2月20日 HSAはまだ伸びる 
Source :2015 Year-End HSA Market Statistics & Trends (Devenir)
急速な普及を遂げているHSAだが、これからも大きく伸びていく見通しだ。
  1. 2015年のHSA総資産額は、予測を上回って$30Bを超えた(「Topics2015年8月23日 HSA人気の背景」参照)。これは前年比25%増の伸びだ。また、口座数は1,670万で、22%増である。
    2016〜2018年についても、さらに大きく伸びていく見通しが立てられている。2018年には総資産額が$50Bを上回り、口座数も3,000万近くになりそうだ。

  2. また、口座資産の運用に力が入れられ始めており、今後もその傾向は強くなっていくようだ。

  3. 2015年の特徴として、引き出し金額が大きく伸びたことがあげられる。これは、高免責額プランが本格的に増え始めたことによるものと思われる。
  4. Debit Cardによる支払いが、57%と過半を超えている。この便利さも、HSA普及に貢献していると思われる(「Topics2015年7月21日 FSA Debit Card」参照)。
※ 参考テーマ「HSA

2月19日 医療支出の伸び鈍化か 
Source :Health Spending Growth Fell to 4.9% in December and Stands at 5.9% for 2015 Overall (Altarum Institute)
上記sourceでは、国全体の医療支出を推計している。それによれば、2015年全体の伸び率は5.9%となり、景気後退が始まった2007年以降、最大の伸び率となった模様だ。

ただし、毎月の動き(前年比の伸び率)をみると、2015年2月をピークに徐々に低下してきており、2016年は鈍化すると見込まれている。
それでも、GDP伸び率を上回る状況は続いており、支出に占める医療費の重さはどんどん増している状況にある。
その伸び率の要因をみると、圧倒的に処方薬の伸び率が群を抜いている。薬価抑制策への関心が高まるのも当然であろう(「Topics2016年1月6日 薬価抑制策に注目」参照)。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医薬品

2月18日 結婚相手の職業 
Source :This Chart Shows Who Marries CEOs, Doctors, Chefs and Janitors (BusinessWeek)
上記sourceは、2014 American Community Survey(U.S. Census Bureau)の調査対象となった350万世帯について、結婚相手がどういった職業の人になっているのかについて、相関図を示したものである。

例示されているのは、次のようなもの。 ちなみに、我が職業であるリサーチャー(社会科学系)では、やはり同業種同士の男女結婚が多いようだ。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

2月17日 バレンタインデーの掟 
Source :Lonely Hearts Club: Valentine's Day Can Depress Some Workers (SHRM)
バレンタインデーの社内イベントや贈り物には気遣いが必要である、と上記sourceは述べている。皆がバラ色の一日を送れるわけではなく、失恋や孤独感に苛まされる従業員もいるからだ、としている。特に、社内恋愛について注意が必要だとしていて、この機会に社内恋愛に関する社内ルールを徹底させた方がよいと忠告している。

引用されている調査結果では、 とされている。

そして、最後に、社内恋愛を許すのであれば、両方からの同意書を提出させておくべき、と締めくくっている(「Topics2007年2月14日(2) Love Contract」参照)。これがどうにも日本人的な感覚では馴染めない。アメリカ映画に出てくる社内恋愛でもそんなシーンは見たことがない。本当にそんなことができるのだろうか。

※ 参考テーマ「社内恋愛」、「人事政策/労働法制

2月16日 連邦最高裁判事の指名問題 
Source :Antonin Scalia, Justice on the Supreme Court, Dies at 79 (New York Times)
2月13日、連邦最高裁のAntonin Scalia判事が死去した。テキサスのリゾートで発見されたそうで、事件性はないとのこと。30年もの長きにわたって連邦最高裁判事を勤められており、冥福をお祈りする。

ここで、俄然、最高裁判事の指名問題に注目が集まることとなった。Scalia判事の生前の勢力図は次の通り。

Current Justices of the US Supreme Court (as of February 15, 2016)

Name Born Appt. by First day
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005
(Antonin Scalia) 01936-03-11 March 11, 1936 Ronald Reagan 01986-09-26 September 26, 1986
Anthony Kennedy 01936-07-23 July 23, 1936 Ronald Reagan 01988-02-18 February 18, 1988
Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991
Ruth Bader Ginsburg 01933-03-15 March 15, 1933 Bill Clinton 01993-08-10 August 10, 1993
Stephen Breyer 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994
Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010
最古参で保守派のScalia判事の存在感は大きく、その後任が誰になるかで、大きく勢力図が変わってくる。保守派が指名されれば現在と変わらないことになるが、最近のObama大統領の指名判事を見る限り、そのような人選が示される可能性は低い。リベラル派が指名されれば、『リベラル5、保守3、中道1』と大きくリベラルに傾く。仮に中道の判事が指名されたとしても、『リベラル4、保守3、中道2』とリベラルの優位は変わらない。

NHKの報道によると、Scalia判事の死去を受けて、Obama大統領は積極的に指名に動こうとしている。一方の共和党Mitch McConnell上院院内総務は、「次の大統領が決まるまで指名すべきではない」と牽制している。連邦最高裁判事の就任には連邦議会上院の承認が必要であり、現時点では共和党が多数を握っている。Obama大統領がリベラル派を指名しても、簡単には承認、就任とはならない。

それでも、今後1年近く、一人空席のまま8人で判決を出し続けるというのは、いかがなものかとも思う。

ところで、上記sourceを読んでいての気付きを2点だけ。
  1. 全会一致

    Scalia判事の上院での承認は、98-0の全会一致だったそうだ。そのようなお見事な指名を今回Obama大統領が見せられるかどうか、注目である。

  2. "Vatican roulette"

    Scalia判事は一人っ子で従兄弟もいなかったそうだが、自身は9人の子供を育てた。大家族であったことは彼の思想に大きく影響したそうだが、子供が多かったのは、敬虔なカトリック教徒で、"Vatican roulette"に従ったまでのこと、ということらしい。
もう一度上表を見てみると、Scalia判事と同じ1930年代生まれが、あと3人もいる。これから数年のうちに大きく勢力図が変化する可能性が高い。その意味でも、今年の秋の大統領選、連邦議会選は重要になる。

※ 参考テーマ「司法」、「大統領選(2016年)

2月15日 Exchange加入手続き見直し 
Source :CMS may overhaul enrollment process, could include questions about sexual orientation (Modern Healthcare)
CMSは、Exchange保険プラン、Medicaid、SCHIPの加入手続きについて、簡素化を含めて見直しを進めている。それに対して、パブリック・コメントとして寄せられている主な提案は次の通り。
  1. 正式な加入手続き期間(open enrollment period)以外に加入手続きが認められている場合がある(special enrollment period)。この特別な期間に手続きが認められる要件を減らすべきである。保険会社にとって事務手続きが煩雑であることに加え、リスク管理が難しくなる。

  2. 保険料不払いのために保険不加入となった場合には、特別手続き期間の加入を認めるべきではない。

  3. 本人確認をクレジット履歴だけに頼るべきではない。合法移民などが本人確認できずに加入手続きが滞る場合がある。

  4. CMSは加入手続きの際に収集する情報を広げようとしている(人種、第一言語など)。これに関連して、性嗜好についても加えるべきだ。同性愛者に較べて両性愛者の保険加入率が低く、性転換者はさらに低いとされている。その対策を講じるためにもこうした情報が必要だ。
行政手続きの見直しは、Paperwork Reduction Act of 1995 (the PRA)に基づくものである。アメリカの行政手続きや統計調査は、国民の記入負担を軽減することと、世の中の変化に対応した見直しを常に迫られる。上記最後のLGBT関連の提案は、まさに世の中の変化に対応した要望であろう。しかし、個人情報をそこまで収集してよいものなのかどうなのか、日本人にはなかなか判断がつけられない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「LGBT

2月13日 無保険者割合低下 
Source :Eight states show big drops in uninsured (Associated Press)
2014年に続いて2015年も、無保険者割合が大きく低下しているようだ(「Topics2015年9月18日 2014年無保険者大幅減少」参照)。

National Center for Health Statisticsが毎年実施しているインタビュー調査の結果(Health Insurance Coverage: Early Release of Estimates From the National Health Interview Survey, January.September 2015)によると、全世代の無保険者割合は、2013年14.4%、2014年11.5%、2015年9.1%と5%pt以上低下した。また、18-64歳でみると、2013年20.4%、2014年16.3%、2015年12.9%と、こちらは7%pt以上も低下した。現役世代の改善が著しい。
これは、間違いなくPPACAの効果が出ている。

また、州別にみると、この1年間で8州(第1グループ:Arizona, California, Colorado, Florida, Illinois, Kentucky, Michigan, New York)で大きく低下している。その次に低下しているとされているのは10州(第2グループ:Georgia, Idaho, Indiana, Louisiana, Mississippi, New Hampshire, New Mexico, North Carolina, Oklahoma, Rhode Island)だ。
上記sourceによれば、第1グループのうち最も低下したとされるのがKentucky州で、1年間に6.5pptも低下した。次がArizona州で、こちらも5.9ppt低下している。どちらも州知事が共和党だ。上記sourceによれば、第1グループで5州、第2グループで7州の知事が共和党出身である。

PPACA廃止を叫んできた共和党出身の州知事達の足許でPPACAの成果が上がっている。これでは、共和党全体としてもトーンを落とさざるを得まい。先日のRyan連邦議会下院議長の発言も、当然の帰結だろう(「Topics2016年2月5日 PPACA廃止論を棚上げ 」参照)。

その他、気付きの点をいくつか。
  • 現役世代ではほぼ一様に無保険者割合が低下しているが、18-24歳での低下が著しい。これは、26歳までは親の保険プランへの加入が認められたことが大きいと思われる。
  • 人種別でも一様に低下してはいるが、ヒスパニック系の無保険者割合の水準が目立って高い。やはり不法移民がPPACAから排除されていることが影響している。
  • Exchangeの形態別では、州立の方が連邦立よりも無保険者割合がかなり低い。州政府のやる気の問題というのもあるかもしれない。しかし、今いくつか出始めている、州立から連邦立への転換が進めば、全米での無保険者割合の上昇につながってしまうかもしれない。
  • 2015年は高免責額プランの伸びが、約1/3のレベルで止まっている。少し気になるのは、高免責額プランのうち、HSAが一緒に提供されている場合の方が少ないことだ。HSAがなければ、免責額のほとんどを日々の生活費の中から出費しなければならなくなる。低所得層であれば、かなりの打撃であろう。


※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/KY州」、「無保険者対策/AZ州」、「HSA

2月12日 IA州:州立退職貯蓄プラン法案 
Source :State Treasurer Proposes Retirement Savings Plan (State of Iowa Treasurer's Office)
Iowa州が州立退職貯蓄プラン("Retirement Savings Plan")の法案を提出すると発表した。IA州財務長官と民主党上院議員が共同会見したようだ。

IA州は、州知事、州議会下院が共和党、上院が民主党と捩れている。しかし、法案は州政府と民主党上院議員とで提案するとのこことで、超党派の合意ができているのかもしれない。

上記sourceからは、詳細な制度設計を把握できないが、基本的な考え方は、
  1. voluntary enrollment
  2. automatic payroll deduction
  3. portability
  4. tax advantages
の4点だ。そして、最大の特徴と思われるのは、
"Created as a public trust managed by the state, the state treasurer's office would serve as its trustee."
としているところである。州政府が最終的に運営責任を負うとしているのである。これは、今までの州立退職貯蓄プランの議論ではなかったことだと思う。このことが利回りの保証を伴うのかどうか。今後の議論を見守りたい。

※ 参考テーマ「地方政府年金