否権発動は、時間切れ数時間前だったとのことだ。

州議会は、2/3以上の賛成を得れば、州知事の拒否権を覆すことも可能だ。しかし、審議の過程を確認してみると、下院は58 v 10で、ほぼ党員議席数にそった投票結果になっていたのに対し、上院では20 v 15で、共和党から7人が反対票を投じている。もしも同じ投票行動を取るのであれば、上院では2/3を獲得できない。

全米初のトイレ使用制限法が成立するかどうかは、州議会上院共和党議員の判断にかかっている。しかも、同様のトイレ使用制限法案は、SD州を除いて13州で検討されているそうだ。中でもTennessee州は、全米で唯一性転換を禁止する州法を持っており、学校のトイレについても、出生証明書に記載された性別通りに利用するよう規定する法案を検討中だ。

※ 参考テーマ「LGBT

3月3日 州政府年金財政悪化 
Source :Wilshire: State pension plan funding falls in fiscal 2015 (Pensions & Investments)
州政府職員年金の財政が悪化している。上記sourceで紹介されているポイントは次の通り。
  1. 131ある州政府職員年金の2015年度積立比率は74%(推計)。昨年比で3%pt低下したものとみられる。

  2. 上記131の年金プランのうち、実績値を公表しているものが98ある。それらの実績値のまとめは次の通り。
    2015年度前年比伸び率
    年金資産$2.14T0.4%
    給付債務$2.94T4.3%
    積立比率72.8%
  3. 積立比率が低下した主な理由は次の通り。
    1. 利回りの上昇、ドル高などで、内外債券の価格が低下したこと
    2. 給付債務の割引率を引き下げたところが多い

  4. 資産内容としては、長期的に見ると、アメリカ株を減らして外国株、不動産、私募債などの割合が高まっている。
    2005年度2015年度
    アメリカ株44.0%27.3%
    外国株15.0%20.1%
    不動産4.2%8.1%
    私募債4.4%10.0%
    アメリカ債券28.6%21.1%
    外国債券1.2%2.3%
    その他資産2.6%11.1%
中間時点でリーマンショックがあった訳だから、アメリカ株が低下しているのは当然だろう。また、超低金利政策も長引いているため、アメリカ債券の低下も仕方あるまい。それでも、州政府年金が不動産や私募債に投資していって大丈夫なのだろうか。

※ 参考テーマ「地方政府年金

3月2日 NJ州:年金拠出先送り確定 
Source :U.S. Supreme Court denies review of New Jersey pension fund contribution ruling (Pensions & Investments)
New Jersey州(NJ州)最高裁は、NJ州政府が州政府職員年金に対する年金拠出について一部先送りしたことを認める判決を下していた(「Topics2015年7月30日 NJ州:年金拠出先送り」参照)。この判決に対して、州政府職員労組や教員労組は無効であると連邦最高裁に訴えていたのだが、連邦最高裁はこの訴え自体を退けた。

これで、NJ州政府の年金拠出先送りは確定したことになる。

※ 参考テーマ「地方政府年金

3月1日 ジェネリック価格上昇 
Source :The Generic Drug Cost Problem (Marsh & McLennan Agency)
上記sourceは、National Center for Policy Analysisが公表した分析結果を紹介しながら、ジェネリックの問題点を指摘している。概要は次の通り。
  1. アメリカ国民の医療支出は、ほぼ$3Tに達する(2014年)。
  2. そのうち、処方薬に対する支出は約1割を占める。2013年の支出額は$329Bだったのが、2014年には$374Bと、1年間で13.7%も上昇した。

  3. 処方薬のうち、特殊薬、ブランド、ジェネリックの構成は次の通り。
  4. 通常、ブランド薬の特許が切れてから、ジェネリックが普及し、その価格が80%低下するまでには一年かかる。特許切れから半年間は、一社のみが製造権を独占するのが普通であり、そのために価格競争が本格化するまでに一年程度はかかってしまうのである。(←知らなかった!)

  5. 一般的には、ジェネリックの利用により、処方薬支出は抑制されるものだが、2013年7月〜2014年7月の1年間に、ジェネリックの価格は著しく上昇した。 価格が下がったジェネリックは半数近くしかなく、半数以上は下図のように大幅に価格が上昇した。
  6. このように、ジェネリックの価格が上昇した背景にはいくつかの要因が重なっている。

    1. FDAの審査期間が長くなっている。

    2. 発売から時間が経ったジェネリックは、品質維持のために追加投資が必要になる。

    3. 原料不足が発生している。

    4. 製薬会社の統合が進み、競争が低下している。
    5. 卸業者3社で流通市場の90%を握っている。
ジェネリックの価格が上昇しているような局面では、企業側はこれまで以上に処方薬支出の抑制に関心を持たざるを得ない(「Topics2016年2月27日 医療情報の共有」参照)。

※ 参考テーマ「医薬品