上記sourceは、PBGCの危機的状況を解説した記事で、最近の動向をかなり詳細に説明した力作なので、ぜひご参照いただきたい。その中で、特に気づいた点は、次の2点。
- 前PBGC理事長のBelt氏が、かなり悲観的な見通しを持っている。PBGCの活動モデルは、長期的には持続可能ではなく、保険料で賄いきれない部分は、何らかの形(通常は連邦税)によって穴埋めせざるを得なくなるとの認識を示している。前理事長の発言だけに、その内容の深刻さは傾聴に値する。
- PBGCが引き継いだ給付債務の番付表で、Unitedがダントツトップに踊り出て、給付債務の肩代わり先が、鉄鋼から航空産業にシフトしていることがより明確になっている。2005年までのデータは、次の通りである。
この前のデータとしては、2004年時点(「Topics2005年9月23日 PBGCのリスク度」参照)、2003年時点(「Topics2003年3月14日(1) アメリカのDBプランの課題」参照)、2002年時点(「Topics2002年2月25日 Legacy Cost」参照)などがあるので、比較してみていただきたい。
Top 10 claims in PBGC history
1. United Airlines $6.6 bln 2005 2. Bethlehem Steel $3.7 bln 2003 3. US Airways $3.0 bln 2003, 2005 4. LTV Steel $2.0 bln 2002 5. National Steel $1.1 bln 2002 6. Pan American Air $841 mln 1991 7. Weirton Steel $689 mln 2004 8. TWA $668 mln 2001 9. Kaiser Aluminum $566 mln 2004 10. Eastern Airlines $553 mln 1991 Data: PBGC
この傾向が、さらに自動車産業へとシフトしていくのかどうかが注目されている。
2008年の大統領選に向けて、世論調査が行われ、その結果が公表された。
調査方法は、(本人の意思表明とは関係なしに)民主党3人、共和党3人の候補者について、「絶対投票する」、「投票を考えてもよい」、「絶対投票しない」の3択で選んでもらうものである。
候補者は、民主党共和党
- Sen. Hillary Clinton
- Sen. John Kerry
- Al Gore
Clinton上院議員については、47%が絶対に投票しないとされ、かなり嫌われているようにも見えるが、一方で、絶対に投票するというのが22%と、6人のうちで最高率となっている。固定ファン層があるのは強みであるが、中間層と呼ばれる人たちをどれだけ引き付けられるかが課題である。
- Sen. John McCain
- Rudy Giuliani
- Florida Gov. Jeb Bush
無保険者対策(「Topics2006年6月16日 Mrs. Clintonの政治信条」参照)や最低賃金(「Topics2006年6月24日 最低賃金を巡る攻防」参照)などの政策課題で対立軸を鮮明にすればするほど、中間層が離れている可能性が高い。このあたりのバランスを取れていけるのかどうか、まずは今年の中間選挙が試金石となろう。
ただし、上記の候補者達の中には、本当に大統領選にチャレンジするのかどうかも疑わしい人達が入っており、まだまだ本格的な世論調査とは言えないことを認識しておく必要がある。
21日、上院で最低賃金の改正を巡って投票が行なわれた。
まず、民主党の提案は、現在の連邦最低賃金率$5.15/hを$7.25/hに引き上げるというものである。その投票結果は、賛成52vs反対46で、過半数は賛成したものの、改正に必要な60票には届かなかった。
一方、同時に議決された共和党提案は、最低賃金率を$6.25/hに引き上げるものの、中小企業への適用については様々な要件をつけたものであった。こちらの投票結果は、45vs53で否決された。
下院民主党は、同様の法案の審議、採決を求めていく姿勢だが、下院共和党幹部は否定的な見通しを表明している。
民主党は、連邦最低賃金率が9年間も据え置かれていることを問題視している。この間、ガソリン価格、家賃、医療費などは高騰を続けているにもかかわらず、最低賃金が据え置かれているのは実質的な生活水準の切り下げ、と主張している。実際、この最低賃金率では、年収が$10,700程度にしかならない。この所得水準は、単身世帯の貧困基準を辛うじて上回るものの、二人世帯の貧困基準を$3,000以上下回るものである。
確かに、上院で過半数を占めているはずの共和党からも、民主党提案に賛成が8票も流れていることからも、最低賃金率の低さが問題視されていることがわかる。世論調査でも、圧倒的多数が引き上げを支持しているという。民主党は、中間選挙でもこの問題を争点にする構えのようだ。
しかし、州レベルで最低賃金率を確認してみると、連邦よりも高く設定している州は、19(上記sourceでは21州+DCとなっている)であり、民主党提案の7.15/h以上を定めているのは、(将来の引き上げ予定を含めて)8州しかない。
民主党は、中間選挙で争点とするならば、もう少し現実的な目標設定が必要になるのではないだろうか。
上記sourceでは、現在両院協議会で審議・調整されている年金改革法案で、財政状況が危機的状況にある確定給付型プランの積立不足は$450Bに達する見込みであることが報じられている。
上記sourceの報道振りを見るところ、両院協議会での議論の進捗状況は、相変わらず明らかにはされておらず、合意に至る見通しは立っていないように思われる。両院協議会メンバーは、今月中には合意案を打ち出したいと考えているようだが、事実上、あと1週間しかない。来月に入るとすぐに独立記念日で休みとなり、そのまま夏休みモードに入っていく。いよいよ中間選挙モードである。よほどの重要案件でなければ、7月中は議論に入らないとみられる。
年金改革法案の行方は、かなり厳しくなってきたようである。
20日、CalPERSの委員会が開催され、医療保険プランにおける自己負担分を引き上げるとのスタッフ提案が、すべて却下された。スタッフ提案では、診療所への通院1回あたりの自己負担を$10から$15に、また救急診療の自己負担を$50から$75に引き上げるというものであった。
報道によれば、提案却下の背景には、労組の圧力があったということである。CalPERSが自己負担引き上げを行わないことから、医療費の増分(2007年で$55M)は、結局は、事業主の保険料で吸収することになる。事業主の保険料とは、つまり加州民の税金から賄われることに他ならない。
CalPERSは、医療費の高い医療機関を保険対象からはずす(「Topics2004年5月21日(2) CalPERS 38病院との契約見直し 」参照)などの自助努力を行っているものの、民間企業では従業員の自己負担、保険料負担を増やしている中で、CalPERSの判断は許容されるかどうか、難しいところである。労組の強い影響力のもとでの拒否が、どのような影響を持つことになるのだろうか。中間選挙にも反映されてくるのではないかと思われる。